グリーンインフラ(自然の多様な機能を生かした社会資本)に取り組むとき、国の支援制度を横断で探せるのが「グリーンインフラ支援制度集」です。令和8年度版は全43制度を掲載し、そのうち農林水産省系の11制度は、田んぼ・水路・ため池・里山を生かした取組を進める農業者・活動組織・自治体が活用できます。この記事では、農業・農村で使える制度の対象と支援内容、相談先を整理します。最新の要件・単価・公募は、各制度の担当窓口でご確認ください。

概要

誰が グリーンインフラに取り組む都道府県・市町村、農業者や地域住民でつくる活動組織・地域協議会、農業者団体、民間事業者。
何を 3省合同の「グリーンインフラ支援制度集(令和8年度版)」全43制度のうち、農業・農村で使える農林水産省系11制度の対象と支援内容。
対象の取組 田んぼ・ため池を生かした流域治水や農村景観づくり、環境にやさしい営農、地域共同での農地・水路の保全、里山林・森林の整備など。
支援の中心 交付金・補助が中心で、活動組織や自治体を通じて交付されます。農業農村整備は国庫負担率2分の1などです。
これから 令和9年度から補助事業で環境配慮を要件化する「みどりチェック」が本格実施されます(令和6年度から試行)。
詳しくは 制度集の各制度ページと、都道府県・市町村・地方農政局の窓口でご確認ください。

グリーンインフラとは

グリーンインフラとは、自然の多様な機能を生かした社会資本です。雨庭や屋上緑化、公園・緑地、道路緑化、砂浜、そして田んぼやため池を生かした流域治水など、自然が持つ保水・防災・生きものを育む働きを、地域づくりに役立てる考え方です。防災・減災、暑熱対策、生物多様性の保全、脱炭素、健康でゆとりある暮らしといった、複数の地域課題に同時に効く点が特徴です。

農業・農村は、水田の貯水機能やため池、里山林など、グリーンインフラそのものといえる資源を数多く持っています。これらを保全・活用する取組は、既存の農林水産省の交付金でしっかり後押しを受けられます。

グリーンインフラの概念図。雨庭・屋上緑化・公園・道路緑化・砂浜・ブルーインフラ、そして流域治水と農地の連携など、自然の多様な機能を活用した社会資本の例と、戦略的な計画・持続的な維持管理・多様なステークホルダーというソフト施策を示す。
国土交通省・農林水産省・環境省「グリーンインフラ支援制度集(令和8年度版)」(PDF):グリーンインフラの全体像

グリーンインフラ支援制度集とは

グリーンインフラ支援制度集は、国土交通省・農林水産省・環境省の3省が協力してつくる冊子で、グリーンインフラの活用に使える国の支援制度を1冊に集めたものです。令和8年6月に公表された令和8年度版では、制度を4件新たに追加し、計43制度を掲載しました。

掲載数の内訳は、国土交通省23件、農林水産省11件、環境省7件、公益財団法人等の省庁以外が4件です。令和8年度版で新たに加わった4件(みなと緑地PPPなど)はいずれも国土交通省の制度で、農林水産省系の11制度は前年度版から引き続き活用できます。制度ごとに、目的・事業主体・対象・問い合わせ先がまとまっているため、自分の取組に合う制度を探す入口として使えます。

農業・農村で使える主な制度

農林水産省系の11制度は、農地・水・ため池を守る事業から、環境にやさしい営農への支援、地域共同での保全活動、里山・森林・水産まで幅広く並びます。読者の関わりが深いものを中心に整理します。

制度名 使えるのは 支援の内容
農業農村整備事業 都道府県等(実施主体)。地域の農地・水利施設を整備する取組。 農地の大区画化・畑地化、水利システムの再編、ため池の防災・減災、農業用ダムの洪水調節、集落排水などを整備。田んぼやため池を生かした流域治水、農村景観づくりも進められます。国庫負担率は2分の1など。
環境保全型農業直接支払交付金 農業者の組織する団体等。販売目的で作物を生産している方。 化学肥料・化学合成農薬を原則5割以上減らす取組と合わせて行う、地球温暖化防止や生物多様性保全に効果の高い営農活動を支援します。
多面的機能支払交付金 農業者・地域住民でつくる活動組織。 地域共同で行う農地・農業用水路などの保全や、水田魚道の設置といった農村環境を良くする活動を支援します。
みどりの食料システム戦略推進交付金 協議会、都道府県、市町村、農業協同組合など。 環境と調和した食料システムづくりに向け、環境にやさしい栽培体系(グリーンな栽培体系)への転換、有機農業の拡大、地域資源の循環利用などを支援します。
里山林活性化による多面的機能発揮対策交付金 地域住民・森林所有者・法人等でつくる活動組織(地域協議会)。 身近な里山林の整備・活用を進め、「半林半X」も含めた活動の実践や、担い手となる組織づくりを支援します。
森林整備事業・治山事業 森林所有者・地方公共団体等(林野庁の事業)。 植栽・下刈り・間伐・路網整備で森林の多面的機能を高め、治山事業で荒廃地の復旧や公益的機能の高い森林の整備・保全を進めます。
水産多面的機能・水産環境整備の交付金等 漁業者でつくる活動組織、地方公共団体等(水産庁の事業)。 藻場・干潟・内水面を守る活動や、良好な漁場環境をつくる整備を支援します。内水面など農村地域に関わる取組でも活用できます。

環境保全型農業直接支払交付金・多面的機能支払交付金・里山林の交付金など、多くは活動組織や地域協議会を通じて交付されます。まず地域で取組の仲間を集め、市町村や協議会に相談する流れになります。単価や交付要件は年度や地域で変わるため、最新の要領で確認しましょう。

支援制度集の掲載リストのうち農林水産省・林野庁・水産庁の制度。農業農村整備事業、森林整備事業、治山事業、みどりの食料システム戦略推進交付金、環境保全型農業直接支払交付金、多面的機能支払交付金、里山林活性化による多面的機能発揮対策交付金、水産関係の交付金などが並ぶ。
国土交通省・農林水産省・環境省「グリーンインフラ支援制度集(令和8年度版)」(PDF):農林水産省・林野庁・水産庁の制度一覧

みどりチェックが令和9年度から本格実施

農林水産省は、すべての補助事業などで環境負荷低減の取組の実践を要件にする「環境配慮のチェック・要件化」(愛称:みどりチェック)を、令和9年度から本格実施します。令和6年度からは試行が始まっています。

本格実施後は、上で紹介した交付金・補助を使うときにも、環境負荷低減のチェックが前提になります。堆肥の活用や化学肥料・農薬の使用低減など、日ごろの営農で無理なく続けられる取組から準備を始めておくと、いざ申請するときに慌てずに済みます。

使うまでの流れと相談先

制度を使うときの基本の流れは、次のとおりです。

  • 取組を決める:田んぼ・ため池を生かした保全、環境にやさしい営農、里山の整備など、地域でやりたいことを決めます。
  • 仲間・組織をつくる:多面的機能支払や環境保全型農業直接支払、里山林の交付金は、活動組織や地域協議会が受け皿になります。
  • 窓口に相談する:市町村・都道府県の農政担当や、地方農政局に相談します。農業農村整備は都道府県が実施主体です。
  • 制度集で確認する:制度集の各制度ページに、目的・対象・問い合わせ先が載っています。自分の取組に合う制度を選びましょう。

よくある質問

個人の農家でも使えますか

制度によります。農業農村整備事業は都道府県等が実施主体ですが、多面的機能支払交付金や環境保全型農業直接支払交付金は、農業者や地域住民でつくる活動組織・団体が対象です。まず地域で取組の仲間を集め、市町村や地域協議会に相談するのが近道です。

グリーンインフラの制度は新しい補助金ですか

新しい専用の補助金ではありません。制度集は、既にある国の支援制度のうち、グリーンインフラの取組に使えるものを1冊に集めたものです。農林水産省系の11制度は、農地・水・里山を守るこれまでの交付金が中心です。

制度集はどこで見られますか

国土交通省・農林水産省・環境省のウェブサイトで公表されています。記事末尾のリンクからPDFをご覧いただけます。

キーワード解説

グリーンインフラ

自然の多様な機能を生かした社会資本のことです。水田の貯水機能やため池、里山林、緑地などを地域づくりに役立て、防災・減災、生物多様性の保全、脱炭素、暮らしの質の向上などに同時に貢献します。

多面的機能支払交付金

農業・農村の多面的機能を維持・発揮するため、地域共同で行う農地・農業用水路などの保全活動を支援する交付金です。詳しくは多面的機能支払交付金の解説もご覧ください。

環境保全型農業直接支払交付金

化学肥料・化学合成農薬を原則5割以上減らす取組と合わせて、地球温暖化防止や生物多様性保全に効果の高い営農活動を行う団体を支援する交付金です。関連する取組は環境にやさしい農業への転換支援もあわせてご覧ください。

みどりの食料システム戦略

環境と調和のとれた食料システムをつくるための国の戦略です。調達から生産・加工・流通・消費まで環境負荷を減らし、有機農業の拡大などを進めます。支援体制はみどりの食料システム戦略の認定と支援体制で解説しています。