農泊は、単なる「田舎民宿」ではなく、滞在を軸に農林水産業・地域資源・関係人口創出を結びつける政策です。定義と国家目標から、いまの伸び、インバウンド・高付加価値化の支援、佐久市の酒蔵ホテル事例までを、農泊を始めたい・伸ばしたい地域向けに整理します。

概要

項目 内容
誰に 農泊を推進する自治体・DMO・地域実行組織、農林漁業者、古民家・滞在施設の整備を検討する事業者です。
何を 農泊の定義、国家KPI、支援メニュー、宿泊者数の伸び、インバウンド重点地域、高付加価値化の事例です。
目標数値 令和11年度まで1,200万人泊・売上2,200億円(基本計画)。採択農泊地域は令和5年度794万人泊
詳細はどこで 農林水産省「農泊の推進」、「Countryside Stay Japan」をご覧ください。
農泊の定義、KPI1200万人泊・2200億円、佐久市酒蔵ホテル事例、794万人泊、インバウンド重点40地域、Countryside Stay Japan。
農泊推進の目標・実績・支援(出典:農林水産省「令和6年度 食料・農業・農村白書」

農泊とは

農泊とは、農山漁村に宿泊し、滞在中に地域資源を活用した食事や体験等を楽しむ農山漁村滞在型旅行のことです。

目的は、農山漁村の所得向上関係人口の創出です。そのために次を一体的に支援します。

  • 農泊地域の実施体制の整備、経営の強化
  • 食や景観の観光コンテンツとしての磨き上げ
  • 国内外へのプロモーション
  • 古民家を活用した滞在施設の整備

「体験だけ提供して宿泊は近隣都市」ではなく、滞在そのものが地域経済と人的つながりの起点になる設計が政策の核心です。

国家目標(食料・農業・農村基本計画)

令和7年4月11日閣議決定の食料・農業・農村基本計画では、次が掲げられています。

  • インバウンドを含む旅行者の農村への誘客促進
  • 宿泊単価等の向上(高付加価値化)に資する取組
  • 輸出拡大との相乗効果

令和11年度までのKPIは次のとおりです。

指標 目標(令和11年度まで)
農泊地域での年間延べ宿泊者数 1,200万人泊
農泊地域における宿泊等の売上額 2,200億円

人数だけでなく売上・単価も目標に含まれるため、低単価の大量誘客より、付加価値の高い滞在商品づくりが政策の方向と一致します。

推進の状況

農山漁村振興交付金による農泊推進支援に採択され、農泊に取り組む地域(農泊地域)の宿泊者数は、令和4年度611万人泊から令和5年度794万人泊約1.3倍に増えました。

国の支援は次の柱も含みます。

  • 農泊インバウンド受入促進重点地域(40地域)——海外向けプロモーション、受入環境整備の優先支援
  • 農泊みらい交流フォーラム——特色ある農泊地域の事例紹介、地域間・旅行業者との交流
  • Countryside Stay Japan——農泊地域の多言語紹介

インバウンドを狙う地域は、重点40地域の要件・支援内容と、英語対応・受入体制の整備状況をセットで確認してください。

高付加価値化の事例——長野県佐久市

SAKU酒蔵アグリツーリズム推進協議会(酒蔵ホテル®)は、現役酒蔵での蔵人体験を高付加価値で提供する取組です。

  • 2.5畳の部屋で2泊3日9万円/人の商品を実現
  • 英語案内ツアーは2泊3日14万円/人——令和5年度はインバウンド率40%
  • 泊食分離で地域の飲食店にも裨益
  • 地域雇用の創出と、営業効率化による従業員時給の向上

宿泊本体を高単価化しつつ、食事を地域の飲食店に分散させる泊食分離は、農泊の収益を地域全体に広げる設計の参考になります。あなたの地域でも「何を高く売り、何を地域商業に回すか」を最初に決めると、実行組織・事業者・飲食店の役割分担が整理しやすくなります。

農泊を始める・伸ばすとき

  1. 地域実行組織(協議会・DMO等)と実施体制を確認する
  2. 体験・食・宿のどこで付加価値を取るか(泊食分離の可否を含む)を決める
  3. 農山漁村振興交付金の農泊推進支援公募の有無を都道府県・農政局で確認する
  4. 海外需要を見込むなら重点地域制度とCountryside Stay Japan掲載要件を確認する

キーワード解説

農泊

農山漁村滞在型旅行。宿泊と体験・食を組み合わせ、所得と関係人口創出を目指します。

関係人口

移住・定住に加え、通い・滞在で地域と継続的につながる人びと。農泊は関係人口創出の主要手段のひとつです。

農泊地域

農泊推進支援に採択され、一体的な取組を進める地域です。宿泊者数の統計はこの地域を対象に集計されます。