概要
農山漁村で発生するバイオマスを、その地域でエネルギーと土づくり資材に転換し、化学肥料への依存を減らしながら、再生可能エネルギー導入と2050年カーボンニュートラルに資する取組を進める交付金事業です。プラント整備から液肥の機械散布・実証・普及までを一体で支援し、有機資源の地域内循環をつくります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 誰が | 事業者(バイオマス利用事業者等)が調査・設計・実証・施設整備を行い、都道府県が交付の窓口となります。資金は国→都道府県→地方公共団体・民間団体等に流れ、農業者・研究・普及機関と連携します。 |
| 何を | ①地産地消型バイオマスプラントの事業化・施設整備、②液状堆肥散布機の導入、③バイオ液肥利用の促進(散布実証・肥効分析・普及啓発)です。 |
| いくら | 令和8年度当初予算の内数は574百万円(前年度612百万円)、令和7年度補正の内数は4,000百万円(前年度3,828百万円)です(みどりの食料システム戦略推進交付金・総合対策の枠)。 |
| 次の一歩 | 未利用バイオマスと既存プラントの稼働状況を整理し、エネルギーの地産地消先(畜舎・ハウス等)と液肥還元エリアを地図に落とし込みます。みどり認定・特定区域・先導計画との接続を確認して、都道府県へ相談します。 |
制度のねらいと事業目標
対策のポイントは、地産地消型バイオマスプラントの調査・設計・実証・施設整備を事業者が進めることと、液状堆肥散布機の導入およびバイオ液肥利用の促進です。メタン発酵の副産物を田畑へ戻し、エネルギーと土づくりを同じ地域ループで回します。
事業目標は令和12年度(2030年度)までに、次を掲げます。
- 化学肥料使用量を72万トン削減(20%削減)
- 農山村地域での再生可能エネルギー導入を通じ、農山漁村の健全な発展を支え、2050年カーボンニュートラルに貢献する
- 地域で活用するエネルギーのバイオマス利用率80%を実現する
数値は食料システム戦略の方向性と整合し、プラント整備・液肥還元・再エネ導入を同時に進める設計です。
3つの事業内容
1.地産地消型バイオマスプラントの導入(事業化・施設整備の促進)
地域で発生する家畜排せつ物、食品残渣、農業残渣などを原料に、バイオマスプラントでエネルギーを生み出し、地産地消します。売電中心ではなく、畜舎・ハウス・搾乳ロボットなど農業現場への電気・熱・ガスの供給を想定します。
支援の対象は、次のとおりです。
- 調査・設計——原料の収集体制、処理能力、エネルギー需要とのマッチング
- 実証——運転条件、供給先、副産物(液肥・固形分等)の品質
- 施設整備——プラント本体に加え、資材製造設備など関連設備
- 機能強化——既存施設の能力向上、効果促進のための措置
乳畜農家の排せつ物や食品残渣を地域内で処理し、有機肥料・シリカ資材など資源のマテリアル利用まで含めて、肥料費の削減と地域資源循環を両立させます。
2.液状堆肥散布機の導入
メタン発酵の副産物であるバイオ液肥を、効率的に田畑へ還元するため、液状堆肥散布機の導入を支援します。専用の散布車や、必要に応じたドローンなどの機械も対象に含まれ、副産物の有効利用を進めます。
3.バイオ液肥利用の促進
液肥の安全かつ効果的な利用を広げるため、次の3段階で支援します。
① 散布実証
散布に必要な機器と実証圃場を整備し、実際の散布作業を実証します。農業者が現場で扱い方を学べる土台をつくります。
② 肥効分析
液肥の成分分析と作物の生育調査を行い、施肥効果を検証します。データに基づき、適正な施用設計へつなげます。
③ 普及啓発
研修会や資料の整備などを通じ、バイオ液肥の利用を広げる活動を支援します。実証・分析の結果を、県内の農業者へ届ける段階です。
事業イメージ——エネルギーと土づくりのループ
事業は、おおむねプラントによるエネルギー地産地消と液肥の還元・普及の2つのループで理解できます。
エネルギーの地産地消とレジリエンス
乳畜農家の排せつ物や食品残渣がバイオマスプラントに入り、発電・発熱されたエネルギーは、搾乳設備・ビニールハウスなど農業施設へ供給されます。あわせて非常用発電機や蓄電池と組み合わせ、停電時などの地域レジリエンス強化にもつなげます。
資源循環と土づくり
処理の過程で生じる有機肥料やシリカ資材などを農地へ戻し、化学肥料の投入を減らします。副産物のバイオ液肥は、散布機やドローンで圃場へ還元し、実証→分析→普及の流れで利用を定着させます。
エネルギー供給と土づくりを分けずに設計すると、72万トンの肥料削減とバイオマス利用率80%の目標に、同じ地域モデルで接続しやすくなります。
優先採択
次の場合は、優先的に採択されます。
- みどりの食料システム法に基づく特定区域で取組を行う場合
- 事業実施主体の構成員(農業者、民間団体等)がみどり認定等を受けている場合
- 農林漁業循環経済先導計画に基づく取組を行う場合 等
プラント単体の設備申請ではなく、食料システム・循環経済の地域計画と接続した申請が、採択の材料になります。地域循環型エネルギーシステム構築や農林漁業循環経済先導地域づくりと並行して進めると、優先材料を揃えやすくなります。
事業の流れと予算の規模
資金の流れは国→都道府県→地方公共団体・民間団体等です。国は都道府県に定額または費用の1/2以内で交付し、都道府県も同様の形態で下位の実施主体へ配分します。個別事業の交付率・上限は、交付要綱・県の公募案内で確認します。
- 令和8年度当初予算の内数:574百万円(前年度612百万円)
- 令和7年度補正予算の内数:4,000百万円(前年度3,828百万円)
上記はみどりの食料システム戦略推進交付金(総合対策)全体の枠のうち、本事業に配分される内数です。
キーワード解説
みどりの食料システム戦略推進交付金
食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立を目指す「みどりの食料システム戦略」の実現に向け、環境負荷低減や地域循環などの取組を支援する交付金の総称です。本事業はそのうち、農林水産由来バイオマスの地産地消と液肥還元を担う枠です。
バイオマスの地産地消
地域で発生したバイオマスを、その地域でエネルギー・肥料・資材として活用する考え方です。売電に偏らず、農業施設への電気・熱供給と、副産物の田畑還元をセットで進めます。
バイオマスプラント(地産地消型)
家畜排せつ物・食品残渣・農業残渣などを処理し、電力・熱・ガスを生み出す施設です。本事業では、調査・設計から実証、施設整備・機能強化までを支援し、地域内でエネルギーを消費するモデルを想定します。
バイオ液肥
バイオマスプラント(メタン発酵等)の処理過程で得られる液状の肥料資源です。化学肥料の代替・補完として田畑へ還元し、化学肥料使用量の削減目標に資します。
液状堆肥散布機
液状堆肥・バイオ液肥を効率的に散布する機械です。専用車両やドローンなどがあり、副産物の有効利用と作業の省力化につながります。
みどり認定
環境負荷低減に取り組む農業者等の認定制度です。事業実施主体の構成員がみどり認定等を受けている場合、優先採択の材料になります。
特定区域
みどりの食料システム法に基づき、環境負荷低減と持続可能な農業の推進に向けた取組を重点的に進める区域です。特定区域内の事業は優先採択の材料になります。
農林漁業循環経済先導計画
市町村等が策定する、資源・エネルギーの地域循環と農林漁業振興を一体で描く計画です。計画に沿ったバイオマス・液肥の取組は、優先採択の材料になります。
地域循環型エネルギーシステム構築
みどり交付金の関連事業で、営農型太陽光・蓄電・未利用資源のエネルギー化など、農山漁村の再エネモデルを支援します。バイオマスプラントと並行して検討する場合の接続先です。
農林漁業循環経済先導地域づくり
先導計画を策定した市町村が、循環経済の取組を先導的に進める枠です。バイオマス地産地消は、先導地域の施設整備・関連予算の優遇とも連動します。