区画整理や排水改良などの基盤整備は、ふつう農家の同意と費用負担が前提になります。これに対して、農地バンク(農地中間管理機構)が借り入れ・所有する農地なら、農家の申請・同意・費用負担なしで都道府県や市町村が基盤整備を進められます。それが機構関連農地整備事業です。この記事では、なぜ農家負担がゼロになるのか、どんな農地が対象になるのか、費用負担や進め方はどうなるのかを、わかりやすく整理します。
この記事の概要
機構関連農地整備事業は、担い手への集約化とあわせて耕作条件まで地域で整えたいときの選択肢です。基盤整備を考える地域・農家・市町村に向けて、まず全体像を表で押さえます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| どんな事業か | 農地バンクが借り入れ・所有する農地について、農家の申請・同意・費用負担なしで基盤整備を進められる事業です。 |
| 対象になる農地 | 農地バンクが15年以上の権利を持ち、平地で10ヘクタール以上(中山間・市町村実施は5ヘクタール以上)のまとまりがある農地です。 |
| 事業をするのは誰か | 実施主体は都道府県または市町村です。個別の農家が申請・同意・費用を負う必要はありません。 |
| 費用負担 | 本来農家が負う12.5%分を国が上乗せして負担するため、農家負担は0%です。県・市町村の負担割合は通常の整備事業と同じです。 |
| 守る条件 | 事業完了後5年以内(果樹等は10年以内)に、対象地域の収益性を20%以上向上させる計画が必要です。 |
機構関連農地整備事業とは
機構関連農地整備事業は、農地バンクが借り入れている、または所有している農地について、農家の申請・同意・費用負担によらず、都道府県または市町村が区画整理や排水改良などの基盤整備を行う事業です。農地を効率的な担い手へ集約する流れのなかで、権利移動や貸付だけでなく、その先の耕作条件まで地域で整えるために用意されています。
ふつうの基盤整備では、受益する農家の合意を取りまとめ、農家が一定割合の費用を負担するのが前提です。この合意形成と費用負担が、整備を進めるうえでの大きなハードルになってきました。機構関連農地整備事業は、農地バンクがまとめて借り入れ・所有している農地に限って、このハードルを外した仕組みです。
なぜ農家負担がゼロになるのか
農家負担がゼロになる理由は、本来農家が負う費用分を国が肩代わりして上乗せするからです。通常の農地整備事業では、国・都道府県・市町村に加えて農家が12.5%を負担します。機構関連農地整備事業では、この12.5%分を国が引き受け、国の負担割合を50%から62.5%へ引き上げます。その結果、農家の負担はゼロになります。
農地バンクが間に入って農地をまとめて動かす農地では、整備の効果が地域全体の集約化につながります。そのため、農家個人に費用を求めず、公費で整備を後押しする設計になっています。
対象になる農地・要件
農家負担ゼロという大きな利点があるぶん、対象になる農地には要件があります。本事業を実施するには、次の要件をすべて満たす必要があります。
- 権利期間:農地バンクが対象農地を15年以上借り入れていること。令和7年度以降は、農地バンクが所有している農地も対象に含まれます。
- 面積:対象となる農地の面積が、平地では10ヘクタール以上、中山間地域または市町村が実施する場合は5ヘクタール以上であること。
- 収益性の向上:事業完了後5年以内(果樹等は10年以内)に、対象地域の収益性を20%以上向上させること。
長期の権利関係、一定規模以上のまとまり、整備後の経営改善がセットになっています。計画段階で、担い手への転貸や経営体の収益見通しをあわせて整理しておくと、要件を満たすことを説明しやすくなります。
対象面積の数え方
対象面積は、事業実施区域内の農地を合算して判断します。区域内に複数のまとまり(区画)がある場合でも、全体として平地では10ヘクタール以上、中山間では5ヘクタール以上を満たす必要があります。
あわせて、各まとまり(区画)単体でも、平地では1.0ヘクタール以上、中山間では0.5ヘクタール以上であることが求められます。細かい区画が点在するだけでは足りず、まとまりとして整備できる規模があるかがポイントです。
対象になる工事
次のような基盤整備が対象になります。
- 区画整理(小さな区画をまとめ、大規模で作業しやすい区画にする工事)
- 暗渠排水
- 土層改良
- 農業用用排水施設 など
いずれも、集約化後の大規模化・機械化を見据えた整備です。個別の設計や採用の可否は、都道府県・市町村の農地整備事業の要綱・実施計画に沿って決まります。
費用負担の考え方
機構関連農地整備事業の費用負担は、通常の農地整備事業を起点に考えると分かりやすくなります。通常の農地整備事業では、国が50%、都道府県が27.5%、市町村が10%、農家が12.5%を負担します。機構関連農地整備事業では、農家が負うはずだった12.5%分を国が上乗せするため、国の負担が62.5%に増え、農家負担はゼロになります。都道府県(27.5%)と市町村(10%)の割合は通常と同じです。
| 負担主体 | 通常の農地整備事業 | 機構関連農地整備事業 |
|---|---|---|
| 国 | 50% | 62.5%(農家分12.5%を上乗せ) |
| 都道府県 | 27.5% | 27.5% |
| 市町村 | 10% | 10% |
| 農家 | 12.5% | 0% |
担い手から見ると、基盤整備に伴う自己負担を前提にしなくてよい点が、通常の整備事業との一番の違いです。市町村・農地バンクから見ると、農家への費用負担の説得をせずに、地域計画に沿った整備を進めやすくなります。
進め方
地域や農地が要件に当てはまりそうなら、市町村や農地バンクで次の順に整理すると、検討が進めやすくなります。
- 地域計画・集約化計画のなかで、対象農地が農地バンク経由で15年以上の権利関係になるか(所有を含むか)を確認します。
- 実施区域内の面積が10ヘクタール(中山間・市町村実施は5ヘクタール)以上か、各区画が1.0ヘクタール(中山間は0.5ヘクタール)以上かを確かめます。
- 区画整理・排水・土層改良など、必要な工事の種類と優先順位を整理します。
- 完了後5年(果樹等は10年)以内の収益性20%向上を、どの経営体・指標で測るかを決めます。
手続きの詳細・様式・年度ごとの取扱いは、都道府県の土地改良事業担当、地方農政局、農地バンクの窓口で案内があります。農林水産省の農地中間管理機構(農地バンク)のページもあわせてご覧ください。
農地バンク活用との関係
機構関連農地整備事業は、農地バンクの活用を前提にした事業です。農地バンクが農地を借り入れ・所有してまとめて動かすからこそ、農家の費用負担なしで整備できる仕組みが成り立ちます。農地バンクそのものの仕組みやメリット・デメリットは、農地バンクの仕組みとは?メリット・デメリットを解説で詳しく整理しています。
農地バンクには、目的の異なる支援が紐づいています。受け手が決まっていない遊休農地を簡易整備で使える状態に戻す場面では、農地バンクの条件とは?借りる側・貸す側の要件を解説で扱う遊休農地解消対策事業が入口になります。地域でまとまって農地を集約して支援金を受けたい場合は、農地集約化促進事業が選択肢です。機構関連農地整備事業は、これらと組み合わせて、集約した農地の耕作条件まで地域で整えるための事業として位置づけられます。
よくある質問
機構関連農地整備事業とは何ですか
農地バンク(農地中間管理機構)が借り入れ・所有する農地について、農家の申請・同意・費用負担なしで、都道府県または市町村が区画整理や排水改良などの基盤整備を行う事業です。担い手への集約化とあわせて、耕作条件まで地域で整えるための制度です。
本当に農家負担はゼロですか
要件を満たす農地であれば、農家の費用負担はゼロです。通常の農地整備事業で農家が負う12.5%分を国が上乗せして負担するため、国の負担が62.5%に増え、農家負担がなくなります。都道府県と市町村の負担割合は通常の整備事業と同じです。
対象になる農地の要件は何ですか
農地バンクが15年以上の権利を持つ農地(令和7年度以降は所有する農地も対象)で、平地では10ヘクタール以上、中山間地域または市町村実施では5ヘクタール以上のまとまりがあることが要件です。あわせて、事業完了後5年以内(果樹等は10年以内)に対象地域の収益性を20%以上向上させる計画が必要です。
事業主体は誰ですか
実施主体は都道府県または市町村です。対象になるのは農地バンクが借り入れ・所有する農地で、個別の農家が事業を申請したり費用を負担したりする必要はありません。担い手や、地域計画を担う市町村・農地バンクの関係者が検討の中心になります。
次の一歩
地域や農地が要件に当てはまりそうなら、まず農地バンクの貸付・所有の見通しと、整備後の担い手経営をセットで整理しましょう。そのうえで、都道府県の土地改良事業担当・地方農政局・農地バンクの窓口に相談すると、本事業を使えるかどうかの判断が進みます。農地バンクの活用そのものをこれから検討する場合は、農地バンクの仕組みとは?メリット・デメリットを解説から読み進めると、全体像をつかんだうえで本事業を検討できます。
キーワード解説
農地中間管理機構(農地バンク)
地域の農用地利用集積等促進計画に沿い、農地の権利移動や貸付を仲介・管理する公的な組織です。出し手・受け手・地域の三者にメリットを持たせながら、農地の集約化を進める拠点になります。
機構関連農地整備事業
農地バンクが関与する農地について、農家負担なしで基盤整備を進める事業です。通常の農地整備事業と比べて国の負担割合が高く、農家負担がゼロになる点が特徴です。
担い手
地域で農業を担う農業者・農業法人などを指します。農地バンクから農地を借り受け、大規模で効率的な経営を行う主体が、集約化の中心になります。
収益性
基盤整備後、対象地域の農業経営の収益性を、完了後5年以内(果樹等は10年以内)に20%以上高めることが本事業の要件です。具体的な算定方法は、土地改良事業の実施要綱・計画書に従います。
まとめ
機構関連農地整備事業は、農地バンクが借り入れ・所有する農地について、農家負担ゼロで区画整理や排水・土層改良などの基盤整備を進められる事業です。国が農家分の費用を上乗せして負担するため農家負担がなくなる一方、15年以上の権利関係、10ヘクタール(中山間・市町村実施は5ヘクタール)以上の面積、収益性20%向上といった要件があります。
集約化を進める地域では、農地バンクの貸付・所有の見通しと整備後の担い手経営をセットで設計すると、本事業を使えるかどうかを判断しやすくなります。