里山林の手入れ不足は、災害リスクの上昇や野生動物の被害拡大など、地域の生活環境にも影響します。本記事では、令和8年度の里山林活性化による多面的機能発揮対策について、支援メニュー、国の単価、受給の主な条件、申請から報告までの流れを整理します。採択要件や様式の詳細は、実施要領と担当の地域協議会の案内をご覧ください。
概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 誰が | 里山林の整備・活用を地域で進めたい地域住民、森林所有者、自治会・NPO 等。3名以上の活動組織を立ち上げ、複業実践型は法人化が必要です。 |
| 何を | 里山林・竹林の整備、資源の利用、作業道・獣害防止柵の整備、機材購入、関係人口の創出など。支援メニュー一覧、受給の注意点、手続きの流れを整理します。 |
| いつまでに | 活動は最長3年間(3年間の活動計画を申請時に提出)。1・2年目の組織は、次年度に向けて計画の見直しを検討します。 |
| いくら | メインメニューはha当たり年間の国の単価(上限)で算定(森林資源活用12万円、竹林33.2万円、複業実践19.1万円など)。追加メニューは作業内容・機材に応じた単価・補助率です。 |
制度の目的
かつて里山林は、地域住民の生活に身近な森林として、コミュニティによる継続的な手入れのもと整備されてきました。生活様式の変化や人口減少・高齢化により手入れが行き届かなくなると、森林の多面的機能が低下し、台風・豪雨時の災害リスク、枯死に伴う病虫害、野生動物の行動範囲拡大などが地域環境に影響します。
里山林活性化による多面的機能発揮対策は、地域コミュニティの維持・活性化と里山林の多面的機能の発揮を支えるため、地域内外の人々による継続的な整備・活用を支援する交付金です。令和7年度から開始した新しい枠組みであり、平成25年度〜令和6年度までの「森林・山村多面的機能発揮対策交付金」の後継に位置づけられます。
支援メニュー
支援はメインメニュー(里山林・竹林の整備と資源活用の本体)と、本体に追加できるメニューに分かれます。いずれも、3年間の森林活動計画に基づく年間経費(人件費、燃料、傷害保険、レンタル料、ヘルメット・手袋等の安全装備、のこぎり等の消耗品、委託費、印刷費など)を定額で受けられるのが基本です。
メインメニュー
森林資源活用型の対象作業には、下草の刈払い・集積・処理・利用、落ち葉の集積・処理、簡易な作業道・林道の開設・改良、下草刈払い・植栽・播種・施肥、不要な萌芽の除去、防火・防風帯の伐採・搬出、風倒木・枯死木の除去・利用、土留めなどの簡易な柵の設置、木質バイオマス・木炭・しいたけ原木・工芸材料向けの未利用資源の伐採・搬出・加工、特用林産物の植栽・収穫、必要な森林調査・巡視・成果のモニタリング、機械操作・安全・造林技術の講習などが含まれます。
竹林資源活用型は上記に加え竹の伐採・搬出・加工・利用、複業実践型は上記に加え間伐材等の伐採・運搬・加工が対象となります。
追加メニュー
メインの活動に上乗せできるメニューです。
- 機能強化:重機を主とする作業道・林道の開設・改良、鳥獣害防止柵の設置・修繕など(上限800円/m・年)。
- 関係人口の創出・維持:地域外の人の参加調整、受け入れのための現場環境整備など(上限5万円/年)。
- 活動推進:現地確認(林況・境界等)や活動計画の見直し・実施に関する調整・講習(上限3.8万円/年)。
- 資機材支援:刈払機、チェーンソー、ウインチ、チッパー、わな、苗木、電気柵、土留め資材、林業用車両、薪割機、薪ストーブ、炭窯などの購入・設置費の1/2(※印の機材等は1/3)を支援。
受給にあたって押さえる条件
活動組織の設立
地域の実情に応じ、地域住民・森林所有者等で構成する活動組織(3名以上)を設立します。個人・自治会・NPO など、3名以上のグループで組織化できます。複業実践型は法人であることが必要です。規約の作成、専用の銀行口座の開設、事務所は原則として活動する森林と同一都道府県内に置きます。
活動する森林
1か所0.1ha以上の森林が対象です。活動開始時点で森林経営計画が策定されていないこと、森林所有者の同意・協定の締結が必要です。
3年間の活動計画
申請時に3年間の活動計画書を提出します。支援期間は最長3年です。計画には組織名、事務所所在地、背景・概要、3年計画、各年度の具体的な活動内容を盛り込みます。
安全講習とモニタリング調査
毎年、安全講習または技術向上講習を1回以上実施します。モニタリング調査は、里山の目標状態に近づいているかを把握するため、初年度は作業開始前の初回調査、各年は活動終了後の年次調査を行い、結果を報告します。
選定要件
メニューごとに選定要件が定められています。類型の選び方、対象経費の範囲、様式は交付要領・実施要領と、担当地域協議会の案内に沿って整理してください。
申請から完了までの流れ
おおむね次の7段階で進めます。申請先の地域協議会は都道府県ごとに異なります。
- 活動組織の設立:参加者を募り、森づくり・活動の方向性を話し合います。
- 活動する森林の決定:森林所有者の同意と協定締結、交付金の要件を満たすかの確認。
- 地域協議会への申請:3年間の活動計画書を作成。必要書類(活動組織規約、協定書、採択申請書、活動計画書、森林計画図など)は協議会と相談しながら準備します。
- 交付金採択後の活動実施:計画に基づき作業を開始し、モニタリング調査(初回・年次)を実施。安全講習も実施します。
- 活動記録の保存:実施した作業内容を記録として残します。
- 実績の取りまとめ・報告:実施状況報告書を提出。1・2年目は次年度に向けた計画見直しを検討します。
- 交付金活動の完了:当該年度の活動を締めくくります(3年目で終了する場合もあります)。
林野庁のポータルには、都道府県別の地域協議会の問い合わせ先一覧があります。申請書類の入手、安全講習・モニタリングの助言、活動記録の事前確認などは、担当協議会と早めに相談するのがよいでしょう。
関連する公表資料
キーワード解説
里山林活性化による多面的機能発揮対策
林野庁が実施する交付金の総称です。里山林の整備・活用を通じ、水源涵養・生物多様性・災害防止・文化・景観など森林の多面的機能を維持・発揮し、山村地域の維持発展につなげます。
地域活動型
地域住民等と協働して里山林または竹林を整備し、得られた資源を活用するメインメニューです。森林資源活用と竹林資源活用で国の単価上限が異なります。
複業実践型
未活用の里山林木材を本格的に活用する実践を支援するメインメニューです。活動組織は法人である必要があります。
活動組織
交付金の申請・執行主体となる地域の団体です。3名以上で構成し、規約と専用口座を備えます。複業実践型では法人化が要件となります。
地域協議会
都道府県ごとに設置される窓口です。採択申請の受付、計画・記録に関する助言、モニタリングや安全講習の支援などを担います。名称・連絡先は省の一覧で確認します。
モニタリング調査
活動森林が目標とする里山の状態に近づいているかを把握する調査です。初回調査(初年度・作業前)と年次調査(各年・活動後)を実施し、結果を報告します。