基幹的農業従事者は今後20年で約4分の1まで減る見込みです。持続的な食料供給のため、令和6年10月1日施行のスマート農業技術活用促進法は、生産方式革新実施計画と開発供給実施計画の2つの認定制度と、融資・手続簡素化・税制特例等の支援措置を定めています。
概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 誰が | 生産方式革新実施計画は、生産方式革新事業活動を行う農業者等(農業者又はその組織する団体)。開発供給実施計画は、農機メーカー、サービス事業者、大学、公設試等の開発供給事業者です。 |
| 何を | 人口減少下の農業政策の背景、スマート農業技術活用の課題、2つの認定計画の内容と支援措置(融資・手続簡素化・税制特例等)です。 |
| いつ | 同法は令和6年6月14日成立・6月21日公布、10月1日施行です。基本方針は農林水産大臣が策定・公表します。 |
| 詳細はどこで | 農林水産省「スマート農業技術活用促進法について」、計画認定等事務取扱要領、Q&A、申請先(生産方式革新は地方農政局等、開発供給は農林水産技術会議事務局)をご覧ください。 |
人口減少下の農業政策
基幹的農業従事者(15歳以上の世帯員のうち、ふだん仕事として主に自営農業に従事する者。雇用者は含まない)は、2023年時点で116万人、平均年齢は68.4歳(2022年)です。20年後の基幹的農業従事者の中心となる層は、50代以下の23.8万人(全体の20%)です。
年齢構成を見ると、70歳以上が58.7%、60~69歳が20.9%、50~59歳が9.0%、40~49歳が6.7%、30~39歳が3.8%、29歳以下が1.0%です。高齢層の占める割合が大きく、若年層の補充が限定的です。
今後20年間で基幹的農業従事者は現在の約4分の1(116万人→30万人)まで減少することが見込まれます。従来の生産方式を前提とした農業生産では、農業の持続的な発展や食料の安定供給を確保できません。
農業者の減少下でも生産水準を維持できる生産性の高い食料供給体制を確立するには、農作業の効率化等に資するスマート農業技術の活用と併せて生産方式の転換を進めるとともに、スマート農業技術等の開発・普及を図り、現場での活用を促進する必要があります。
スマート農業技術活用の促進に当たっての課題
スマート農業技術の活用を促進するには、技術に適した生産方式への転換を図りながら、現場導入の加速化と開発速度の引き上げの両方を進める必要があります。
技術の開発面
農業分野の研究機関(農研機構等)と生産現場の間に伝手がなく、技術開発や現場への橋渡しが十分に機能していないという指摘があります。ほ場などの条件が多岐にわたること、慣行的な栽培方法へのこだわり、作物ごとの転用の難しさが、開発・導入双方のハードルを高めています。
開発速度を引き上げるには、スマート農業技術に適した生産方式への転換により開発ハードルを下げつつ、開発が特に必要な分野を明確化して多様なプレーヤーの参画を進めることが重要です。衛星データを活用した農機の直進制御(GNSSガイダンス、自動操舵システム)など、一部の農機では実用化が始まっています。一方、ニーズの高い野菜や果樹の収穫ロボット等は難度が高く、実用化に至っていない分野もあります。
農業の現場面
人員確保が難しくなるなか、出荷規格に合わせた収穫には人手が必要という現場の声があります。自動収穫機での収穫に失敗した事例もあり、技術だけでは解決できない場面があります。
反対に、機械で一斉収穫ができるよう畝間を広げ品種を変えた結果、スマート農業機械が機能し営農継続の見通しが立ったという事例もあります。スマート農業技術の現場導入を加速し効果を十分に引き出すには、ほ場の畝間拡大、均平化や合筆、枕地の確保、作期分散、出荷の見直し等、スマート農業技術に適した生産方式への転換が重要です。
人員を前提とした慣行的な生産方式から、スマート農業技術に適した生産方式へ転換することが、現場と開発の双方で求められています。異業種で培った技術を農業分野に活かしたい事業者にとっても、ほ場や作物の生育条件の多様性が参入の障壁になっている側面があります。
スマート農業技術活用促進法の概要
農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律(スマート農業技術活用促進法)は、農業者の減少等の環境変化に対応して、次の2つの認定制度を創設するものです。
- ①生産方式革新実施計画(スマート農業技術の活用及びこれと併せて行う農産物の新たな生産の方式の導入に関する計画)
- ②開発供給実施計画(スマート農業技術等の開発及びその成果の普及に関する計画)
農林水産大臣は、生産方式革新事業活動及び開発供給事業の促進の意義及び目標、その実施に関する基本的な事項等を定める基本方針を策定・公表します。
生産方式革新実施計画
生産方式革新事業活動とは、スマート農業技術の活用と農産物の新たな生産の方式の導入をセットで相当規模で行い、農業の生産性を相当程度向上させる事業活動です。申請者は、生産方式革新事業活動を行おうとする農業者等(農業者又はその組織する団体)です。継続性や波及性を勘案し、複数の農業者が有機的に連携して取り組むことが望ましいです。
認定を受けた事業者に対する支援措置の例は次のとおりです。
- 日本政策金融公庫の長期低利融資
- 行政手続の簡素化(ドローン等の飛行許可・承認等)
- 計画に記載された設備投資に係る法人税・所得税の特例(特別償却)
スマート農業技術活用サービス事業者や食品等事業者が行う生産方式革新事業活動の促進に資する措置を計画に含め、支援を受けることも可能です。
開発供給実施計画
開発供給事業とは、農業において特に必要性が高いと認められるスマート農業技術等(スマート農業技術その他の生産方式革新事業活動に資する先端的な技術)の開発及び、当該技術を活用した農業機械等又はスマート農業技術活用サービスの供給を一体的に行う事業です。申請者は、開発供給事業を行おうとする者(農機メーカー、サービス事業者、大学、公設試等)です。
認定を受けた事業者に対する支援措置の例は次のとおりです。
- 日本政策金融公庫の長期低利融資
- 農研機構の研究開発設備等の供用
- 行政手続の簡素化(ドローン等の飛行許可・承認等)
- 計画に記載された会社の設立等に伴う登記に係る登録免許税の軽減
計画認定を検討する方へ
生産方式革新実施計画を検討する農業者は、スマート農業技術の導入と生産方式の転換(畝間拡大、品種・作期の見直し等)をセットで設計することが前提です。複数の農業者が産地単位で連携する取組が中心です。開発供給実施計画を検討する事業者は、重点開発目標に沿った技術開発と供給を一体的に計画します。
申請要件、様式、認定の詳細は事務取扱要領と申請先の案内が正本です。生産方式革新実施計画はお近くの地方農政局等、開発供給実施計画は農林水産技術会議事務局研究推進課へご相談ください。認定による各種事業の優遇措置については、農林水産省のスマート農業技術活用促進法ポータルに掲載の資料もご覧ください。
キーワード解説
スマート農業技術
ロボット、AI、IoT、GNSS(衛星測位)などの先端技術を活用して、農作業の効率化やデータに基づく生産管理を行う技術の総称です。同法では、これらの技術の活用と生産方式の転換をセットで進めることが求められます。
生産方式革新実施計画
スマート農業技術の活用及びこれと併せて行う農産物の新たな生産の方式の導入に関する計画です。農林水産大臣の認定を受けた農業者等は、融資・手続簡素化・税制特例等の支援措置の対象となります。計画に基づく事業活動を生産方式革新事業活動といいます。
開発供給実施計画
スマート農業技術等の開発及びその成果の普及に関する計画です。農機メーカー、サービス事業者、大学、公設試等が申請し、認定を受けると融資、農研機構設備の供用、手続簡素化、登録免許税の軽減等の支援を受けられます。計画に基づく事業を開発供給事業といいます。