病害虫発生予報とは
国は都道府県の協力のもと、植物防疫法に基づき、有害動植物の防除を適時かつ経済的に行うため、気象・作物生育・発生調査などを分析し、発生予察情報を提供しています。「病害虫発生予報」は、都道府県が提供する発生予察情報を取りまとめたものです。地域ごとの細部は、都道府県病害虫防除所のホームページ等が基準になります。
温暖化や薬剤抵抗性の進行などを背景に、病害虫・雑草対応は難しくなっています。農林水産省は、消費者に支持される食料の安定供給のために、「予防・予察」を重視した総合防除で、発生しにくい生産環境づくりと、適時適切な防除によるまん延防止・損害軽減を呼びかけています。関連して、総合防除の 実践ガイドライン や 実践マニュアル が示されています。
8月の気象の見通し
気象庁の向こう1か月予報(令和8年7月30日付け)では、気温は全国で高いと予想され、特に北日本・東日本・西日本では期間の前半にかなり高くなる見込みです。降水量は、北日本・東日本日本海側・西日本日本海側で平年並か少ない、東日本太平洋側・西日本太平洋側でほぼ平年並、沖縄・奄美で多い見込みです。日照量は、北日本・東日本日本海側・西日本日本海側で平年並か多い、東日本太平洋側・西日本太平洋側でほぼ平年並、沖縄・奄美で平年並か少ない予想です。高温は病害虫の発育・増殖を早めるため、ほ場観察と適期防除を徹底してください。詳細は 気象庁の長期予報 を参照してください。高温そのものによる白未熟粒・胴割れの対策は、米の高温対策の記事で栽培管理と支援策をまとめています。
最新号で多くなる見込みの主な病害虫
- 水稲の斑点米カメムシ類:東北・関東・甲信・北陸・東海・近畿・中国・四国・北九州の一部で多くなる見込み。
- 野菜・花きのオオタバコガ、シロイチモジヨトウ:北関東等の一部で多くなる見込み。
- 果樹カメムシ類:北関東・中国・四国・南九州の一部で多い見込み。
このほか、いちごのうどんこ病など、地域によっては多くなる病害虫があります。都道府県の発生予察情報を参考に、適期の防除を実施してください。
水稲:発生が平年より多い・やや多いと予想される病害虫
表中の地域は必ずしも全域ではありません。
| 病害虫名 | 「多い」 | 「やや多い」 |
|---|---|---|
| 斑点米カメムシ類 | 東北、関東、甲信、北陸、東海、近畿、中国、四国、北九州 | ― |
| コブノメイガ | 九州 | 北東北、中国 |
| いもち病 | ― | 北海道、甲信、中国、北九州 |
| 紋枯病 | ― | 東北、北関東、甲信、北陸、中国 |
水稲:防除で押さえたいポイント
斑点米カメムシ類
東北から北九州までの広い範囲で多くなる見込みで、第5号の発表以降、岩手県・宮城県・秋田県・山形県・埼玉県・長野県・新潟県・石川県・京都府・島根県・福岡県・佐賀県の12県から注意報が発表されています。多くの種が水田周辺の雑草で増え、出穂期に水田へ侵入して穂を吸汁します。
侵入を抑えるには、出穂の10日前までに水田周辺の畦畔・農道・休耕田の雑草管理を終えることが有効です。移動・分散能力が高いため、地域一斉の除草が効果を左右します。水田内のノビエやイヌホタルイはアカスジカスミカメの増殖源になるため、確実に除草してください。防除適期は出穂期から登熟期で、多くの地域では2回の薬剤散布が推奨されています。1回目は出穂期から穂揃期(出穂3〜7日後ごろ)、2回目はその7〜10日後が目安です。発生が多い場合は追加散布も検討してください。薬剤抵抗性の個体が確認された地域もあるため、同一系統の薬剤の連用を避けてローテーション散布します。防除の考え方は 斑点米カメムシ類の防除(農林水産省) を参照してください。
吸汁を受けた米粒は着色粒となり、混入率が高いと農産物検査の等級が下がって手取りが減ります。散布をドローンで行う場合は資格と許可が必要なため、ドローンでの農薬散布の記事で申請の流れを確認できます。
イネカメムシ
斑点米カメムシ類の一種で、斑点米だけでなく不稔による減収被害も引き起こし、岐阜県・京都府・鳥取県から注意報が発表されています。不稔を防ぐには、他の主要な斑点米カメムシ類と異なり出穂期(出穂3日後ごろ)の防除が重要です。稲を好んで加害するため、周囲より出穂が早い品種の水田や、防除しない飼料用米の水田は集中的に加害されることがあります。こうした水田は本田内をよく観察してください。
コブノメイガ
九州の一部で多く、北東北・中国の一部でやや多くなる見込みで、鹿児島県から注意報が出ています。上位葉の被害が増えると収量に影響するため、本田での発生状況をつかみ、都道府県の発生予察情報を参考に若齢幼虫の最盛期をとらえて防除します。
いもち病
北海道・甲信・中国・北九州の一部でやや多くなる見込みです。降雨や結露で葉が長時間濡れる感染好適条件が続くと、急激に発生・まん延するおそれがあります。葉いもちが多く上位葉に病斑が見られる場合は穂いもちへの移行が懸念されるため、ほ場を観察し、穂いもちに進展しないよう発生状況に応じて防除します。一部の薬剤で耐性菌が発生しているため効果的な薬剤を選び、発生を助長しないよう適正な肥培管理に努めてください。
紋枯病
東北・北関東・甲信・北陸・中国の一部でやや多くなる見込みです。高温多湿条件で発生が助長され、昨年多発したほ場は伝染源の菌核が増えて本年も多発するリスクが高まっています。上位葉が発病すると減収につながるため、株元をよく観察し、中位葉まで進展した株が多い場合は上位葉に進展しないよう防除します。
野菜・花き:発生が平年より多いと予想される病害虫
表中の地域は必ずしも全域ではありません。
| 作物名 | 病害虫名 | 「多い」 | 「やや多い」 |
|---|---|---|---|
| いちご | ハダニ類 | ― | 北関東、四国 |
| いちご | うどんこ病 | 北関東、中国 | 甲信、東海 |
| きゅうり | アザミウマ類 | 北東北 | 甲信 |
| ねぎ | アザミウマ類 | 北東北 | 南関東、甲信 |
| 作物共通 | オオタバコガ | 北関東 | 南東北、甲信、近畿 |
| 作物共通 | シロイチモジヨトウ | 北関東、近畿、四国 | 南東北 |
いちごのうどんこ病
北関東・中国の一部で多くなる見込みです。気温が高い夏はうどんこ病菌の活動が抑えられ、潜伏したまま本ぽへ持ち込まれるおそれがあります。発生を助長しないよう適正な肥培管理に努め、不要な下葉の除去と薬剤防除を徹底しましょう。一部の薬剤で耐性菌が発生しているため、都道府県の発生予察情報を参考に効果的な薬剤を選びます。
オオタバコガとシロイチモジヨトウ
北関東等の一部で多くなる見込みで、京都府からシロイチモジヨトウの注意報が出ています。幼虫は果実・花蕾・結球の内部に食入するため、発生初期の防除が要です。ほ場内をきめ細かく観察して早期発見に努め、適期に防除します。施設栽培では開口部に防虫ネットを適切に張り、成虫の侵入を防いでください。一部の薬剤で感受性の低下が認められているため、同一系統薬剤の連用を避けて効果の高い薬剤を選びます。
果樹・茶:発生が平年より多いと予想される病害虫
| 作物名 | 病害虫名 | 「多い」 | 「やや多い」 |
|---|---|---|---|
| 果樹共通 | 果樹カメムシ類 | 北関東、中国、四国、南九州 | 南東北、近畿 |
第5号の発表以降、群馬県と宮崎県から注意報が発表されています。今後はスギ・ヒノキで繁殖した当年世代が園地へ飛来します。薄暮から夜間に活動するため夕方の薬剤散布が効果的で、地域一斉に散布すると効果が高まります。発生状況を地域で共有し、可能な限り一斉防除を実施してください。
台風の通過後は特に注意が必要です。強風で果樹カメムシ類が山林から強制的に離脱し、スギ・ヒノキの球果の脱落や倒木で餌不足が起きると、園地への飛来が早まり飛来量も増える可能性があります。台風通過後は園内の観察をきめ細かく行い、飛来が認められた時点から防除を始めてください。スギ林・ヒノキ林に隣接する園地は被害が多い傾向のため、引き続き飛来状況に留意します。詳細は カメムシ類の防除(農林水産省) を参照してください。
都道府県が発表した警報・注意報・特殊報
警報:発表なし(重要な病害虫の大発生が予測され、早急な防除が必要な場合に発表)。
注意報
令和8年7月16日以降に都道府県が発表した注意報です。
| 発表月日 | 都道府県 | 対象作物 | 対象病害虫 |
|---|---|---|---|
| 7月22日 | 鳥取県 | イネ | 斑点米カメムシ類(イネカメムシ、アカスジカスミカメ、クモヘリカメムシ、ホソハリカメムシ、トゲシラホシカメムシ、シラホシカメムシ等) |
| 7月22日 | 大分県 | トマト、ミニトマト | トマトキバガ |
| 7月22日 | 大分県 | ピーマン | アザミウマ類 |
| 7月22日 | 岐阜県 | 水稲 | 斑点米カメムシ類(シラホシカメムシ類、クモヘリカメムシ、アカヒメヘリカメムシ、イネカメムシ等) |
| 7月22日 | 島根県 | カキ、ナシ、スモモ | 果樹カメムシ類 |
| 7月23日 | 京都府 | 水稲 | 斑点米カメムシ類 |
| 7月23日 | 京都府 | ネギ等野菜類、豆類、花き類 | シロイチモジヨトウ |
| 7月23日 | 宮城県 | 水稲 | 斑点米カメムシ類 |
| 7月27日 | 沖縄県 | マンゴー | マンゴーハフクレタマバエ |
| 7月27日 | 山形県 | 水稲 | 斑点米カメムシ類 |
| 7月27日 | 石川県 | 水稲 | 斑点米カメムシ類(クモヘリカメムシ、ホソハリカメムシ、アカヒゲホソミドリカスミカメ等) |
| 7月27日 | 宮崎県 | 果樹全般 | 果樹カメムシ類 |
| 7月28日 | 岩手県 | 水稲 | 斑点米カメムシ類 |
| 7月28日 | 秋田県 | 水稲 | 斑点米カメムシ類 |
| 7月28日 | 群馬県 | 果樹(モモ、スモモ、ブドウ、ナシ、リンゴ、キウイフルーツ) | 果樹カメムシ類(チャバネアオカメムシ) |
| 7月29日 | 新潟県 | 水稲(特に中晩生品種) | 斑点米カメムシ類(特にアカスジカスミカメ) |
| 7月29日 | 長野県 | 水稲 | 斑点米カメムシ類 |
| 7月29日 | 佐賀県 | 早植え及び普通期水稲 | 斑点米カメムシ類 |
| 7月29日 | 埼玉県 | イネ | 斑点米カメムシ類(イネカメムシ、ホソハリカメムシ、イネホソミドリカスミカメなど) |
| 7月29日 | 福岡県 | 水稲 | 斑点米カメムシ類 |
| 7月29日 | 岐阜県 | 大豆、野菜類、果樹類および花き類 | ハスモンヨトウ |
| 7月29日 | 鹿児島県 | 普通期水稲 | コブノメイガ |
| 7月30日 | 京都府 | チャ | チャノコカクモンハマキ |
| 7月31日 | 島根県 | 水稲 | 斑点米カメムシ類 |
注意報は、警報を発表するほどではないものの、重要な病害虫が多発すると予測され早めの防除が必要な場合に発表されます。その地域で経済的被害が発生したことを示すものではありません。
特殊報
令和8年7月8日以降に都道府県が発表した特殊報です。
| 発表月日 | 都道府県 | 対象作物 | 対象病害虫 |
|---|---|---|---|
| 7月13日 | 京都府 | ウメ | ウメ輪紋ウイルス(plum pox virus:PPV) |
| 7月14日 | 神奈川県 | ウメ | クビアカツヤカミキリ |
| 7月15日 | 愛知県 | 水田作物(休耕田) | オオバナミズキンバイ |
| 7月15日 | 山梨県 | モモ | クビアカツヤカミキリ |
| 7月21日 | 香川県 | サクラ、スモモ | クビアカツヤカミキリ |
| 7月22日 | 千葉県 | サツマイモ | 白さび病 |
| 7月27日 | 福井県 | 水稲 | ミナミアオカメムシ |
| 7月30日 | 福岡県 | 大豆 | ダイズ褐色根腐病 |
| 7月31日 | 長崎県 | キウイフルーツ | チュウゴクアミガサハゴロモ |
特殊報は、新たな病害虫の発見や、重要な病害虫の発生消長に特異な現象が認められ、従来と異なる防除対策が必要になる場合に発表されます。
見慣れない病害虫に気づいたとき
重要病害虫が未発生地域に侵入すると農業生産や輸出に大きな影響が出るおそれがあるため、早期発見と的確な防除が重要です。見慣れない被害があれば、最寄りの植物防疫所または都道府県の病害虫防除所へ連絡してください。植物防疫所の連絡先、都道府県病害虫防除所の連絡先 が農林水産省サイトにあります。
「多い」「やや多い」などの用語の定義
予報では、発生量の程度を過去10年の平年値と比べて次のように説明しています(いずれも度数分布に基づく幅)。
- 多い(高い):やや多いの外側10%の度数の入る幅
- やや多い(やや高い):平年並の外側20%の度数の入る幅
- 平年並:平年値を中心として40%の度数の入る幅
- やや少ない(やや低い):平年並の外側20%の度数の入る幅
- 少ない(低い):やや少ないの外側10%の度数の入る幅
今後の発生予報の発表予定日
| 号数 | 予定日 |
|---|---|
| 第7号 | 令和8年9月9日(水) |
| 第8号 | 令和8年10月7日(水) |
| 第9号 | 令和8年11月11日(水) |
| 第10号 | 令和9年3月10日(水) |
よくある質問
病害虫発生予報はどのくらいの頻度で発表されますか
農林水産省が都道府県の発生予察情報を取りまとめ、おおむね月1回発表します。発生が活発になる夏場は隔週になることもあります。令和8年度は第6号(8月5日)が最新で、次は9月9日、その後は10月7日、11月11日と続きます。
最新号(第6号)で特に注意すべき病害虫は何ですか
水稲の斑点米カメムシ類です。東北・関東・甲信・北陸・東海・近畿・中国・四国・北九州の一部で多くなる見込みで、7月下旬に12県が注意報を出しました。不稔被害を起こすイネカメムシ(岐阜県・京都府・鳥取県で注意報)、野菜・花きのオオタバコガとシロイチモジヨトウ、果樹カメムシ類も注意対象です。
出穂を迎える水田で、いま何をすればよいですか
まず出穂の10日前までに、畦畔・農道・休耕田の除草を終えてください。水田内のノビエやイヌホタルイも増殖源になるため確実に除草します。薬剤散布は出穂期から登熟期が適期で、多くの地域では2回散布が推奨されています。1回目は出穂期から穂揃期、2回目はその7〜10日後が目安です。イネカメムシの不稔被害を防ぐ場合は出穂期の防除が要になります。
台風が来ると果樹カメムシ類の被害は増えますか
増える可能性があります。強風でカメムシが山林から離脱し、スギ・ヒノキの球果の脱落や倒木で餌不足になると、園地への飛来が早まり飛来量も増えます。台風通過後は園内をきめ細かく観察し、飛来を確認した時点から防除を始めてください。薄暮から夜間に活動するため夕方の散布が効果的です。
「注意報」と「警報」「特殊報」はどう違いますか
警報は、重要な病害虫の大発生が予測され早急な防除が必要な場合に発表されます。注意報は、警報ほどではないものの重要な病害虫が多発すると予測され、早めの防除が必要な場合に発表されます。特殊報は、新たな病害虫の発見など従来と異なる防除が必要になる事象が生産現場に影響しうる場合に発表されます。
自分の地域の詳しい情報はどこで確認できますか
この予報は全国の取りまとめのため、地域の詳細は都道府県の病害虫防除所のホームページで確認するのが確実です。防除の最終判断は、都道府県の発生予察・農場の実情・適正な農薬使用に従って行ってください。