中東情勢の緊迫化で、PPバンド・梱包用ストレッチフィルム・鮮度保持フィルム・農業用マルチといった園芸資材や、パン袋・ケーキ用フィルムなどの食品包装に、品薄や納品の遅れが出ています。原因の多くは「モノが無い」ことより、流通の目詰まりです。この記事では、なぜ目詰まりが起きるのかという仕組みと、2026年6月時点の最新の対応状況、そして園芸農家・食品事業者が今できる備えと相談窓口を整理します。

概要

項目 内容
何が起きている ナフサ由来の石油化学製品である包装フィルムや農業用資材で、品薄・納品遅れ・価格や入荷時期の不透明さが出ています。多くは供給不足そのものより流通の目詰まりです。
誰に関係 園芸農家(マルチ・梱包資材を使う方)、パン・菓子の製造販売店、これら資材を扱う商社・メーカー・流通事業者です。
農水省の対応 地方農政局によるプッシュ型調査で目詰まりを特定し、経済産業省と連携して解消しています。園芸資材は1件解消・複数団体で対応中、パン・菓子は19件把握中10件が対応済です。
あなたができること 調達に不安があれば早めに相談し、受発注を平準化し、代替品も検討します。状況は地方農政局や業界団体へ共有できます。
詳しくは 農林水産省「中東情勢関連対策ポータル」、内閣官房「農林水産業・食品産業に関する「目詰まり対策」」(中東情勢に関する関係閣僚会議の第10回会合提出資料)。

なぜ農業資材や食品包装で目詰まりが起きるのか

包装フィルムや農業用マルチ、PPバンドといった資材は、石油から取り出すナフサを原料とする石油化学製品です。中東情勢が緊迫すると原油・ナフサの需給や価格に影響が及び、その先にあるプラスチック資材の供給見通しが立ちにくくなります。これが、農業の現場や食品の製造販売店で資材が手に入りにくくなる大もとの理由です。

ただし、現場で起きている品薄の多くは「モノそのものが足りない」状態とは限りません。原料メーカーから資材メーカー、商社、販売店や農家へとモノが流れる過程のどこかで、情報の行き違いや先回り発注によって流れが滞ります。これが供給の目詰まり(流通の停滞)です。上流では前年並みに供給できていても、途中で止まれば末端には届きません。中東からの海上輸送は通常3週間ほどですが、迂回ルートでは6週間前後に延びることもあり、入荷時期が読みにくくなります。価格の先高観から在庫を抱え込む動きが重なると、在庫はあっても市場に出てこない状態にもなります。だからこそ、川中・川下の流通過程を細かく調べ、どこで詰まっているかを特定して解きほぐすことが対策の中心になります。

中東情勢の影響はどこまで広がっているか

影響は農業や食品に限りません。国内企業の約8割が、中東情勢で事業にマイナスの影響を受けています(東京商工リサーチの2026年4月の調査、7,196社)。理由として最も多いのが原油由来の素材・原材料の高騰で、調達が難しくなったと答えた企業も4割を超えます。包装やフィルムの原料であるプラスチック樹脂も、この調達難の只中にあります。

食品の現場では、すでに目に見える形で表れています。カルビーは2026年5月、ポテトチップスの「うすしお味」「コンソメパンチ」やかっぱえびせんの包装を、印刷インクの品薄を理由に白黒へ切り替えました。スーパーでもトレーやラップを減らし、カット野菜の個包装をやめて裸売りに切り替える動きが出ています。包装の容器・フィルムでは、ポリプロピレンやポリエチレンの原料を扱うメーカーから猶予期間のない大幅な値上げの要請が相次いでおり、ナフサ不足を背景に今夏以降の値上げが懸念されています(帝国データバンクの価格改定動向調査)。

最新の対応状況(2026年6月時点)

政府の「中東情勢に関する関係閣僚会議」(2026年6月開催の第10回会合)で農林水産省が示した資料によると、対策はパン・菓子等販売店園芸農家の二つの現場を軸に、地方農政局のプッシュ型調査で進められています。プッシュ型調査とは、相談を待つのではなく、行政側から事業者や団体へ出向いて状況を聞き取り、目詰まりを掘り起こす調べ方です。園芸分野は6月初旬から、パン・菓子等販売店は5月下旬から、この調査が強化されています。

得られた情報や相談窓口に寄せられた声をもとに、農林水産省は経済産業省と連携して、供給の偏りと目詰まりの解消に当たっています。次回以降の会合では、この節の最新状況が更新されていきます。最新の数値や対象資材は、本文末の出典リンクからご確認ください。

農業用マルチやPPバンドは品薄?園芸農家の資材の状況

園芸分野では、全都道府県の県域レベルの農業者団体への調査が済み、各地域や園芸分野に専門の団体への聞き取りが続いています。複数の団体から資材の目詰まりに関する情報が寄せられ、流通をさかのぼる遡り調査などで解消が図られています。資材ごとの相談内容と対応状況は次のとおりです。

資材 相談内容 対応状況
梱包資材(PPバンド) 注文しても入荷がなく在庫も少ないため、7月中旬までの確保が必要。商社と販売側のタイムリーな情報共有が不足していました。 解消(1団体)。農政局の出先機関が供給業者へ問い合わせ、近日納入予定であることを確認し、相談者へ伝えました。
梱包用ストレッチフィルム 現在の在庫では数か月も持たない見通し。 対応中(1団体)。
鮮度保持フィルム等の複数資材 県域レベルの団体と県内各地域の3団体から共通して、7月以降の出荷に必要な資材調達の不足などの相談。 対応中(4団体)。
農業用マルチ 入荷待ちが断続的に発生。数件の農家の発注で、発注数の確保が難しい状況。 対応中(2団体)。

聞き取りからは、現場の生の声も見えてきます。県域レベルの団体からは「入荷時期や価格が不透明だ」「昨年を上限とした発注で昨年並みの数量は確保している」「資材メーカーから2〜3か月ごとに納品の約束を取り付け、順次調達している」といった声が寄せられています。園芸農家に直に接する団体からは「今は必要分を確保できているが、今後の調達が不安だ」「代替品で対応している農業者もいる」という声が上がっています。7月以降の出荷分に向けた調達への不安が、共通する関心事です。

パン・菓子等販売店の状況

パン・菓子は、地域に密着した中小規模の製造販売店が多い分野です。地方農政局が県域レベルの全ての団体と意見交換し、包装資材の概況を把握するとともに相談窓口を周知しました。さらに状況を詳しく知るため、県域団体の協力を得て全国のパン・菓子等販売店を対象としたアンケートも実施中です。

個々の販売店への直接の聞き取りも続けられ、目詰まり事例は19件把握されています。このうち7件が解消し、3件は代替品の活用などで対応できていることが確認されており、合わせて10件が対応済です。残る9件については、経済産業省とも連携してサプライチェーン調査が進められています。

これまで解消した7件は、ほぼ事業者間のタイムリーなコミュニケーション不足が原因でした。たとえば、パン袋は商社の側で6月から通常の納品ができる見通しが立っていたのに、その情報が商社からパン販売店へ伝わっておらず、供給不安から販売継続が危ぶまれていました。地方農政局が販売店へ情報を共有したことで不安は解消し、パンの販売を続けられるようになりました。ケーキの側面に巻くフィルムも、前年度実績での供給が可能になっていた情報が菓子販売店へ届いておらず、同じように農政局からの情報共有で解消しています。資材が無いのではなく、「届くという情報が届いていない」ことが目詰まりの正体だった、という類型です。

相談件数の推移

農林水産省が把握する相談件数は、資材の種類で動きが分かれています(4月1日から6月4日まで、7日間移動平均で見たもの)。燃料油・潤滑油は、政府に具体的な目詰まりの解消を求める供給要請を含め、5月以降はごく少数で推移しています。一方、包装フィルムや農業用資材を含む石油製品等は、5月下旬以降に地方機関が連携して川中・川下の流通過程へプッシュ型調査を行った結果、相談件数が増えています。これは目詰まりが増えたというより、調査を強めたことで埋もれていた相談が表に出てきたものです。供給要請の件数自体は一定の水準で推移しています。

食品事業者・生産者が今できること

資材の調達に不安があるときは、抱え込まずに早めに動くほど解決が早まります。これまでの解消事例の多くが、情報の行き違いを正すだけで片づいているからです。読者の立場ごとに、できることを整理します。

園芸農家・生産者

  • マルチや梱包資材の入荷遅れ・数量不足に直面したら、所属する農業者団体や地方農政局へ早めに状況を共有してください。「届く見通しがあるのに伝わっていない」だけのことも多く、確認で解消できる場合があります。
  • 必要量に見合う発注を心がけ、受発注の平準化に協力してください。供給不安からの過剰な先回り発注は、かえって目詰まりを生みます。
  • 7月以降の出荷に使う資材は、早めにメーカーや団体と納品の見通しをすり合わせ、必要に応じて代替品も検討しておくと安心です。

パン・菓子の製造販売店・食品事業者

  • 包装資材の調達に支障や不安がある場合は、早めに農林水産省の相談窓口または業界団体へ状況を共有してください。商社や仕入れ先と納期の見通しを確認するだけで解決することもあります。
  • パッケージのデザイン変更を検討する場合は、インク・溶剤の供給見通しに加え、加工期限の短い原料の有無など自社商品の特性を踏まえて判断してください。
  • 必要量を見ながら発注し、過剰な先回り発注は避けてください。

相談窓口・要請文書・新着リリースは、次のリンクからご覧いただけます。要請の対象資材や条件は更新されるため、最新版をご確認ください。

よくある質問

農業用マルチやPPバンドは品薄ですか

地域や品目によって、入荷の遅れや数量の確保が難しい状況が出ています。ただし多くは「モノが無い」のではなく供給の目詰まりで、商社と販売側の情報のすり合わせで解消した例もあります。所属する農業者団体や地方農政局へ早めに状況を共有すると、納品の見通しを確認できる場合があります。

品薄や値上げはいつまで続きますか

終わりの時期は見通せていません。当面は、7月以降の出荷に使う資材の調達が共通の不安として挙がっています。包装の容器・フィルムでは、ナフサ不足を背景に今夏以降の値上げも懸念されています。納品の見通しを早めにすり合わせ、必要に応じて代替品も検討しておくと安心です。

資材が手に入らないとき、どこに相談すればいいですか

まず、所属する農業者団体や業界団体、地方農政局へ状況を共有してください。農林水産省は中東情勢関連の相談窓口を設け、地方農政局によるプッシュ型調査で目詰まりの解消にあたっています。「届く見通しがあるのに伝わっていない」だけのことも多く、確認で解決できる場合があります。

包装資材の価格はどのくらい上がっていますか

品目によって幅がありますが、包装の容器・フィルムでは、原料メーカーから猶予期間のない値上げの要請が相次いでいます。印刷インクの品薄でパッケージを白黒に切り替えた食品メーカーもあります。価格や入荷時期が不透明なときは、過剰な先回り発注を避け、受発注の平準化に協力すると、かえって目詰まりを生まずに済みます。

キーワード解説

目詰まり

サプライチェーンの特定の段階で供給・流通が滞り、下流に届かなくなる状態です。上流では十分でも、商社と販売店の情報の行き違いや先回り発注によって川中・川下で生じることがあります。

ナフサ由来の化学製品

原油から取り出すナフサを原料とする化学製品の総称です。包装フィルム、PPバンド、農業用マルチ、印刷用インク・溶剤などが含まれ、原油・ナフサの需給変動の影響を受けます。

受発注の平準化

需要の偏りによる一時的な不足や過剰在庫を避けるため、発注量や時期をならすことです。供給不安からの先回り発注を控え、必要量に見合う発注を行うよう、製造・流通事業者へ要請されています。