化学農薬や化学肥料を減らし、環境保全型農業へ転換したい産地が使える国の補助金が、みどりの食料システム戦略推進交付金のグリーンな生産体系加速化事業です。環境にやさしい栽培技術・飼養技術と省力化技術を産地ぐるみで検証し、定着させる取組を支援します。本記事では、対象となる産地・事業者、支援内容、補助率と資金の流れ、優先採択の条件を、協議会で事業化を検討する農業者・自治体向けに解説します。
概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 誰が | 実施の中心は協議会等(都道府県またはJAを含む)で、農業者・地方公共団体・民間団体等が地域の産地単位で組みます。交付の窓口は都道府県経由が基本です。 |
| 何を | 栽培では環境にやさしい栽培技術・気候変動適応技術と省力化技術を組み合わせた体系の検証、必要なスマート農業機械の導入(栽培事業のみ)を支援します。飼養では環境にやさしい飼養技術の検証を支援します。共通で検討会、マニュアル・産地戦略(指針・計画)の策定、情報発信が含まれます。 |
| 補助率・予算 | 国・都道府県の負担は定額・1/2以内です。令和8年度当初予算の内数は574百万円(前年度612百万円)、令和7年度補正予算の内数は4,000百万円(前年度3,828百万円)です。 |
| 次の一歩 | みどりの食料システム法の特定区域での取組や、構成員のみどり認定などは優先採択の材料になります。産地で協議会を組む段階では、栽培か飼養か、検証に載せる技術とスマート農機の要否を先に整理し、都道府県の交付要綱・公募案内に沿って設計します。 |
グリーンな生産体系加速化事業とは
グリーンな生産体系加速化事業は、みどりの食料システム戦略推進交付金の一事業で、産地に適した環境にやさしい生産技術と省力化に資する技術を取り入れ、グリーンな生産体系への転換を加速することを目的とする補助金です。農業者・地方公共団体・民間団体等が協議会等で集まり、農産・畜産の産地に合った技術を検証し、定着させる流れが前提です。
事業は栽培と飼養の2本柱で構成します。環境にやさしい栽培技術の検証はもちろん、検証に必要なスマート農業機械の導入(栽培事業のみ)まで支援対象に含む点が特徴です。化学農薬・化学肥料の削減という国の目標達成に向けて、産地単位の技術転換を後押しします。
自分の産地が対象になるか
申請を検討する前に、次の3点を確認します。
- 実施主体を組めるか:実施主体は協議会等で、都道府県またはJAを含む必要があります。農業者個人や単独の法人だけでは実施主体になれません。
- 構成員はそろうか:協議会等には農業者・地方公共団体・民間団体等が参加します。産地単位でまとまって取り組むことが前提です。
- 検証する技術を選べるか:栽培と飼養のどちらか一方、または両方を、産地の課題に合わせて検証対象に選びます。
協議会を組まず、個々の経営で環境負荷低減の取組を定着させたい場合は、環境負荷低減活動定着サポートの解説も参考になります。
2つの事業内容
1.グリーンな栽培体系加速化事業
環境にやさしい栽培技術や気候変動適応技術とともに、省力化に資する技術を取り入れたグリーンな栽培体系の検証を支援します。検証に必要なスマート農業機械等の導入も、栽培事業に限り支援の対象になります。
環境にやさしい栽培技術の例には、病害虫等の発生予察・予測、可変施肥・局所施肥、水稲有機栽培における先進的な除草技術、プラスチック被覆肥料の代替技術などがあります。化学農薬の削減や化学肥料の削減に直結する技術群です。複数産地が連携して実施する技術も対象です。気候変動適応では、高温等の影響を回避・軽減する栽培管理(遮光資材の導入など)が例に挙がります。
省力化の例には、ドローン、リモコン草刈機、自動操舵システム、自動抑草ロボット、AIによる病害虫発生予測、可変施肥、バイオ炭の農地施用などがあります。
2.グリーンな飼養体系加速化事業
環境にやさしい飼養技術を取り入れたグリーンな飼養体系の検証を支援します。技術の例は次のとおりです。
- アミノ酸バランス改善飼料への転換(ふん尿由来のN2O排出低減)
- GHG削減に資する飼料添加物の給与
- 肉用牛へのバイパスアミノ酸給与(CH4排出低減、枝肉生産量当たりのCH4・N2O低減)
支援の4段階
協議会等が進める取組は、おおむね次の順で設計します。
- 検討会の開催(環境負荷低減に向けた取組方針の検討など)
- グリーンな生産体系の検証(栽培・飼養の体系そのもの)
- スマート農業機械等の導入等(栽培体系加速化事業のみ、検証に必要な場合)
- 栽培・飼養マニュアルの作成、産地戦略(指針・計画)の策定、情報発信(HP掲載等)——全国展開の加速化につなげる成果物
検討会で方針を固め、現場で検証し、必要な機械を入れ、マニュアルと産地戦略に落とし込む——この一連の流れが実務の骨格です。
補助率と資金の流れ
交付の筋道は国→都道府県→協議会等です。都道府県またはJAを含む協議会が実施主体となり、国・都道府県の負担は定額、1/2以内です。検証で得た知見は、栽培・飼養マニュアルと産地戦略の策定を通じて、グリーンな生産体系の全国展開の加速化につなげる設計になっています。
優先採択になりやすい条件
次の場合は優先的に採択されます。
- みどりの食料システム法に基づく特定区域において取組を行う場合
- 事業実施主体の構成員(農業者、民間団体等)がみどり認定を受けている場合等
産地で協議会を立ち上げる段階では、特定区域の指定状況と、参加農家・団体のみどり認定の有無を早めに棚卸ししておくと、設計の優先度づけに役立ちます。
申請の流れ
読者の動きとしては、次の順で進めます。
- 産地で協議会等を組成する(都道府県またはJAを含める)
- 栽培か飼養か、検証に載せる技術、スマート農機の要否を整理する
- 都道府県の交付要綱・公募案内に沿って事業計画を設計し、申請する
- 採択後は検討会→検証→マニュアル・産地戦略の策定の順で取り組む
採択額・交付率・様式の詳細は、当年の交付要綱と都道府県の公募案内で確定します。
政策目標と予算の規模
国が掲げる目標(令和12年[2030年]を目安とするもの)は次のとおりです。
- 化学農薬使用量(リスク換算)の10%低減
- 化学肥料使用量の20%低減
- 有機農業の面積6.3万ha
- 農林水産業のCO2ゼロエミッション化1,484万t-CO2
- 畜産関連GHGの低減29万t-CO2
予算は次のとおりで、いずれもみどりの食料システム戦略推進交付金(総合対策)全体の枠のうちの内数です。
- 令和8年度当初予算の内数:574百万円(前年度612百万円)
- 令和7年度補正予算の内数:4,000百万円(前年度3,828百万円)
よくある質問
対象になるのはどんな事業者ですか
実施主体は協議会等で、都道府県またはJAを含むことが要件です。農業者・地方公共団体・民間団体等が産地単位で構成員として参加します。農業者個人が単独で申請する仕組みではありません。
補助率はどれくらいですか
国・都道府県の負担は定額・1/2以内です。資金は国から都道府県を経由して協議会等に交付されます。採択額や交付率の詳細は、当年の交付要綱と都道府県の公募案内で確定します。
スマート農業機械の導入も補助対象になりますか
栽培体系加速化事業に限り、検証に必要な場合にスマート農業機械等の導入を支援します。飼養のみの事業では機械導入のメニューは使えません。
化学農薬・化学肥料の削減にはどんな技術が対象ですか
病害虫等の発生予察・予測、可変施肥・局所施肥、プラスチック被覆肥料の代替技術などが例です。化学肥料の削減では、堆肥や国産肥料への切り替えを支援する国内肥料資源利用拡大対策事業も併せて検討できます。
有機農業への転換も対象になりますか
水稲有機栽培における先進的な除草技術が、環境にやさしい栽培技術の例に含まれます。有機農業への転換初年度の支援は、有機転換推進事業の解説をご覧ください。
どこに申し込みますか
交付の窓口は都道府県です。協議会等を組成したうえで、都道府県の交付要綱・公募案内に沿って事業計画を設計し、申請します。
次の一歩
まず、都道府県の農政担当部局に公募時期と交付要綱を確認します。並行して、産地内で栽培か飼養か、検証に載せる技術とスマート農機の要否、特定区域の指定状況、構成員のみどり認定の有無を棚卸ししておくと、事業計画の設計が速くなります。みどり認定の取得を含む事業者支援の枠組みは、みどりの事業活動を支える体制整備の解説で確認できます。
キーワード解説
みどりの食料システム戦略推進交付金
食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立を目指す「みどりの食料システム戦略」の実現に向け、環境負荷低減や有機・省エネなどの取組を支援する交付金の総称です。本事業はそのうち、生産現場のグリーンな体系への転換を加速する枠です。
みどり認定
環境負荷の低減に取り組む農業者等に対する国の認定制度です。本事業では、構成員のみどり認定の有無が優先採択の材料の一つになります。
スマート農業機械等
自動操舵、ドローン、リモコン作業機、AI予測など、検証に必要な機械・システムを指します。導入支援は栽培体系加速化事業に限られ、飼養のみの事業では③のメニューは使えません。