親から農業経営を引き継ぐ後継者や、離農予定者から経営資源を引き継いで新規参入する方は、機械・施設の修繕・導入や法人化の費用に国費上限600万円の補助を受けられます。令和7年度補正予算「新規就農者確保緊急円滑化対策」のうち世代交代円滑化タイプの対象者・補助額・要件・申請の流れを整理します。受付時期や様式の最新情報は、市町村・都道府県の農政部局や農林水産省の一次情報をご覧ください。

概要

項目 内容
誰が 独立・自営就農する49歳以下の認定新規就農者認定農業者。令和5年度以降に農業経営を開始した個人・法人で、親元就農も第三者継承も対象です。
何を 機械・施設等の修繕・移設・撤去、法人化・専門家活用などの経営移譲の取組、機械・施設・家畜の導入や果樹・茶の新植・改植に補助を受けられます。
補助額 国費上限600万円。補助率は取組により国3分の1以内+都道府県6分の1、または国2分の1以内+都道府県4分の1です。
申請先 市町村です。受付・要望調査の時期は市町村ごとに異なります。親・離農予定者や市町村・JAとの共同申請もできます。
詳しくは 市町村・都道府県の農政部局、または地方農政局等の経営支援担当に相談しましょう。

対象となる方は

世代交代円滑化タイプの対象者・支援内容・補助額の概要
世代交代円滑化タイプの対象者・支援内容・補助額(出典:農林水産省「新規就農者確保緊急円滑化対策のうち世代交代円滑化タイプの概要」

対象は、独立・自営就農する49歳以下の認定新規就農者認定農業者です。親の経営を引き継ぐ親元就農も、親族以外の離農予定者から機械・施設などを引き継ぐ第三者継承も、同じ枠組みで補助を受けられます。

就農の時期には条件があります。令和5年度以降に農業経営を開始した個人・法人が対象です。法人の場合は、経営の主宰権を持つ役員に、就農時の年齢が原則50歳未満で、令和5年度以降に経営を開始した人が含まれている必要があります。加えて、地域計画に位置付けられているか、位置付けられることが確実と見込まれることが前提です。

農業大学校やトレーニングファームで研修中の方も、移譲者などとの共同申請を行い、事業実施年度の翌年度までに経営を開始して要件を満たせば、経営開始前から活用できます。

どれだけ受けられるか

補助の上限は国費600万円です。経営資源の有効利用・経営移譲・経営発展という三つの取組の合計に対する上限で、都道府県の支援と組み合わせる仕組みになっています。都道府県支援分の2倍を国が支援します。補助率は次のとおりです。

  • 経営資源の有効利用・円滑な経営移譲の取組:国3分の1以内+都道府県6分の1
  • 機械・施設等の導入による経営発展の取組:国2分の1以内+都道府県4分の1

事業費には下限があります。修繕・移設・撤去などの経営資源の有効利用は事業費25万円以上の取組、機械・施設等の導入は事業費50万円以上のものが対象です。農業経営以外の用途に容易に使える汎用性の高い機械・施設や、経営移譲者等が所有する資産の購入・賃貸借に係る経費は補助を受けられません。

何に使えるか

支援内容は三つの取組に分かれます。継承した古いハウスの修繕から、継承を機にした法人化、トラクターの新規導入まで、経営継承の前後で発生する費用を幅広くカバーします。

① 経営資源の有効利用に向けた取組

親や離農予定者から機械・施設等の経営資源を継承・利用するために必要となる、修繕・移設・撤去などの経費です。老朽化したハウスの修繕や、使わない古い設備の撤去に充てられます。

② 円滑な経営移譲に向けた取組

法人化や専門家の活用など、農業経営の移譲に向けた取組の経費です。定款の認証料などの法人設立費用、税理士・中小企業診断士といった専門家への謝金や旅費が対象になります。経営継承に合わせて法人化する場合の費用を、この区分でまかなえます。

③ 経営発展に向けた取組

機械・施設や家畜の導入、果樹・茶の新植・改植、機械リースなどの経費です。継承後の規模拡大や作目転換に向けた初期投資に使えます。この取組を実施できるのは後継者側だけで、経営移譲者等は実施できません。

主な要件

補助を受けるには、対象者の条件に加えて次の要件を満たす必要があります。

  • 将来像が明確化された地域計画、または目標集積率が現状集積率を上回っている地域計画に位置付けられていること。位置付けられることが確実と見込まれる場合も含みます。
  • 青色申告を行うこと。
  • 機械・施設の取得費用等について、金融機関から融資を受けていること。
  • 経営開始資金や経営発展支援事業等との併用をしないこと。

とくに融資要件は見落としがちです。自己資金だけで機械・施設を導入する計画では要件を満たせないため、日本政策金融公庫の青年等就農資金など、資金調達の計画とセットで準備しましょう。

親元就農・第三者継承での使い方

親元就農と第三者継承それぞれの共同申請による事業の実施例
共同申請による事業の実施例(出典:農林水産省「新規就農者確保緊急円滑化対策のうち世代交代円滑化タイプの概要」

この事業の特徴は、引き継ぐ側と引き継がせる側が一緒に申請できる点です。経営資源の有効利用または円滑な経営移譲の取組を実施する場合、経営移譲者等との共同申請ができます。市町村やJAなど、地域サポート計画に位置付けられた関係機関との共同申請も可能です。

親元就農では、後継者が農業大学校等で研修を受けている段階から、親と継承に向けた話し合いを進め、共同申請で法人設立や機械・施設の修繕・導入に取り組み、経営継承と法人化に合わせて経営を開始する、という流れが想定されています。

第三者継承では、市町村・JA等が離農者や遊休施設を調査してマッチングし、就農希望者が離農予定者と共同申請したうえで、機械・施設の修繕・移設や老朽設備の撤去を行い、離農者の経営資源を活用して経営を開始できます。

共同申請には期限付きのルールがあります。経営移譲者等が整備した機械・施設等は、事業実施年度の3年後の年度までに新規就農者へ譲渡しなければなりません。農地などの不動産の場合は貸付けでも認められます。

成果目標と採択の仕組み

成果目標の内容とポイント制による採択の加点項目一覧
成果目標とポイント制の加点項目(出典:農林水産省「新規就農者確保緊急円滑化対策のうち世代交代円滑化タイプの概要」

補助を受けた後は、事業実施年度の3年後の年度までに二つの成果目標を達成する必要があります。一つは農業経営改善計画の認定、つまり認定農業者になることです。もう一つは経営規模の拡大で、将来像が明確化された地域計画に位置付けられる場合は事業実施年度より増加していること、目標集積率が現状を上回る地域計画の場合は120%以上(地域平均を上回る規模で経営している場合などは110%以上)が求められます。経営規模は作付面積・飼養頭数・農業所得・販売額のいずれかで測ります。

採択はポイント制です。応募者の取組をポイント化し、高い人から順に採択されます。加点項目と最大ポイントは次のとおりです。

加点項目 最大ポイント
研修(1年・概ね1,200時間以上の研修、経営研修の上乗せ)3
サポート体制(地域サポート計画の策定、普及指導の対象選定など)3
経営管理の合理化(農作業記録、GAP認証等の取得)3
経営の発展(成果目標の基準を上回る規模拡大)5
法人化(実施年度内の法人化は5、目標年度までなら3)5
家族経営協定の書面締結1
農業版事業継続計画(BCP)の策定1
データを活用した農業の実践2
みどりの食料システム法に基づく計画の認定2

合計は最大25ポイントで、別途、都道府県ごとに設定される加算ポイントがあります。法人化と規模拡大の配点が大きいため、経営継承を機に法人化を予定している方は採択されやすくなります。

申請の流れ

補助金は国から全国農業委員会ネットワーク機構、都道府県を経て市町村に交付され、市町村を通じて新規就農者へ支援が届く仕組みです。窓口は市町村で、多くの市町村が活用希望者への要望調査を行っています。受付時期は市町村ごとに異なるため、活用を考えたら早めに市町村の農政担当窓口へ相談しましょう。制度全体の内容は、都道府県の農政部局や地方農政局等の経営支援担当でも案内を受けられます。

なお、農林水産省の予算ページや市町村の案内では、この支援は世代交代・初期投資促進事業の名称で掲載されています。自治体のサイトで受付時期や様式を探すときは、両方の名称を手がかりにしましょう。

予算は令和7年度補正予算額54億1,600万円の内数です。ポイント制で採択される競争型の事業のため、研修やサポート体制などの加点項目を早めに積み上げておくと有利です。

経営継承・発展等支援事業は令和7年度で終了

「農業 経営継承 補助金」で広く知られていた経営継承・発展等支援事業は、令和3〜7年度にかけて実施され、令和7年度で終了しました。地域の担い手である先代事業者から経営の主宰権の移譲を受けた後継者が、経営継承後の経営発展計画に取り組む場合に、国と市町村が2分の1ずつ負担して最大100万円を交付する制度でしたが、現在は新規の募集が行われていません。

項目 経営継承・発展等支援事業(終了) 世代交代円滑化タイプ
補助上限100万円国費600万円
年齢要件なし49歳以下(法人は原則50歳未満で経営を開始した役員が必要)
対象者先代事業者から経営の主宰権の移譲を受けた後継者等令和5年度以降に農業経営を開始した認定新規就農者認定農業者(親元就農・第三者継承とも対象)
費用の負担国と市町村が2分の1ずつ国3分の1以内+都道府県6分の1、または国2分の1以内+都道府県4分の1
採択方式ポイント制(最大25ポイント+都道府県の加算)
現在の状況令和3〜7年度で終了し、新規募集なし令和7年度補正予算で措置(受付時期は市町村ごと)

令和8年度に経営継承の支援を探すなら、本記事の世代交代円滑化タイプが中心的な選択肢になります。旧事業と比べて国費上限は100万円から600万円へ大きく引き上げられた一方、対象は49歳以下・令和5年度以降の経営開始者に絞られ、融資要件やポイント制採択が加わりました。旧事業の対象だった方でも新事業の要件は満たさない場合があるため、自分の就農時期・年齢で対象になるかを最初に確かめましょう。

親元就農で併せて検討できる支援

就農直後の資金繰りには、認定新規就農者が経営開始から最大3年間、年間165万円(月13.75万円)の交付を受けられる経営開始資金があります。ただし世代交代円滑化タイプとは併用できません。機械・施設への補助と経営開始後の資金のどちらが自分の計画に合うか、市町村に相談して選びましょう。

市町村・都道府県が独自の親元就農支援を設けている場合もあります。内容や金額は自治体ごとに異なるため、就農予定地の農政担当窓口で最新の募集状況を確かめましょう。

親から農地を引き継ぐ場合は、要件を満たすと贈与税・相続税の納税が猶予される特例(農地等の納税猶予制度)も関わります。適用できるかは税務署や税理士に相談しましょう。

キーワード解説

世代交代・初期投資促進事業

令和7年度補正予算で世代交代円滑化タイプを措置した事業の名称です。出典資料の対策名「新規就農者確保緊急円滑化対策のうち世代交代円滑化タイプ」と同じ支援を指し、農林水産省の予算ページでは「世代交代・初期投資促進事業のうち世代交代円滑化タイプ」として掲載されています。市町村の案内でもこの事業名が使われることがあるため、自治体のサイトを探すときの手がかりになります。

地域計画

農業経営基盤強化促進法に基づき市町村が策定する、地域農業の将来の在り方を定めた計画です。おおむね10年後に誰がどの農地を耕作するかを目標地図で示します。世代交代円滑化タイプでは、将来像が明確化された地域計画(農地の目標集積率が8割以上等の地域)、または目標集積率が現状集積率を上回る地域計画への位置付けが要件です。

認定新規就農者

青年等就農計画を作成し、市町村の認定を受けた新規就農者です。原則18歳以上45歳未満(一定の知識・技能がある場合は65歳未満)の青年等が対象で、認定を受けると本事業のほか青年等就農資金などの支援も受けられます。

認定農業者

農業経営改善計画を作成し、市町村等の認定を受けた農業者です。世代交代円滑化タイプでは、事業実施年度の3年後の年度までにこの認定を受けることが成果目標の一つになっています。

第三者継承

親族ではない第三者が、離農予定者などから機械・施設・農地・技術といった経営資源を引き継いで農業経営を始める継承の形です。ゼロからの新規参入に比べて初期投資を抑えられ、地域の産地や取引先も引き継ぎやすい方法として広がりつつあります。

地域サポート計画

市町村・JA・農業委員会・普及指導センターなどの関係機関が、新規就農者を地域ぐるみで支援する体制と役割分担を定めた計画です。この計画に位置付けられた関係機関は、世代交代円滑化タイプの共同申請に加われます。

経営発展支援事業

新規就農者育成総合対策のうち、就農後の経営発展に必要な機械・施設等の導入を支援する事業です。都道府県支援分の2倍を国が支援する点は共通ですが、世代交代円滑化タイプとの併用はできません。どちらを使うかは市町村・都道府県と相談して選びましょう。

よくある質問

経営継承・発展等支援事業(上限100万円)はもう申請できませんか

新規の募集は行われていません。同事業は令和3〜7年度にかけて実施され、令和7年度で終了しました。令和8年度に経営継承の初期費用への補助を探す場合は、本記事の世代交代円滑化タイプが中心的な選択肢です。

50歳以上でも使える支援はありますか

世代交代円滑化タイプは49歳以下の認定新規就農者認定農業者が対象のため、50歳以上で就農した方は利用できません。年齢要件のなかった経営継承・発展等支援事業も新規募集を終えています。市町村・都道府県が独自の後継者支援を設けている場合があるため、就農予定地の農政担当窓口に相談しましょう。

親の機械をそのまま買い取る費用は対象になりますか

対象になりません。経営移譲者等が所有する資産の購入・賃貸借に係る経費は補助の対象外です。親から引き継ぐ機械・施設の修繕・移設や老朽設備の撤去、新たな機械・施設の導入であれば補助を受けられます。

申請はいつまでにすればよいですか

全国一律の締切はありません。窓口となる市町村が活用希望者への要望調査を行っており、受付時期は市町村ごとに異なります。ポイント制で採択される競争型の事業のため、活用を考えた時点で早めに市町村の農政担当窓口へ相談し、研修やサポート体制などの加点項目の準備も進めましょう。