注:本文の根拠は農林水産省の発表です。国の発生予察・リンク集は 病害虫発生予察情報(農林水産省) を参照してください。号が更新され次第、本ページも最新号へ更新します。

病害虫発生予報とは

国は都道府県の協力のもと、植物防疫法に基づき、有害動植物の防除を適時かつ経済的に行うため、気象・作物生育・発生調査などを分析し、発生予察情報を提供しています。「病害虫発生予報」は、都道府県が提供する発生予察情報を取りまとめたものです。地域ごとの細部は、都道府県病害虫防除所のホームページ等が基準になります。

温暖化や薬剤抵抗性の進行などを背景に、病害虫・雑草対応は難しくなっています。農林水産省は、消費者に支持される食料の安定供給のために、「予防・予察」を重視した総合防除で、発生しにくい生産環境づくりと、適時適切な防除によるまん延防止・損害軽減を呼びかけています。関連して、総合防除の 実践ガイドライン や 実践マニュアル が示されています。

9月の気象の見通し

気象庁の向こう1か月予報(令和8年9月3日付け)では、気温は北日本・東日本・西日本で高い、沖縄・奄美でほぼ平年並と予想されています。降水量は、北日本と西日本日本海側で平年並か多い、東日本・西日本太平洋側で多い、沖縄・奄美でほぼ平年並の見込みです。日照量は全国でほぼ平年並と予想されています。高温は病害虫の発育・増殖を早め、降雨や結露で葉が長時間濡れる状態が続くと、いもち病など糸状菌による病害の感染好適条件になります。ほ場観察と適期防除を徹底してください。詳細は 気象庁の長期予報 を参照してください。高温そのものによる白未熟粒・胴割れの対策は、米の高温対策の記事で栽培管理と支援策をまとめています。

最新号で多くなる見込みの主な病害虫

  • 大豆の吸実性カメムシ類:北陸・東海・近畿の一部で多くなる見込み。
  • 野菜・花きのオオタバコガ、シロイチモジヨトウ、ハスモンヨトウ:北陸等の一部で多くなる見込み。
  • 果樹カメムシ類:北関東・北陸・東海・近畿・中国・四国・九州の一部で多い見込み。

このほか、なしのハダニ類など、地域によっては多くなる病害虫があります。都道府県の発生予察情報を参考に、適期の防除を実施してください。

水稲:発生が平年より多い・やや多いと予想される病害虫

表中の地域は必ずしも全域ではありません。

病害虫名「多い」「やや多い」
斑点米カメムシ類四国、北九州北東北、関東、北陸、東海、近畿、中国
コブノメイガ四国、九州近畿、中国
ツマグロヨコバイ四国北陸
トビイロウンカ四国中国、北九州
いもち病(穂いもち)近畿、四国東海、中国
ごま葉枯病四国中国
紋枯病中国、四国北九州

水稲:防除で押さえたいポイント

斑点米カメムシ類

四国と北九州の一部で多くなる見込みです。多くの地域では出穂時期が過ぎていますが、晩生品種などこれから出穂期・乳熟期を迎える水田では、都道府県の発生予察情報を参考に適期を逃さず確実な防除を徹底し、発生が多い場合は追加の薬剤散布を実施してください。

吸汁を受けた米粒は着色粒となり、混入率が高いと農産物検査の等級が下がって手取りが減ります。散布をドローンで行う場合は資格と許可が必要なため、ドローンでの農薬散布の記事で申請の流れを確認できます。防除の考え方は 斑点米カメムシ類の防除(農林水産省) を参照してください。

コブノメイガ

四国と九州の一部で多く、近畿・中国の一部でやや多くなる見込みです。上位葉の被害が増えると収量に影響するため、本田での発生状況をつかみ、都道府県の発生予察情報を参考に若齢幼虫の最盛期をとらえて防除します。

トビイロウンカ

四国の一部で多くなる見込みです。本虫は急激に増殖するため、発生が多くなってからでは防除が困難です。生息場所となる株元を注意深く観察し、成虫または幼虫の確認・把握とその発生状況に応じた防除を実施して、適期収穫を心がけてください。近年は一部の薬剤に抵抗性を持つトビイロウンカが飛来しているため、都道府県の発生予察情報を参考に効果的な薬剤を選びます。

いもち病(穂いもち)

近畿・四国の一部で多くなる見込みで、京都府から注意報が発表されています。降雨や結露で葉が長時間濡れる感染好適条件が続くと、急激に穂いもちが発生・まん延するおそれがあります。これから登熟する晩生品種や飼料用稲は特に注意してください。ほ場を観察し、発生状況に応じて防除します。一部の薬剤で耐性菌が発生しているため、効果的な薬剤を選んでください。

紋枯病

中国・四国の一部で多くなる見込みです。高温多湿条件で発生が助長され、昨年多発したほ場は伝染源の菌核が増えて本年も多発するリスクが高まっています。上位葉が発病すると減収につながるため、株元をよく観察し、中位葉まで進展した株が多い場合は上位葉に進展しないよう防除します。

大豆:吸実性カメムシ類

表中の地域は必ずしも全域ではありません。

作物名病害虫名「多い」「やや多い」
大豆吸実性カメムシ類北陸、東海、近畿南東北、北関東、中国、北九州

北陸・東海・近畿の一部で多くなる見込みで、愛知県と滋賀県から注意報が発表されています(いずれも主にミナミアオカメムシ)。本虫の被害は収穫時まで続きます。ほ場内の観察をきめ細かく行って早期発見に努め、適期に防除してください。本虫は広範囲に移動するため、発生状況を地域で共有し、可能な限り地域一斉の防除を実施します。大豆の作付けに使える支援は畑作物の直接支払交付金の記事で整理しています。

野菜・花き:発生が平年より多いと予想される病害虫

表中の地域は必ずしも全域ではありません。

作物名病害虫名「多い」「やや多い」
いちごコナジラミ類近畿北東北、四国、南九州
いちごハダニ類南関東、東海、近畿、南九州北関東、四国、北九州
キャベツアブラムシ類東海北東北
きゅうりアザミウマ類―南関東、北陸、近畿
きゅうりコナジラミ類南関東、北陸、近畿―
トマトコナジラミ類北関東、近畿北東北、南関東、中国、南九州
なすアザミウマ類近畿南関東
なすアブラムシ類北関東近畿、四国
なすハダニ類近畿南関東
ねぎアザミウマ類関東、北陸、東海、近畿北東北、四国、北九州
ねぎ黒斑病北東北関東、北陸、東海
きくハダニ類東海、近畿中国、四国
作物共通オオタバコガ北東北、北陸、近畿、南九州南東北、北関東、甲信、東海、北九州
作物共通シロイチモジヨトウ南関東、北陸、東海、近畿、四国、北九州南東北、北関東、中国
作物共通ハスモンヨトウ北陸、四国南関東、東海、近畿、中国、九州

オオタバコガ・シロイチモジヨトウ・ハスモンヨトウ

北陸等の一部で多くなる見込みで、神奈川県からシロイチモジヨトウの注意報が出ています。いずれもナス科野菜(トマト、ピーマン等)やアブラナ科(キャベツ、ハクサイ等)など多くの作物を加害します。幼虫は果実・花蕾・結球の内部に食入し、品質低下や結球不良を引き起こすため、発生初期の防除が要です。ほ場内をきめ細かく観察して早期発見に努め、適期に防除します。被害残渣は発生源になるため、ほ場外へ持ち出して適切に処分してください。施設栽培では開口部に防虫ネットを適切に張り、成虫の侵入を防ぎます。一部の薬剤で感受性の低下が認められているため、同一系統薬剤の連用を避けて効果の高い薬剤を選びます。

ねぎのアザミウマ類

関東・北陸・東海・近畿の一部で多くなる見込みです。増殖力が高く、発生密度が高くなってからでは防除が困難になります。ほ場内の観察をきめ細かく行い、早期発見に努めて適期に防除してください。農薬散布に加えて、取り除いた葉などの作物残渣を適切に処分し、ほ場内とその周辺の除草を徹底します。一部の薬剤で感受性の低下が認められているため、同一系統薬剤の連用を避けます。

果樹・茶:発生が平年より多いと予想される病害虫

表中の地域は必ずしも全域ではありません。

作物名病害虫名「多い」「やや多い」
果樹共通果樹カメムシ類北関東、北陸、東海、近畿、中国、四国、九州南東北、南関東
かんきつアザミウマ類―東海、北九州
かんきつハダニ類東海、近畿、九州中国、四国
かんきつかいよう病東海、近畿、四国中国、沖縄
かんきつ黒点病中国東海、近畿
なしシンクイムシ類北陸中国、北九州
なしハダニ類北関東、北陸、四国、北九州南東北、南関東、近畿、中国
なしハマキムシ類北陸東海
ぶどうべと病北関東、東海―
りんご褐斑病北東北南東北
茶アザミウマ類北九州南関東、近畿、南九州
茶ハダニ類東海、九州近畿
茶チャノミドリヒメヨコバイ南九州北九州

果樹カメムシ類

北関東・北陸・東海・近畿・中国・四国・九州の一部で多い見込みで、8月下旬以降、静岡県・岐阜県・和歌山県・大阪府・鳥取県・鹿児島県から注意報が発表されています。スギ林やヒノキ林などの山林に隣接する園地や、春に飛来が多かった園地は被害が多い傾向のため、引き続き飛来状況に留意してください。薄暮から夜間に活動するため夕方の薬剤散布が効果的で、地域一斉に散布すると効果が高まります。

台風の通過後は特に注意が必要です。強風で果樹カメムシ類が山林から強制的に離脱し、スギ・ヒノキの球果の脱落や倒木で餌不足が起きると、園地への飛来が早まり飛来量も増える可能性があります。台風通過後は園内の観察をきめ細かく行い、飛来が認められた時点から防除を始めてください。あわせて多目的防災網や防虫ネットに破れや隙間がないか点検します。詳細は カメムシ類の防除(農林水産省) を参照してください。

茶のハダニ類

東海・九州の一部で多い見込みで、熊本県から注意報(カンザワハダニ)が発表されています。増殖力が高いため、発生密度が高くなってからでは防除が困難です。秋芽などの発生に注意し、都道府県の発生予察情報を参考に適期に防除してください。一部の薬剤で感受性の低下が認められているため、同一系統薬剤の連用を避けて効果の高い薬剤を選びます。

都道府県が発表した警報・注意報・特殊報

警報:発表なし(重要な病害虫の大発生が予測され、早急な防除が必要な場合に発表)。

注意報

令和8年8月20日以降に都道府県が発表した注意報です。

発表月日都道府県対象作物対象病害虫
8月21日京都府水稲いもち病
8月21日徳島県果樹類(なし)ハダニ類
8月24日岐阜県果樹(カキ、ナシ、リンゴ、ミカン等)果樹カメムシ類
8月26日熊本県茶カンザワハダニ
8月26日静岡県かんきつ、落葉果樹(なし、かき、キウイフルーツ等)果樹カメムシ類
8月28日鹿児島県カンキツ果樹カメムシ類(ツヤアオカメムシ、チャバネアオカメムシ)
8月28日神奈川県ネギ、キャベツ等野菜類シロイチモジヨトウ
8月28日岩手県りんご褐斑病
8月31日和歌山県カキ、キウイフルーツ、ナシ、ブドウ、カンキツなど果樹カメムシ類(チャバネアオカメムシ、ツヤアオカメムシ)
8月31日滋賀県ダイズ吸実性カメムシ類(主にミナミアオカメムシ)
8月31日沖縄県マンゴーチャノキイロアザミウマ
8月31日沖縄県マンゴーハダニ類
9月2日愛知県イチゴハダニ類
9月2日愛知県ダイズ吸実性カメムシ類(主にミナミアオカメムシ)
9月2日大阪府果樹全般(みかん・かんきつ、かき、ナシ等)果樹カメムシ類
9月4日鳥取県果樹全般果樹カメムシ類
9月4日大阪府なすアザミウマ類

注意報は、警報を発表するほどではないものの、重要な病害虫が多発すると予測され早めの防除が必要な場合に発表されます。その地域で経済的被害が発生したことを示すものではありません。

特殊報

令和8年8月5日以降に都道府県が発表した特殊報です。

発表月日都道府県対象作物対象病害虫
8月7日佐賀県カンキツ、茶チュウゴクアミガサハゴロモ
8月13日長野県もも、すもも(日本すもも、プルーン)、うめ等核果類クビアカツヤカミキリ
8月13日千葉県メロンCucurbit aphid-borne yellows virus
8月19日熊本県スモモスモモミハバチ
8月20日福井県ウメクビアカツヤカミキリ
8月26日静岡県葉しょうがショウガ褐色しみ病

特殊報は、新たな病害虫の発見や、重要な病害虫の発生消長に特異な現象が認められ、従来と異なる防除対策が必要になる場合に発表されます。

見慣れない病害虫に気づいたとき

重要病害虫が未発生地域に侵入すると農業生産や輸出に大きな影響が出るおそれがあるため、早期発見と的確な防除が重要です。見慣れない被害があれば、最寄りの植物防疫所または都道府県の病害虫防除所へ連絡してください。植物防疫所の連絡先、都道府県病害虫防除所の連絡先 が農林水産省サイトにあります。

「多い」「やや多い」などの用語の定義

予報では、発生量の程度を過去10年の平年値と比べて次のように説明しています(いずれも度数分布に基づく幅)。

  • 多い(高い):やや多いの外側10%の度数の入る幅
  • やや多い(やや高い):平年並の外側20%の度数の入る幅
  • 平年並:平年値を中心として40%の度数の入る幅
  • やや少ない(やや低い):平年並の外側20%の度数の入る幅
  • 少ない(低い):やや少ないの外側10%の度数の入る幅

今後の発生予報の発表予定日

号数予定日
第8号令和8年10月7日(水)
第9号令和8年11月11日(水)
第10号令和9年3月10日(水)

よくある質問

病害虫発生予報はどのくらいの頻度で発表されますか

農林水産省が都道府県の発生予察情報を取りまとめ、おおむね月1回発表します。発生が活発になる夏場は隔週になることもあります。令和8年度は第7号(9月9日)が最新で、次は10月7日、その後は11月11日、令和9年3月10日と続きます。

最新号(第7号)で特に注意すべき病害虫は何ですか

大豆の吸実性カメムシ類、野菜・花きのオオタバコガ・シロイチモジヨトウ・ハスモンヨトウ、果樹カメムシ類の3つです。果樹カメムシ類は北関東から九州までの広い範囲で多く、8月下旬以降に静岡・岐阜・和歌山・大阪・鳥取・鹿児島の6府県が注意報を出しました。水稲では近畿・四国の穂いもちと、中国・四国の紋枯病が多くなる見込みです。

水稲はもう出穂が終わりましたが、防除は必要ですか

晩生品種や飼料用稲はこれからが山場です。第7号は、多くの地域で出穂時期が過ぎたとしたうえで、これから出穂期・乳熟期を迎える水田では適期を逃さない確実な防除を求めています。穂いもちは登熟期の降雨や結露で急激にまん延するおそれがあるため、近畿・四国では特に注意してください。トビイロウンカは急増してからでは防除が困難なので、株元を観察して発生状況に応じて対応します。

台風が来ると果樹カメムシ類の被害は増えますか

増える可能性があります。強風でカメムシが山林から離脱し、スギ・ヒノキの球果の脱落や倒木で餌不足になると、園地への飛来が早まり飛来量も増えます。台風通過後は園内をきめ細かく観察し、飛来を確認した時点から防除を始めてください。多目的防災網や防虫ネットの破れ・隙間の点検も忘れずに。薄暮から夜間に活動するため夕方の散布が効果的です。

「注意報」と「警報」「特殊報」はどう違いますか

警報は、重要な病害虫の大発生が予測され早急な防除が必要な場合に発表されます。注意報は、警報ほどではないものの重要な病害虫が多発すると予測され、早めの防除が必要な場合に発表されます。特殊報は、新たな病害虫の発見など従来と異なる防除が必要になる事象が生産現場に影響しうる場合に発表されます。

自分の地域の詳しい情報はどこで確認できますか

この予報は全国の取りまとめのため、地域の詳細は都道府県の病害虫防除所のホームページで確認するのが確実です。防除の最終判断は、都道府県の発生予察・農場の実情・適正な農薬使用に従って行ってください。

出典:農林水産省「令和8年度 病害虫発生予報 第7号」(令和8年9月9日)。防除の最終判断は、都道府県の発生予察・農場の実情・適正な農薬使用に従って行ってください。