概要
農業のサーキュラーエコノミー(循環経済)とは、家畜排せつ物・農業残渣・木質バイオマスなどの未利用資源を捨てずに、肥料やエネルギーとして地域の農林漁業の中で何度も使い回す仕組みです。これを国の制度として後押しするのが、みどりの食料システム戦略推進交付金の「農林漁業循環経済先導地域づくり」です。市町村が包括的な計画を策定し、計画に沿って体制づくり・実証・設備導入・関連施設の整備までを進めます。環境と調和した持続可能な農林漁業、災害へのレジリエンス強化、資金の地域外流出防止、魅力ある農山漁村づくりを同時に狙います。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 誰が | 市町村が農林漁業循環経済先導計画の策定主体となり、農林漁業者・地方公共団体・民間団体等が参画します。資金は国→都道府県→地方公共団体・民間団体等に流れます。 |
| 何を | 1.先導地域づくりの推進(①計画・体制、②調査・人材育成・栽培実証、③再エネ設備)、2.計画に基づく施設整備(各種支援事業の優先枠・優遇措置)です。③の設備は地域循環型エネルギーシステム構築が担います。 |
| 補助の形態 | 支援の形態は定額や費用の1/2以内など、事業ごとに異なります。関連する施設整備は、みどり交付金・農山漁村振興交付金・森林・水産・浜の活力再生など、それぞれの予算枠の優遇で受けます。 |
| 次の一歩 | 市町村では地域資源・再エネ・未利用資源の棚卸しから始め、先導計画の骨子と①②③の分担を整理します。施設整備を見込む場合は、計画と接続する関連支援事業(バイオマス地産地消、肥料資源、木質バイオマス等)の要件をあわせて確認します。 |
農林漁業循環経済先導地域づくりとは
農林漁業循環経済先導地域づくりとは、地域の資源・再エネを農林漁業で循環利用する農林漁業循環経済先導計画を策定した市町村(農林漁業循環経済先導地域)において、農林漁業を核とした循環経済(サーキュラーエコノミー)構築の取組を支援する制度です。みどりの食料システム戦略推進交付金の枠組みの一つで、計画策定から再エネ設備の導入、関連施設の整備までを段階的に後押しします。
従来は廃棄やコストになっていた家畜排せつ物・食品残渣・農業残渣などの未利用資源を、肥料やエネルギーに変えて地域内で使い切る点が特徴です。資源の地域内循環という発想は、生ごみや食品廃棄物の再生利用を促す食品リサイクル法の仕組みとも重なり、農業の現場ではこれを肥料・エネルギーの形で具体化します。
ねらいは、農山漁村地域に賦存する資源と再生可能エネルギーの地域循環を進め、環境と調和した持続可能な農林漁業を実現することです。あわせて、地域の災害へのレジリエンスを高め、資金の地域外流出を抑え、魅力ある農山漁村づくりを進めます。
自社が対象になるか
支援を直接受ける主体は市町村です。先導地域づくりを進める市町村等が、計画策定・体制整備や再エネ設備の導入などの支援対象になります。農林漁業者・農業法人・民間団体は、市町村が策定する先導計画に参画する立場として関わるのが基本です。
次のような地域・事業者は、先導地域づくりの取組と相性がよいといえます。
- 家畜排せつ物・農業残渣・木質バイオマスなど未利用資源がまとまって発生する地域
- 営農型太陽光やバイオマス発電など再エネ導入を計画する農業法人・地域
- 食品残渣や有機質資源を肥料化して地域内で使いたい生産者・自治体
自社で再エネ設備の導入や資源の肥料化を考える場合は、まず立地する市町村が先導計画を持っているか、または策定の意向があるかを確認します。計画と接続できれば、関連予算の優先枠・優遇措置を活用しやすくなります。
事業の内容
1.農林漁業循環経済先導地域づくりの推進
先導地域づくりを進める市町村等に対し、次の取組を支援します。
① 計画策定・体制整備
農林漁業者、地方公共団体等の関係者が参画し、農林漁業循環経済先導計画を策定し、推進体制を整えます。計画と体制が、②③および後述の施設整備の前提になります。
② 調査・検討、地域人材の育成、栽培実証等
地域の課題解決に向けた調査・検討に加え、循環の現場をつなぐ地域人材の育成や栽培実証を支援します。導入効果を促進するコーディネーター人材の育成も、資源・エネルギーの地域内循環とセットで進めます。
③ 再エネ設備・附帯設備の導入
再エネ設備を効率的に運用するために必要な施設・附帯設備の導入を支援します。具体例は次のとおりです。
- 自営線、蓄電池
- エネルギーマネジメントシステム(VEMS)
- 営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)設備
この設備導入は、みどりの食料システム戦略推進交付金のうち地域循環型エネルギーシステム構築事業により支援します。再エネを地域内で生み出して使う設計の全体像は、地域循環型エネルギーシステムの仕組みもあわせてご覧ください。先導地域の計画と、エネルギー構築事業の接続点として押さえておきます。
2.先導地域づくりに向けた施設整備等
農林漁業循環経済先導計画に基づき行う施設の整備等を、各種支援事業の優先枠・優遇措置で支援します。計画策定と一体で、ハウス・畜舎・加工場・バイオマス発電・肥料化設備など、循環に必要なハードを揃える段階です。
関連支援の例は次のとおりです。
- みどりの食料システム戦略推進交付金——地域循環型エネルギーシステム構築、バイオマスの地産地消、みどりの事業活動を支える体制整備 等
- 国内肥料資源利用拡大対策事業(一部)
- 農山漁村振興交付金(一部)
- 森林集約・循環成長対策(木質バイオマス・特用林産関係)
- 水産業競争力強化緊急事業(一部)
- 浜の活力再生・成長促進交付金(一部)
施設整備ごとに適用される交付金・補助の種類と要件が異なるため、先導計画の工程表とあわせて、該当する事業名を切り分けます。
資源・エネルギーを地域内で循環させる事業イメージ
循環モデルの中心は、農山漁村の地域資源、再エネ・資源再生、農林漁業関連施設の3層がつながる構造です。
地域資源
土地・水・気候に加え、木質バイオマス、家畜排せつ物、農業残渣など、農山漁村に賦存する資源と未利用資源が起点になります。
再エネ・資源再生
未利用資源の活用とあわせ、次のような設備・プロセスでエネルギーと資源を生み出します。
- 再エネ発電・熱設備——営農型太陽光、蓄電池、バイオマス発電・熱 等
- 資源再生——バイオ液肥、マテリアル、バイオ炭 等
VEMSにより再エネを効率的に活用し、エネルギーの見える化を通じてGHG削減の取組を促進します。再エネの電気・熱・CO2を農林漁業施設へ供給する流れが、モデルの中核です。
農林漁業施設と還元
農業用ハウス・農地・農業用機械、畜舎、水産加工場、防災・地域活性化施設などへエネルギーと資源を戻します。想定される効果は次のとおりです。
- 農林水産物のブランド化
- 再エネ活用によるコスト減、生産者の所得向上
- 食品残渣・未利用資源を肥料としてほ場に還元
- 利益を農林漁業へ再投資し、より質の高い生産につなげる
環境と調和した持続可能な農林漁業、レジリエンス強化、資金の地域内留保——対策のポイントで掲げる3つの方向性が、このループの中で同時に進む設計です。
事業の流れと支援の形態
資金の流れは国→都道府県→地方公共団体・民間団体等が基本です。支援の形態は定額や費用の1/2以内など、事業ごとに異なります。
推進段階(①②③)と施設整備(関連予算の優遇)を分けて進めると、計画・人材・実証→エネルギー設備→ハウス・加工・バイオマス施設という順序が整理しやすくなります。③の設備導入を検討する市町村は、地域循環型エネルギーシステム構築の交付要綱・公募案内と、先導計画の整合を早めに確認します。
よくある質問
農業のサーキュラーエコノミーとは何ですか
農業のサーキュラーエコノミー(循環経済)とは、家畜排せつ物・農業残渣・食品残渣・木質バイオマスといった未利用資源を廃棄せず、肥料や再生可能エネルギーに変えて地域の農林漁業の中で繰り返し使う仕組みです。本制度はこの循環を市町村単位の計画として描き、設備や施設の整備まで一体で進めます。
対象になるのはどんな主体ですか
支援を直接受ける主体は市町村です。農林漁業者・農業法人・地方公共団体・民間団体等は、市町村が策定する農林漁業循環経済先導計画に参画する立場で関わります。再エネ導入や資源の肥料化を考える事業者は、立地する市町村の計画と接続することで関連予算の優遇を活用しやすくなります。
どんな未利用資源を活用できますか
木質バイオマス、家畜排せつ物、農業残渣などが起点になります。これらを再エネ発電・熱やバイオ液肥・バイオ炭などに変え、農林漁業施設で電気・熱・CO2として活用したうえで、肥料分はほ場へ還元します。資源とエネルギーが地域内を循環する設計です。
農業のサーキュラーエコノミーで堆肥はどう活用されますか
家畜排せつ物や農業残渣・食品残渣を堆肥やバイオ液肥に変え、地域のほ場へ肥料として戻すのが基本の循環です。化学肥料の使用量と購入コストを抑えながら、未利用資源を地域内で使い切れます。国産の肥料資源づくりに使える支援は国内肥料資源利用拡大対策、炭にして土壌へ貯留する取組はバイオ炭のJ-クレジットでも扱っています。
食品残渣(食品ロス)はどう活用できますか
食品製造・流通・小売で出る食品残渣は、肥料化(堆肥・バイオ液肥)や飼料化、バイオガス発電の原料として活用できます。地域内でエネルギーや肥料に戻すことで、廃棄コストの削減と資源循環を同時に進められます。食品廃棄物の再生利用の制度面は食品リサイクル法を、食品ロスの現状は食品ロスの現状もあわせてご覧ください。
支援はどんな内容ですか
推進支援は①計画策定・体制整備、②調査・人材育成・栽培実証、③再エネ設備(自営線・蓄電池・VEMS・営農型太陽光等)の導入の3段階です。さらに計画に基づく施設整備を、バイオマスの地産地消や国内肥料資源利用拡大対策など関連予算の優先枠・優遇措置で支えます。
補助の形態や補助率はどうなりますか
支援の形態は定額や費用の1/2以内など、事業ごとに異なります。施設整備は適用される交付金・補助の種類で要件が変わるため、先導計画の工程表とあわせて、該当する事業名ごとに補助率や対象経費を切り分けます。
どこに相談すればよいですか
まず立地する市町村の農政担当に、先導計画の有無や策定の意向を確認します。再エネ設備の導入を検討する場合は、地域循環型エネルギーシステム構築事業の交付要綱・公募案内と計画の整合を、都道府県の担当部署とともに確認します。
次の一歩
市町村は、まず地域資源・再エネ・未利用資源の棚卸しから始め、先導計画の骨子と①②③の分担を整理します。施設整備を見込む場合は、計画と接続する関連支援事業(バイオマス地産地消、国内肥料資源、木質バイオマス等)の要件をあわせて確認します。再エネ設備の導入を検討する事業者は、地域循環型エネルギーシステム構築の交付要綱・公募案内と先導計画の整合を早めに確認します。
キーワード解説
みどりの食料システム戦略推進交付金
「みどりの食料システム戦略」の実現に向け、環境負荷低減や地域循環などの取組を支援する交付金の総称です。本ページの先導地域づくりのうち、再エネ設備導入は地域循環型エネルギーシステム構築、バイオマス・体制整備などは関連する子事業が担います。
農林漁業循環経済先導地域
地域の資源・再生可能エネルギーを農林漁業で循環利用する包括的な計画を策定した市町村を指します。農林漁業を核に、循環経済構築の取組を先導的に実践する地域です。
農林漁業循環経済先導計画
市町村が策定する、資源・再エネの地域循環と農林漁業振興を一体で描く計画です。①の体制整備、②の実証・人材育成、③の設備導入、および関連予算による施設整備の根拠となります。
地域循環型エネルギーシステム構築
みどり交付金の事業の一つで、先導地域づくりの③(自営線・蓄電池・VEMS・営農型太陽光等)を支援します。未利用資源からの再エネ供給と、農林漁業施設での効率的な活用をつなぐ枠です。
エネルギーマネジメントシステム(VEMS)
再エネ発電・蓄電・需要を一体的に管理し、効率的な運用とエネルギーの見える化を行うシステムです。先導地域モデルでは、GHG削減とコスト低減の両面で活用します。