農地を貸したい方、借りて大規模化したい方、市町村や農地バンクで地域の集約化を進めたい方にとって、農地バンクの活用メリットは判断の起点になります。出し手・受け手・地域の3つの視点で、安心できる点と手続・支援の違いを整理します。

概要

農地バンクは、地域の農用地利用集積等促進計画(地域計画)の実現に向け、農地の権利移動や貸付を仲介・管理する機構です。個別の貸借だけでなく、転貸・管理・返却まで含めて地域全体で農地を動かす設計になっています。

項目内容
誰が 出し手(農地を貸す・売渡す所有者)、受け手(借りて経営する担い手)、地域(市町村・農地バンク・農業委員会など)が主な関係者です。農地バンクが契約の相手方になることで、三者の調整がしやすくなります。
何を 賃料の確実な受取、地域計画に沿った転貸・管理、契約満了後の返却・再貸付税制優遇、まとまった農地の長期貸借、農地集約化促進事業の支援金、機構関連農地整備事業による基盤整備などがメリットとして示されています。
いつまでに 出し手の固定資産税軽減は、10年以上の期間で貸し付けた農地が対象で、3年間税額が1/2に軽減されます(同一年に地域計画ごとの全農地を新規貸付した場合など、要件あり)。貸付期間満了後は農地が返却されます。
いくら 売渡の場合は譲渡所得の800万円特別控除の適用があります。機構関連農地整備事業では、通常の農地整備事業で農業者が負う12.5%を国が上乗せし、農業者負担は0%で基盤整備を進められます。農地集約化促進事業の支援金額は、事業タイプ・要件により異なります。

出し手のメリット

農地を農地バンクに貸し付ける出し手にとって、次の点がメリットとして整理されています。

農地バンクを活用するメリット(出し手)。賃料の確実な受取、適切な耕作・管理、契約満了後の返却と再貸付、売渡時の800万円特別控除、固定資産税・相続税贈与税の優遇、耕作者相続時の手続不要。
農林水産省「農地中間管理機構(農地バンク)」関連資料(PDF):農地バンクを活用するメリット(出し手)

賃料と耕作・管理

  • 賃料は農地バンクから、約束の期日までに確実に受け取れます。
  • 貸し付けた農地は、地域計画に位置づけられた者に転貸され、適切に耕作されます。
  • 受け手が離農等で不在になった場合も、地域計画に基づいて新たな受け手に転貸します。転貸までの間は農地バンクが適切に管理します。

返却と再貸付

一度農地を貸したら返ってこない、という心配は不要です。農地バンクに貸した農地は契約期間満了後に返却されます。引き続き誰かに耕作してもらいたい場合は、再貸付もできます。

売渡・貸付と税制

農用地利用集積等促進計画により農地を農地バンクに売り渡した場合は、譲渡所得の800万円特別控除の適用を受けられます。貸借だけでなく、売買でもメリットがあります。

農地バンクに農地を貸し付けた場合は、次の税制の優遇措置が適用されます。

  • 固定資産税の軽減:地域計画ごとに所有する全ての農地を、同一年に新たに農地バンクに貸し付けた場合、10年以上の期間で貸し付けた農地の固定資産税は、3年間1/2に軽減されます。
  • 相続税・贈与税の納税猶予の継続:納税猶予の適用農地を貸借しても、農地バンクを通じた貸借であれば納税猶予が継続します。

耕作者の相続への対応

耕作者の死亡で相続があっても、所有者は農地バンクに農地を貸しているため、新たに手続きをする必要はありません。相続に伴う貸借関係の整理負担を、出し手側で抱えにくくする設計です。

受け手のメリット

農地バンクから農地を借りる受け手(担い手)には、次のメリットがあります。

  • 地域計画に基づき、まとまった一団の農地を長期間にわたって安定して借りられます。農地の集約化をサポートする考え方です。
  • 農地貸借の相手方は農地バンクだけです。複数の地権者から借りた場合はそれぞれに賃料を支払う必要がありますが、農地バンクから借りた場合は農地バンクへの支払いに一本化され、手続きが楽になります。

地域のメリット

市町村や農地バンクが地域の集約化を進める場合のメリットは、支援金と基盤整備の2本柱で示されています。

農地バンクを活用するメリット(受け手・地域)。長期のまとまり貸借、契約の一本化、農地集約化促進事業の支援金、機構関連農地整備事業による農家負担ゼロの費用負担比較、地権者多数と農地バンク経由の契約の違い。
農林水産省「農地中間管理機構(農地バンク)」関連資料(PDF):農地バンクを活用するメリット(受け手・地域)

農地集約化促進事業の支援金

地域のまとまった農地の貸借等により、農地の集約化等に取り組む地域は、農地集約化促進事業により支援金を受け取れます。

支援金の使途は地域で決められます。例として、農業機械の購入、鳥獣害対策などの受け手支援、賃料の先払いなどの出し手支援、農道の維持管理などの地域支援など、地域の実情に合わせて活用できます。

農家負担ゼロの基盤整備

農地バンクが関与する農地については、機構関連農地整備事業により、農家負担ゼロで基盤整備事業を実施できます。通常の農地整備事業では国50%・県27.5%・市町村10%・農業者12.5%ですが、機構関連では国が農業者分を上乗せし62.5%となり、農業者負担は0%です。

複数の地権者と個別に契約する場合と比べ、農地バンクを挟むことで契約手続きが減り、地域全体の調整がしやすくなるというイメージが、契約関係の図で示されています。

検討の進め方

出し手・受け手・地域のどの立場で検討するかで、最初に押さえる点は次のとおりです。

  • 出し手:貸付か売渡か、賃料・返却・再貸付の条件、固定資産税軽減・納税猶予・800万円控除の要件
  • 受け手:地域計画で位置づけられた借地の規模・期間、賃料支払先の一本化による事務負担の軽減
  • 地域:農地集約化促進事業の支援金の使途設計、機構関連農地整備との接続(面積・権利期間・収益性要件など)

手続の詳細・様式・年度ごとの取扱いは、都道府県・市町村の農地バンク窓口、地方農政局、農林水産省の農地中間管理機構(農地バンク)のページもあわせてご覧ください。機構関連農地整備の要件は、機構関連農地整備事業(農家負担ゼロで基盤整備)の説明も参考になります。

キーワード解説

農地中間管理機構(農地バンク)

地域の農用地利用集積等促進計画に沿い、農地の権利移動や貸付を仲介・管理する機構です。出し手・受け手・地域の三者にメリットを持たせながら、農地の集約化を進める拠点になります。

地域計画(農用地利用集積等促進計画)

市町村が策定する、農地の集積・利用の方向性を示す計画です。農地バンク経由の貸借・転貸は、この計画に位置づけられた者への配分を前提とします。

農地集約化促進事業

地域のまとまった農地の貸借等により集約化に取り組む地域へ、支援金を交付する事業です。使途は地域で決められ、農機・鳥獣害対策・賃料先払い・農道維持などに充てられます。

機構関連農地整備事業

農地バンクが借り入れまたは所有する農地について、農業者負担なしで区画整理や排水・土層改良などの基盤整備を進める事業です。国負担の上乗せにより農業者負担がゼロになる点が特徴です。

譲渡所得の800万円特別控除

地域計画に基づき農地を農地バンクに売渡した場合に適用される税制上の控除です。売却を検討する出し手にとって、貸付と並ぶ選択肢の一つです。

まとめ

農地バンクを活用すると、出し手は賃料・返却・税制面で、受け手はまとまった長期借地と手続の簡素化で、地域は支援金と農家負担ゼロの基盤整備で、それぞれメリットを得やすい設計になっています。

自分が貸す・借りる・地域でまとめるのいずれかに当てはまる場合は、地域計画との整合、契約期間、税制・支援事業の要件を、農地バンクや市町村とあわせて整理すると判断しやすくなります。