加工・業務用を中心とした野菜の需要構造と輸入の実態、冷凍野菜市場の伸び、国産野菜シェア奪還プロジェクトと推進協議会の役割・活動、会員ヒアリングと委託調査で得た課題の骨子までを、図表と本文で一通り説明する。各図の需要量・シェア・会員数は公表時点の統計・説明資料に基づく。事業申請や投資判断の前には、必ず農林水産省の最新ページ・公示類を正本にすること。
概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 誰が | 国産野菜の生産拡大・活用拡大に関心のある生産者、実需者、卸・小売、自治体、その他関係者。推進協議会への参加(会員登録)は無料で、プロジェクト事務局が窓口となる。 |
| 何を | 実需者ニーズや産地状況の分析に基づくマッチング、会員向け情報発信、マッチングイベント、需要喚起との連携など。本文・図表では需要・輸入・冷凍市場、プロジェクトと協議会、ヒアリング、品目別の分析を扱う。 |
| 詳細はどこで | 趣旨・協議会・関連施策の最新情報は農林水産省「国産野菜シェア奪還プロジェクト」で確認する。 |
需要のシフトと国産・輸入の比率
長期的に野菜の需要量は減少傾向にあり、輸入量はおおむね横ばいで推移するなか、国内生産が需要に占める割合はわずかに下がる方向にある。食の外部化に伴い、野菜需要は家計の生鮮消費から加工・業務用へ移り、近年の試算では加工・業務用が全体のおおよそ半数から6割前後の水準に達する。
家計向けの生鮮では国産比率が極めて高い一方、加工・業務用では輸入が大きな割合を占める。主要13品目(キャベツ、ほうれんそう、レタス、ねぎ、たまねぎ、はくさい、きゅうり、なす、トマト、ピーマン、だいこん、にんじん、さといも等)に限った試算では、加工・業務用のおおよそ3割が輸入に依存する。食料需給表の系列は、需要量・国内生産量・輸入量の長期推移を押さえたうえで政策を組み立てる材料になる。
輸入の形態と品目・相手国
輸入野菜は、生鮮、冷凍、さらに加工度の高い製品など、形態が多様である。貿易統計を加工品は生鮮換算するなどして集計した一例では、輸入量の過半が加工度の高い形態、次いで冷凍、生鮮という内訳になる。品目別に輸入元をみると、中国からの比率が高い品目が多く、にんじんやトマト加工品などでは桁違いに中国依存度が高い試算もある。
全体の輸入量(千トン規模)と、そのうち冷凍・生鮮・高加工の構成、主要品目ごとの相手国シェアは、食料安全保障や供給途絶リスクを議論するときの出発点になる。
国産切替えが期待される品目
価格差や用途の観点から輸入から国産への切替えが期待できる7品目(国産切替え重点品目)では、たまねぎの輸入量が突出して多く、年間で数十万トン規模(加工品を含む)で推移する。ブロッコリー、ほうれんそう、えだまめは冷凍品の輸入が多く、輸入シェアが高い。品目別の時系列では、国内生産量と輸入量(冷凍・生鮮等に分解)の伸びにずれがあり、輸入が相対的に高まる年度帯もある。
冷凍野菜の市場とニーズ
冷凍野菜は長期保存ができ、必要な分だけ使える調理面の利便性や品質評価から、国内市場としては拡大傾向にある。一方で輸入の比率は依然として高く、ここが課題である。卸売事業者への調査では、野菜需要がアフターコロナで変化すると考える事業者の割合は8割に達する。そのなかでも冷凍野菜は今後も増えると考える事業者が多い。消費者・実需者双方で冷凍野菜へのニーズは強い。
冷凍野菜の国内流通量(輸入量と国内生産量の合算イメージ)と金額の推移は、輸入量が下げ止まりつつ金額は伸びるなど、市場の立ち位置を把握するうえでの手がかりになる。
プロジェクトと協議会
加工・業務用野菜では輸入が一定のシェアを占め、輸入先の偏在など地政学的リスクを踏まえると、食料安全保障の観点からも国産への転換に全力で取り組む必要があるとの認識のもと、令和6年4月に「国産野菜シェア奪還プロジェクト」が立ち上がった。
プロジェクトは、実需者ニーズと産地状況を深掘りし分析したうえで、取引先探索など新たなビジネスチャンス創出を後押しする枠組みである。推進のため「国産野菜シェア奪還プロジェクト推進協議会」を設け、会員を募集する。参加費は無料で、生産の拡大、取扱量の増加、販売促進、DXによる効率化などに関心のある者へ幅広く参加を呼びかける。
協議会員には、先進事例や会員情報・関連施策のワンストップ提供、分析に基づくマッチングやイベント参加、実需者ニーズ・産地状況などプロジェクトが収集した情報の提供といったメリットがある。
協議会の五つの活動柱
- 課題の洗い出しと解決策の検討:品目ごとに実需ニーズと産地状況を分析し、国産野菜の増産・活用の方向性をとりまとめる。
- 生産から販売までの連携支援:アンケートやヒアリングを通じてマッチング機会を創出し、サプライチェーン上の新たな連携づくりを支える。
- 先進事例と情報の共有:農林水産省のウェブサイト等で先進事例や関連施策、会員からの情報を発信する。
- 国産野菜の需要喚起:野菜の日シンポジウムや「野菜を食べようプロジェクト」との連携などで需要面を掘り起こす。
- 会員提案に基づく活動:協議会の運営のなかで会員から出た提案に沿い、必要な支援を行う。
具体的な取組には、品目別ニーズのアンケートと聞き取り、ホームページ上での品目別ニーズ公表、個別マッチング、冷凍加工やブランチングに関するセミナー、地方でのイベント、産地・生産者・加工業者の紹介などがある。
会員の広がりとヒアリングで見えた課題
令和7年4月時点で、推進協議会の会員は組織・個人あわせて340である。立ち上げ直後、国産シェア奪還に向けた課題把握のため、会員内外の生産者・実需者へ個別ヒアリングを実施した。
生産者からは、端境期解消のための新品目は人材・土地に余裕のある法人に限られやすいこと、価格に見合うコストに抑えるには大規模化と機械化が要るが現場では難しいことなどの意見があった。実需者からは、高温による生産不安定さによる調達難、加工施設を産地近くに置くことの重要性、複数産地からの原料集めと物流費のジレンマ、周年供給のための産地での長期貯蔵・出荷期間の平準化などが出た。行政・団体側からは、小規模でも温度管理付き保管の可能性、契約栽培に求められる定時・定量・定品質への対応難などへの言及があった。
会員の区分は生産101、実需58、卸売23、小売15、自治体39、その他104であり、地域分布の概要も資料に載せる。
委託分析と品目別の方向性
加工・業務用野菜の周年供給を固めるには、個別の生産者・実需者の情報に加え、統計を踏まえたマクロな分析が欠かせない。令和6年度の委託事業では、統計データの分析と事業者アンケートを通じ、冷凍出荷や品目別産地形成に必要な課題の抽出・分析と対応策の検討を行った。
調査の柱は二つある。一つは複数産地や実需者の連携による共同利用施設の整備といった大規模化によるコスト低減、もう一つはブランチングや急速冷凍・異物除去の高度化による品質向上と輸入品との差別化である。品目ごとの産地形成の打ち手として、かぼちゃでは夏季増産と冷蔵長期保存による冬場の供給、たまねぎでは剥き加工への対応、ねぎ・ほうれんそう・えだまめでは冬季生産可能産地の拡大や契約栽培・市場外調達の強化、にんじんでは夏季産地の拡大や冷凍・カット加工施設を伴う産地づくり、ブロッコリーではフローレット加工への対応を押さえた。
分析には、青果物卸売市場調査報告や貿易統計による端境期と輸入の関係、加工・業務用実需者ニーズ調査の業種別再集計、協議会会員向けアンケート(調達量、加工機械の保有、国産活用の課題等)を用いる。