注:本文の根拠は農林水産省の発表です。国の発生予察・リンク集は 病害虫発生予察情報(農林水産省) を参照してください。

病害虫発生予報とは

国は都道府県の協力のもと、植物防疫法に基づき、有害動植物の防除を適時かつ経済的に行うため、気象・作物生育・発生調査などを分析し、発生予察情報を提供しています。今回の「第1号」は、都道府県が提供する発生予察情報を取りまとめたものです。地域ごとの細部は、都道府県病害虫防除所のホームページ等が基準になります。

温暖化や薬剤抵抗性の進行などを背景に、病害虫・雑草対応は難しくなっています。農林水産省は、消費者に支持される食料の安定供給のために、「予防・予察」を重視した総合防除で、発生しにくい生産環境づくりと、適時適切な防除によるまん延防止・損害軽減を呼びかけています。関連して、総合防除の 実践ガイドライン実践マニュアル が示されています。

気象の見通し(気象庁・向こう1か月、4月9日付け)

気温は全国で高めに見込まれます。降水量は、東日本太平洋側および西日本では平年並みか多め、北日本・東日本日本海側ではほぼ平年並み、沖縄・奄美では少なめとの予想です。詳細は 気象庁の長期予報 を参照してください。

今後の主要な発生予察(予報で強調されているもの)

  • :赤かび病の発生が、東海・四国・北九州の一部で多くなる見込み。
  • 野菜・花き:いちごのハダニ類が、北陸・東海・九州の一部で多くなる見込み。
  • 果樹:果樹カメムシ類が、近畿・北九州の一部で多くなる見込み。

ほか、かんきつのハダニ類、きゅうりのべと病等、地域によっては多くなる病害虫があるため、注意を促されています。

水稲:防除・管理で押さえたいポイント

種子伝染性病害と消毒

いもち病、もみ枯細菌病、ばか苗病など種子伝染性病害が昨年多かった地域では、種子消毒を的確に行い、健全な苗づくりが必要です。薬剤感受性の低下がみられる場合もあるため、都道府県の発生予察等を参考に効果の高い薬剤を選びます。塩水選や温湯消毒を行うときは、病害虫防除所等が示す手順・方法に沿って実施することが求められています。

縞葉枯病とヒメトビウンカ

縞葉枯病はヒメトビウンカが媒介するウイルス病で、経卵伝染するため本虫を対象とした防除が重要です。畦畔や農道など水田周辺の除草が有効です。保毒虫の割合が高い地域では、育苗箱施用剤による防除の検討も示されています。

トビイロウンカ

気象や飛来量によって大きな被害につながることがあります。被害が懸念される地域では、育苗箱施用剤による防除の検討が挙げられています。

斑点米カメムシ類

気温が高めと予想されることから、早期に活動が始まり発生量が増えるおそれがあります。発生状況の注視と、発生量に応じた適時・適切な防除の準備が必要です。水田周辺の除草は発生抑制に効き、地域一斉の除草も効果的とされています。

イネカメムシ

斑点米だけでなく不稔被害も引き起こす斑点米カメムシ類の一種で、近年の発生増が報告されています。他の主要な斑点米カメムシ類と異なり、出穂期の防除が不稔防止に重要です。過去から発生が多い、または増加傾向の地域では、出穂期に防除できる計画を立てることが推奨されています。防除の考え方は 斑点米カメムシ類の防除(農林水産省) を参照してください。

スクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)

昨冬の気温が全国的に高かったため、発生地域では越冬個体が多いおそれがあります。移植前に取水口・排水口へネットや金網を設け侵入を防ぎ、水田内で発生が多い場合は植代前の石灰窒素散布の検討、移植時の薬剤散布、移植後は水深4cm(理想は1cm)以下の浅水管理が示されています。農機具に付着した泥での拡散に注意し、未発生地域などでの放飼は行わないでください。被害防止の詳細は 農林水産省のページ防除支援マニュアル(農研機構等) を参照してください。

麦:赤かび病の発生見通しと防除適期

赤かび病は、東海・四国・北九州の一部で発生が多くなる見込みで、三重県・愛媛県・佐賀県から注意報が出ています。かび毒の関係から感染しやすい時期を捉えた防除が重要で、麦の種類ごとに防除適期が異なります。昨冬から今春は全国的に気温が高かったため、生育が当初予測より早まる可能性があり、都道府県の発生予察を参考に初回・追加防除を適期に行う必要があります。防除適期に降雨が続く場合は、降雨の合間に実施するよう求められています。

麦の種類ごとの最初の防除を行う生育時期
麦の種類 最初の防除を行う生育時期
小麦 開花を始めた時期から開花最盛期まで
二条大麦 穂揃い期の10日後頃
六条大麦 開花を始めた時期から開花最盛期まで

デオキシニバレノール・ニバレノール汚染の予防・低減については、農林水産省の 麦類の指針 も参照されます。

麦:地域別の見通し(「多い」「やや多い」)

病害虫名 発生が「多い」と予想される地域 「やや多い」と予想される地域
赤かび病 東海、四国、北九州 中国

野菜・花き:発生が平年より多いと予想される病害虫

表中の地域は必ずしも全域ではなく、その旨が注記されています。

作物名 病害虫名 「多い」 「やや多い」
いちごハダニ類北陸、東海、九州北関東、中国、四国
アザミウマ類東海、中国、四国、九州
アブラムシ類関東、東海、中国、四国
コナジラミ類四国東海
うどんこ病東海、中国北関東、四国、九州
灰色かび病四国中国
きゅうりべと病四国、南九州関東、東海、四国
灰色かび病南関東、東海、四国
褐斑病北九州北関東
たまねぎアザミウマ類四国北海道
トマトコナジラミ類四国、南九州南関東、北陸
黄化葉巻病北関東、四国南九州
うどんこ病北関東、南九州
灰色かび病四国東海
なす灰色かび病近畿、中国、四国
ねぎアザミウマ類四国、北九州近畿

いちごのハダニ類

北陸・東海・九州の一部で多くなる見込みです。密度が高くなってからでは防除が困難になるため、発生初期の防除が重要です。薬剤抵抗性に注意し、都道府県の情報を参考に同一系統薬剤の連用を避けます。除草や天敵を組み合わせた防除も検討対象です。

きゅうりのべと病

四国・南九州の一部で多くなる見込みです。多発すると防除が難しくなるため観察を密にし、発生初期に対応します。薬剤耐性にも配慮し、窒素肥料の過多や多湿を避ける栽培管理が重要です。

果樹・茶:発生が平年より多いと予想される病害虫

作物名 病害虫名 「多い」 「やや多い」
かんきつハダニ類東海、四国、九州南関東
そうか病近畿、中国、四国、九州
かいよう病東海、九州
なし黒星病中国東海、北九州
果樹共通果樹カメムシ類近畿、北九州中国、四国
ハダニ類南九州近畿、北九州

かんきつのハダニ類

東海・四国・九州の一部で多くなる見込みです。発生初期の防除と、薬剤抵抗性への配慮、園地内外の下草・雑草管理が示されています。

果樹カメムシ類

近畿・北九州の一部で多くなる見込みで、佐賀県から注意報があります。山林などの越冬場所から成虫が移動し果樹全般を加害します。一部県では越冬量が平年より多く、平均気温が高い地域では早期再開に注意が必要です。薄暮から夜間の活動が中心のため、夕方の薬剤散布が効果的とされています。詳細は カメムシ類の防除(農林水産省) を参照してください。

令和8年3月11日以降の警報・注意報・特殊報

警報:発表なし(重要病害虫の大発生が予測され早急な防除が必要な場合に発表)。

注意報

発表月日 都道府県 対象作物 対象病害虫
3月25日佐賀県果樹全般果樹カメムシ類
3月27日沖縄県さとうきびカンシャワタアブラムシ
4月3日三重県ムギ類赤かび病
4月7日鳥取県ニホンナシ黒星病
4月8日香川県ネギ、タマネギ、ニンニク、施設野菜、花き類等ネギアザミウマ
4月10日愛媛県ムギ類赤かび病
4月13日佐賀県ムギ類赤かび病

特殊報

発表月日 都道府県 対象作物 対象病害虫
3月23日神奈川県シネラリアキク茎えそウイルス(CSNV)
3月27日神奈川県ダイコンダイコン褐斑細菌病(仮称)
4月7日愛知県キャベツテンサイシストセンチュウ
4月9日広島県トマトトマト黄化病

特殊報は、新病害虫の発見や従来と異なる防除が必要となる事象など、生産現場への影響が懸念される場合に発表されます。

見慣れない病害虫に気づいたとき

重要病害虫が未発生地域に侵入すると農業や輸出に大きな影響が出るおそれがあるため、早期発見と的確な防除が重要です。見慣れない被害があれば、最寄りの植物防疫所または都道府県の病害虫防除所へ連絡してください。植物防疫所の連絡先都道府県病害虫防除所の連絡先 が農林水産省サイトにあります。

「多い」「やや多い」などの用語の定義

予報では、発生量の程度が過去10年の平年値と比較して次のように説明されています(いずれも度数分布に基づく幅)。

  • 多い(高い):やや多いの外側10%の度数の入る幅
  • やや多い(やや高い):平年並の外側20%の度数の入る幅
  • 平年並:平年値を中心として40%の度数の入る幅
  • やや少ない(やや低い):平年並の外側20%の度数の入る幅
  • 少ない(低い):やや少ないの外側10%の度数の入る幅

「北海道」「東海」「北九州」などの地域区分は、次の一覧(北海道、東北、北関東、南関東、甲信、北陸、東海、近畿、中国、四国、九州、北九州、南九州、沖縄など)に従います。

今後の発生予報の発表予定日

号数 予定日
第2号令和8年5月13日(水)
第3号令和8年6月10日(水)
第4号令和8年7月8日(水)
第5号令和8年7月23日(木)
第6号令和8年8月5日(水)
第7号令和8年9月9日(水)
第8号令和8年10月7日(水)
第9号令和8年11月11日(水)
第10号令和9年3月10日(水)