森林は、成長する過程で大気中の二酸化炭素(CO₂)を吸収し、幹や枝に炭素として固定します。この吸収量は国の温室効果ガス削減目標を支える「吸収源」として数えられ、適切に森林を整備して生まれた吸収量はJ-クレジットとして価値化できます。日本の森林吸収量は2014年の約6,105万トンから2022年は約4,568万トン(CO₂換算)へ減少しており、若い森林を増やして吸収力を保つことが課題です。この記事では、森林吸収量とは何か、日本の吸収量と2050年カーボンニュートラルの目標、J-クレジット制度との関係、吸収量を保つための森林整備、森林所有者・企業の関わり方までをわかりやすく整理します。

森林CO2吸収とJ-クレジットの全体像

項目 内容
森林吸収量とは 森林が成長の過程で大気中のCO₂を吸収し、幹や枝に固定する量です。国の温室効果ガスインベントリで「吸収源」として報告されます。
日本の吸収量 2014年は約6,105万トン、2022年は約4,568万トン(CO₂換算)と減少傾向です。人為林の高齢化が背景にあります。
クレジットとのつながり 適切な森林整備で生まれた吸収量は、J-クレジットとして国の認証を受け、企業などへ販売・移転できます。
誰に関係するか 森林を持つ所有者・林業者、脱炭素やクレジット活用を考える企業、森林政策・炭素循環に関心のある農林関係者です。
数値の出所 林齢構成は林野庁「森林資源の現況」(令和4年3月31日現在)、全国吸収量推移は日本国温室効果ガスインベントリ報告書(令和6年4月公表)です。
森林吸収量の全体像。森林のCO₂吸収・固定、人為林の林齢構成と年間吸収量の関係、2014〜2022年の全国森林吸収量の推移、2050年カーボンニュートラルに向けた吸収量確保と排出削減の2つの柱。
森林吸収量の現状と2050年に向けた取組の整理(出典:林野庁「J-クレジット制度」J-クレジット制度 運営委員会配布資料

森林吸収量とは

森林吸収量とは、森林が成長する過程で大気中のCO₂を吸収し、幹や枝、根などに炭素として固定する量です。樹木は光合成によって炭素を取り込み、木材という形で長期間ためこみます。国の温室効果ガスインベントリでは、人の手が入っている森林の吸収量などが「吸収源」として報告の対象になります。

森林は吸収・固定だけでなく、次の2つの形でも排出削減と炭素の長期貯蔵に貢献します。

  • 木材の利用。森林から生産された木材を建築物などに使うと、大気中の炭素を長期間ためこめます。コンクリートや鉄鋼に比べ、製造・施工段階のCO₂排出を抑えられる場合もあります。
  • バイオマスの利用。樹皮やのこ屑などをエネルギー源として使うと、化石燃料の代わりになります。

これらの効果は、森林を「伐って、使って、植える」という循環の中で発揮されます。伐りっぱなしでも、植えたまま手を入れなくても、吸収量は十分に確保できません。

日本の森林吸収量と2050年の目標

日本の森林吸収量は、近年減少が続いています。日本国温室効果ガスインベントリ報告書(令和6年4月公表)による、森林によるCO₂吸収量(CO₂換算・万トン)は次のとおりです。

吸収量(万トン・CO₂換算)
20146,105
20155,736
20165,556
20175,527
20185,385
20194,947
20204,715
20214,808
20224,568

2014年の約6,105万トンから2022年は約4,568万トンへ、8年でおよそ4分の1の規模が減りました。年度ごとの算定方法や区分の詳細は、インベントリ報告書の本文をご覧ください。

減少の背景にある人為林の高齢化

吸収量が減っている主な理由は、森林の高齢化です。日本の人為林(人工林)は、戦後の植林を背景に面積が広がりました。林野庁「森林資源の現況」(令和4年3月31日現在)によると、人為林の50年生を超える面積は64%に達し、高齢級化が進んでいます。

1ヘクタールあたりの年間CO₂吸収量は、若い時期にピークを迎え、林齢が進むほど低下する傾向があります。森林面積の多くが高齢級に偏ると、単位面積あたりの吸収力が弱まります。これが全国の吸収量を押し下げています。

2050年カーボンニュートラルの2つの柱

政府が目指す2050年カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出を日本全体で実質ゼロにする目標)の達成には、CO₂排出量の削減CO₂吸収量の確保の両方が欠かせません。森林はこの両方に関わります。

吸収量の確保は、伐採した後に確実に植林し、成長の旺盛な若い森林を造ることが中心です。排出量の削減は、CO₂排出の多い資材や化石燃料の代わりに木材や木質バイオマスを使う取組が該当します。減り続ける吸収量を反転させ、目標に近づけるには、森林を計画的に手入れし続ける必要があります。

J-クレジット制度との関係

減っていく吸収量を維持・回復させる森林整備には費用がかかります。その費用を支える仕組みの一つが、J-クレジット制度です。

J-クレジット制度は、省エネ・再エネ・森林などの取組による温室効果ガスの排出削減量・吸収量を、国がクレジットとして認証する制度です。森林分野では、間伐や再造林といった森林経営活動、植林などによる吸収量の増加が対象になります。認証された吸収量はクレジットとして、脱炭素に取り組む企業などへ販売・移転できます。

これにより、森林の吸収量という「目に見えにくい価値」が金額として可視化され、整備の資金が森林所有者へ還元される流れが生まれます。企業にとっては、自社で減らしきれないCO₂を森林由来クレジットで埋め合わせる手段になります。森林吸収量の確保と、企業の脱炭素ニーズが、クレジットを通じてつながる構図です。

吸収量を保つための森林整備

吸収量の確保は、現場の森林整備とそのまま結びついています。高齢化した人為林を放置せず、計画に沿って間伐・主伐・再造林を進めることで、吸収力の高い若い森林の面積を確保できます。適切な森林経営は、吸収量の維持と木材生産の両立につながります。

木材の利用拡大やバイオマス利用は、林産物の需要を生み、森林整備の資金が現場へ戻る循環を後押しします。誰がどの森林をどう管理するかという計画づくりは、森林経営管理制度でも整理されています。森林の境界や所有者をはっきりさせる手続きは、森林の土地の所有者届出が入口になります。

森林所有者・企業の関わり方

森林を持つ方は、計画に沿った伐採・再造林を進めることが、吸収量の確保とクレジット創出の両方につながります。具体的な算定方法、対象となる活動、プロジェクト登録の要件は、林野庁のJ-クレジット案内や方法論、所在する都道府県・市町村の森林施策をご覧ください。手続の細部は地域や森林の状況で変わるため、一次情報と窓口で確かめながら進めると安心です。

脱炭素を進めたい企業は、森林由来のJ-クレジットを購入して自社の排出を埋め合わせたり、森林整備への参画を通じて吸収源づくりに関わったりできます。森林の吸収量を支える取組は、農業を含む幅広い分野の気候変動対応とつながっています。あわせて農業の気候変動対応もご覧ください。

よくある質問

森林吸収量とは何ですか

森林が成長する過程で、大気中のCO₂を吸収し、幹や枝、根などに炭素として固定する量です。国の温室効果ガスインベントリでは、人の手が入っている森林の吸収量などが「吸収源」として報告されます。

J-クレジットとは何ですか

省エネ・再エネ・森林などの取組による温室効果ガスの排出削減量・吸収量を、国がクレジットとして認証する制度です。森林分野では、間伐や再造林などの森林経営活動、植林による吸収量の増加が対象になり、認証されたクレジットは企業などへ販売・移転できます。

森林を持っているとクレジットを得られますか

森林経営活動や植林によって吸収量が増えれば、その分をJ-クレジットとして申請できます。ただし対象となる活動や算定方法、登録の要件が定められています。自分の森林が対象になるか、どう進めるかは、林野庁のJ-クレジット案内や方法論、都道府県・市町村の窓口でご確認ください。

森林の吸収量はどのくらいですか

日本全体では、2014年の約6,105万トンから2022年は約4,568万トン(CO₂換算)へ減少しています。1ヘクタールあたりの年間吸収量は林齢で変わり、若い森林ほど大きく、高齢になるほど低下する傾向があります。

次の一歩

森林を持っていて吸収量の価値化に関心があるなら、まずは林野庁のJ-クレジット案内で対象となる活動と方法論を確かめ、所在する都道府県・市町村の森林担当に相談しましょう。整備の計画づくりは森林経営管理制度、所有者・境界の確認は森林の土地の所有者届出が起点になります。企業として脱炭素に取り組むなら、森林由来クレジットの購入や森林整備への参画から検討を始められます。

森林以外の農業分野の方法論は、水稲の中干し延長やバイオ炭の農地施用などがあります。全体像は農業のカーボンクレジットまとめで整理しています。

キーワード解説

森林吸収量

森林が大気中のCO₂を吸収し、バイオマスとして固定する量を指します。国の温室効果ガスインベントリでは、人為的な活動が行われている森林の吸収量などが報告の対象になります。

人為林(人工林)

人の手による植栽・育成を経て形成された森林です。日本ではスギ・ヒノキなどの針葉樹人工林が広く、戦後の植林が現在の高齢級化の背景になっています。

カーボンニュートラル

温室効果ガスの排出と吸収・除去を相殺し、実質的な排出をゼロに近づける状態です。日本は2050年の達成を目指しています。

木材利用

伐採材を建築・家具・パルプなどに用いることです。木材中の炭素は使用期間中、大気に戻らず貯蔵されます。コンクリートや鉄鋼と比べ、製造・施工段階のCO₂排出を抑えられる場合があります。

森林経営

間伐・主伐・植栽・保育など、計画に沿って森林を管理し、資源を更新していく活動です。適切な経営は吸収量の維持と木材生産の両方に関わります。

J-クレジット

省エネ・再エネ・森林などの取組による温室効果ガスの排出削減量・吸収量を、国がクレジットとして認証する制度です。森林分野では、森林経営活動や植林などによる吸収量の増加が対象になります。