マルチやビニール、育苗トレー、コンテナなど、農業の現場ではさまざまなプラスチックを使います。使い終わった農業用プラスチック(廃プラ)を野焼きで処分することは法律で禁じられており、適正に回収・処理するルールがあります。あわせて、使う量そのものを減らす・生分解性マルチなどへ替えるといった削減の取り組みも進んでいます。この記事では、農業用プラスチックをどう適正に処理し、どう減らすのかを、処理のルール・削減と代替・地域での回収の仕組み・生産者がやることの順に整理します。

この記事の要点

農家・産地・JA・自治体の農政担当者に向けて、農業用プラスチックの処理と削減の全体像をまとめます。まず要点を表で押さえます。

項目 内容
対象になるもの マルチ、ハウスの被覆フィルム(ビニール)、育苗トレー、コンテナ、肥料・農薬の袋など、農業生産で使い終わった農業用プラスチック(廃プラ)です。
適正な処理 使い終わったプラスチックの野焼き(屋外焼却)は法律で原則禁止です。JAや市町村、地域協議会の回収ルートに出すか、許可を受けた処理業者へ委託し、リサイクルまたは適正処分します。
減らす・替える 使わない・減らす・繰り返し使うを基本に、紙や生分解性マルチなどの代替資材への転換を検討します。優先順位は5Rの考え方で整理できます。
支える仕組み 国はみどりの食料システム戦略推進交付金で、行動計画の整理・代替資材の実用化・回収と削減のモデル地域づくりを支援します。地域では都道府県・市町村の協議会がJA・処理業者・農家をつなぎます。
生産者がやること 自分の経営でどのプラスチックをどれだけ使っているか棚卸しし、地域の回収日や分別ルールを確認します。減らせる資材は代替を検討し、まずはJAや市町村の窓口に相談します。

農業用プラスチックとは:種類と排出の現状

農業用プラスチックは、作物を育て、運び、保護するために幅広く使われます。代表的なものは次のとおりです。

  • マルチ(畝を覆うフィルム。雑草抑制・地温調整・水分保持に使用)
  • ハウス・トンネルの被覆フィルム(いわゆる農業用ビニール、塩化ビニルやポリオレフィン系)
  • 育苗トレー・ポット、コンテナ、収穫物の容器
  • 肥料・農薬・培土などの袋、ひもやネット

これらは使い終わると農業由来の廃プラスチックになります。マルチのように土や作物残さが付着して回収・リサイクルが難しいものや、複数の素材が混ざったものもあり、適正な処理が課題です。国は、国際的なプラスチック汚染対策の動きを踏まえ、農業分野でも排出の抑制・適正な回収・リサイクルを進めています。

農業用プラスチックの適正な処理ルール

野焼きは原則禁止

使い終わった農業用プラスチックを畑や空き地で燃やす野焼き(屋外焼却)は、法律で原則として禁止されています。煙や有害物質による生活環境・健康への影響を防ぐためで、農業者であっても例外ではありません。たとえ少量でも、回収ルートに出すか、許可を受けた処理業者へ委託するのが原則です。

処理の基本的な流れ

農業用プラスチックの処理は、おおむね次の流れで進みます。

  1. 分別・洗浄:種類ごとに分け、土や残さをできるだけ落とします。分別の精度が高いほどリサイクルしやすくなります。
  2. 回収・搬出:JAや市町村、地域の協議会が設けた回収日・集積場所に出すか、処理業者へ引き渡します。
  3. リサイクルまたは適正処分:再生利用(マテリアル・ケミカルリサイクルなど)や、エネルギーとして回収する熱回収、難しいものは適正な焼却・埋立処分につなぎます。

回収の方法や分別の区分、費用の負担は地域によって異なります。具体的な出し方は、お住まいの市町村やJA、地域協議会の案内をご覧ください。

プラスチックを減らす・替える

適正に処理するだけでなく、出るプラスチックそのものを減らすことが根本的な対策です。減らし方の優先順位は、5Rの考え方で整理できます。

取り組みの優先順位

農業生産におけるプラスチック排出抑制対策事業の対策のポイント、事業目標、3つの事業内容、5Rの優先順位、事業の流れ、事業イメージ、予算内数。
農林水産省「令和8年度みどりの食料システム戦略推進総合対策(当初予算)」資料:農業生産におけるプラスチック排出抑制対策事業

国際的な農業分野のプラスチック対策では、対策の優先順位が逆ピラミッド型で整理されています。上から順に取り組むほど、環境への負荷を抑える効果が大きい考え方です。

  1. Refuse(不使用):そもそも使わない
  2. Re-design(再設計)代替素材への切り替え、製品設計の変更
  3. Reduce(使用低減):使用量を減らす
  4. Reuse(再使用):耐久性を高め、繰り返し使う
  5. Recycle(リサイクル):再生処理して使う
  6. Recover(熱回収):エネルギーを回収する

素材が混ざっている、製品が劣化している、土壌で汚れているといった場合は、単純な焼却や埋立に流れやすく、優先順位では下位に位置づけられます。だからこそ、まずは使わない・減らす・替えるを先に検討し、最終処分に頼りすぎない流れをつくることが大切です。

生分解性マルチなどの代替資材

削減の中心になるのが、紙や生分解性プラスチックなどの代替資材への切り替えです。生分解性マルチは、使用後に土壌中の微生物などで分解されるため、はがして回収・処分する作業を減らせる可能性があります。

一方で、マルチを紙や生分解性マルチに替えるかどうかは、収量や病害、作業性、費用のバランスが課題になります。そこで国は、生分解性の分析や農業生産現場での実証、有識者の意見を踏まえた検討を進め、マルチなどの資材情報や代替資材の利点をまとめて発信しています。導入を検討する際は、自分の作目・地域に合うかを実証結果や産地の事例で確かめると判断しやすくなります。

長く使える資材を選び、繰り返し使うこと(Reuse)も有効な削減策です。買い替えの頻度が下がれば、出る廃プラの量も抑えられます。

回収の仕組み:地域・JA・行政の連携

農業用プラスチックの回収は、農家が一人で抱えるものではなく、地域ぐるみの仕組みで支えられています。多くの地域では、JAや市町村、関係団体でつくる協議会が中心となり、回収日や集積場所を決め、処理業者へつなぐ役割を担います。

国はみどりの食料システム戦略推進交付金を通じて、こうした地域の取り組みを後押ししています。とくに農業由来廃プラ対策モデル地域形成事業では、都道府県・市町村の協議会が主体となり、資源循環と排出抑制の好循環が生まれるモデル地域づくりを支援します。具体的には、次の取り組みが対象です。

  • 農業由来廃プラスチックの新たなリサイクル技術の実証
  • 回収システムの実証
  • 排出抑制のための普及啓発
  • 紙・生分解性マルチなど、排出抑制に資する資材への転換

回収・再資源化と、使う資材を減らす・替える取り組みを同じ地域で並行して進める設計です。協議会が農家・処理業者・自治体をつなぎ、地域内でプラスチックを循環させることを目指します。

国の支援事業の全体像

農業分野のプラスチック対策は、みどりの食料システム戦略推進交付金のなかの農業生産におけるプラスチック排出抑制対策事業で支えられています。事業は3つの柱からなります。

  1. 排出抑制・循環利用に向けた農業分野の対策の推進:国が民間団体等に委託し、排出抑制・適正回収・リサイクルに関する農業分野の中長期的な行動計画を整理する検討会の開催と、必要な調査を行います。分野全体で「何をいつまでにどう進めるか」を共有する枠です。
  2. プラスチック代替資材実用化推進事業:民間団体等による、紙・生分解性プラスチックなどの代替資材の実用化(生分解性の分析・現場実証・有識者検討)と、マルチなどの資材情報・利点の発信を支援します。
  3. 農業由来廃プラ対策モデル地域形成事業:都道府県・市町村の協議会が主体となり、リサイクル技術・回収システムの実証と、普及啓発・代替資材への転換を一体で進めるモデル地域づくりを支援します(交付金)。

資金の流れは、①②が国から民間団体等へ定額で委託、③が国から都道府県を通じて協議会等へ定額で配分される形です。予算規模はみどりの食料システム戦略推進交付金(総合対策)全体の枠のうちの内数で、令和8年度当初予算の内数は574百万円(前年度612百万円)、令和7年度補正予算の内数は4,000百万円(前年度3,828百万円)です。

こうしたプラスチック対策は、温室効果ガスの削減や生物多様性の保全など、農業の環境対応の一部でもあります。農業分野全体の気候変動・環境対応の動きは気候変動・生物多様性への対応の解説もあわせてご覧ください。

生産者がやること

農家・産地としてできることは、難しい制度の理解よりも、まず足元の使い方を見直すことから始まります。

  1. 使っているプラスチックを棚卸しする:マルチ、被覆フィルム、トレー、袋など、どの資材をどれだけ使い、どれだけ廃棄しているかを把握します。
  2. 地域の回収・分別ルールを確認する:JAや市町村の回収日、集積場所、分別の区分、費用負担を確認し、野焼きをやめて回収ルートに出します。
  3. 減らせる資材から代替・低減を検討する:生分解性マルチや紙資材、長く使える資材への切り替えを、実証結果や産地事例を参考に検討します。
  4. 地域の取り組みに参画する:モデル地域づくりを狙う場合は、都道府県・市町村の協議会への参画と、交付要綱・公募案内に沿った事業計画づくりから始めます。

よくある質問

農業用プラスチックはどう処理しますか

種類ごとに分別し、土や残さを落としたうえで、JAや市町村、地域協議会の回収ルートに出すか、許可を受けた処理業者へ委託します。回収されたプラスチックは、リサイクルや熱回収、適正処分につながります。回収日や分別の区分、費用は地域で異なるため、市町村やJAの案内をご覧ください。

農業用プラスチックの野焼きはできますか

できません。使い終わった農業用プラスチックの野焼き(屋外焼却)は、法律で原則として禁止されています。煙や有害物質による生活環境・健康への影響を防ぐためで、農業者でも例外ではありません。少量でも回収ルートに出すか、処理業者へ委託してください。

生分解性マルチとは何ですか

使用後に土壌中の微生物などによって分解される素材でつくられたマルチです。はがして回収・処分する作業を減らせる可能性があり、プラスチックの削減につながります。導入にあたっては、収量・病害・作業性・費用のバランスが課題になるため、自分の作目・地域に合うかを実証結果や産地事例で確かめると判断しやすくなります。

処理の費用や回収はどうなりますか

回収の方法や費用の負担は地域によって異なり、JAや市町村、地域協議会が回収日や集積場所を設けて処理業者へつなぎます。費用や出し方の詳細は、お住まいの市町村・JA・地域協議会の案内をご確認ください。

プラスチックを減らすにはどうすればよいですか

まず使わない・減らす・繰り返し使うを基本に、紙や生分解性マルチなどの代替資材への切り替えを検討します。優先順位は5R(不使用・再設計・使用低減・再使用・リサイクル・熱回収)の順で考えると整理しやすくなります。長く使える資材を選ぶことも、出る廃プラの量を抑える有効な方法です。

次の一歩

農業用プラスチックの処理や削減で迷ったら、まずは地域のJAや市町村の農政担当窓口に相談しましょう。回収日や分別ルール、利用できる代替資材の情報を得られます。地域で回収・削減のモデル地域づくりを進めたい場合は、都道府県・市町村の協議会への参画と、交付要綱・公募案内に沿った事業計画づくりから始めましょう。

キーワード解説

みどりの食料システム戦略推進交付金

食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立を目指す「みどりの食料システム戦略」の実現に向け、環境負荷低減などの取り組みを支援する交付金の総称です。農業用プラスチックの処理・削減は、そのうちのプラスチック排出抑制に関する枠で支援されます。

中長期的な行動計画

プラスチックの排出抑制・適正回収・リサイクルに関し、農業分野全体で取り組む内容と時期を整理した計画です。国際的なプラスチック対策の動きを踏まえ、民間団体等が担う検討会・調査を通じて整備します。

プラスチック代替資材

紙、生分解性プラスチックなど、従来の石油系プラスチックに代わる農業資材です。生分解性の分析、生産現場での実証、有識者検討と、マルチなどの情報発信をセットで実用化が進められています。

農業由来廃プラ対策モデル地域

都道府県・市町村の協議会等が、回収・リサイクル技術の実証と、普及啓発・代替資材への転換を一体で進める地域です。資源循環と排出抑制の好循環を地域で実証し、他地域への展開を目指します。

5R

不使用(Refuse)、再設計(Re-design)、使用低減(Reduce)、再使用(Reuse)、リサイクル(Recycle)、熱回収(Recover)の順で優先度を付ける考え方です。埋立・単純焼却は最終手段と位置づけ、代替・低減・回収を先に設計します。