病害虫発生予報とは
国は都道府県の協力のもと、植物防疫法に基づき、有害動植物の防除を適時かつ経済的に行うため、気象・作物生育・発生調査などを分析し、発生予察情報を提供しています。「病害虫発生予報」は、都道府県が提供する発生予察情報を取りまとめたものです。地域ごとの細部は、都道府県病害虫防除所のホームページ等が基準になります。
温暖化や薬剤抵抗性の進行などを背景に、病害虫・雑草対応は難しくなっています。農林水産省は、消費者に支持される食料の安定供給のために、「予防・予察」を重視した総合防除で、発生しにくい生産環境づくりと、適時適切な防除によるまん延防止・損害軽減を呼びかけています。関連して、総合防除の 実践ガイドライン や 実践マニュアル が示されています。
最新号(第4号)の気象の見通し
気象庁の向こう1か月予報(令和8年7月2日付け)では、気温は北日本・東日本・西日本で高く、沖縄・奄美でほぼ平年並みと予想されています。降水量は、北日本および東日本日本海側でほぼ平年並み、東日本太平洋側・西日本で平年並みか少なめ、沖縄・奄美で平年並みか多めの見込みです。日照時間は全国的にほぼ平年並みと予想されています。詳細は 気象庁の長期予報 を参照してください。
第4号で多くなる見込みの主な病害虫
- 水稲:斑点米カメムシ類が、東北・南関東・北陸・四国・九州の一部で多くなる見込み。
- 野菜・花き:オオタバコガ・シロイチモジヨトウが、東海・近畿など複数地域の一部で多くなる見込み。
- 果樹:果樹カメムシ類が、北関東・北陸・東海・近畿・中国・四国・九州の一部で多くなる見込み。
このほか、茶のクワシロカイガラムシなど、地域によっては多くなる病害虫があるため、都道府県の発生予察情報を参考に適期防除を実施してください。
水稲:防除で押さえたいポイント
斑点米カメムシ類
東北・南関東・北陸・四国・九州の一部で多くなる見込みで、山形県・石川県・佐賀県・宮崎県・鹿児島県から注意報が発表されています。多くの種が水田周辺の雑草に生息し、出穂期に水田へ侵入して穂を加害します。被害はカメムシの種類・侵入のタイミング(生育ステージ)・侵入量で変わるため、都道府県の発生予察を参考に水田を観察し、適期に防除します。本虫の侵入を抑えるには、出穂の10日前までに畦畔や休耕田の雑草管理を行うことが有効で、移動・分散能力が高いため地域一斉の除草が重要です。
近年、イネカメムシは斑点米だけでなく不稔被害による減収も報告されています。他の斑点米カメムシ類と異なり、不稔防止には出穂期の防除が重要です。出穂が早い品種の水田や、防除されない飼料用米などは集中加害を受けやすいため、特に注意して観察します。防除の考え方は 斑点米カメムシ類の防除(農林水産省) を参照してください。
いもち病(葉いもち)
東海・四国・北九州の一部でやや多くなる見込みです。発生は温湿度など気象条件に左右され、降雨や結露で葉が長時間濡れる好適条件が続くと急激にまん延するおそれがあります。都道府県が発表する感染好適条件の出現状況を参考に、早期発見に努め、発生を認めたら状況に応じて薬剤防除を行います。一部薬剤で耐性菌が発生しているため効果的な薬剤を選び、発生を助長しないよう適正な肥培管理に努めます。
野菜・花き:発生が平年より多いと予想される病害虫
表中の地域は必ずしも全域ではありません。
| 作物名 | 病害虫名 | 「多い」 | 「やや多い」 |
|---|---|---|---|
| トマト | コナジラミ類 | ― | 南東北、北関東、南九州 |
| ねぎ | アザミウマ類 | ― | 北東北、甲信、近畿 |
| 作物共通 | オオタバコガ | 北海道、北東北、東海、近畿 | 南東北、北関東、甲信、四国 |
| 作物共通 | シロイチモジヨトウ | 北陸、東海、近畿 | 北東北、四国 |
オオタバコガ・シロイチモジヨトウ
東海・近畿などで多くなる見込みで、オオタバコガは北海道・愛知県・大阪府、シロイチモジヨトウは富山県・愛知県・大阪府から注意報が出ています。幼虫が果実・花蕾・結球の内部に食入するため、発生初期の防除が重要です。ほ場をきめ細かく観察して早期発見に努め、施設栽培では開口部に防虫ネットを適切に張って成虫の侵入を防ぎます。一部薬剤で感受性の低下がみられるため、同一系統薬剤の連用を避けて効果の高い薬剤を選びます。
果樹・茶:発生が平年より多いと予想される病害虫
| 作物名 | 病害虫名 | 「多い」 | 「やや多い」 |
|---|---|---|---|
| 果樹共通 | 果樹カメムシ類 | 北関東、北陸、東海、近畿、中国、四国、九州 | 東北、甲信 |
| りんご | 斑点落葉病 | 北関東 | 北海道、東北 |
| なし | 黒星病 | ― | 南東北、北関東、近畿 |
| 茶 | クワシロカイガラムシ | 東海 | 近畿、南九州 |
| 茶 | チャノミドリヒメヨコバイ | 東海、北九州 | 近畿、南九州 |
果樹カメムシ類
北関東・北陸・東海・近畿・中国・四国・九州の一部で多くなる見込みで、石川県から注意報が出ています。本年は春先から気温が高く、越冬個体数が多かった地域を中心に園地への飛来が多く見られました。今後の飛来リスクは越冬世代の個体数とスギ・ヒノキ球果の着果量に左右されます。スギ林・ヒノキ林に隣接する園地は被害が多い傾向のため飛来状況に留意し、飛来初期から防除します。薄暮から夜間に活動するため夕方の薬剤散布が効果的で、地域一斉の散布で効果が高まります。詳細は カメムシ類の防除(農林水産省) を参照してください。
茶:クワシロカイガラムシ・チャノミドリヒメヨコバイ
クワシロカイガラムシは東海の一部で多くなる見込みで、静岡県から注意報が出ています。防除適期は孵化最盛期の2〜5日後と短いため、園地をきめ細かく観察し孵化最盛日予測情報を確認して適時に散布します。チャノミドリヒメヨコバイは東海・北九州の一部で多くなる見込みで、萌芽〜開葉期の防除を徹底します。感受性低下がみられるため同一系統薬剤の連用を避けます。
令和8年6月11日以降の警報・注意報・特殊報
警報:発表なし(重要病害虫の大発生が予測され早急な防除が必要な場合に発表)。
注意報
| 発表月日 | 都道府県 | 対象作物 | 対象病害虫 |
|---|---|---|---|
| 6月11日 | 石川県 | 果樹共通 | 果樹カメムシ類 |
| 6月11日 | 鹿児島県 | 早期水稲 | 斑点米カメムシ類(クモヘリカメムシ、アカスジカスミカメ等) |
| 6月12日 | 東京都 | キウイフルーツ | キウイフルーツかいよう病(Psa3系統) |
| 6月12日 | 富山県 | ネギ | シロイチモジヨトウ |
| 6月15日 | 宮崎県 | 早期水稲 | 斑点米カメムシ類 |
| 6月16日 | 北海道 | とうもろこし | アワノメイガ |
| 6月22日 | 佐賀県 | 早期水稲 | 斑点米カメムシ類 |
| 6月22日 | 北海道 | 作物共通 | オオタバコガ |
| 6月26日 | 静岡県 | 茶 | クワシロカイガラムシ |
| 6月26日 | 島根県 | いちご | うどんこ病 |
| 6月30日 | 新潟県 | 西洋なし | セイヨウナシ褐色斑点病 |
| 6月30日 | 沖縄県 | オクラ | フタテンミドリヒメヨコバイ |
| 6月30日 | 大阪府 | なす科・うり科果菜類、あぶらな科野菜、オクラ、スイートコーン、花き類等 | オオタバコガ |
| 6月30日 | 大阪府 | しゅんぎく、ねぎ類、あぶらな科野菜、なす科果菜類、花き類等 | シロイチモジヨトウ |
| 7月2日 | 石川県 | 水稲 | 斑点米カメムシ類 |
| 7月2日 | 山形県 | 水稲 | 斑点米カメムシ類 |
| 7月3日 | 愛知県 | 花き類、野菜類、ダイズ | オオタバコガ |
| 7月3日 | 愛知県 | 花き類、野菜類、ダイズ | シロイチモジヨトウ |
特殊報
| 発表月日 | 都道府県 | 対象作物 | 対象病害虫 |
|---|---|---|---|
| 6月19日 | 群馬県 | タマネギ | ネギネクロバネキノコバエ |
| 6月26日 | 島根県 | サカキ | サカキブチヒメミドリヨコバイ |
| 6月30日 | 東京都 | カンキツ | カラタチトビハムシ |
| 7月1日 | 熊本県 | ニホンナシ | ナシ胴枯細菌病 |
| 7月1日 | 熊本県 | オリーブ | オリーブ立枯病 |
特殊報は、新病害虫の発見や従来と異なる防除が必要となる事象など、生産現場への影響が懸念される場合に発表されます。
見慣れない病害虫に気づいたとき
重要病害虫が未発生地域に侵入すると農業や輸出に大きな影響が出るおそれがあるため、早期発見と的確な防除が重要です。見慣れない被害があれば、最寄りの植物防疫所または都道府県の病害虫防除所へ連絡してください。植物防疫所の連絡先、都道府県病害虫防除所の連絡先 が農林水産省サイトにあります。
「多い」「やや多い」などの用語の定義
予報では、発生量の程度が過去10年の平年値と比較して次のように説明されています(いずれも度数分布に基づく幅)。
- 多い(高い):やや多いの外側10%の度数の入る幅
- やや多い(やや高い):平年並の外側20%の度数の入る幅
- 平年並:平年値を中心として40%の度数の入る幅
- やや少ない(やや低い):平年並の外側20%の度数の入る幅
- 少ない(低い):やや少ないの外側10%の度数の入る幅
今後の発生予報の発表予定日
| 号数 | 予定日 |
|---|---|
| 第5号 | 令和8年7月23日(木) |
| 第6号 | 令和8年8月5日(水) |
| 第7号 | 令和8年9月9日(水) |
| 第8号 | 令和8年10月7日(水) |
| 第9号 | 令和8年11月11日(水) |
| 第10号 | 令和9年3月10日(水) |
よくある質問
病害虫発生予報はどのくらいの頻度で発表されますか
農林水産省が都道府県の発生予察情報を取りまとめ、おおむね月1回発表します。発生が活発になる夏場は隔週になることもあります。令和8年度は第4号(7月8日)の次が第5号(7月23日)で、その後は8月5日、9月9日と続きます。
最新号(第4号)で特に注意すべき病害虫は何ですか
水稲の斑点米カメムシ類(東北・南関東・北陸・四国・九州の一部)、野菜・花きのオオタバコガとシロイチモジヨトウ(東海・近畿など)、果樹の果樹カメムシ類(北関東・北陸・東海・近畿・中国・四国・九州)です。茶のクワシロカイガラムシ(東海)も注意対象です。
「注意報」と「警報」「特殊報」はどう違いますか
警報は、重要な病害虫の大発生が予測され早急な防除が必要な場合に発表されます。注意報は、警報ほどではないものの重要な病害虫が多発すると予測され、早めの防除が必要な場合に発表されます。特殊報は、新たな病害虫の発見など従来と異なる防除が必要になる事象が生産現場に影響しうる場合に発表されます。
自分の地域の詳しい情報はどこで確認できますか
この予報は全国の取りまとめのため、地域の詳細は都道府県の病害虫防除所のホームページで確認するのが確実です。防除の最終判断は、都道府県の発生予察・農場の実情・適正な農薬使用に従って行ってください。