輸入飼料の値上がりで畜産経営が圧迫されるなか、粗飼料や飼料用米、エコフィードなどの国産飼料を自分で作る、あるいは地域で使う取組に、国の補助金を活用できます。中心となるのは国産飼料生産・利用拡大緊急対策事業(令和7年度補正)で、飼料の生産や作業受託に必要な機械の導入、簡易倉庫の設置、飼料増産の活動などを補助率2分の1以内で支援します。関連する飼料備蓄・増産流通合理化事業(令和8年度当初)も、子実用とうもろこしなど国産濃厚飼料の生産技術実証を後押しします。この記事では、対象になる方、補助率、申請の流れと締切を、畜産農家・農業法人・JA・自治体の担当者向けに整理します。
概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 誰が | 飼料生産組織(コントラクター・TMRセンター等)、農業協同組合、農事組合法人、農地所有適格法人、農業を営む会社、地方公共団体、3戸以上の農業者でつくる組織などが使えます。 |
| 何を | 飼料の生産・作業受託の拡大や省力化に必要な機械の導入、簡易倉庫の設置、中山間地域での飼料増産活動、国産飼料の流通・利用拡大の実証などです。 |
| 補助率 | 機械の導入(購入・リース・レンタル)や簡易倉庫の設置、施設整備は2分の1以内が基本です。中山間の計画づくりや推進は定額です。 |
| 主な要件 | 地域計画への位置付け、成果目標(売上高や単収の増加など)の設定が必要です。既存機械の同種・同能力への単純更新は対象になりません。 |
| 詳しくは | 所在地を管轄する地方農政局(生産部畜産課)に相談します。六次公募の締切は2026年8月17日(月曜日)17時必着です。 |
この補助金を使えるのは
この補助金は、個々の畜産農家に直接交付するものではなく、飼料を生産・供給する組織や法人が申請する建て付けです。国産飼料生産・利用拡大緊急対策事業のうち、地域で応募できる主な取組(飼料生産組織の基盤強化支援)の対象は、地域計画に位置付けられている、または位置付けられる見込みのある者で、次のいずれかに当てはまり、飼料生産作業を行う方です。
- 地方公共団体、農業協同組合・同連合会、地方公共団体が出資する公社
- 農事組合法人、農地所有適格法人、特定農業団体
- 農業(畜産を含む)またはその関連事業を営む株式会社・持分会社(資本金3億円超かつ従業員300人超の大企業などは除きます)
- 3戸以上の農業者で構成し、規約と代表者を定めた団体で、地域計画等に位置付けられた農業者・認定農業者・認定新規就農者などを1戸以上含むもの
個人の農業者が単独で申請する枠組みではありませんが、農業法人として、あるいは近隣の農家3戸以上で組織をつくって申請すれば活用できます。中山間地域向けの取組(中山間地域飼料増産活性化対策)は、農協や農業法人のほか「その他農業者の組織する団体」も対象で、事業参加者が3者以上であることが条件です。障害者の就労がある場合や、受益者が地域計画に位置付けられた飼料生産の担い手である場合は、審査で加点される取組があります。
支援される取組と補助率
令和8年度の五次・六次公募で応募できるのは、地域の組織が実施する次の取組です。畜産経営に直結しやすいのは、初めの二つです。
飼料生産組織の基盤強化支援
飼料(稲わらを含む粗飼料と、子実用とうもろこし・麦類・大豆といった濃厚飼料)の生産・販売や作業受託を拡大・省力化するための機械の導入と簡易倉庫の設置を、いずれも補助率2分の1以内で支援します。購入だけでなくリースやレンタルも対象です。導入できる機械は、飼料の播種・追播用、収穫・調製用、草地等の管理用、飼料調製用、堆肥の調製・散布関係、スマート農業関連の機械装置などです。トラクターは、けん引が必要な他の機械と一体で導入し、既存機では能力・台数が不足すると地方農政局長等が認めた場合に限られます。簡易倉庫は、収穫した飼料のうち前年度からの増加分を保管するビニールハウス等の資材費が対象です。取組期間は3年で、売上高の5%以上の増加、または作業受託面積を北海道で20ヘクタール以上・都府県で10ヘクタール以上拡大するといった成果目標を立てます。
中山間地域飼料増産活性化対策
離島・山村・過疎地域・棚田地域など中山間地域で、飼料作物の生産や採草の拡大、家畜の放牧の増進に取り組む活動を支援します。耕作放棄地などを草地に変える草地転換、飼料作物の生産、家畜の放牧、鳥獣害防止柵の設置といった飼料増産活動は補助率2分の1以内(飼料増産活動の実施面積10アール当たり2万5千円が上限)、これに使う機械の導入も2分の1以内です。活動の計画づくりや研修などの推進は定額で支援します。活動する農用地等の合計面積がおおむね1ヘクタール以上10ヘクタール未満で、勾配のある農地や30アール未満の小区画を含むことなどが要件です。単収を5%以上増やす、または活動面積を広げるといった成果目標を設定します。
流通・利用拡大の取組
このほか、国産の粗飼料を集めて供給する体制づくりや利用を確かめる「国産粗飼料利用拡大実証・調査」、新たな飼料資源の利用を広げる「新飼料資源の利用拡大対策」、国産飼料の保管・成形・加工などの拠点を整える「国産飼料流通拠点整備対策」も応募できます。飼料流通拠点の施設整備は補助率2分の1以内です。
この補助金は、こうした飼料増産・効率化・国産飼料の利用を後押しするものです。耕種農家が生産した飼料を畜産農家が使い、家畜の堆肥を農地に戻す耕畜連携も事業の柱で、青刈りとうもろこしや牧草などを長期契約で供給・利用する取組には数量に応じた助成があります。牛舎・機械などの施設整備は畜産クラスター事業が担うため、飼料の生産・利用そのものはこの事業、施設整備はクラスター事業と役割が分かれています。
申請の流れと締切
提出期間は、五次公募が2026年7月10日で締め切られ、続く六次公募が2026年7月13日(月曜日)から2026年8月17日(月曜日)17時まで(必着)です。締切が近いため、早めの相談と書類準備をおすすめします。手続きは次の順で進みます。
- 市町村・都道府県・JAに相談し、地域計画への位置付けや取組の内容を整理します。飼料生産組織の基盤強化支援は、地域計画に位置付けられている、または位置付けられる見込みがあることが前提です。
- 応募書と事業実施計画書を作成し、応募者の経歴や定款など活動が分かる資料を添えます。様式は農林水産省のホームページから入手できます。
- 所在地を管轄する地方農政局(生産部畜産課)へ、郵送・電子メール・宅配便で提出します。北海道は北海道農政事務所、沖縄県は内閣府沖縄総合事務局が窓口です。
- 地方農政局等が事業執行体制や計画の妥当性を審査し、候補者を選定して通知します。
- 別途の手続きを経て補助金の交付が決定します。事業の実施期間は交付決定の日から2027年3月31日までです。
提出期間内に届かなかった応募書類は無効になり、書類に不備があると審査の対象になりません。応募書類の差し替えもできないため、公募要領をよく読んで余裕をもって提出しましょう。
なぜ国産飼料の増産が支援されるのか
飼料費は畜産経営コストの大きな部分を占めます。粗飼料の給与が多い牛で4割から6割、濃厚飼料が中心の豚・鶏では6割から7割にのぼります。一方で飼料供給の約8割は輸入の濃厚飼料に頼っており(TDNベース)、国際情勢や為替で価格が大きく動きます。飼料自給率は令和6年度概算で26%で、食料・農業・農村基本計画は令和12年度に28%まで高める目標を掲げています。この目標に向けて、飼料生産組織の運営強化、草地の基盤整備、労働生産性や単収の高い飼料作物の作付拡大、耕畜連携、放牧の活用などを進める柱の一つが、この補助金です。
輸入依存を減らす取組は、この事業だけでなく複数の制度で支えられています。飼料生産・利用の全体像や、輸入穀物・海上運賃の動向を踏まえた食料安全保障の観点は食料自給率と国際的な供給の解説で整理しています。
あわせて確認したい関連制度
目的に応じて、次の制度と組み合わせると効果的です。どれも国産飼料の生産・利用を後押しします。
- 牛舎・機械・施設の整備:畜産クラスター事業が、地域の畜産関係者でつくる計画に基づき施設整備や機械導入を補助率2分の1以内で支援します。詳しくは畜産クラスター事業の解説をご覧ください。
- 飼料用米・稲発酵粗飼料・青刈りとうもろこしの作付け:水田活用の直接支払交付金の戦略作物助成が使えます。飼料用米は収量に応じて10アール当たり5.5万〜10.5万円、稲発酵粗飼料は8万円、青刈りとうもろこしは3.5万円が助成の目安です。水田政策の全体像は水田政策の解説で確認できます。
よくある質問
個人の畜産農家でもこの補助金を使えますか
この事業は組織や法人が申請する建て付けで、個人が単独で使う枠組みではありません。農業法人として申請するか、近隣の農家3戸以上で規約と代表者を定めた組織をつくり、地域計画等に位置付けられた農業者などを含めれば対象になります。牛舎や機械の整備を単独で進めたい場合は、畜産クラスター事業など別の制度の活用を検討しましょう。
いつまでに申請すればよいですか
六次公募の締切は2026年8月17日(月曜日)17時必着です。五次公募は2026年7月10日で締め切られています。応募先は所在地を管轄する地方農政局(生産部畜産課)で、提出前に市町村・都道府県・JAとの調整が必要です。締切間近では書類準備が間に合わないこともあるため、早めに相談してください。
古くなった機械の更新にも使えますか
既存の機械を同じ種類・同じ能力のものに置き換えるだけの単純更新は、補助の対象になりません。飼料の生産・販売や作業受託を拡大する、または省力化して労働生産性を高めるなど、成果目標につながる導入であることが必要です。中古機械は、地方農政局長等が特に認め、法定耐用年数から差し引いた残存年数が2年以上ある場合に対象となることがあります。
どこに相談すればよいですか
まず市町村・都道府県・JAに相談し、地域計画への位置付けや取組内容を整理します。事業全体の応募先は、応募者の所在地を管轄する地方農政局の生産部畜産課です。北海道は北海道農政事務所、沖縄県は内閣府沖縄総合事務局が窓口になっています。
キーワード解説
自給飼料(国産飼料)
国内で生産される飼料のことです。牧草・青刈りとうもろこし・稲わら・稲発酵粗飼料などの粗飼料と、飼料用米・子実用とうもろこし・エコフィード(食品残さ由来の飼料)などがあります。輸入飼料に比べ価格が国際情勢に左右されにくく、この事業は自給飼料の生産と利用の拡大を後押しします。
粗飼料と濃厚飼料
粗飼料は牧草・サイレージ・稲わらなど繊維が多い飼料で、牛の飼養で多く使われます。濃厚飼料はとうもろこし・大豆油かす・ふすま・エコフィードなど栄養価の高い飼料で、豚・鶏で中心になります。日本では濃厚飼料の多くを輸入に頼っており、粗飼料は主に国産です。
飼料生産組織
飼料の生産や供給を担う組織です。飼料作物の収穫作業などを請け負うコントラクターや、粗飼料と濃厚飼料を混ぜた牛の飼料(TMR)を製造して農家に供給するTMRセンターが代表例です。この事業では、こうした組織の機械導入や簡易倉庫の設置などを支援します。
地域計画
農業経営基盤強化促進法に基づき、市町村が地域の農業の将来像や農地の使い方を関係者と話し合ってまとめる計画です。飼料生産をこの計画に位置付けることが、飼料生産組織の基盤強化支援などを使う前提になります。中山間地域では、離島振興法・山村振興法・過疎地域の特別措置法などで指定された市町村の区域が対象地域になります。
まとめ
輸入飼料の高騰に対しては、国産飼料の生産・利用を広げる国産飼料生産・利用拡大緊急対策事業を活用できます。飼料生産組織・農業法人・JA・地方公共団体・3戸以上の農業者でつくる組織が対象で、機械の導入や簡易倉庫・施設の整備は補助率2分の1以内が基本です。六次公募の締切は2026年8月17日(月曜日)17時必着で、応募先は所在地を管轄する地方農政局の畜産課です。まずは市町村・都道府県・JAに相談し、地域計画への位置付けと取組内容を整理することから始めましょう。牛舎・機械の整備は畜産クラスター事業、飼料用米などの作付けは水田活用の直接支払交付金と、目的に合わせて使い分けてください。