「農山漁村振興交付金」は、農村の活性化や地域資源の活用に取り組む地方公共団体や民間団体を支える国の交付金です。令和6年度までの「農山漁村発イノベーション対策」は、令和7年度から「地域資源活用価値創出対策」へ名称が変わりました。制度は同じものです。この記事では、対象となる主体、推進事業・整備事業の事業類型に加え、類型ごとの交付率・上限額・事業期間と令和8年度の公募・要望調査のスケジュールまで整理します。詳しい事業内容はスポーク記事へ、採択要件・手続の細目は公示・実施要領・公募要領、都道府県や地方農政局の案内をご覧ください。
概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象となる主体 | 地域資源を活かした活性化・六次産業化・農泊・農福連携などに取り組む地方公共団体、民間団体・地域協議会等、農林漁業者の組織する団体等、都道府県・民間事業者など。類型・事業区分ごとに計画主体・実施主体が異なります。 |
| 支援内容 | 推進事業(計画策定、専門家派遣、農泊、農福連携など)と整備事業(加工・販売施設や滞在施設などの整備)の二本柱。あわせて施策の効果を測る委託調査事業が関連事業に位置づきます。 |
| 交付率と上限額 | 交付率は定額・3/10・1/2等が事業区分ごとに設定されます。上限額は200万円(農福連携型の簡易整備)から4億円(定住促進・交流対策型)まで幅があります。事業ごとの一覧は交付率・上限額・事業期間をご覧ください。 |
| 予算規模 | 令和8年度7,045百万円(前年度7,389百万円)の内数。別途、令和7年度補正予算額2,925百万円の内数も計上。 |
| 詳細はどこで | 農林水産省「農山漁村振興交付金のうち地域資源活用価値創出対策(旧農山漁村発イノベーション対策)」のほか、実施要領・公募要領、都道府県・地方農政局の案内をご覧ください。 |
農山漁村振興交付金(地域資源活用価値創出対策)とは
農山漁村振興交付金は、農山漁村の活性化を後押しする国の交付金です。その中の地域資源活用価値創出対策(旧・農山漁村発イノベーション対策)は、農林水産物をはじめとする多様な地域資源を活用し、多様な主体の参画・連携の下で付加価値を創出することにより、農山漁村における所得の向上と雇用機会の確保を図る「里業」の推進などの取組を支援します。地域の素材を活かして稼ぐ仕組みづくりを、計画づくりから施設整備まで一体で支える枠組みと考えると分かりやすいです。
対策の柱は地域資源活用価値創出推進事業と地域資源活用価値創出整備事業の二つです。推進事業は活動計画づくり・人材育成・専門家派遣・官民連携・農泊・農福連携といったソフト施策が中心で、整備事業は加工・販売施設、交流拠点、滞在施設、農福連携の生産施設などのハード整備が中心です。あわせて、施策の効果を測る委託調査事業が関連事業に位置づきます。事業目標として、地域資源を活用して付加価値額向上に取り組む事業体の割合を68%から78%(令和11年度まで)へ高めることを掲げます。
旧称「農山漁村発イノベーション対策」との対応
この対策は、令和6年度まで「農山漁村発イノベーション対策」という名称で実施され、令和7年度から「地域資源活用価値創出対策」に変わりました。対策名だけでなく、その下の事業名もあわせて改称されています。旧名称で公募情報や要領を探している場合は、次の対応表で現在の名称に読み替えてください。
| 旧名称(令和6年度まで) | 現名称(令和7年度〜) |
|---|---|
| 農山漁村発イノベーション対策 | 地域資源活用価値創出対策 |
| 農山漁村発イノベーション推進事業 | 地域資源活用価値創出推進事業 |
| 農山漁村発イノベーション整備事業 | 地域資源活用価値創出整備事業 |
| 農山漁村発イノベーション推進支援事業 | 地域資源活用・地域連携推進支援事業 |
| 農山漁村発イノベーション中央サポート事業 | 地域資源活用・地域連携中央サポート事業 |
| 農山漁村発イノベーション都道府県サポート事業 | 地域資源活用・地域連携都道府県サポート事業 |
| 農山漁村発イノベーション創出支援型 | 創出支援型 |
推進事業・整備事業という支援の二本柱や、対象の考え方は引き継がれています。旧称で案内・検索されている資料も、現行の地域資源活用価値創出対策として読み替えて差し支えありません。ただし、公募要領や様式は現名称で公表されるため、最新の公募を探すときは現名称で確認してください。
自社が対象になるか
次のような取組を計画する主体は、本対策の対象になり得ます。地域資源を活かして付加価値や雇用を生み出す動きであれば、まず相談する価値があります。
- 地域活性化に向けた活動計画を立てたい、地域づくりを担う人材を育てたい地方公共団体・地域協議会
- 地域資源を使った新商品開発や経営改善に取り組み、専門家の支援を受けたい事業者
- 農泊の受け入れ体制づくりや観光コンテンツの磨き上げに取り組む団体
- 農福連携を地域に広げたい、障害者等が携わる生産施設を整えたい団体
- 加工・販売施設や交流拠点、滞在施設などの施設整備を計画する事業者
どの類型に当てはまるかで計画主体・実施主体や交付率が変わります。ソフト中心の支援は創出支援型など推進事業の解説、施設のハード整備は整備事業の要点で、それぞれ詳しく確認できます。
推進事業の支援メニュー
推進事業は、地域づくりの計画から販路・観光・福祉までソフト面を幅広く支えます。主な支援は次のとおりです。
- ① 地域活性化に向けた活動計画策定、地域づくりを担う農村プロデューサーの育成、農業・農村の情報発信などを支援します。活動計画策定は、農山漁村振興交付金の全対策から活用できます。
- ② 地域資源を活用した新商品開発や経営改善など多様な課題解決に取り組む事業者への専門家派遣、官民共創による地域課題の解決などを支援します。
- ③ 農泊の実施体制の整備や観光コンテンツの磨き上げ、インバウンドによる食関連消費の拡大に向けた「食」に特化した高付加価値なコンテンツ造成などを支援します。
- ④ 障害者等の農林水産業に関する技術の習得、農福連携を地域で広げる取組、全国的な展開に向けた取組、専門人材の育成などを支援します。
このうち農泊の取組は、滞在施設や受け入れ体制の整備とあわせて進めるのが効果的です。具体的な進め方は農泊の推進に関する解説もご覧ください。
整備事業で対象になる施設
整備事業は、推進事業で描いた計画を形にするハード整備を支えます。対象に含まれる施設は次のとおりです。
- ① 農林水産物加工・販売施設、地域間交流拠点等の整備を支援します。
- ② 農泊の推進に必要な古民家等を活用した滞在施設や、「食」の高付加価値化に不可欠な施設等の整備を支援します。
- ③ 農福連携の推進に必要な、障害者等が作業に携わる生産施設等の整備を支援します。
事業類型と事業例の対応
推進事業には地域活性化型・創出支援型・農泊推進型・農福連携型の4類型があり、整備事業には定住促進・交流対策型・産業支援型・農泊推進型・農福連携型があります。類型ごとに、活動計画づくり、直売所・加工施設、官民共創による新商品等の開発、農福連携の技術習得・生産施設、遊休施設を活用した滞在施設、「食」の高付加価値化に不可欠な内装改修、地元食材・景観等を活用した観光コンテンツの造成といった事業例が対応します。採択区分・名称の最新版は公募・要領をご覧ください。
資金の流れと交付率
国から地方公共団体、民間団体・地域協議会等、農林漁業者の組織する団体等、都道府県、都道府県と民間事業者、民間事業者等へと、事業区分ごとに交付がつながります。交付率は定額、3/10、1/2等が並びます。「等」は区分や経費目で変わるため、補助率の細目は実施要領と公募条件によります。
事業ごとの交付率・上限額・事業期間
「交付率は定額・3/10・1/2等」だけでは、実際にいくらまで使えるかが分かりません。ここでは令和8年度の各事業について、交付率・上限額・事業期間を一覧にします。上限額は事業ごとに200万円から4億円までと幅が大きく、ソフト(推進事業)とハード(整備事業)でも桁が変わります。
推進事業(ソフト)の交付率・上限額
| 類型 | 事業 | 交付率 | 上限額 | 事業期間 |
|---|---|---|---|---|
| 地域活性化型 | 活動計画策定事業 | 定額 | 1年目500万円、2年目250万円等 | 2年 |
| 地域活性化型 | 農山漁村関わり創出事業(農村プロデューサーの育成) | 定額 | ― | 1年 |
| 地域活性化型 | 農山漁村情報発信事業 | 定額 | ― | 1年 |
| 創出支援型 | 地域資源活用・地域連携推進支援事業 | 1/2等 | 500万円/事業期間 | 上限2年 |
| 創出支援型 | 中央サポート事業/都道府県サポート事業 | 定額 | ― | 1年 |
| 農泊推進型 | 農泊推進事業 ア 農泊地域創出 | 定額 | 1,000万円(年標準額500万円) | 上限2年 |
| 農泊推進型 | 農泊推進事業 イ 農泊地域経営強化 | 定額 | 500万円(年標準額250万円) | 上限2年 |
| 農泊推進型 | 農泊推進事業 ウ インバウンド食関連消費拡大 | 定額 | 1,500万円(年標準額500万円) | 上限3年 |
| 農泊推進型 | 人材活用事業 | 定額 | 研修生250万円/年、専門家650万円/年 | 農泊推進事業に準ずる |
| 農泊推進型 | 広域ネットワーク推進事業 | 定額 | 250万円等 | 1年 |
| 農福連携型 | 農福連携支援事業 ア 農福連携の取組 | 定額 | 300万円(年標準額150万円)。整備事業を経営支援で取り組む場合は600万円(年標準額300万円)、作業マニュアルの作成等に取り組む場合は初年度40万円を加算可能 | 上限2年 |
| 農福連携型 | 農福連携支援事業 イ 地域協議会の設立・体制整備 | 定額 | 600万円(年標準額300万円) | 上限2年 |
| 農福連携型 | 普及啓発・専門人材育成推進対策事業 | 定額 | 500万円等 | 1年 |
活動計画策定事業は、条件不利地の場合や専門的スキルを活用する場合に、事業期間・交付期間の延長と上限額の加算措置があります。農福連携型の地域協議会の設立・体制整備は、構成員に市町村を含むことが条件です。
整備事業(ハード)の交付率・上限額
| 類型 | 交付率 | 上限額 | 事業期間 | 実施主体と前提になる計画 |
|---|---|---|---|---|
| 定住促進・交流対策型 | 1/2等 | 4億円 | 上限3年 | 計画主体は都道府県・市町村、実施主体は都道府県・市町村・農林漁業者団体等。農山漁村活性化法に基づく活性化計画の作成が必要 |
| 産業支援型 | 3/10等 | 1億円等 | 1年 | 実施主体は農林漁業者団体・中小企業者。①六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画 ②農商工等連携促進法に基づく農商工等連携事業計画 ③都道府県または市町村が策定する戦略のいずれかに基づく整備事業計画が必要 |
| 農泊推進型① 滞在施設・飲食施設・体験交流施設等 | 1/2 | 2,500万円/事業期間 | 上限2年 | 中核法人等。遊休資産の改修、避難所等としての活用、複数施設の整備を行う場合は上限額を引上げ |
| 農泊推進型② 農家民泊等の小規模改修 | 1/2 | 1,000万円/経営者 かつ 5,000万円/地域 | 1年 | 農家民泊経営者等。農家民宿への転換、避難所等としての活用を行う場合は上限額を引上げ |
| 農福連携型 生産・加工・販売施設等 | 1/2 | 高度経営1,000万円/簡易整備200万円/経営支援2,500万円/介護・機能維持400万円 | 上限2年 | 農業法人・社会福祉法人・民間企業等 |
| 再生可能エネルギー 発電・蓄電・給電設備 | 上記の施設整備に準じます | 定住促進・交流対策型または産業支援型の施設整備と同時に設置する場合に加え、既存の活性化・6次化施設に追加して設置する場合も対象 | ||
金額は令和8年度予算の資料に基づく標準的な値です。「等」が付く交付率や上限額は、経費区分や取組内容で変わります。応募前に、その年度の実施要領・公募要領で必ず確認してください。
予算規模
令和8年度の予算額は7,045百万円(前年度7,389百万円)の内数です。あわせて令和7年度補正予算額2,925百万円の内数も計上されています。これらは農山漁村振興交付金全体の中の内数で、対策ごとの配分は予算の執行と公募の状況によります。
公募と要望調査のスケジュール
この対策は、事業によって入口が二つに分かれます。この違いを知らずに公募を待っていると、要望調査の締切を逃してしまいます。
- 公募ルート:地域活性化型・農泊推進型・農福連携型は、農林水産省が公募を行います。提案は地方農政局等またはeMAFF(農林水産省共通申請サービス)を通じて提出します。
- 要望調査ルート:創出支援型や整備事業(ハード)は、まず都道府県への事前相談・要望調査が入口になります。年度の前半で締め切られることが多いため、前年度のうちに都道府県・市町村へ相談しておくのが実務です。
公募ルートの令和8年度の実績は次のとおりです。
| 回 | 公募期間 | 対象 |
|---|---|---|
| 1次公募 | 令和8年1月23日〜2月12日 17時(必着) | 地域活性化型(活動計画策定事業)、農泊推進型、農福連携型 |
| 全国単位 | 令和8年5月11日〜5月29日 17時(必着) | 地域活性化型・農福連携型のうち全国単位の取組提案者向け事業 |
| 2次(追加)公募 | 令和8年6月15日〜7月2日 17時(必着) | 1次と同じ3類型(全国単位の取組提案者向け事業を除く) |
これは令和8年度の実績であり、毎年度この日程になるとは限りません。年明けの1次公募を軸に、初夏に追加公募が行われた年度がある、という目安として使ってください。最新の公募は農林水産省の公募情報ページで確認します。
よくある質問
農山漁村発イノベーション対策と地域資源活用価値創出対策は違う制度ですか
同じ制度です。「農山漁村発イノベーション対策」は令和6年度までの名称で、令和7年度から「地域資源活用価値創出対策」に変わりました。推進事業・整備事業という支援の柱や対象の考え方は引き継がれています。旧称で案内・検索されている資料も現行の対策として読み替えて差し支えありませんが、公募要領・様式は現名称で公表されます。事業名の対応は旧称との対応表をご覧ください。
上限額はいくらですか
事業によって200万円から4億円まで幅があります。最も小さいのは農福連携型の整備事業のうち簡易整備で200万円、最も大きいのは整備事業の定住促進・交流対策型で4億円です。ソフト(推進事業)は創出支援型が500万円/事業期間、農泊地域創出が1,000万円、インバウンド食関連消費拡大が1,500万円などです。事業ごとの一覧は事業ごとの交付率・上限額・事業期間で確認できます。
いつ公募がありますか
令和8年度は、1次公募が1月23日〜2月12日、全国単位の取組向けが5月11日〜5月29日、2次(追加)公募が6月15日〜7月2日に行われました。ただし公募があるのは地域活性化型・農泊推進型・農福連携型で、創出支援型と整備事業(ハード)は都道府県の要望調査が入口になり、年度前半で締め切られます。詳しくは公募と要望調査のスケジュールをご覧ください。
申請の前に作っておく計画はありますか
整備事業では前提になる計画があります。定住促進・交流対策型は農山漁村活性化法に基づく活性化計画の作成が必要です。産業支援型は、六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画、農商工等連携促進法に基づく農商工等連携事業計画、都道府県または市町村が策定する戦略のいずれかに基づく整備事業計画が必要です。計画づくりには時間がかかるため、施設整備を考えている場合は早めに着手してください。
対象になるのはどんな事業者ですか
地域資源を活かした活性化や六次産業化、農泊、農福連携などに取り組む地方公共団体、民間団体・地域協議会等、農林漁業者の組織する団体等、都道府県・民間事業者などが対象です。類型や事業区分ごとに計画主体・実施主体が異なるため、自社の取組がどの類型に当てはまるかを先に確認すると進めやすいです。
補助率はどれくらいですか
代表的な交付率は、推進事業のソフト施策が定額、創出支援型の推進支援事業が1/2等、整備事業では定住促進・交流対策型が1/2等、産業支援型が3/10等、農泊推進型・農福連携型の整備が1/2です。「等」は経費区分や取組内容で変わるため、細目は実施要領と公募条件によります。事業ごとの一覧は事業ごとの交付率・上限額・事業期間、整備事業の詳細は整備事業の要点をご覧ください。
推進事業と整備事業はどう違いますか
推進事業は活動計画づくり・人材育成・専門家派遣・農泊・農福連携といったソフト施策が中心です。整備事業は加工・販売施設、交流拠点、滞在施設、農福連携の生産施設などのハード整備が中心です。計画づくりを推進事業で、施設づくりを整備事業で支える関係と理解すると整理しやすいです。詳しくは推進事業の解説で確認できます。
事業目標はありますか
地域資源を活用して付加価値額向上に取り組む事業体の割合を、68%から78%(令和11年度まで)へ高めることを掲げています。指標の定義や測定方法、達成の評価は実施要領によります。
六次産業化とどう関係しますか
本対策は、地域資源を活用して付加価値を生み出す六次産業化の考え方と重なります。基礎となる考え方は地域資源活用価値創出(六次産業化)の解説で整理しています。本対策はその実践を、計画から施設整備まで交付金で後押しする位置づけです。
どこに申し込みますか
採択要件・手続の細目は公示・実施要領・公募要領に基づきます。具体的な相談・申請の窓口は、都道府県や地方農政局の案内、農林水産省の制度ページで確認します。事業類型によって窓口が異なるため、まず取り組みたい類型を決めてから問い合わせると進めやすいです。
次の一歩
まず、自社の取組がソフト中心(推進事業)かハード整備(整備事業)かを切り分け、当てはまる類型を見極めます。次に、農林水産省の制度ページと最新の公募要領・実施要領をご覧のうえ、都道府県または地方農政局に相談します。推進事業の中身は創出支援型など推進事業の解説、施設整備は整備事業の要点で、それぞれ準備を進めてください。