中東情勢の緊迫化を受け、農林水産業・食品産業の資材調達では、川上の供給と川中・川下の届け出のずれが課題になっています。本記事では、2026年5月時点で農林水産省が取っている対応と、食品事業者・生産者に求められる対応を分けて整理します。根拠は2026年5月21日の関係閣僚会議第8回の公表内容です。

概要

項目 内容
背景 中東情勢の緊迫化に伴うナフサ由来資材の需給変動。供給不足に加え、偏在・目詰まり・先回り調達が現場のリスクになります。
農水省 流通実態把握、食品容器包装等情報交換会の設置、パン・菓子向け聞き取り強化、畜産・林業資材への要請拡大(経済産業省と連携)。
事業者 調達不安の早めの相談、パッケージ変更の慎重な判断、受発注の平準化への協力、省庁ポータルでの最新情報の確認。
詳細はどこで 農林水産省「中東情勢関連対策ポータル」、内閣官房「農林水産業・食品産業関連資材の確保に向けた取組状況に関する資料」(関係閣僚会議第8回)。
中東情勢を踏まえた農林水産・食品産業の対応。流通実態把握、食品容器包装の情報交換会設置、パン・菓子店の調査強化、畜産・林業資材への要請の四本柱。
農林水産省・内閣官房「農林水産業・食品産業関連資材の確保に向けた取組状況に関する資料」(中東情勢を踏まえた農林水産業・食品産業分野における対応状況)

農林水産省の対応(全体)

農林水産省は、サプライチェーンで使われる多種多様な資材について、流通構造等の実態把握を実施しています。実態把握で得られた情報や相談窓口に寄せられた情報に基づき、経済産業省と連携して、供給の偏りと目詰まりの解消に取り組んでいます。

川上では前年並みの供給が確認できていても、川中から川下への流通過程で目詰まりが生じる場合があるため、農林水産省は川中・川下段階へのアプローチを強化しています。

農林水産省の対応:食品容器包装と情報収集・発信

消費者に身近な食品容器包装では、パッケージ印刷に用いるインク・溶剤の供給見通しは現時点で立っています。現行パッケージのままで大きな支障は出ていない一方、企業判断による予防的なデザイン変更も見られます。

農林水産省は、これまで経済産業省と連携して相談窓口の設置や安定供給への協力要請を進めてきました。食品事業者が事業を継続しやすくするため、次の四つで情報収集・発信体制を強化します。

  • 食品製造・流通・小売・外食など各業界団体と両省庁による食品容器包装等情報交換会(オール食品産業情報交換会)を設置する。月1~2回程度、実務者レベルでナフサ由来の化学製品の需給見通しと調達状況を共有する。
  • 食品産業関係団体の総会等で、省幹部が経営陣に需給見通しと対応状況を説明し、相談窓口への早めの相談を呼びかける。
  • 経済産業省がメーカー・団体に、安定製造・供給見通しの情報を食品産業へ共有するよう依頼する。
  • 団体未加入の事業者には、日本商工会議所・経済同友会など他省庁所管団体のルートでも情報収集を行う。
食品容器包装等情報交換会の設置、団体総会での省幹部説明、安定製造・供給見通し情報の発信、団体未加入事業者へのアプローチの四つの取組。
情報収集・発信体制の強化(食品容器包装等情報交換会と四つの取組)

農林水産省の対応:パン・菓子の川中・川下の目詰まり

パン・菓子では、地域に密着した中小規模の製造・販売事業者が多く存在します。農林水産省は、大手メーカーへの調査に加え、そうした事業者の包装資材の供給実態を把握する聞き取りを、地方農政局と地方経済産業局が連携して強化します。調査により目詰まり箇所を特定し、解消を図ります。

流通は、原料メーカー、フィルムメーカー、販売・印刷会社を経て店舗に至ります。地方農政局が実態を把握し、地方経産局・農政局が連携して目詰まりの特定と解消に当たります。

パン・菓子の包装資材が原料メーカー、フィルムメーカー、販売・印刷会社を経て販売店に届く流通図。地方農政局の実態把握と、地方経産局・農政局による目詰まり解消。
パン・菓子等の包装資材の流通過程と、地方農政局・地方経済産業局の連携

農林水産省の対応:農林関係資材への要請の拡大

農林水産省は、プラスチック製農業資材や石油由来の食品容器包装等について、経済産業省と連携し、次の働きかけを実施してきました。

  • 原料メーカーへ、原料の安定供給のための働きかけ
  • 製造・流通事業者等へ、調達支障時の関係者との協議と農林水産省への相談、受発注の平準化などの要請

農業用マルチ等プラスチック製農業資材への要請は2026年4月24日、石油由来の食品容器包装材等は4月30日に実施済みです。

流通構造の把握を進めるなか、畜産業関連資材(サイレージ用ラップなど)や林業・木材産業関連資材(苗木コンテナなど)でも、将来の安定供給に不安の声が寄せられたため、農林水産省は上記と同様の要請等を新たに実施します。

参考:予防的パッケージ変更の事例

菓子製造メーカーでは、インク・溶剤の供給見通しは立っているものの、収穫後直ちに加工が必要なばれいしょのロスを避けるため、商品の安定供給を維持する目的で、予防的にパッケージを変更した事例があります。

原料メーカーと製造・流通事業者への要請、4月24日・30日の要請実施、畜産・林業資材への要請拡大、菓子メーカーの予防的パッケージ変更事例。
資材の安定供給に向けた製造・流通事業者等への要請と、予防的パッケージ変更の事例

食品事業者・生産者に求められる対応

農林水産省の要請と現場の動きを踏まえ、食品事業者および農業・畜産・林業の生産者には、次の対応が求められます。

食品事業者(製造・流通・小売・外食)

  • 包装資材の調達に支障や不安がある場合は、早めに農林水産省の相談窓口または業界団体へ状況を共有してください。
  • パッケージのデザイン変更を検討する場合は、インク・溶剤の供給見通しに加え、加工期限の短い原料の有無など自社商品の特性を踏まえて判断してください。
  • 食品容器包装等情報交換会などで共有される需給見通しを参照し、過剰な先回り発注は避けてください。

農業・畜産・林業の生産者および資材の調達・流通事業者

  • 調達支障が生じた場合は、関係者との協議とあわせ、農林水産省へ相談してください。
  • 政府が要請する受発注の平準化に協力し、必要量に見合う発注と、不急の在庫の過剰確保を避けてください。
  • 要請文書の対象資材や条件は、農林水産省ポータルの「資材の確保に向けた関係団体への要請」で最新版をご確認ください

相談窓口・要請・新着リリースは、次のリンクからご覧いただけます。

キーワード解説

目詰まり

サプライチェーンの特定の段階で供給・流通が滞り、下流に届かなくなる状態です。川上では十分でも川中・川下で生じることがあります。

食品容器包装等情報交換会

食品製造・流通・小売・外食など食品産業全体の業界団体と、農林水産省・経済産業省が参加する情報交換の場です(オール食品産業情報交換会)。2026年5月の閣僚会議方針に基づき設置されます。

ナフサ由来の化学製品

ナフサを原料とする化学製品の総称です。食品容器包装の印刷用インク・溶剤などの需給見通しの説明に用いられます。

受発注の平準化

需要の偏りによる一時的な不足や過剰在庫を避けるため、発注量や時期を平準化するよう働きかけることです。製造・流通事業者への要請の一要素です。