「日本の食料自給率はなぜ低いのか」と疑問に思う方は多いはずです。この記事では、食料自給率とは何かという指標の意味から、カロリーベース38%と生産額ベース64%で数字が違う理由、品目別に見た低さの構造、各国との比較、食料国産率や飼料自給率との違い、そして2030年度に向けてどう上げていくのかまでをわかりやすく解説します。
この記事でわかること
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 食料自給率とは | 国内で消費する食料のうち、国内生産でどれだけ賄えているかを示す割合です。カロリーベースと生産額ベースの2つがあります。 |
| 日本の数字(令和6年度) | カロリーベースで38%、生産額ベースで64%です。指標の取り方が違うため、同じ年でも数字が大きく異なります。 |
| なぜ低いのか | 小麦・大豆・油脂・飼料など輸入に頼る品目が多く、食生活が変わったためです。今の食生活を国産だけで賄うには国内農地の約3.1倍が必要です。 |
| これからの目標 | 食料・農業・農村基本計画では、2030年度にカロリーベース45%・生産額ベース69%を目指します。 |
食料自給率とは
食料自給率とは、国内で消費する食料のうち、どれだけを国内生産で賄えているかを示す割合です。農林水産省が毎年公表しており、日本の食料供給がどれだけ輸入に頼っているかを測るものさしになります。
自給率には大きく2つの測り方があります。1つは食べ物の熱量(カロリー)で比べるカロリーベース(供給熱量ベース)、もう1つは金額で比べる生産額ベースです。令和6年度の食料自給率は、カロリーベースで38%、生産額ベースで64%です。同じ年でも数字が大きく違うのは、この測り方の違いによるものです。
カロリーベースと生産額ベースの違い
食料自給率の数字が「38%」とも「64%」とも言われるのは、計算の分子・分母に何を使うかが違うからです。それぞれの意味は次のとおりです。
- カロリーベース(供給熱量ベース):国民1人1日当たりの供給熱量のうち、国産で賄えている熱量の割合です。米や小麦、油脂など熱量の大きい品目の影響を強く受けます。令和6年度は、国内消費仕向熱量2,203kcal/人・日のうち国産供給熱量が841kcal/人・日で、自給率は38%です。
- 生産額ベース:国内で消費する食料の金額のうち、国内生産が占める割合です。野菜や魚介類、畜産物など単価の高い品目が反映されやすくなります。令和6年度は、国内消費仕向額18.2兆円のうち国内生産額が11.1兆円で、自給率は64%です。
| 比較する点 | カロリーベース(供給熱量ベース) | 生産額ベース |
|---|---|---|
| 測るものさし | 食べ物の熱量(kcal)で比べる | 食べ物の金額(円)で比べる |
| 令和6年度の自給率 | 38% | 64% |
| 計算(令和6年度) | 国産供給熱量841 ÷ 供給熱量2,203(kcal/人・日) | 国内生産額11.1兆円 ÷ 国内消費仕向額18.2兆円 |
| 影響が大きい品目 | 米・小麦・油脂など熱量の大きい品目 | 野菜・魚介・畜産など単価の高い品目 |
| 数字の傾向 | 低く出やすい(熱量源の穀物・油脂を輸入に依存) | 高く出やすい(高単価の野菜・畜産は国産割合が高い) |
| 主に見たい側面 | 非常時に必要な熱量を国産でどれだけ賄えるか(食料安全保障) | 農業の産業・経営としての実態 |
カロリーの大半を占める穀物・油脂を多く輸入している一方、金額の大きい野菜や畜産は国内生産の割合が比較的高いため、カロリーベースは低く、生産額ベースは高く出ます。どちらが正しいということではなく、見たい側面によって使い分ける指標です。なお、平時の国民が日常生活で必要とする摂取熱量1,850kcal/人・日を国産でどの程度賄えるかを示す摂取熱量ベースの指標も公表されています。
なぜ日本の食料自給率は低いのか
日本のカロリーベース食料自給率が38%にとどまる最大の理由は、熱量の大きい品目を輸入に頼っていることと、食生活が大きく変わったことの2つです。
品目別の供給熱量自給率を見ると、米は99%前後と高い一方で、小麦は16%、大豆は24%、畜産物は17%、油脂類は4%と、輸入依存の大きい品目が目立ちます。これらはいずれも食事のカロリーを支える品目です。昭和40年度と比べると、畜産物・油脂・小麦などの輸入依存が拡大しており、パンや肉、油を多く使う食生活へ変化したことが自給率の低下につながりました。
構造的な制約もあります。今の食生活で消費する食料をすべて国産で賄おうとすると、必要な農地は国内の農地面積の約3.1倍に相当します。日本は農用地面積が464万ha(国土の12.3%)にとどまり、すべてを国内で賄うのは現実的ではありません。輸入に頼る品目の国産化を進めつつ、国産化が難しい品目は安定的に輸入することが重要になります。
農業の経済的な位置づけを国際比較すると、農林水産業総生産の対GDP比は欧米諸国と同程度ですが、国土に占める農用地の割合や1戸当たりの経営面積は欧米より小さい水準です。令和6年の農林水産業総生産は434億米ドル(対GDP比1.0%)、農業経営体の平均経営面積は3.6ha/戸です。こうした農地・経営規模の制約も、自給率を押し上げにくい背景になっています(中国は香港・マカオ・台湾を除く)。
食料自給率の各国比較と日本の輸入構造
日本は世界有数の食料輸入国です。2023年の農産物純輸入額は532億ドルで、主要国の中でも輸入が輸出を大きく上回り、米国・中国・豪州などとの取引規模が大きくなっています。先進国の中でも、これだけ大量の食料を輸入に頼っている点が日本の特徴です。
令和6年の農産物輸入額は9兆5,461億円です。とうもろこし、大豆、小麦、豚肉、牛肉といった主要品目では、特定の国に輸入が集中している点も見逃せません。どの品目をどこから輸入しているかは、次の表のとおりです。
| 品目 | 輸入額 | 主な輸入相手国(シェアの目安) |
|---|---|---|
| とうもろこし | 5,963億円 | 米国77.0%、ブラジル20.2% |
| 大豆 | 2,876億円 | 米国65.2%、ブラジル18.6%、カナダ15.2% |
| 小麦 | 2,566億円 | カナダ39.4%、米国38.5%、豪州21.8% |
| 豚肉 | 6,457億円 | カナダ24.8%、米国23.0%、スペイン17.2%ほか |
| 牛肉 | 4,751億円 | 豪州44.9%、米国37.9%、ニュージーランド6.6%ほか |
食料自給率・食料国産率・飼料自給率の違い
自給率に似た指標として、食料国産率と飼料自給率があります。混同しやすいので、違いを整理します。
食料自給率は、畜産物について輸入した飼料で育てた分を国産から差し引いて計算します。たとえば国産の牛肉でも、輸入飼料で育てた分は自給に数えません。一方の食料国産率は、輸入飼料で生産した畜産物分を差し引かずに計算する指標で、令和2年の食料・農業・農村基本計画以降、国内畜産の生産基盤の強化を評価するために公表されています。そのため、畜産物では自給率と国産率の差が大きく開きます。
| 指標 | 食料自給率 | 食料国産率 | 差(ポイント) |
|---|---|---|---|
| 総合(カロリー) | 38% | 47% | 9 |
| 畜産物 | 17% | 65% | 48 |
| 牛肉 | 14% | 50% | 36 |
| 豚肉 | 6% | 48% | 42 |
| 鶏肉 | 8% | 64% | 56 |
| 鶏卵 | 12% | 98% | 86 |
| 牛乳・乳製品 | 29% | 64% | 35 |
飼料自給率は、国内で供給される飼料のうち国内生産(純国内産)が占める割合です。純国内産飼料供給量(6,200 TDN千トン)を飼料供給量(23,677 TDN千トン)で割って26%です。畜産物の食料自給率が低いのは、この飼料自給率の低さが大きく影響しています。カロリーベースの食料国産率は、1人1日当たり国産供給熱量1,064kcalを供給熱量2,248kcalで割って47%、生産額ベースでは国内生産額13.8兆円を国内消費仕向額20.1兆円で割って69%です。
世界の食料需給と国際穀物価格・備蓄
自給率の低い日本にとって、輸入元である世界の需給は無関係ではありません。2023年時点で、世界の主要穀物等の需要量は1970年比で小麦が2.4倍、米が2.5倍、とうもろこしが4.5倍、大豆が8.4倍と増加し、総人口の伸び(2.2倍)を上回っています。生産量も増えてきましたが、近年は生産と需要がほぼ均衡する動きになっており、豊凶による短期変動も避けられません。世界全体で食料の取り合いが強まれば、輸入に頼る日本の調達環境も厳しくなります。
国際穀物価格も大きく変動します。とうもろこし・大豆は2012年に史上最高値を記録したあと世界的な豊作で低下し、2020年後半から南米の乾燥や中国の輸入需要増、2021年の北米北部の高温乾燥で上昇しました。2022年のロシアによるウクライナ侵攻で小麦は史上最高値(期近終値14.3ドル/ブッシェル、2022年3月7日)を更新したのち、輸出再開もあり侵攻前水準まで低下しました。とうもろこし・大豆も侵攻時に高騰したものの、ブラジル等の豊作で侵攻前水準まで戻る動きがみられます。
こうした不測の事態に備え、国は米、食糧用小麦、飼料穀物の備蓄事業を実施しています。自給している米は「国内の不作に緊急輸入等せずに国産米で対処し得る水準」、食糧用小麦と飼料穀物は「不測時に代替輸入先からの輸入を確保するまでの期間に対処し得る水準」を基本にします。備蓄米の仕組みは政府備蓄米とは?仕組みと放出のルールを解説でも詳しく扱っています。また、実際に供給が大きく不足する不測時の対応の枠組みは食料供給困難事態対策法で定められています。
| 品目 | 備蓄水準(目安) | 考え方 |
|---|---|---|
| 国産米 | 100万トン程度 | 年間生産量のおおよそ10分の1。通常程度の不作が2年連続した事態に国産米で対処できる水準 |
| 輸入食糧用小麦 | 需要量の2.3カ月分(90万トン程度) | 港湾・鉄道の停滞による船積遅延等の経験を踏まえた水準。代替輸入に約4.3カ月、海上輸送中の契約済み小麦約2カ月を差し引いた残り |
| 輸入飼料穀物 | 100万トン程度 | 海外からの一時的輸入停滞や配合飼料工場被災への対応。海上輸送中の飼料穀物と合わせ約2カ月分のストック |
肥料・燃油・配合飼料の価格と輸入依存
自給率の低さは、食べ物そのものだけの問題ではありません。農業生産を支える肥料・燃油・飼料も多くを輸入に頼っており、その価格や調達は自給の足元を左右します。化学肥料原料の国際価格は、令和3年半ば以降の高騰が落ち着きつつある一方、円安や中国の輸入制限の影響で調達コストを押し上げる傾向があります。燃油価格は為替や国際商品市況で大きく変動し、配合飼料価格はとうもろこしの国際価格や為替の影響を受け、令和5年以降は主産国の豊作で国際価格が下落したこと等から概ね低下傾向で推移しています。
特に化学肥料原料は輸入依存が際立ちます。尿素、りん安(りん酸アンモニウム)、塩化加里(塩化カリウム)はほぼ全量を輸入し、資源が世界的に偏在するため輸入相手国も偏ります。尿素はマレーシアと中国、りん安は中国、塩化加里はカナダが主な相手国です。令和5年7月〜令和6年6月の輸入量の目安は、尿素202千トン(マレーシア75%)、塩化加里192千トン(カナダ68%)、りん安357千トン(中国73%、モロッコ15%)です。肥料原料を国内資源で代替する取組は堆肥・国産肥料づくりに使える補助金の解説もあわせてご覧ください。
これから食料自給率はどうなる・どう上げるのか
日本の食料自給率は長期的に低下傾向で推移してきましたが、ここから引き上げる目標が定められています。食料・農業・農村基本計画では、2030年度に向けて、カロリーベース(供給熱量ベース)を38%→45%、生産額ベースを61%→69%、摂取熱量ベースを45%→53%に引き上げる目標を掲げています。
自給率を上げるには、輸入に頼る小麦・大豆・飼料作物などの国内生産を増やすこと、畜産の基盤を強めて飼料自給率を高めること、そして消費者が国産の農産物を選ぶことが欠かせません。同時に、価格が適正に生産者へ届く仕組みづくりも進んでいます。食料の安定供給と価格形成の考え方は食料システムと価格形成の解説で扱っています。輸入だけに頼らない食料安全保障へ向けて、国内生産の増大・安定的な輸入・備蓄を組み合わせる取組が重要になります。
そもそも食料安全保障とは
自給率の議論の土台にあるのが「食料安全保障」という考え方です。1996年11月のFAO(国連食糧農業機関)食料サミットでは、「すべての人の食料安全保障を達成し、2015年までに現在の栄養不足人口を半減すること」を目標とする「世界食料安全保障のためのローマ宣言」がまとまり、その行動計画で食料安全保障が定義されました。
食料安全保障とは、すべての人が、いかなる時にも、活動的で健康的な生活に必要な食生活上のニーズと嗜好を満たすために、十分で安全かつ栄養ある食料を、物理的にも社会的にも経済的にも入手できる状態を指します。次の四つの要素から成ります。
- 供給面(Food Availability):適切な品質の食料が、国内生産または輸入(食料援助を含む)により十分に供給されているか
- アクセス面(Food Access):個人が栄養ある食料を得るための資源・権利(法的・政治的・経済的・社会的な取り決め)を持ちうるか
- 利用面(Utilization):適切な食事、安全な水・衛生・保健により栄養状態が満たされるか(非食料投入の重要性を含む)
- 安定面(Stability):いつでも適切な食料にアクセスできる安定性があり、経済・気候危機や季節的要因で食料アクセスを失うリスクがないか
よくある質問
食料自給率とは何ですか
国内で消費する食料のうち、国内生産でどれだけ賄えているかを示す割合です。農林水産省が毎年公表しており、カロリー(供給熱量)で測るカロリーベースと、金額で測る生産額ベースがあります。
なぜ日本の食料自給率は低いのですか
小麦・大豆・油脂・飼料など、カロリーの大きい品目を輸入に頼っているためです。パンや肉、油を多く使う食生活へ変わったことも影響しました。今の食生活を国産だけで賄うには国内農地の約3.1倍が必要で、農地や経営規模の制約もあります。
カロリーベースとは何ですか
国民1人1日当たりの供給熱量のうち、国産で賄えている熱量の割合です。米や小麦、油脂など熱量の大きい品目の影響を強く受け、令和6年度は38%です。非常時に必要な熱量を国産でどれだけ確保できるかという、食料安全保障の観点で見る指標です。
カロリーベースと生産額ベースは何が違いますか
カロリーベースは熱量で測るため、米や油脂など熱量の大きい品目の影響を強く受け、令和6年度は38%です。生産額ベースは金額で測るため、野菜や畜産など単価の高い品目が反映されやすく、同じ年で64%です。見たい側面で使い分けます。
食料自給率と食料国産率の違いは何ですか
食料自給率は、畜産物について輸入飼料で育てた分を国産から差し引いて計算します。食料国産率はその分を差し引かずに計算し、国内畜産の生産基盤の強化を評価する指標です。畜産物では自給率17%に対し国産率65%と差が大きく開きます。
食料自給率は上げられるのですか
基本計画では2030年度にカロリーベース45%、生産額ベース69%を目指します。輸入に頼る小麦・大豆・飼料の国内生産を増やすこと、飼料自給率を高めること、消費者が国産を選ぶことが鍵です。最新の目標や進捗は食料・農業・農村基本計画や省の公表をご覧ください。
まとめ
食料自給率とは、国内で消費する食料を国内生産でどれだけ賄えているかを示す割合で、令和6年度はカロリーベース38%・生産額ベース64%です。数字が違うのは、熱量で測るか金額で測るかの違いによるものです。日本の自給率が低いのは、小麦・大豆・油脂・飼料など熱量の大きい品目を輸入に頼り、食生活が変わったためで、今の食生活を国産だけで賄うには国内農地の約3.1倍が必要という構造的な制約もあります。
畜産の基盤を測る食料国産率(カロリー47%)や飼料自給率(26%)も合わせて見ると、自給率の中身がよくわかります。基本計画は2030年度にカロリーベース45%を目指しており、輸入に頼る品目の国内生産拡大、飼料自給率の向上、国産を選ぶ消費が、自給率を上げる鍵になります。最新の数値や目標は、農林水産省の統計・公表をご覧ください。
キーワード解説
食料自給率
国内の食料供給に対する国内生産の割合を示す指標です。カロリー(供給熱量)ベースと生産額ベースがあり、農林水産省が毎年公表しています。令和6年度はカロリーベース38%、生産額ベース64%です。
食料国産率
輸入飼料で生産した畜産物分を自給率の計算から差し引かない指標です。国内畜産の生産基盤の強化を評価する観点から、令和2年以降の基本計画で公表されています。
飼料自給率
国内で供給される飼料のうち、国内生産(純国内産)が占める割合です。令和6年度は26%で、畜産物の食料自給率を左右する大きな要因です。
食料安全保障
すべての人が、いつでも十分で安全かつ栄養ある食料を入手できる状態を指す考え方です。国内生産の増大、安定的な輸入、備蓄などを組み合わせて確保します。