世界の穀物需要の増加と日本の大規模な輸入構造を踏まえ、令和6年度の食料自給率、食料国産率、備蓄、国際穀物価格、FAOの食料安全保障の定義までを整理します。
概要
世界の穀物・大豆の需給
2023年時点で、世界の主要穀物等の需要量は1970年比で、小麦が2.4倍、米が2.5倍、とうもろこしが4.5倍、大豆が8.4倍と増加しており、総人口の伸び(2.2倍)を上回っています。需要の増加に対して生産量も増えてきましたが、短期的には豊凶による変動があり、COVID-19パンデミック以前は生産が需要をやや上回る局面が続いた一方、近年は生産と需要がほぼ均衡する動きになっています。
農産物貿易と農業の国際比較
2023年の我が国の農産物純輸入額は532億ドルであり、世界有数の食料輸入国の一つです。主要国の農産物輸出入では、日本は輸入が輸出を大きく上回り、米国・中国・豪州などとの取引規模が大きくなっています。
農林水産業総生産の対GDP比は、日本を含む欧米諸国と同程度の水準です。一方、国土面積に占める農用地面積の割合や平均経営面積は、欧米諸国と比べて低い水準にあります。令和6年の農林水産業総生産は434億米ドル(対GDP比1.0%)、農用地面積は464万ha(国土の12.3%)、農業経営体の平均経営面積は3.6ha/戸です(中国は香港・マカオ・台湾を除く)。
主要農産物の国別輸入割合(令和6年)
令和6年の農産物輸入額は9兆5,461億円です。とうもろこし、大豆、小麦、豚肉、牛肉など主要品目では、良好な関係にある国からの輸入が大きい構成になっています。
| 品目 | 輸入額 | 主な輸入相手国(シェアの目安) |
|---|---|---|
| とうもろこし | 5,963億円 | 米国77.0%、ブラジル20.2% |
| 大豆 | 2,876億円 | 米国65.2%、ブラジル18.6%、カナダ15.2% |
| 小麦 | 2,566億円 | カナダ39.4%、米国38.5%、豪州21.8% |
| 豚肉 | 6,457億円 | カナダ24.8%、米国23.0%、スペイン17.2%ほか |
| 牛肉 | 4,751億円 | 豪州44.9%、米国37.9%、ニュージーランド6.6%ほか |
国際穀物価格の動向
穀物等の国際相場は、世界人口や経済発展に伴う需要、バイオ燃料向け需要、天候による生産変動などで変動します。とうもろこし・大豆は2012年に史上最高値を記録したあと世界的な豊作等で低下し、2020年後半から南米の乾燥や中国の輸入需要増、2021年の北米北部の高温乾燥などで上昇しました。2022年のロシアによるウクライナ侵攻で小麦は史上最高値(期近終値14.3ドル/ブッシェル、2022年3月7日)を更新したのち、臨時回廊等による輸出再開もあり侵攻前水準まで低下しました。とうもろこし・大豆も侵攻時に高騰したものの、ブラジル等の豊作から侵攻前水準まで戻る動きがみられます。
食料自給率の推移と目標
我が国の食料自給率は長期的に低下傾向で推移してきました。令和6年度は、カロリーベース(供給熱量ベース)で38%、生産額ベースで64%です。食料・農業・農村基本計画では、2030年度に向けた目標として、供給熱量ベース38%→45%、生産額ベース61%→69%、摂取熱量ベース45%→53%が掲げられています。
令和6年度の国内消費仕向熱量は2,203kcal/人・日、国産供給熱量は841kcal/人・日です。食料の国内消費仕向額は18.2兆円、国内生産額は11.1兆円です。摂取熱量ベースでは、平時の国民日常生活に必要な摂取熱量1,850kcal/人・日のうち、国産でどの程度を賄えるかを示す指標が公表されています。
食料消費構造と自給の限界
小麦、大豆、飼料、油脂類などの自給率は低く、大部分を輸入に依存しています。現在の食生活を前提に、国内で消費される食料すべてを国産で賄うために必要な農地面積は、国内の農地面積の約3.1倍に相当し、すべてを国産でまかなうことは現実的ではありません。輸入農産物の国産化を進める一方、国産化が難しい品目については安定的な輸入を行うことが重要です。
品目別の供給熱量自給率では、米は99%前後と高い一方、小麦は16%、大豆は24%、畜産物は17%、油脂類は4%など、カロリーベース食料自給率38%を構成する品目差が大きくなっています。昭和40年度と比べると、畜産物・油脂・小麦などの輸入依存が拡大した構造変化が示されています。
食料国産率と飼料自給率
食料自給率は飼料自給率を考慮して計算しますが、令和2年の食料・農業・農村基本計画以降、国内畜産の生産基盤の強化を評価するため、輸入飼料で生産した畜産物分を除かない食料国産率も公表されています。
| 指標 | 食料自給率 | 食料国産率 | 差(ポイント) |
|---|---|---|---|
| 総合(カロリー) | 38% | 47% | 9 |
| 畜産物 | 17% | 65% | 48 |
| 牛肉 | 14% | 50% | 36 |
| 豚肉 | 6% | 48% | 42 |
| 鶏肉 | 8% | 64% | 56 |
| 鶏卵 | 12% | 98% | 86 |
| 牛乳・乳製品 | 29% | 64% | 35 |
飼料自給率は、純国内産飼料供給量(6,200 TDN千トン)を飼料供給量(23,677 TDN千トン)で除して26%です。カロリーベースの食料国産率は、1人1日当たり国産供給熱量1,064kcalを供給熱量2,248kcalで除して47%、生産額ベースでは国内生産額13.8兆円を国内消費仕向額20.1兆円で除して69%です。
米・小麦・飼料穀物の備蓄
米、食糧用小麦、飼料穀物について、国は備蓄事業を実施しています。備蓄水準の基本は、自給している米については「国内の不作に対し(緊急輸入等せずに)国産米をもって対処し得る水準」、食糧用小麦と飼料穀物については「不測時に代替輸入先からの輸入を確保するまでの期間に対処し得る水準」とされています。
| 品目 | 備蓄水準(目安) | 考え方 |
|---|---|---|
| 国産米 | 100万トン程度 | 年間生産量のおおよそ10分の1。通常程度の不作が2年連続した事態に国産米で対処できる水準 |
| 輸入食糧用小麦 | 需要量の2.3カ月分(90万トン程度) | 港湾・鉄道の停滞による船積遅延等の経験を踏まえた水準。代替輸入に約4.3カ月、海上輸送中の契約済み小麦約2カ月を差し引いた残り |
| 輸入飼料穀物 | 100万トン程度 | 海外からの一時的輸入停滞や配合飼料工場被災への対応。海上輸送中の飼料穀物と合わせ約2カ月分のストック |
肥料・燃油・配合飼料の価格
化学肥料原料の国際価格は、令和3年半ば以降の高騰が落ち着きつつある一方、円安や中国の輸入制限の影響などで調達コストを押し上げる傾向があります。燃油価格は為替や国際商品市況の影響で大きく変動し、ロシアによるウクライナ侵略以降は高い水準で推移した局面があります。配合飼料価格はとうもろこしの国際価格や為替の影響を受け、令和5年以降は主産国の豊作などにより国際価格が下落したこと等を受け、概ね低下傾向で推移しています。
化学肥料原料の輸入相手国
尿素、りん安(りん酸アンモニウム)、塩化加里(塩化カリウム)は、ほぼ全量を輸入しています。資源が世界的に偏在するため、輸入相手国も偏在します。尿素はマレーシアと中国、りん安は中国、塩化加里はカナダが主な相手国です。令和3年秋以降、中国による肥料原料の輸出検査の厳格化や、ロシアによるウクライナ侵略の影響で輸入が停滞したことを受け、代替国からの調達が進んでいます。
令和5年7月〜令和6年6月の輸入量の目安は、尿素202千トン(マレーシア75%)、塩化加里192千トン(カナダ68%)、りん安357千トン(中国73%、モロッコ15%)です。
FAOの食料安全保障の定義
1996年11月のFAO食料サミットでは、世界規模で食料問題が論じられ、「すべての人の食料安全保障を達成し、2015年までに現在の栄養不足人口を半減すること」を目標とする「世界食料安全保障のためのローマ宣言」が取りまとめられました。その行動計画で、食料安全保障の定義が提起されています。
食料安全保障とは、全ての人が、いかなる時にも、活動的で健康的な生活に必要な食生活上のニーズと嗜好を満たすために、十分で安全かつ栄養ある食料を、物理的にも社会的にも経済的にも入手可能であるときに達成される状態です。四つの要素は次のとおりです。
- 供給面(Food Availability):適切な品質の食料が、国内生産または輸入(食料援助を含む)により十分に供給されているか
- アクセス面(Food Access):個人が栄養ある食料を得るための資源・権利(法的・政治的・経済的・社会的な取り決め)を持ちうるか
- 利用面(Utilization):適切な食事、安全な水・衛生・保健により栄養状態が満たされるか(非食料投入の重要性を含む)
- 安定面(Stability):いつでも適切な食料にアクセスできる安定性があり、経済・気候危機や季節的要因で食料アクセスを失うリスクがないか
キーワード解説
食料安全保障
食料の安定的な供給を確保する考え方です。国内生産の増大、安定的な輸入、備蓄、輸出促進などを組み合わせ、需要減少下でも供給能力を維持する政策が進められています。
食料自給率
国内の食料供給に対する国内生産の割合を示す指標です。カロリー(供給熱量)ベースと生産額ベースがあり、農林水産省が毎年公表しています。
食料国産率
輸入飼料で生産した畜産物分を自給率の計算から除かない指標です。国内畜産の生産基盤の強化を評価する観点から、令和2年以降の基本計画以降に公表されています。
飼料自給率
国内で供給される飼料のうち、国内生産(純国内産)が占める割合です。畜産の食料自給率を左右する要因の一つです。