農山漁村の課題解決に取り組む企業・団体を対象に、農林水産省が3つの制度・プログラムの募集を令和8年6月30日に始めました。国が取組を証明する「取組証明書」、社会的・環境的なインパクトまで証明する新設の「インパクト証明書」、そして地域金融機関のマッチングで実装につなぐ「『農山漁村』インパクト創出ソリューション実装プログラム」の3つです。締切は7月27日・8月12日・8月31日と分かれます。この記事では、3制度の違い、応募できる方と得られること、締切と相談先を整理します。
概要
| 誰が | 農山漁村の課題解決に資する取組を行う企業・団体。自治体農政担当、農業法人、地域の取組主体も、自らの取組で対象になり得ます。 |
| 何を | 国が取組を証明・実装する3制度(取組証明書/インパクト証明書/ソリューション実装プログラム)の令和8年度募集。 |
| いつまでに | ソリューション実装プログラムは7月27日、取組証明書は8月12日、インパクト証明書は8月31日(いずれも令和8年・18時締切)。 |
| 得られること | 国のお墨付き(証明書・ロゴマーク)による対外発信力、金融機関・投資家への訴求、地域金融機関の伴走支援によるマッチング。 |
| 位置づけ | 交付金ではなく、民間企業等との官民共創で農山漁村の地方創生を進める枠組みです。 |
| 詳しくは | 各制度の募集要領(農林水産省の各制度ページ)でご確認ください。 |
なぜこの3制度が始まったのか
農山漁村では、人口減少や高齢化が進み、農業者の大幅な減少や地域コミュニティの維持が難しくなる課題が深刻になっています。こうした課題は自治体だけでは解決が難しく、課題解決に役立つ技術やサービスを持つ民間企業等との官民共創で地方創生を進めることが求められています。
この背景を受け、農林水産省は農山漁村の課題解決に貢献する企業等の取組を後押しするため、3つの制度・プログラムを用意しました。国が企業等の取組を証明し、さらに地域金融機関のマッチングを通じて現場への実装まで進める点が特徴です。地域資源を生かした付加価値づくりを支援する農山漁村振興交付金(地域資源活用価値創出対策)のような補助・交付とは役割が異なり、この3制度はお金を配る仕組みではありません。
3制度の違いを比べる
3つは目的も締切も別々です。まず全体像を表で確認しましょう。自分の取組がどの段階にあるかで、応募すべき制度が変わります。
| 制度・プログラム | 対象・得られること | 令和8年度の募集期間 |
|---|---|---|
| 取組証明書 | 農山漁村の振興に資する取組を国が証明。ロゴマークを広報や地域とのコミュニケーションに使えます。令和7年度に開始し、初年度は50の企業等が取得しました。 | 6月30日〜8月12日(18時締切) |
| インパクト証明書 | 取組が生む社会的・環境的なインパクトまで証明する新制度。インパクトレポートへの掲載等で、金融機関・投資家に取組を訴求できます。 | 6月30日〜8月31日(18時締切) |
| ソリューション実装プログラム | 課題解決に役立つ取組を選定し、地域金融機関等向けカタログに掲載。その伴走支援で農山漁村とのマッチングにつなぎます。令和7年度は11件を選定しました。 | 6月30日〜7月27日(18時締切) |
取組証明書
取組証明書は、農山漁村の振興に資する企業等の取組に対して国が証明を行う制度です。令和7年度に始まり、初年度は50の企業等が取得しました。取得した企業等は、専用のロゴマークを対外的な発信に活用し、自らの取組の広報ツールや、地域とのコミュニケーションツールとして使えます。まず「国のお墨付きを得て、取組を対外的に発信したい」という段階の企業等に向いています。
令和8年度の募集期間は6月30日から8月12日18時までです。制度説明会は7月7日に、後述のソリューション実装プログラムと合同で開かれる予定です。証明書を取得した企業等の公表は令和8年10月頃の見込みです。
インパクト証明書
インパクト証明書は令和8年度から始まる新しい制度です。取組がどのような社会的・環境的なインパクトの創出につながっているかまで踏み込んで証明します。取得には、自らの取組がどんなインパクトを生んでいるかについて目標・指標を設定し、モニタリングする体制を整えながら可視化していくことが求められます。審査は、インパクト投資等に詳しい外部専門家による2段階で行われます。
取得した企業等は、取組証明書と同じく対外的な広報や地域とのコミュニケーションに使えるうえ、インパクトレポートへの掲載などを通じて、金融機関や投資家といったステークホルダーに取組を訴求できます。証明書の取得に取り組む過程そのものが、自らの取組の社会的な意義を見つめ直す機会にもなります。
令和8年度の募集期間は6月30日から8月31日18時までです。制度説明会は7月8日に開かれる予定です。応募締切のあとに一次審査・二次審査などを行い、証明書を取得した企業等の公表は令和9年3月頃の見込みです。
ソリューション実装プログラム
「『農山漁村』インパクト創出ソリューション実装プログラム」は、農山漁村の課題を解決し、社会や環境にインパクトを生み得る取組を「ソリューション」として選ぶプログラムです。令和7年度は11件を選定し、自治体とのマッチングや伴走支援を行いました。
令和8年度に選ばれたソリューションは、地域金融機関等を中間支援組織とするマッチング事業向けのカタログに取りまとめられます。カタログは9月下旬頃に農林水産省のウェブサイト等で公表され、地域金融機関等に紹介されます。そのうえで、地域金融機関等の伴走支援の下、農山漁村と選定企業とのマッチングを通じて取組の実装につなげていきます。証明書とは違い、現場での実装まで後押しする点が特徴です。
令和8年度の募集期間は6月30日から7月27日18時までで、3制度のなかで最も早く締め切られます。制度説明会は7月7日に取組証明書と合同で開かれる予定です。
応募できる方と要件
いずれも、農山漁村の課題解決に資する取組が対象です。応募要件は制度によって少し異なります。
取組証明書・インパクト証明書の主な要件
- 農山漁村の振興に資する取組を現に行っていること。
- その取組を今後も継続する見込みがあること。
- 証明書や取組内容等を、農林水産省ウェブサイトや有識者検討会等で公表することに同意できること。
- 【インパクト証明書のみ】発行後も、インパクトの測定に必要なデータを適切に管理・収集し、農林水産省や事務局の求めに応じて提供に協力できること。
- 法令違反や公序良俗に反する行為がないこと。
- 会社更生・民事再生・破産の手続を開始していないこと。
- 暴力団等と社会的に非難されるべき関係がないこと。
ソリューション実装プログラムの主な要件
上記に加えて、農山漁村の課題を解決できるソリューションを持っていること、事業期間を通じて課題解決に取り組む組織的・財務的な体制を整えられること、法人格を有することが求められます。
自分はどれに応募すべきか
取組の段階に合わせて選びます。次のように整理すると分かりやすいです。
- まず国のお墨付きで発信したい:取組証明書に応募しましょう。締切は8月12日です。
- インパクトを可視化し、金融機関・投資家に訴求したい:インパクト証明書に応募しましょう。目標・指標の設定とモニタリング体制の準備が要ります。締切は8月31日です。
- 自社のソリューションを農山漁村の現場で実装したい:ソリューション実装プログラムに応募しましょう。締切が7月27日と最も早いので、準備を急ぎましょう。
応募の手続きは、それぞれの募集要領で確認します。提出書類のうち様式1は3つの取組で共通です。取組証明書とソリューション実装プログラムは、7月7日の合同説明会で内容を確かめられます。制度の相談・応募先は、下の出典に載せた各制度の詳細ページからたどれます。
よくある質問
3つは補助金や交付金ですか
いずれも補助金・交付金ではありません。国が取組を証明したり、地域金融機関のマッチングにつないだりして、官民共創で農山漁村の課題解決を進める仕組みです。金銭の交付を伴う地域資源活用の交付金とは役割が異なります。
取組証明書とインパクト証明書は両方とれますか
目的が異なる別々の制度で、募集も別に行われます。取組そのものを証明するのが取組証明書、その取組が生む社会的・環境的なインパクトまで証明するのがインパクト証明書です。まず取組証明書から始め、インパクトの可視化が整った段階でインパクト証明書に進む考え方もできます。
自治体や農業法人でも関われますか
証明書はいずれも「企業等」の取組を対象とします。自治体は、ソリューション実装プログラムでは選定企業とのマッチングの受け手にもなります。地域の取組主体は、自らの取組が農山漁村の振興に資するものであれば、要件を確かめたうえで応募を検討できます。
キーワード解説
官民共創
行政と民間企業等が、それぞれの強みを持ち寄って地域の課題解決に取り組む考え方です。自治体単独では解決が難しい農山漁村の課題に、民間の技術・サービスを組み合わせて地方創生を進めます。関連する場づくりは農山漁村の振興プラットフォームでも解説しています。
取組証明書
農山漁村の振興に資する企業等の取組に対して、国が証明を行う制度です。令和7年度に開始し、取得した企業等はロゴマークを対外発信に活用できます。正式には「農山漁村振興への貢献活動に係る取組証明書」といいます。
インパクト証明書
令和8年度から始まる制度で、取組が生む社会的・環境的なインパクトまで含めて国が証明します。取得には目標・指標の設定とモニタリング体制の構築が必要で、外部専門家による2段階の審査を経ます。正式には「農山漁村振興への貢献活動に係るインパクト証明書」といいます。
インパクト
事業や活動の結果として生じた社会的・環境的な変化や効果(短期・長期を問わない)を指します。農林水産省は農山漁村の課題解決につながるインパクトを7つに分類・特定し、「『農山漁村』インパクト可視化ガイダンス」として取りまとめています。
インパクト創出ソリューション実装プログラム
農山漁村の課題を解決し得る取組を「ソリューション」として選び、地域金融機関等向けのカタログに取りまとめるプログラムです。地域金融機関等の伴走支援の下、農山漁村と選定企業のマッチングを通じて取組の実装につなげます。