沖縄・鹿児島のさとうきび、北海道のてん菜を作る生産者は、原料を売った代金とは別に、国から交付金を受け取れます。ただし受け取れる交付金の制度は作物ごとに異なり、さとうきびは甘味資源作物交付金、てん菜は畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)です。この記事では、それぞれの令和7年産の交付単価と対象になる生産者の要件、あわせて製造事業者向けの国内産糖交付金との違いを整理します。年産ごとの確定値は農林水産省の一次情報でご確認ください。

さとうきびとてん菜で受け取れる交付金の違い

生産者が直接受け取れる交付金は、次のとおり作物ごとに制度が分かれています。

項目 さとうきび てん菜
制度 甘味資源作物交付金(生産者交付金)。糖価調整制度に基づきます。 畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)。経営所得安定対策の一つです。
令和7年産の交付単価 1,000キログラム当たり16,860円(免税事業者)・16,010円(課税事業者)。基準糖度は13.1〜14.3度です。 数量払は基準糖度16.6度で1トン当たり5,290円(免税事業者)・5,070円(課税事業者)。面積払(営農継続支払)が10アール当たり2万円です。
主な対象者 認定農業者等・一定の作業規模を持つ者・共同利用組織の構成員・基幹作業の委託者です。 認定農業者・集落営農・認定新規就農者(規模要件なし)で、北海道産のみが対象です。

さとうきびの交付金

糖価調整制度の仕組み。輸入糖から徴収した調整金を財源に、国内産糖の生産者への交付金単価と製造事業者への交付金単価が交付される価格の内訳図。
農林水産省「砂糖・でん粉をめぐる状況」(令和8年3月)

さとうきびの生産者は、収穫した原料を製糖会社に売った代金(品代)に加えて、国から甘味資源作物交付金(生産者交付金)を受け取れます。原料価格が輸入糖に比べて割高になりやすい国産のさとうきびでも、生産者の手取りが「品代+交付金」で確保され、所得と経営を支える仕組みです。

令和7年産の交付単価

令和7年産の生産者交付金の単価は、1,000キログラム当たり16,860円(免税事業者)16,010円(消費税の課税事業者)で、前年産と同額です。単価は消費税の扱いによって二つに分かれ、免税事業者向けのほうが高く設定されています。

この単価が適用される基準糖度帯は13.1〜14.3度です。この帯の中は同じ単価で、糖度が13.1度を下回ると0.1度ごとに100円減額され、14.3度を上回ると0.1度ごとに100円増額されます。交付の対象になるのは糖度5.5度以上のさとうきびです。品質(糖度)が単価に反映される点が特徴です。

交付金の対象となる生産者の要件

さとうきびの交付金を受け取れるのは、次の4区分のいずれかに当てはまる生産者です。品目別経営安定対策の交付対象者要件として定められています。

  • 認定農業者等(A-1):市町村から認定を受けた農業経営改善計画に基づいて経営する生産者などです。
  • 一定の作業規模を有する者(A-2):一定規模以上の作業を行う生産者です。
  • 共同利用組織への参加者(A-3):機械の共同利用組織などの構成員として、基幹作業の原則2分の1以上を共同作業で実施する生産者です。
  • 基幹作業の委託者(A-4):基幹作業の原則2分の1以上を他者に委託する生産者です。

基幹作業とは、さとうきびの植付け・収穫など、生産の中心となる作業を指します。A-3・A-4では、この基幹作業の一定割合以上を共同利用組織の共同作業または委託でまかなうことが、担い手の育成や効率的な生産体制づくりにつながるとされています。

交付対象者要件の見直し

共同利用組織の構成員(A-3)と基幹作業の委託者(A-4)には、多くの生産者が対象になれるよう、過去に経過的な特例が設けられていました。この特例は次の二つで、いずれも平成30年産で終了しました。令和元年産以降は、原則どおりの要件を満たす必要があります。

  • 割合の特例:ほ場の3分の1以上(原則は2分の1以上)で基幹作業を共同作業または委託すれば対象とする特例です。終了により、原則の2分の1以上が要件になりました。
  • カウント方法の特例:複数のほ場ごとに、共同作業または委託する面積が最も大きい基幹作業の面積を合計できる特例です。終了により、原則の数え方(作付面積のうち共同作業または委託する面積が最大となるいずれか一つの基幹作業で合計する方法)に戻りました。

これらの見直しは、産地の生産構造の強化と、効率的で安定的な生産体制の確立を促す観点から行われました。今からさとうきびの交付金を申請する生産者は、この見直し後の原則要件を前提に、自分がどの区分に当てはまるかを確認しましょう。

てん菜の交付金

てん菜の生産者が受け取れるのは、さとうきびの甘味資源作物交付金ではなく、畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)です。経営所得安定対策の一つで、生産条件が不利な畑作物の生産を支えます。てん菜のゲタ対策は北海道産のみが対象です。交付は「数量払」と「面積払」の二本立てです。

数量払と面積払

令和5〜7年産の数量払は、基準糖度16.6度のてん菜について、1トン当たり5,290円(免税事業者)・5,070円(消費税の課税事業者)です。糖度に応じて0.1度ごとに62円が増減し、品質が単価に反映されます。数量払は生産量と品質に応じて交付される部分です。

これに加えて、面積払(営農継続支払)10アール当たり2万円交付されます。面積払は当年産の作付面積に応じて交付される部分で、数量払の一部を前払いする性格があります。生産者は数量払と面積払を合わせて受け取れます。

交付金の対象となる生産者の要件

ゲタ対策の対象になるのは、認定農業者・集落営農・認定新規就農者です。さとうきびと異なり、規模の要件はありません。てん菜は北海道の畑作で連作障害を避けるための輪作に欠かせない作物で、北海道産が対象です。交付を受けるには、は種前に、JA等への出荷契約または実需者との販売契約を結んでおくことが基本です。詳しい要件や契約の様式は、農林水産省「経営所得安定対策」でご確認ください。

なぜ交付金が出るのか

さとうきびの生産者交付金の背景にあるのが糖価調整制度です。海外から輸入される原料糖と、国内のさとうきび・てん菜を原料とする国産糖の間には、大きな価格差があります。この制度は、次の流れで国産の砂糖づくりと安定供給を成り立たせています。

  • 輸入される精製糖には高い関税と調整金を課し、割安な輸入品がそのまま国内に流れ込むのを抑えます。
  • 農畜産業振興機構(ALIC)が、粗糖を輸入する精製糖企業から調整金を徴収します。これで輸入糖の価格が引き上げられます。
  • ALICは、集めた調整金と国費を財源に交付金を交付します。さとうきびの生産者へは甘味資源作物交付金(生産者交付金)が、てん菜糖などの製造事業者へは国内産糖交付金が交付されます。これで国産糖の価格が引き下げられます。

つまり、輸入糖を使う人が負担した調整金が、国産の甘味資源作物を支える財源になっています。国内産糖交付金は原料から砂糖を作る製造事業者に交付されるもので、生産者へ直接支払われる甘味資源作物交付金(さとうきび)やゲタ対策(てん菜)とは別の交付金です。

令和8砂糖年度からのてん菜糖の交付対象数量

令和8砂糖年度までのてん菜糖の交付対象数量の推移。交付対象数量は令和5年度60万トンから令和8年度55万トンへ、指標面積は50,000haへ縮小。
農林水産省「砂糖・でん粉をめぐる状況」(令和8年3月)

ここで見直されているのは、生産者へのゲタ対策ではなく、てん菜糖の製造事業者に交付される国内産糖交付金の対象数量です。砂糖の消費量が減るなかで、てん菜糖の在庫が増え、制度を支える調整金収支の累積赤字も膨らんでいます。この状況が続くと持続的な生産が難しくなるため、交付金の対象となる数量(交付対象数量)が段階的に縮小されています。てん菜糖の交付対象数量は、令和5砂糖年度の60万トンから、令和6砂糖年度58万トン、令和7砂糖年度56万トン、令和8砂糖年度は55万トンへと縮小してきました。

令和7年12月には、令和9砂糖年度以降の交付対象数量を55万トンとすることが決まりました。ただしALICの砂糖勘定の収支や国際糖価、為替、作付面積、生産コストなどの状況によっては、制度の安定運営を保てる水準に見直される場合があります。あわせて、てん菜から加工用ばれいしょや豆類など需要のある作物への転換、過剰在庫の解消に向けた需要拡大、産地での生産コスト削減の取組が進められています。

北海道でてん菜を作る生産者は、作付けの選択にあたって、この交付対象数量と指標面積(令和8砂糖年度は50,000ヘクタール)の動きを踏まえて計画を立てましょう。

さとうきび・てん菜の生産の現状

さとうきびは、鹿児島県南西諸島と沖縄県の台風常襲地帯で、自然災害に強く代替の効かない基幹作物です。収穫面積はここ数年おおむね2万3千ヘクタールで推移し、令和6年産は天候に恵まれて生産量が前年産より19%多い約140万トンとなりました。一方で農家戸数は減少と高齢化が進み、直近では約1万8千戸、1戸当たり収穫面積は1.3ヘクタールです。

てん菜は、北海道の畑作で連作障害を避けるために欠かせない輪作作物で、小麦・豆類・ばれいしょと組み合わせて作られます。令和7年産は加工用ばれいしょや豆類への転換が進み、作付面積は前年より900ヘクタール減って48,000ヘクタールとなりました。農家戸数は約5,800戸、1戸当たり作付面積は8.3ヘクタールです。

キーワード解説

甘味資源作物交付金

さとうきびの生産者に交付される生産者交付金です。糖価調整制度に基づき、農畜産業振興機構(ALIC)から交付されます。てん菜の生産者はこの交付金ではなく、ゲタ対策の対象になります。

畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)

生産条件が不利な畑作物の生産を支える、経営所得安定対策の交付金です。てん菜は北海道産が対象で、数量払と面積払(営農継続支払)を受け取れます。

国内産糖交付金

糖価調整制度に基づき、さとうきびやてん菜から砂糖を作る製造事業者に交付される交付金です。生産者へ直接支払われるものではありません。てん菜糖の交付対象数量が年度ごとに決められています。

糖価調整制度

輸入糖と国産糖の大きな価格差を調整し、国産の砂糖づくりと安定供給を成り立たせる仕組みです。輸入糖から調整金を徴収し、国産の生産者・製造事業者へ交付金として交付します。

農畜産業振興機構(ALIC)

糖価調整制度を運営する独立行政法人です。精製糖企業から調整金を徴収し、甘味資源作物の生産者や国内産糖の製造事業者へ交付金を交付します。

品目別経営安定対策

さとうきびなどの品目ごとに、生産者の経営を安定させるための交付金の枠組みです。交付金を受け取れる生産者の区分(交付対象者要件)が定められています。

よくある質問

さとうきびの交付金はどれだけ受け取れますか

令和7年産の生産者交付金(甘味資源作物交付金)の単価は、1,000キログラム当たり16,860円(免税事業者)、16,010円(消費税の課税事業者)で、前年産と同額です。基準糖度13.1〜14.3度が対象で、糖度に応じて0.1度ごとに100円が増減します(糖度5.5度以上が対象)。この交付金は原料の販売代金に上乗せして受け取れます。

てん菜の交付金はどれだけ受け取れますか

てん菜は甘味資源作物交付金ではなく、畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)の対象です。数量払は基準糖度16.6度で1トン当たり5,290円(免税事業者)・5,070円(課税事業者)、糖度0.1度ごとに62円が増減します。これに面積払(営農継続支払)が10アール当たり2万円加わります。北海道産が対象です。

交付金の対象になる生産者の要件は何ですか

さとうきびは、認定農業者等(A-1)、一定の作業規模を有する者(A-2)、共同利用組織への参加者(A-3)、基幹作業の委託者(A-4)の4区分が対象です。A-3・A-4は基幹作業の原則2分の1以上を共同作業または委託で実施します。てん菜のゲタ対策は、認定農業者・集落営農・認定新規就農者(規模要件なし)が対象です。

令和8砂糖年度から何が変わりますか

製造事業者に交付される国内産糖交付金のうち、てん菜糖の交付対象数量が55万トンとなります。令和9砂糖年度以降も55万トンとすることが令和7年12月24日に決まりました。生産者向けのゲタ対策や甘味資源作物交付金の枠組みは引き続き続きます。