食品製造業の省力化・自動化への設備投資には、令和7年度補正予算の補助金が使えます。AI・ロボットなどの新技術を自社工場に導入するなら補助率1/2以内・上限4,000万円、複数社での共同開発なら上限9,000万円、国産原材料の取扱量を増やす投資なら上限2億円が用意されています。公募は2026年1月が締切の事業が中心です。対象者・補助率・上限額・締切・申請先を、食品製造事業者の目線で整理します。制度の詳細や最新の要件は、公募要領など一次情報でご確認ください。
要点
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 誰が | 省力化・自動化に投資する食品製造事業者。省力化技術導入支援事業は従業員2,000人以下の中堅・中小に限られます。外食業でも自社で食品製造を営んでいれば対象になります。 |
| 何に | 省力化・省人化につながる機械設備の導入費、システム構築費、エンジニア経費など。リース料・レンタル料は対象外です。 |
| 補助率 | 3事業とも1/2以内。上限は事業ごとに4,000万円・9,000万円・2億円です。 |
| 締切 | 省力化技術導入支援事業は2026年1月15日、業種横断型は2026年1月16日。産地連携支援緊急対策事業は2026年3月頃の公募開始予定です。 |
| 詳細は | 農林水産省「食品産業の生産性向上・省力化」と、各事業の公募要領をご覧ください。 |
対象となる食品事業者は
まず自社が対象かを確認しましょう。中心となる省力化技術導入支援事業の対象は、食品の加工・製造を行う中堅・中小の食品製造事業者です。ここでの中堅・中小とは、パート・アルバイトや子会社の従業員を含めて常時使用する従業員が2,000人以下の事業者を指します。親会社が議決権の50%超を持つ子会社の場合、親会社を含めた全体で2,000人以上になると対象から外れます。
業種の幅は広く、飲料製造業や酒造製造業も対象です。外食事業者であっても、自社で食品製造を営んでいれば対象になります。一方、厚生労働省が所管する食品添加物は、この事業の対象に含まれません。
取り組む場所は日本国内に限られます。複数社で新技術を開発したい場合は業種横断型プロジェクト実証支援事業、国産原材料の取扱量を増やす投資をしたい場合は産地連携支援緊急対策事業と、目的に応じて使い分けられます。
使える補助金は3種類
令和7年度補正予算では、食品事業者向けに3つの補助金が用意されています。補助率はいずれも1/2以内で、対象者と上限額、締切が異なります。
| 事業(こんな方に) | 対象者 | 補助上限(補助率) | 公募締切 |
|---|---|---|---|
| 省力化技術導入支援事業 AI・ロボット等の新技術を自社工場に導入したい |
食品製造事業者(従業員2,000人以下の中堅・中小に限る) | 4,000万円(1/2以内) | 2026年1月15日 |
| 業種横断型プロジェクト実証支援事業 複数の事業者で協力して技術開発に取り組みたい |
食品事業者・機械メーカー等から成るコンソーシアム(共同申請を含む) | 9,000万円(1/2以内) | 2026年1月16日 |
| 産地連携支援緊急対策事業 国産原材料の取扱量を増やしていきたい |
食品製造事業者等 | 2億円(1/2以内)※産地支援の取組を行う場合は3億円 | 2026年3月頃 公募開始予定 |
省力化・自動化そのものが目的なら、省力化技術導入支援事業と業種横断型プロジェクト実証支援事業が中心です。
AI・ロボット導入を後押しする省力化技術導入支援事業
省力化技術導入支援事業は、AI・ロボットなどの新技術を活用した機械設備の導入を補助します。補助率は1/2以内、補助上限は4,000万円です。業界の省力化のモデルとなる取組を対象とし、成果を他社へ広げていくことを狙っています。
補助対象になる機械設備には、生産効率を対前年比で年3%以上向上させ、かつ販売後4年未満という条件が付きます。開発後に改良された設備なら、改良後4年未満であれば対象です。設備メーカーとの共同開発による特注・オーダーメイド設備も、販売後4年未満であれば対象になります。例として、多層包あん成形機、自動パン粉付け機、弁当・総菜用の盛付ロボット、AI付き製品検品用のX線センサーシステム、製品自動箱詰め装置などが挙げられます。これらは例示で、製造ラインの自動化など省人化・生産性向上に役立つ新技術であれば幅広く対象になります。
申請には省力化実行計画の策定が必要です。加えて、食品企業生産性向上フォーラムの会員となり、モデルの横展開に協力することが補助要件です。補助金額は、事業費の合計額(税抜)×1/2以内が国庫補助金となり、消費税は自己負担です。公募締切は2026年1月15日です。
複数社で技術開発する業種横断型プロジェクト実証支援事業
1社だけでは開発が難しい技術に、複数社で取り組むための補助金です。省力化など生産性向上に役立つ新技術の開発に向けて、食品事業者と機械メーカー等が連携して行うプロジェクトを支援します。補助上限は9,000万円、補助率は1/2以内です。
申請の形は2通りあります。食品企業が機械メーカー等と組む共同申請と、食品企業・機械メーカー・関係団体等を構成員とするコンソーシアムによる申請です。コンソーシアムの場合は定款や組織規程の作成などが要ります。対象経費は、機械設備の導入・改良費のほか、謝金、旅費、需用費、貸借料・使用料、委託費、人件費まで幅広く認められます。ただし、単なる自社の自動化のための機械導入は補助対象になりません。データフォーマットの標準化や後工程の自動化など、業界で共有できる協調領域の課題解決が想定されています。公募締切は2026年1月16日です。
国産原材料を増やす産地連携支援緊急対策事業
国産原材料の取扱量を増やすための設備投資を補助する事業です。補助上限は2億円(下限100万円)、補助率は1/2以内で、産地を支援する取組を行う場合は上限が3億円になります。産地との連携により国産原材料の取扱量を10%以上増やすことなどが要件です。
補助対象は、国産原材料の導入に向けた製造ラインの増設費、機械設備の導入費、食品表示変更に伴う包装資材の更新費、専門家経費、マーケティング調査などの調査経費、開発段階の原材料費などです。産地への種苗の提供や収穫機・選別機の貸与、社員派遣による生産作業補助・栽培技術指導といった、産地を支援する取組も対象になります。申請には産地連携計画の策定が必要です。公募は2026年3月頃に開始が予定されています。
申請の流れ
中心となる省力化技術導入支援事業の申請から事業完了までの流れは次のとおりです(見込みのスケジュールを含みます)。
- 省力化実行計画を策定します(申請の要件です)。
- 公募期間(2025年12月16日〜2026年1月15日)内に申請します。
- 審査を経て、2026年2月上旬頃に採用通知を受けます。
- 2026年2月下旬〜3月上旬頃の交付決定後に、機械設備を導入します。相見積もり(2件以上)を準備します。
- 2026年3月31日までに設備の設置と支払いを完了します。
- 2026年度・2027年度(令和8・9年度)に事業成果状況報告書を提出し、取組の成果を横展開します。
見落としやすい注意点
- リース・レンタルは対象外です。補助されるのは機械設備の設置費、システム構築費、エンジニア経費が中心で、リース料・レンタル料は含まれません。
- 補助金額は事業費(税抜)の1/2です。消費税は自己負担になります。上限は事業ごとに4,000万円・9,000万円・2億円です。
- 設備には「販売後4年未満」の要件があります。省力化技術導入支援事業では、生産効率が対前年比で年3%以上向上する新しい設備が対象です。改良後4年未満なら対象になります。
- 業種横断型は「自社だけの自動化」では使えません。単なる自社の自動化のための機械導入は補助対象外で、複数社で共有できる技術開発が前提です。
- 対象は日本国内の取組に限られます。
いずれも令和7年度補正予算に基づく事業で、内容は国会審議を経て変わる可能性があります。最終的な要件・様式・スケジュールは、各事業の公募要領でご確認ください。
なぜ国が食品製造業の省力化を後押しするのか
食品製造業は約128万人の雇用を抱える大きな産業ですが、常用雇用者の約半数を派遣・パート・アルバイトが占め、人手不足の影響を受けやすい構造です。事業所の約98%は従業者数300人未満の中小・零細企業で、他産業と比べて労働生産性が低い水準にとどまっています。
農林水産省は2025年6月に「省力化投資促進プラン(食品製造業)」をまとめ、製造業の労働生産性を2029年度までに24%向上させる(2024年度基準)目標を掲げました。今回の補助金は、この集中的な省力化投資を後押しする施策です。あわせて2025年度に食品企業生産性向上フォーラムを設け、優良事例の横展開や相談対応を進めています。
よくある質問
個人経営や小さな工場でも対象になりますか
省力化技術導入支援事業は、従業員2,000人以下の中堅・中小の食品製造事業者が対象です。パート・アルバイトや子会社の従業員も人数に含めます。親会社が議決権の50%超を持つ子会社の場合、親会社を含めた全体で2,000人以上になると対象外です。中小・零細規模の食品製造事業者は幅広く対象になります。
外食業や飲料・酒造業でも使えますか
外食事業者でも、自社で食品製造を営んでいれば対象になります。飲料製造業・酒造製造業も対象です。一方、厚生労働省が所管する食品添加物は、この事業の対象には含まれません。
リースやレンタルの機械設備でも補助を受けられますか
受けられません。補助の対象は機械設備の設置費、システム構築費、エンジニア経費が中心で、リース料・レンタル料は対象外です。設備メーカーとの共同開発による特注・オーダーメイド設備は、販売後4年未満であれば対象になります。
いつまでに何をすればよいですか
省力化技術導入支援事業と業種横断型プロジェクト実証支援事業の公募締切は2026年1月中旬です。省力化技術導入支援事業では、採用通知が2026年2月上旬頃、交付決定が2月下旬〜3月上旬頃、事業完了(設備の設置・支払い完了)が2026年3月31日の見込みです。申請前に省力化実行計画を策定しておきましょう。
補助金額はどう計算しますか
事業費の合計額(税抜)×1/2以内が国庫補助金です。消費税は自己負担になります。補助上限は事業ごとに、省力化技術導入支援事業が4,000万円、業種横断型が9,000万円、産地連携支援緊急対策事業が2億円(産地支援を行う場合は3億円)です。
キーワード解説
省力化実行計画
省力化技術導入支援事業の申請時に作成する計画です。人手に頼ってきた工程を見直し、作業時間の削減・労務軽減を今後数年で進める内容を整理します。省力化の定量的目標、人材育成に関する事項、外部支援機関との連携に関する事項、横展開に関する事項をすべて記入します。このうち定量的目標と横展開は成果目標に位置づけられ、達成できない場合は改善状況の報告が求められます。
産地連携計画
産地連携支援緊急対策事業の申請時に提出する計画です。国産原材料の取扱量を10%以上増やす目標、連携先の産地、産地との取組内容、調達条件などを記載します。
食品企業生産性向上フォーラム
生産性向上に取り組む食品企業を、機械メーカー・研究機関・金融機関・関係団体などと連携してサポートするために、2025年度(令和7年度)に創設された枠組みです。省力化技術導入支援事業では、会員となってモデルの横展開に協力することが補助要件です。2030年までに会員9,000社が目標に掲げられています。
コンソーシアム
業種横断型プロジェクト実証支援事業で申請する形の一つで、食品企業・機械メーカー・関係団体等を構成員とする共同体です。申請にあたっては定款や組織規程の作成などが必要です。