女性は農業と地域の活性化において重要な役割を担っています。農業の発展と、誰もが自分らしく活躍できる農業の実現に向けて、女性が働きやすく、農業経営等に参画しやすい環境を整備していくことが求められます。本記事では、令和6年度食料・農業・農村白書のトピックス「女性活躍の推進」に沿い、最近5年間の動きを中心に整理します。

概要

項目 内容
誰が 主に女性農業者(基幹的従事者・経営参画者・常雇い労働者)。若い世代向けには大学生・高校生(みどり戦略学生チャレンジ)、就農を目指すプレメンバー(農業女子プロジェクト)も対象です。国は農林水産省が、都道府県・JA・関係団体と連携して推進します。
何を 女性の農業参画・経営参画の促進、農業女子プロジェクトのネットワーク拡大、働きやすい環境整備、経営参画による販売力強化、みどり戦略学生チャレンジによる若い世代への環境配慮型農業の普及などです。
いつまでに 女性活躍の推進は継続的な取組です。令和元(2019)年度白書で輝く女性農業者を初特集、令和2(2020)年度に検討会で具体方策を議論。令和6(2024)年度時点の数値・事例が白書の中心論点です。
いくら 本トピックスは補助金の交付制度ではなく動向の整理です。女性の経営参画がある個人経営体の農産物販売額平均は令和2(2020)年1,698.5万円(参画なし1,201.4万円)、2015〜2020年の伸び率は18.3%(参画なし2.0%)と、参画の経済効果が数値化されています。

女性活躍推進の背景

令和元(2019)年度食料・農業・農村白書では、自ら経営に参画し、ビジネスチャンスを見出しながら輝く女性農業者の姿を初めて特集として取り上げました。令和2(2020)年度には「女性の農業における活躍推進に向けた検討会」で、さらなる女性の活躍に向けた具体的方策について検討が行われています。

女性の基幹的農業従事者の割合が減少傾向にある中、女性が活躍できる農業や暮らしやすい農村を実現することは、女性農業者のためだけではなく、農業・農村に新たな視点や活力をもたらし、持続的な発展にとってますます重要になっています。

女性の基幹的農業従事者数の推移(1990〜2024年)。431千人で前年比4.5%減、全体の38.7%。若い世代の150日以上従事者は約1万人増。みどり戦略学生チャレンジ第1回の受賞校。
令和6年度 食料・農業・農村白書「女性活躍の推進」(トピックス3・1ページ目)

基幹的農業従事者の動向

令和6(2024)年における女性の基幹的農業従事者数は、前年に比べ4.5%減少し43万1千人となりました。女性の基幹的農業従事者は全体の38.7%を占め、引き続き重要な担い手ですが、女性の占める割合は減少傾向にあります。

平成12(2000)年からの20年間では、女性の割合は年平均で0.39ポイント低下していましたが、令和2(2020)年以降は年平均で0.24ポイントの低下にとどまっています。

一方、農林業センサスを活かした分析では、農業に年間150日以上従事している女性農業者数を見ると、平成27(2015)年に15〜59歳であった従事者数に対し、5歳加えた令和2(2020)年の20〜64歳の従事者数は約1万人増加しています。全体の増減に占める割合は低いものの、比較的若い世代の女性の活躍には明るい兆しが見え始めています。

みどり戦略学生チャレンジ

環境と調和のとれた食料システムに対する理解と関心を深めるには、将来を担う若い世代に対する広報活動の充実も必要です。農林水産省は令和6(2024)年度から、若い世代の環境に配慮した取組を促すため、大学生や高校生等によるみどり戦略学生チャレンジ(全国版)を実施しています。

第1回大会には、高校の部で221件、大学・専門学校の部で181件の参加登録があり、各部門の最も優れた取組として、高校の部では宮城県農業高等学校(取組名「Re:温故知新」)、大学・専門学校の部では独立行政法人国立高等専門学校機構沖縄工業高等専門学校(取組名「データと発酵をフル活用する循環型農業の実践」)が農林水産大臣賞を受賞しました。

農業女子プロジェクト

農業女子プロジェクトは、社会全体での女性農業者の存在感を高め、女性農業者自身の意識改革や経営力発展を促すとともに、職業としての農業を選択する若手女性の増加を目指して多様な活動を展開しています。

平成25(2013)年に設立された同プロジェクトは、令和6(2024)年には1,000人を超えるメンバーによる地域・世代を超えた全国ネットワークに成長し、企業との協同による商品・サービスの開発や、未来の農業女子を育む活動など多彩な取組を実施しています。

農業女子プロジェクトの更なる活性化。新潟県小千谷市の株式会社農プロデュース リッツの事例。代表取締役新谷梨恵子氏の6次産業化・農家レストラン・研修生受入れ。女性常雇い7万3千人(46.1%)。経営参画の有無別の農産物販売額と伸び率。
令和6年度 食料・農業・農村白書「女性活躍の推進」(トピックス3・2ページ目)

事例:株式会社農プロデュース リッツ(新潟県小千谷市)

新潟県小千谷市の株式会社農プロデュース リッツでは、農産物の生産・加工・販売までをプロデュースする事業を展開しています。代表取締役の新谷梨恵子氏は、さつまいもを通じて農業界全体を発展させたいと考え、農家レストランの経営や6次産業化プランナーとして農業者への助言等を行っています。

農家レストラン「さつまいも農カフェきらら」ではさつまいもを活かした料理等を提供し、さつまいもの上にソフトクリームを乗せた代表商品は各種メディアに取り上げられ、累計3万個以上販売されました。店内のイベントスペースを貸し出し、主な利用客である子育て中の女性向けイベントの開催にも協力しています。

6次産業化プランナーとして農業者からの相談を受け、商品開発や販路拡大について実践できる内容となるよう配慮しながら助言を行っています。規格外野菜の受託加工や農家への研修生の派遣など、地域の活性化にも取り組んでいます。「次世代の子供の夢が未来の現実になる」という考えから、学生を始めとした研修生の積極的な受入れや、女性が働きやすい職場環境の整備も進めています。

農業女子プロジェクトの事例紹介(新谷梨恵子氏・農家レストラン・ベビーマッサージの会)と、女性常雇い数・経営参画別の農産物販売額・伸び率のグラフ。
令和6年度 食料・農業・農村白書「女性活躍の推進」(トピックス3・3ページ目)

常雇い労働者と経営参画の効果

令和6(2024)年の農業経営体における女性の常雇い数は7万3千人で、全体の46.1%を占めています。

農林業センサスを活かした分析によると、女性が農業経営に参画している個人経営体は、参画していない個人経営体に比べ農産物販売金額が高く、平成27(2015)年から令和2(2020)年にかけて販売金額の伸び率も高くなっています。

指標 女性が経営参画していない個人経営体 女性が経営参画している個人経営体
農産物販売金額(令和2年・1経営体平均) 1,201.4万円 1,698.5万円
販売金額の伸び率(2015〜2020年・1経営体平均) 2.0% 18.3%

女性の経営参画は、経営に新たな視点を取り込むことにつながり、消費に関する意思決定の中心を担う女性のニーズを的確に捉え、より効果的な対応ができる効果があります。今後の農業の発展、地域経済の活性化のためには、多彩な能力を持つ女性農業者が力を発揮できる環境を整えることが必要です。

※「女性が農業経営に参画している個人経営体」とは、65歳未満で150日以上農業に従事し、経営主が女性または経営方針の決定に参画する女性がいる個人経営体を指します。

プロジェクトの更なる活性化

企業との協同により開発された、女性が使いやすい農業機械等は、ジェンダード・イノベーションの観点からも注目を集めており、女性に限らず新規就農者や高齢農業者など多くの方が使いやすいものとなっています。

令和6(2024)年度は、農業に関する実践的な知識や技術等を学べるオンラインセミナーNEXTラボ2024を農業女子メンバーと協同して企画・運営しました。輸出セミナーを契機に「GFP×農業女子PJ輸出伴走支援プログラム」がスタートし、輸出実績のある農業女子メンバーがメンターとなり、チームで輸出の実践に取り組みました。

新たに、就農に向けて教育機関等に在学中または研修中の女性もプレメンバーとして共に活動できるようにし、プロジェクト活動の更なる活性化を図っています。知見・経験を有するメンバーが後輩に伝える場を積極的に設けるなど、成長と新たな取組の実践につなげていく方針です。

GFP×農業女子PJ輸出伴走支援プログラムのキックオフ、NEXTラボ2024参加メンバー、農業女子プロジェクトの更なる活性化に関する取組。
令和6年度 食料・農業・農村白書「女性活躍の推進」(トピックス3・4ページ目)

国の今後の取組

農林水産省では、農業女子プロジェクトのほか、農村地域における意識改革、女性が働きやすい環境整備、女性グループ活動の活性化、地域をリードする女性農業経営者の育成等を進めており、引き続き地方公共団体や関係団体と連携し、女性の活躍推進に取り組む方針です。

キーワード解説

基幹的農業従事者

15歳以上の世帯員のうち、ふだん仕事として主に自営農業に従事している者を指します。農業担い手の規模を測る基本的な指標の一つです。

農業女子プロジェクト

農林水産省が推進する、女性農業者のネットワークづくりと意識改革・経営力向上、若手女性の就農促進を目的としたプロジェクトです。推進会議資料や専用サイトで活動内容が公開されています。

女性の経営参画

本白書の分析では、65歳未満で150日以上農業に従事し、経営主が女性または経営方針の決定に参画する女性がいる個人経営体を指します。参画がある経営体は、販売額・伸び率ともに高い傾向があります。

みどり戦略学生チャレンジ

みどりの食料システム戦略に基づいた活動を、大学生・高校生等が行い、優れた取組を表彰する全国版の取組です。令和6(2024)年度から実施されています。

6次産業化

農産物の生産に加え、加工・販売・体験提供などを一体化し、付加価値を高める取組です。6次産業化プランナーは、その計画づくりや実践を支援する専門家です。

ジェンダード・イノベーション

科学や技術に性差の視点を取り込むことによって創出されるイノベーションを指します。女性が使いやすい農業機械の開発などに関連する考え方です。