野菜や果物の出荷では、細かい等階級ごとの選別、サイズ別の箱詰め、袋詰め、在庫・出荷管理に多くの手間とコストがかかります。産地間の競争のなかで出荷規格が細かく分かれすぎたことは、労働力不足の一因にもなっています。この記事では、選別・箱詰めの負担を軽くしたい農家・農業法人・JA・出荷組合に向けて、出荷規格の見直しで作業をどれだけ減らせるのか、どんな進め方や実例があるのか、段ボールの規格統一や通いコンテナといった外装の標準化とどう組み合わせるのかを整理します。
概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 誰が | 選別・箱詰め・規格そろえの手間とコストに悩む野菜・果物の産地の農家・農業法人・JA・出荷組合です。 |
| 何を | 出荷規格の統合・簡素化、簡素な形態での直接取引の拡大、収穫後の作業のアウトソーシング(外部委託)です。 |
| 効果 | 10アール当たりの選別作業時間が約2割減った例、出荷容器のコストが13分の1に下がった例などがあります。手間が減った分を栽培管理に回し、栽培面積と販売金額を伸ばした産地もあります。 |
| 進め方 | 対象品目を選び、現状把握から検証、方針決定へと進めます。市場や実需者(買い手)と協議し、需要のピークを外した期間や一定割合から試験的に始められます。 |
| 詳しくは | 段ボールの規格統一・11型パレット・通いコンテナは物流標準化の関連記事、支援策は強い農業づくり総合支援交付金の解説をご覧ください。 |
出荷規格が細かいほど出荷作業は重くなる
出荷規格は、取引を円滑にし、有利に販売するために産地が定めてきた区分です。ところが産地間の競争を背景に、等級(品質のA・B・Cなど)と階級(大きさの2L・L・M・Sなど)の組み合わせが過度に細かくなり、選別だけでなく、収穫、調製、袋詰め、在庫・出荷管理、販路・輸送の確保まで、出荷に関わる幅広い作業の手間が増えています。従事者の高齢化や人手不足が進むなかで、この手間が生産の維持・拡大の足かせになっている産地も見られます。共同選果施設でも、雇用者の確保や施設の運営費・維持管理費の負担が課題です。
こうした負担を減らすために、農林水産省は見直しの進め方と実例を産地向けにまとめています。作業を大きく軽くする方向は、出荷規格そのものを統合・簡素化する、簡素な荷姿で出せる直接取引を増やす、収穫後の作業を外部に委託する、の3つに整理できます。
出荷規格を統合・簡素化する
最も直接的な方法は、等級と階級の組み合わせを減らし、出荷規格そのものを大くくりにすることです。規格数が減れば、細かく分ける選別の労力が下がり、出荷に使う資材や輸送のコストも下げられます。大切なのは、産地の都合だけで決めず、産地側と実需者側の双方が受け入れられる範囲に統合することです。買い手にとっても、細かく分かれた商品から必要量を集めるより、一定の品質の範囲でまとまった量(ロット)を確保したい場合が少なくありません。
実際に規格を簡素化した産地では、作業時間の削減と収入の増加が両立しています。いちごの規格を6段階から3段階にした産地では、10アール当たりの選別作業時間が351時間から276時間へと約2割減りました。空いた時間を栽培管理に回した結果、1戸当たりの栽培面積は20アールから30アールへ、販売金額は約790万円から約1,050万円へ増えています。値の高い初出荷からクリスマスまでは従来の6段階を残し、1〜5月は3段階にして主に量販店へ出す、という使い分けをしています。きゅうりでは、11規格の手選別と7規格の機械選別を比べると、10アール当たりの選別作業時間が170時間から6時間へ大きく減り、栽培面積は28アールから36アールへ、販売金額も増えました。
品目に合わせた簡素化の形はさまざまです。さといもでは10段階の規格を、孫芋(2L・L・M・A)と子頭(丸L)の5段階に減らし、産地はコンテナで出荷して袋詰めはパッケージセンターに任せる形にしました。規格の変更は市場と相談して決めています。トマトでは収穫最盛期の規格を、大(Lサイズ以上)と小(Mサイズ以下)の2つに簡素化してJA専用のコンテナで出荷したところ、出荷に使う容器のコストが13分の1に下がりました。従来はダンボール14円と共同機械の利用料38円で1キログラム当たり52円かかっていたものが、簡素化後はJA専用コンテナの利用料4円で済んでいます。販売単価は年平均で1キログラム当たり410円から432円へ上がり、1戸当たりの栽培面積も46アールから49アールへ広がっています(単価は量販店との協議が前提です)。
品種や栽培方法ごとに分かれていた出荷区分をまとめる方法もあります。なすで19通りあった組み合わせを6通りに集約した産地では、まとまった量を確保できるようになり、予約相対取引の割合が集約前より8ポイント高い34%に、取扱数量は約1割増え、販売高も伸びました。選果機にセットする包装資材を、出荷箱・包装フィルムとも4種類から1種類に減らせたため、選別作業は1日当たり2時間ほど短くなっています。
簡素な荷姿での直接取引を増やす
量販店や加工・業務用の実需者との直接取引では、用途に合う品質・サイズであれば、細かい等階級への選別を省いたり、簡単な荷姿を選んだりできます。こうした簡素な形での出荷の割合を増やすほど、産地の選別の手間が減り、コンテナの利用や包装の簡素化でコストも下がります。混み規格(複数の等階級を1つにまとめた規格)や通いコンテナの活用が、この方法の中心です。
きゅうりでは、AM・AS・BM・BSの4つの階級を1つにまとめた混み規格で、バラ売りの量販店などと直接取引した産地があります。ほ場で収穫しながらそのままコンテナに詰められるようになり、手が触れないため鮮度が保たれると評価されました。販売単価は市場出荷の1キログラム当たり270〜280円から概ね250円へ下がりましたが、出荷コストはダンボール(約15円)からコンテナ(約11円)へ下がり、選別に取られていた時間を栽培管理に回せます。手取りは単価だけでなく反収・面積・コストで決まるため、単価が多少下がっても手取りを確保できる、という考え方です。
加工・業務用に的を絞れば、規格をさらに緩められます。加工向けのねぎでは、葉の枚数・長さ・太さの制限をなくし、根の切り方にも幅を持たせた簡単な出荷形態にしたことで、サイズ選別が不要になり、従来の規格では市場に出せなかったものも出荷できるようになりました。カット野菜の製造業者へ出すたまねぎでは、Mサイズ以上をすべて混み規格とし、根をつけたまま鉄コンテナで出荷して、選別・調製の作業時間と人件費・資材のコストを下げています。いずれも収穫から短い時間で届くため、鮮度の面でも評価されています。
収穫後の作業を外部に委託する
選別や箱詰め、包装をパッケージセンターなどに任せれば、産地は収穫と最小限の調製だけで出荷でき、労力の軽減効果は特に大きくなります。近年は、県域の農協系統組織や消費地の卸関連会社がパッケージセンターを設け、産地は簡単な荷姿で出荷し、買い手のニーズに合わせた選果・荷造りをセンター側で行う例が増えています。実需者が選別以降、あるいは収穫以降の作業を引き受ける作業のシェアリングも見られます。出荷規格の統合・簡素化と組み合わせると、効果はさらに大きくなります。
いちごの産地でパッケージセンターを建てた農協の例では、栽培労働の約7割を占めていた収穫・調製・出荷作業の負担が軽くなりました。導入後は10アール当たりの労働時間が2,555時間から2,036時間へと約500時間(約2割)減り、その分を栽培管理に充てられるようになっています。個別選果によるばらつきが解消して品質が安定し、生産量は10アール当たり4,131キログラムから4,357キログラムへ、販売単価は概算で1キログラム当たり1,180円から1,240円へ上がりました。市場での占有率が上がり、有利な販売や流通経費の削減にもつながっています。共同選果機を入れるほどの労働力を確保しにくい産地でも取り入れやすい方法です。
段ボールの規格統一・パレット・通いコンテナで物流も軽くする
出荷規格の見直しは、荷姿と外装(段ボールなど)の標準化と組み合わせると効果が高まります。青果物流通標準化ガイドラインは、原則1,100ミリメートル×1,100ミリメートルの11型パレットを標準サイズとし、このパレットに載る段ボールの大きさを品目ごとに定める取り組みを進めています。レタス・ねぎ・たまねぎ・みかんなどで標準の箱の大きさが検討され、産地への普及が図られています。段ボールがそろえば、パレットに無駄なく積めて荷役や輸送が効率化します。パレットはプラスチック製が推奨され、繰り返し使えるレンタル方式での運用が基本です。
使い捨ての段ボールに代えて、繰り返し使える通いコンテナ(リターナブル容器)を使えば、資材コストを抑えられるうえ、荷おろしの手間も軽くなります。買い手にとっても、バラで受け取って自分の売り方に合わせて包装できる、ダンボールを畳む手間が要らない、産地から届くまでの時間が短く新鮮に受け取れる、といった利点があります。段ボールの規格統一や11型パレット化のより詳しい進め方は青果物の物流標準化とパレット化の解説で、青果物流全体の効率化の枠組みは物流革新に向けた取組の解説で、輸出に向けた規格・標準化はJAS規格と輸出の標準化の解説で整理しています。
見直しの進め方
見直しは、対象の品目を決めてから次の順で進めます。
- 見直す対象の品目を選びます。単価の差が小さい規格や取扱数量の少ない規格、箱の大きさを変えやすい重量野菜などが着手しやすい対象です。
- 現状を把握します。今の出荷規格がいつ・どこのニーズで決まったか、規格ごとの単価と出荷量、作業ごとの労働の実態、ダンボールやコンテナ・包装資材・運賃の経費、簡素な直接取引や外部委託の実施状況を洗い出します。
- 現状を検証し、課題を整理します。市場や実需者の今のニーズと規格が合っているか、統合できそうな規格はないか、将来の労働力の見通しに作業量が見合うか、規格の多さが資材や輸送の非効率を招いていないかを確かめます。
- 市場・実需者と協議しながら、産地の将来展望と方針を決めます。いつまでに・誰が・どのように動くかを具体的な目標に落とし込み、まずは需要のピークを外した一定期間や一定割合から試験的に簡素化規格で販売し、翌年産以降の本格適用を目指します。上位規格を適切に混ぜて単価を落としすぎない工夫も、量販店との協議で決めます。
使える国の支援
規格見直しに伴う選果場の設備調整や、段ボールの規格統一・パレット化といった物流の標準化・効率化には、国の支援も活用できます。強い農業づくり総合支援交付金には、集出荷施設でのパレットの規格統一化など物流標準化・効率化の取組を後押しする優先枠があります。対象や補助率、申請の窓口は強い農業づくり総合支援交付金の解説で確認できます。
よくある質問
出荷規格を簡素化すると、単価が下がって手取りが減りませんか
単価が多少下がっても、選別に取られていた時間を栽培管理に回せて反収や栽培面積が増え、容器・人件費のコストも下がるため、全体の手取りを確保できた例が多くあります。手取りは単価だけでなく、反収・面積・コストで決まります。産地近郊の量販店と密に協議し、上位規格を適切に混ぜて単価を落としすぎないようにする工夫も有効です。
どの品目・どこから見直せばよいですか
単価の差が小さい規格や取扱数量の少ない規格、箱の大きさを変えやすい重量野菜が着手しやすい対象です。いきなり全量を対象にせず、需要のピークを外した一定期間や一定割合から試験的に始めると、販売への影響を抑えながら効果を確かめられます。
選別を機械化したり委託したりする設備がない産地でも作業を減らせますか
減らせます。混み規格や通いコンテナを使った簡素な荷姿での直接取引に切り替える、市場や中間事業者に選別以降の作業を委託する、といった方法は大きな設備投資がなくても取り組めます。共同選果機を入れるほどの労働力を確保しにくい産地では、パッケージセンターの活用が有効な選択肢になります。
出荷規格の見直しは産地だけで決められますか
決められません。出荷規格や荷姿は、買い手が受け入れられることが前提です。市場や量販店、加工・業務用の実需者と協議し、双方が受け入れ可能な範囲で統合・簡素化を進めます。規格の変更を市場と相談して決めた産地の例もあります。
キーワード解説
出荷規格
青果物を品質で分ける「等級」(秀・優・良やA・B・Cなど)と、大きさで分ける「階級」(2L・L・M・Sなど)の組み合わせで定める区分です。細かく分けるほど、選別をはじめとする出荷作業の手間が増えます。
実需者
青果物を仕入れて使う買い手のことです。量販店(スーパー)や、加工・外食・中食の事業者などが含まれます。産地が出荷規格や荷姿を見直すときは、この実需者との協議が前提になります。
混み規格
複数の等階級を1つにまとめた規格です。細かいサイズ選別が要らなくなるため、産地の選別の手間を減らせます。加工・業務用やバラ売りの量販店との直接取引で使われます。
通いコンテナ
繰り返し使えるプラスチック製や鉄製の折りたたみコンテナなど(リターナブル容器)です。使い捨ての段ボールを減らせるため、資材コストや荷おろしの手間を下げられます。JA専用のコンテナを使う産地もあります。
パッケージセンター
産地の収穫物を集め、買い手のニーズに合わせて選別・箱詰め・包装加工を代行する施設です。産地は収穫と最小限の調製だけで出荷でき、労力を大きく減らせます。
11型パレット
平面が1,100ミリメートル×1,100ミリメートルの標準パレットサイズ(T11)です。これに合わせて段ボールの大きさをそろえると、積み付けや荷役、輸送が効率化します。
まとめ
野菜・果物の出荷にかかる選別・箱詰めの手間とコストは、出荷規格そのものを大くくりにする、簡素な荷姿での直接取引を増やす、収穫後の作業を外部に委託する、という3つの方向で減らせます。規格を6段階から3段階に減らして選別時間が約2割減った産地や、容器コストが13分の1に下がった産地のように、作業が軽くなった分を栽培管理に回して収入を伸ばした例もあります。段ボールの規格統一や11型パレット、通いコンテナといった物流の標準化と組み合わせ、国の支援も使いながら進めると効果が高まります。まずは対象の品目を1つ選び、市場や実需者と協議しながら、需要のピークを外した期間から試してみましょう。