夏の高温で果実の表面が焼ける日焼け果は、収量と品質を直接下げる高温障害の代表例です。近年は毎年のように高温障害による減収が各地で起き、農林水産省も毎年夏、都道府県に対策の指導を求めています。この記事では、りんご・ぶどう・うんしゅうみかん・もも・なしなどの果樹農家が実践できる日焼け対策を、事前の備え、高温時の管理、発生後の対応の順に整理します。あわせて春先の凍霜害への備えもまとめます。地域ごとの具体的な指導は、都道府県やJAの営農指導機関の情報とあわせてご覧ください。

果樹の日焼け対策の要点

要点を表にまとめました。

対象となる方 りんご・ぶどう・うんしゅうみかん・もも・なしなど果樹を栽培する農家・農業法人です。
防ぎたい被害 日焼け果、着色不良、浮皮(かんきつ類)など、高温による生理障害(高温障害)です。減収や品質低下につながり、樹体へのダメージは翌年の生育にも影響します。
対策の軸 遮光資材の事前確保、土壌を乾かさないかん水、樹冠表層の摘果、品目に応じた着色管理です。発生後は重度の被害果だけを摘果します。
特に注意する時期 梅雨明けから9月ごろまでの高温期です。2週間気温予報や3か月予報で高温が見込まれるときは、早めに対策を始めましょう。
詳しくは 農林水産省「被害防止等に向けた技術指導」のページと、都道府県・JAの営農指導機関の技術情報をご覧ください。

日焼け果はなぜ起きるのか

日焼け果は、強い直射日光と高温で果実の表面温度が上がりすぎ、果皮や果肉の細胞が傷む生理障害です。高温で土壌が乾燥すると、葉からの蒸散が抑えられて樹全体の温度が下がりにくくなり、日焼けはさらに助長されます。つまり「日差し」と「水不足」の両方が重なったときに被害が大きくなります。

近年は夏の高温傾向が続き、日焼け果や着色不良などの高温障害が各地で頻発しています。農林水産省は毎年夏、梅雨明けの早さや気温予報を踏まえ、地方農政局を通じて都道府県に技術指導の徹底を求めています。高温障害は一度発生すると取り返しがつきにくいため、対策は「発生してから」ではなく「発生する前」が基本です。

事前の備えでできること

高温障害のリスクが高まる前に、次の準備を済ませておきましょう。いずれも農林水産省が技術指導で求める事前対策です。

  • 遮光資材を先に確保する。遮光ネットや傘状の遮光資材は、暑さが本格化してからでは手に入りにくくなります。リスクが高まったらすぐ使えるよう、あらかじめ入手しておきます。
  • かん水設備を点検する。貯水タンクやスプリンクラーを点検・整備し、不具合はこの段階で修繕します。農業用水の確保が必要な地域では、関係機関と計画的な配水の調整も行われます。
  • 樹冠表層の果実を摘果する。日焼けは日差しを直接受ける表層部の果実に出やすいため、表層の果実を摘果したうえで葉陰の果実を残すと、リスクを避けながら収量を確保できます。
  • 防風林を手入れして風通しを良くする。園内に熱がこもるのを防ぎます。
  • 作業計画と防除を見直す。高温が続くと生育ステージが急に前進することがあります。農作業計画を見直し、都道府県病害虫防除所の発生予察情報を集めて適期防除に努めましょう。

高温が続く時期の管理

2週間気温予報や1か月・3か月予報で高温が見込まれるときは、営農指導機関の指導も踏まえて、早めに次の管理を始めます。

かん水で土壌を乾かさない

高温対策の土台はかん水です。土壌が乾燥すると蒸散が抑えられて高温障害が助長されるため、土壌を乾かさないよう十分にかん水します。市販の簡易土壌水分計を使えば、感覚に頼らず数値を目安にしたかん水管理ができます。干ばつ傾向の年は、ハダニ類の防除もあわせて行いましょう。

遮光資材で果実を守る

日焼けが発生しやすい園地では、遮光ネットや傘状資材などによる遮光対策をとります。事前に確保しておいた資材を、高温障害のリスクが高まった段階でためらわずに使うことが大切です。

収穫時期と収穫後の品質に気を配る

高温で着色が遅れると、収穫を待つうちに果実が過熟になるおそれがあります。糖度や食味を確認しながら適期収穫に努めましょう。貯蔵で出荷時の着色を促進できる品目では、貯蔵の着色効果を見込んで早めに収穫すると収量を確保できます。日持ちを落とさないよう高温の時間帯の収穫は避け、収穫後は風通しの良い場所で選別・保管します。着色などの出荷規格を急に変えることは難しいため、規格の柔軟な扱いが必要になりそうなときは、事前に流通・販売の関係者と相談しておきましょう。

りんご・うんしゅうみかん・ぶどうの品目別対策

りんごとうんしゅうみかんの年間の生育ステージ・栽培管理と、高温・台風・積雪など気象現象ごとの被害防止対策の一覧。日焼け果と着色不良果の写真つき。
農林水産省「品目ごとの気象被害防止に向けた技術対策」

りんごとうんしゅうみかんでは、6月から9月ごろの高温期の「着色不良対策」「適期収穫」「日焼け果対策」が年間管理の要になります。農林水産省は、品目ごとに次の対策を求めています。

品目 高温で起きやすいこと 対策
りんご 気温が高い時期に一斉の葉摘みをすると、日陰から急に日光を浴びた果実が日焼けします。 葉摘み作業を複数回に分ける、または曇天が続く日に実施して、日焼け果の発生を防ぎます。
うんしゅうみかん 果実成熟期の高温・多雨で浮皮が助長されるおそれがあります。 植物生育調節剤を使用して浮皮の発生防止に努めます。夏の管理で欠かせない対策です。
ぶどう 果皮の着色が高温で抑制されます。 植物生育調節剤を使用して着色を促します。

ここに挙がっていない品目でも、高温障害を助長する要因は品目ごとにあります。かん水・遮光・摘果といった基本技術を徹底したうえで、都道府県の技術情報を参考に品目に応じた対策を講じましょう。

もも・なしの夏の管理

ももとなしの年間の生育ステージ・栽培管理と、高温・台風・積雪など気象現象ごとの被害防止対策の一覧。防災網を設置したなし園の写真つき。
農林水産省「品目ごとの気象被害防止に向けた技術対策」

ももとなしでも、高温・少雨の時期の対策は共通です。かん水の実施とハダニ類の防除を基本に、着色不良対策・適期収穫・日焼け果対策を組み合わせます。夏台風・秋台風の後は、日焼けと樹脂病への対策、樹勢に応じた施肥・剪定・摘果、落果した果実の保管・選別・出荷も必要になります。ひょう害が心配な地域では、防災網の設置で被害の発生自体を防げます。

日焼け果が出てしまったら

発生後の対応は「摘果の見極め」と「樹体の回復」です。

  • 重度の被害果だけを摘果します。商品価値のない重度の日焼け果は摘果して適切に処理し、商品価値がある軽度の被害果はそのまま着果させます。被害果をすべて落とす必要はありません。
  • かん水を続けて樹体を回復させます。高温と水ストレスによる樹へのダメージを翌年に持ち越さないよう、水分ストレスの軽減対策を発生後も続けます。

中期的には、水ストレスを受けにくい土づくりを進めると、高温障害の発生リスクそのものを下げられます。日頃の土壌管理が、猛暑の年の被害の差になって表れます。

春先の凍霜害にも備える

果樹の気象災害は夏の高温だけではありません。春先に生育が前進した年は、発芽・開花期の不意の低温で凍霜害が発生しやすくなります。農林水産省は令和8年3月にも、凍霜害防止策の徹底を求める通知を出しました。夜間に雲がなく風が弱い放射冷却の夜や、夕方の湿度が低い日は特に注意が必要です。

  • 防霜ファンの稼働や燃焼資材の活用で降霜を防ぎます。燃焼資材を使う場合は火災防止に配慮し、固形燃料や灯油・軽油などばい煙の少ない燃料を使います。
  • 凍霜害が心配される時期は、摘蕾・摘花を控えめにします。凍霜害に弱い樹種・品種では、作業適期の範囲でできるだけ遅らせます。
  • 被害が出た場合は、残った花への人工授粉で結実を確保し、幼果の状態をよく観察してから摘果します。
  • 下草は常に低く刈り込み、敷きワラなどのマルチは凍霜害の危険期を過ぎてから行います。伸びた下草やマルチは夜間の放熱を妨げ、園内の冷却を助長するためです。

作業する人の熱中症対策も忘れずに

高温障害への対応は、園地で作業する人自身の危険と隣り合わせです。高温下での長時間作業を避け、こまめな水分・塩分補給と休憩をとりましょう。冷却ベストやネッククーラーなどの対策アイテムも役立ちます。高齢の方はのどの渇きや暑さを感じにくく、気づかないうちに熱中症になることがあります。単独での作業を避け、家族や従業員が定期的に様子を見に行く体制をつくりましょう。

キーワード解説

高温障害

高温の影響で発生する生理障害の総称です。果樹では日焼け果、着色不良、浮皮などが代表的で、収穫物の減収や品質低下を招き、樹体へのダメージは翌年度の生育にも影響します。

日焼け果

強い日差しと高温で果実の表面温度が上がり、果皮や果肉が傷んだ果実です。直射日光を受ける樹冠表層の果実に発生しやすく、土壌の乾燥で助長されます。

浮皮

うんしゅうみかんなどで、果皮と果肉の間にすき間ができて皮が浮いた状態です。果実成熟期の高温・多雨で助長され、貯蔵性や食味の低下につながります。

植物生育調節剤

植物の生育や着色などを調節する薬剤です。うんしゅうみかんの浮皮防止や、ぶどうの着色促進に使われます。使用にあたっては登録内容と都道府県の指導に従います。

凍霜害

発芽・開花期など低温への耐性が低い時期に低温に遭って起こる被害です。春先の生育が早く進んだ年ほど、遅霜による被害のリスクが高まります。

よくある質問

日焼け果を防ぐには何から始めればよいですか

遮光ネット・傘状資材の確保と、かん水設備の点検から始めましょう。どちらも高温が本格化してからでは間に合いにくい準備です。そのうえで、日焼けリスクの高い樹冠表層の果実を摘果して葉陰の果実を残すと、収量を確保しながら被害を減らせます。

日焼け果が出てしまったら全部落とすべきですか

すべて落とす必要はありません。商品価値のない重度の被害果だけを摘果して処理し、商品価値のある軽度の被害果はそのまま着果させます。あわせて、かん水などの水分ストレス軽減対策を続けて樹体を回復させると、翌年への影響を抑えられます。

りんごの葉摘みはいつ行えばよいですか

気温が高い時期に一斉に葉摘みをすると、急に日光を浴びた果実が日焼けするおそれがあります。葉摘み作業を複数回に分散するか、曇天が続く日に実施しましょう。

高温障害による減収は補償を受けられますか

果樹共済や収入保険に加入していれば、自然災害や価格低下による減収の補償を受けられる場合があります。補償の対象や範囲は制度・契約内容によって異なるため、加入先のNOSAI(農業共済組合)や農業共済組合連合会にご確認ください。