地域計画の実現に向けて、農地の権利移動は原則として農地バンク経由で進めるという方針が強まっています。その理由とメリット、さらに関連支援策までをまとめて整理すると、制度全体のつながりが見えやすくなります。
農地バンクという言葉は知っていても、実際に何が便利で、どの支援策とどうつながるのかは意外と分かりにくいものです。そこでこの記事では、出し手、受け手、地域の3つの視点で整理し、そのうえで支援制度の違いを見ていきます。
まず全体像を確認
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 誰が | 農地の出し手、農地の受け手、農地バンク、地域計画に関わる市町村・農業委員会・都道府県などです。 |
| 何を | 農地を農地バンクに貸し付け、地域計画に沿って受け手へ転貸します。あわせて集約化、遊休農地解消、基盤整備を支援する制度があります。 |
| いつまでに | 支援策ごとに期間が異なります。遊休農地解消対策事業は10年以上の貸付、機構関連農地整備事業は15年以上の権利期間などの要件があります。 |
| いくら | 農地集約化促進事業は1万〜5万円/10aなど、遊休農地解消対策事業は最大43,000円/10a、機構関連農地整備事業は農家負担ゼロと整理されています。 |
農地バンクそのものの説明と、関連する支援事業の紹介が一体になっています。制度説明と補助事業の話が混ざりやすいので、分けて読むと整理しやすい内容です。
農地の権利移動が「原則農地バンク経由」とされる理由
各地域で作成された地域計画の実現に向けた農地の権利移動は、原則として農地バンク経由で進める仕組みです。これは、所有者不明農地や受け手不在農地、遊休農地も含め、地域でまとまりのある形で農地を動かしていくためです。
個別に貸し借りをつなぐだけでは、農地の集約化や再配分が進みにくいことがあります。農地バンクが間に入ることで、地域計画に位置づけられた担い手への転貸や、受け手がいない場合の対応も含めて、地域全体で調整しやすくなります。
出し手のメリット
出し手にとって大きいのは安心感です。賃料は農地バンクから期日までに確実に振り込まれ、貸し付けた農地は地域計画に基づいて適切に管理されます。受け手が離農しても、新しい受け手に転貸するまで農地バンクが管理するため、「貸した後に荒れてしまうのでは」という不安を和らげる設計になっています。
また、貸付期間が終われば農地は返還されます。引き続き誰かに耕作してもらいたい場合は再貸付も可能です。税制面では、一定条件を満たせば固定資産税の軽減や、農地売買時の譲渡所得800万円特別控除などのメリットもあります。
受け手のメリット
受け手にとっての大きなメリットは、まとまった一団の農地を長期間にわたって安定的に借りやすくなることです。複数の地権者から借りる場合でも、賃料の支払いは農地バンクへまとめて行えばよく、個別の支払事務を減らせます。
手続面でも、農地バンクとのやり取りが中心になるため、複数の地権者と一人ずつ調整する負担が軽くなります。規模拡大を目指す担い手にとって、農地集約化を進める土台として機能する点が強みです。
地域のメリット
地域にとっては、農地集約化促進事業による支援金を受けられることが大きなポイントです。支援金の使途は地域で決められ、農業機械の購入、鳥獣害対策、賃料先払い、農道維持管理など、実情に応じた使い方ができます。
さらに、機構関連農地整備事業によって農家負担ゼロで基盤整備が可能になる点も、地域にとっての大きな利点です。単に権利移動を進めるだけでなく、その後の耕作条件整備まで見据えた仕組みになっています。
農地集約化促進事業をどう見るか
旧機構集積協力金に相当する支援として農地集約化促進事業が設けられています。ここは制度の名前が似ていて分かりにくいため、要点だけ整理すると次のとおりです。
| タイプ | 主な要件の考え方 | 主な単価 |
|---|---|---|
| 集約化加速タイプ | 農地バンクの活用率などを満たし、新たに貸し付けた面積に応じて支援 | 2.0万円/10a、2.6万円/10a |
| 地域集約化実現タイプ(基本タイプ) | 団地面積割合の増加など | 1万円/10a、3万円/10a |
| 大規模集約タイプ | 15ha以上経営など一定規模要件 | 5万円/10a |
| 誘致団地創出タイプ | 受け手未設定農地を4ha以上の団地にして新たな受け手を誘致 | 5万円/10a |
ここで重要なのは、「対象地域は同一の地域計画に含まれる地域」であること、そして最終的には集約化目標年度までに耕作者へ転貸する必要があることです。単価だけを見ず、地域計画との関係や団地化の要件を合わせて確認する必要があります。
遊休農地解消対策事業
遊休農地解消対策事業は、市町村や農地バンクが簡易な整備を行い、遊休農地を解消して担い手へ貸し付ける取組を支援するものです。対象は、地域計画で受け手が位置づけられていない農地のうち、簡易整備で解消可能なものとされています。
交付要件は、農地バンクに10年以上貸し付けることです。補助単価は10a当たり最大43,000円で、草刈り、除礫、抜根、耕起・整地などが対象経費として示されています。遊休農地を「使える農地に戻す」入口の制度として理解すると分かりやすいです。
機構関連農地整備事業
関連施策の中でも目を引くのが、農家負担ゼロで基盤整備を実施できる機構関連農地整備事業です。農地バンクが借り入れている、または所有している農地等について、農業者の申請・同意・費用負担によらず、都道府県または市町村が行う基盤整備を支援します。
主な要件として、農地バンクの権利期間や委託期間が15年以上であること、対象農地面積が10ha以上(市町村実施または中山間地域は5ha以上)であること、事業完了後5年以内(果樹等は10年以内)に収益性が20%以上向上することなどが示されています。
全体像をつかむための見方
全体像をつかむには、次の順番で整理すると分かりやすくなります。
- 農地バンクを使うと出し手・受け手・地域にどんなメリットがあるか
- 権利移動そのものの話なのか、支援事業の話なのか
- 集約化支援、遊休農地解消、基盤整備のどれに当てはまるか
- 貸付期間や面積要件、単価などの基礎条件
- 詳細な手続は市町村や農地バンクの窓口で確認する
キーワード解説
地域計画
地域で今後どの農地を誰が担うかを整理する計画です。農地バンク経由の権利移動は、この計画の実現に向けて進めることが前提になります。
農地集約化促進事業
農地を団地化し、農地バンクを活用して集約化を進める地域を支援する制度です。タイプごとに単価や要件が異なります。
機構関連農地整備事業
農地バンクが関与する農地について、農家負担なしで基盤整備を進めるための事業です。長期の権利設定や面積要件があります。
まとめ
農地バンクは、単なる仲介窓口ではなく、地域計画に沿った農地の集約化や遊休農地対策、基盤整備までつながる仕組みの中心に位置づけられています。出し手・受け手・地域のそれぞれにメリットを持たせながら、農地をまとまりある形で動かそうとしていることが分かります。
まずは「農地バンクの基本メリット」を押さえ、そのうえで必要な支援事業の要件を確認していくと、制度全体が整理しやすくなります。詳細は一次情報に従ってご確認ください。
【出典】農林水産省「農地中間管理機構(農地バンク)」関連資料
https://www.maff.go.jp/j/keiei/koukai/kikou/attach/pdf/nouchibank-163.pdf
https://www.maff.go.jp/j/keiei/koukai/kikou/nouchibank.html