農地を効率的な担い手へ集約する流れのなかで、農地バンクが関与する農地の基盤整備を、農家の申請・同意・費用負担なしに進められるのが機構関連農地整備事業です。費用の割合、対象となる工事、面積と収益性の要件を整理します。
概要
本事業は、農地バンクが借り入れている、または所有している農地等について、農業者の申請・同意・費用負担によらず、都道府県または市町村が行う基盤整備を支援します。担い手への集約化とあわせて、耕作条件の改善まで地域で進めたいときの選択肢になります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 誰が | 実施主体は都道府県または市町村です。対象は農地バンクが借り入れまたは所有する農地等で、個別農家が申請・同意・費用を負う必要はありません。集約化を進める担い手や、地域計画を担う市町村・農地バンクの関係者が検討の中心になります。 |
| 何を | 区画整理、暗渠排水、土層改良、農業用用排水施設など、基盤整備に必要な工事が対象です。費用負担の割合、面積要件、収益性向上の目標が通常の農地整備事業と異なります。 |
| いつまでに | 農地バンクによる借入(または所有)の権利・委託期間は15年以上が要件です。事業完了後は5年以内(果樹等は10年以内)に、対象地域の収益性を20%以上向上させる計画が必要です。 |
| いくら | 通常の農地整備事業では国50%・県27.5%・市町村10%・農業者12.5%ですが、本事業では国が農業者分(12.5%)を上乗せし62.5%となり、農業者負担は0%です。県・市町村の割合は通常と同様です。 |
制度のねらい
農地を効率的な担い手へ集約するため、農地バンクが借り入れている、または所有している農地等について、農業者の申請・同意・費用負担によらず、都道府県または市町村が行う基盤整備を支援します。権利移動や貸付だけでなく、その先の耕作条件を地域で整えるための制度です。
農地バンク経由で農地をまとめて動かす計画と接続し、小さな区画が散在する状態から、大規模で機械作業しやすい区画へ整えるイメージが、施工前後の図で示されています。
費用負担(通常の農地整備事業との違い)
通常の農地整備事業では、国・都道府県・市町村に加え、農業者が12.5%を負担します。機構関連農地整備事業では、国の負担が50%から62.5%へ増え、農業者が負うはずだった12.5%分を国が上乗せするため、農業者負担はゼロになります。都道府県(27.5%)と市町村(10%)の割合は通常と同じです。
担い手側から見ると、基盤整備に伴う自己負担を前提にしなくてよい点が大きな違いです。市町村・農地バンク側からは、農家への説得負担を減らしながら、地域計画に沿った整備を進めやすくなる設計です。
| 負担主体 | 通常の農地整備事業 | 機構関連農地整備事業 |
|---|---|---|
| 国 | 50% | 62.5%(農業者分12.5%を上乗せ) |
| 都道府県 | 27.5% | 27.5% |
| 市町村 | 10% | 10% |
| 農業者 | 12.5% | 0% |
対象となる工事
次のような基盤整備が対象となります。
- 区画整理(小さな区画をまとめ、大規模で作業しやすい区画にする工事)
- 暗渠排水
- 土層改良
- 農業用用排水施設 など
いずれも、集約化後の大規模化・機械化を見据えた整備として位置づけられます。個別の設計や採用可否は、都道府県・市町村の農地整備事業の要綱・実施計画に沿って決まります。
主な実施要件
本事業を実施するには、次の要件を満たす必要があります。
- 権利・借入期間:農地バンクが対象農地を15年以上借り入れていること。令和7年度以降は、農地バンクが所有している農地等も対象に含まれます。
- 面積:対象となる農地等の面積が、平地では10ヘクタール以上、中山間地域または市町村が実施する場合は5ヘクタール以上であること。
- 収益性:事業完了後5年以内(果樹等は10年以内)に、対象地域の収益性を20%以上向上させること。
長期の権利関係と、一定規模以上のまとまり、整備後の経営改善がセットになっています。計画段階で、担い手への転貸や経営体の収益見通しをあわせて整理しておくと、要件の充足を説明しやすくなります。
農地等の面積の考え方
対象面積は、事業実施区域内の農地を合算して判断します。区域内に複数のまとまり(例:a・b・c・dの区画)がある場合でも、全体として平地では10ヘクタール以上、中山間では5ヘクタール以上を満たす必要があります。
各まとまり(区画)単体でも、平地では1.0ヘクタール以上、中山間では0.5ヘクタール以上であることが求められます。細かい区画が点在するだけでは足りず、まとまりとして整備できる規模があるかがポイントです。
検討の進め方
市町村や農地バンクでは、次の順で整理すると検討が進めやすくなります。
- 地域計画・集約化計画で、対象農地が農地バンク経由で15年以上の権利関係になるか(所有を含むか)
- 実施区域内の面積が10ヘクタール(中山間・市町村実施は5ヘクタール)以上か、各区画が1.0ヘクタール(中山間は0.5ヘクタール)以上か
- 区画整理・排水・土層改良など、必要な工事の種類と優先順位
- 完了後5年(果樹等は10年)以内の収益性20%向上を、どの経営体・指標で測るか
手続の詳細・様式・年度ごとの取扱いは、都道府県の土地改良事業担当、地方農政局、農地バンクの窓口で案内があります。農林水産省の農地中間管理機構(農地バンク)のページもあわせてご覧ください。
キーワード解説
農地中間管理機構(農地バンク)
地域の農用地利用集積等促進計画に沿い、農地の権利移動や貸付を仲介・管理する機構です。出し手・受け手・地域の三者にメリットを持たせながら、農地の集約化を進める拠点になります。
機構関連農地整備事業
農地バンクが関与する農地について、農業者負担なしで基盤整備を進める事業です。通常の農地整備事業と比べ、国の負担割合が高く、農業者負担がゼロになる点が特徴です。
担い手
地域で農業を担う農業者・農業法人などを指します。農地バンクから農地を借り受け、大規模・効率的な経営を行う主体が、集約化の中心になります。
収益性(20%向上)
基盤整備後、対象地域の農業経営の収益性を、完了後5年以内(果樹等は10年以内)に20%以上高めることです。具体的な算定方法は、土地改良事業の実施要綱・計画書の記載に従います。
まとめ
機構関連農地整備事業は、農地バンクが借り入れまたは所有する農地について、農家負担ゼロで区画整理や排水・土層改良などの基盤整備を進める制度です。国負担の上乗せにより農業者負担がなくなる一方、15年以上の権利関係、10ヘクタール(中山間・市町村実施は5ヘクタール)以上の面積、収益性20%向上といった要件があります。
集約化を進める地域では、農地バンクの貸付・所有の見通しと、整備後の担い手経営をセットで設計すると、本事業の活用可否が判断しやすくなります。