2050年カーボンニュートラルでは、温室効果ガスの排出削減とあわせてCO₂吸収量の確保が不可欠です。本記事では、森林が担う吸収・貯蔵の役割、人為林の高齢化が吸収量に与える影響、全国の吸収量推移、現場で取り組むべき2つの柱を整理します。

概要

項目 内容
誰に 森林所有者・森林管理者、林業事業者、J-クレジット創出を検討する方、森林政策・炭素循環に関心のある農林関係者です。
何を 森林のCO₂吸収・固定の仕組み、人為林の林齢構成と吸収量の関係、2014〜2022年の全国吸収量推移、2050年に向けた吸収確保と排出削減の取組です。
数値の出所 林齢構成は林野庁「森林資源の現況」(令和4年3月31日現在)、全国吸収量推移は日本国温室効果ガスインベントリ報告書(令和6年4月公表)に基づきます。
詳細は 林野庁「森林資源の現況」、国立環境研究所「温室効果ガスインベントリ」、林野庁「J-クレジット制度」をご覧ください。
森林吸収量の全体像。森林のCO₂吸収・固定、人為林の林齢構成と年間吸収量の関係、2014〜2022年の全国森林吸収量の推移、2050年カーボンニュートラルに向けた吸収量確保と排出削減の2つの柱。
森林吸収量の現状と2050年に向けた取組の整理(出典:林野庁「J-クレジット制度」J-クレジット制度 運営委員会配布資料

森林が担う3つの役割

森林は、大気中の二酸化炭素(CO₂)を吸収・固定し、温室効果ガスの吸収源として地球温暖化防止に貢献します。さらに次の2点で、排出削減と炭素の長期貯蔵にもつながります。

  • 木材の利用——森林から生産された木材を建築物等に用いると、大気中の炭素を長期間貯蔵でき、建築時のCO₂排出削減にも寄与します。
  • バイオマスの利用——樹皮やのこ屑などをエネルギー源として使うと、化石燃料の代替になります。

いずれも、森林を「伐って、使って、植える」循環の中で効果を発揮します。

人為林の高齢化と吸収量の低下

日本の人為林(人工林)は、戦後の植林を背景に面積が広がりました。林野庁「森林資源の現況」(令和4年3月31日現在)によると、人為林の50年生を超える面積は64%に達し、高齢級化が進んでいます。

林齢と年間CO₂吸収量(1ヘクタールあたり)は、若齢期にピークを迎え、林齢が進むほど低下する傾向があります。森林面積の多くが高齢級に偏ると、単位面積あたりの吸収力が弱まり、全国の吸収量確保が課題になります。

全国の森林吸収量の推移

日本国温室効果ガスインベントリ報告書(令和6年4月公表)に示される、森林によるCO₂吸収量(CO₂換算・万トン)は次のとおりです。

吸収量(万トン・CO₂換算)
20146,105
20155,736
20165,556
20175,527
20185,385
20194,947
20204,715
20214,808
20224,568

2014年から2022年にかけて減少傾向が続いています。年度ごとの算定方法や区分の詳細は、インベントリ報告書の本文をご覧ください。

2050年カーボンニュートラルに向けた2つの柱

政府が目指す2050年カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出を日本全体で実質ゼロにする)達成には、CO₂排出量の削減CO₂吸収量の確保の両方が重要です。

CO₂吸収量の確保

伐採した後に確実に植林し、成長の旺盛な若い森林を造成することが中心です。適切な森林経営(間伐・主伐・再造林)を通じて、単位面積あたりの吸収力を維持・回復させる考え方です。J-クレジットの森林管理プロジェクトなど、吸収量の可視化・価値化もこの流れを支えます。

CO₂排出量の削減

CO₂排出の多い資材や化石燃料の代わりに木材を使う取組が該当します。伐採した木材を建築材として長期間大気中の炭素を貯蔵すること、樹皮・のこ屑などの木質バイオマスで化石燃料を代替することなどが含まれます。

森林所有者・管理者が意識したい点

吸収量確保と排出削減は、現場の森林経営とつながっています。高齢化した人為林を放置せず、計画に沿った伐採・再造林を進めることで、若齢林の面積を確保できます。木材の利用拡大やバイオマス利用は、林産物の需要と森林整備の資金還流にもつながります。

具体的な算定方法、支援制度、プロジェクト登録の要件は、林野庁のJ-クレジット案内や方法論、所在する都道府県・市町村の森林施策をご覧ください。

キーワード解説

森林吸収量

森林が大気中のCO₂を吸収し、バイオマスとして固定する量を指します。国の温室効果ガスインベントリでは、人為的な活動が行われている森林の吸収量などが報告の対象となります。

人為林(人工林)

人の手による植栽・育成を経て形成された森林です。日本ではスギ・ヒノキなどの針葉樹人工林が広く、戦後の植林が現在の高齢級化の背景になっています。

カーボンニュートラル

温室効果ガスの排出と吸収・除去を相殺し、実質的な排出をゼロに近づける状態です。日本は2050年の達成を目指しています。

木材利用

伐採材を建築・家具・パルプ等に用いることです。木材中の炭素は使用期間中、大気に戻らず貯蔵されます。コンクリートや鉄鋼と比べ、製造・施工段階のCO₂排出を抑えられる場合があります。

森林経営

間伐・主伐・植栽・保育など、計画に沿って森林を管理し、資源を更新していく活動です。適切な経営は吸収量維持と木材生産の両方に関わります。

J-クレジット

省エネ・再エネ・森林などの取組による温室効果ガス排出削減量・吸収量を、国がクレジットとして認証する制度です。森林分野では、森林経営活動や植林などによる吸収量増加が対象となります。