畦畔を取り除いて区画を広げたい、水はけの悪い田に暗渠排水を入れたい、高収益作物への転換やスマート農業に合わせて農地を整えたい。こうした耕作条件の改善に使えるのが農地耕作条件改善事業です。畦畔除去・区画拡大や暗渠排水から、高収益作物転換・スマート農業・田んぼダムまで、6つの支援メニューを組み合わせて整備でき、国・都道府県・市町村の補助率は1/2・定額が基本です。この記事では、事業の内容、6つの支援メニュー、対象農地と補助率、申請の流れまでをわかりやすく整理します。

農地耕作条件改善事業の全体像

まず、誰が何に使える事業なのかを表で押さえます。

項目 内容
どんな事業 畦畔除去による区画拡大や暗渠排水など、農地の耕作条件を改善する整備を支援する事業です。農地バンクによる担い手への農地集積とあわせて使うことを想定しています。
何に使えるか 畦畔除去・暗渠排水から、高収益作物転換・スマート農業・田んぼダム・土地利用調整まで、6つの支援メニューから必要なものを選べます。単独でも複数の組み合わせでも使えます。
対象農地 農振農用地区域のうち、地域計画の策定区域に入る農地が対象です。総事業費200万円以上農業者2者以上などの実施要件があります。
誰が申請するか 申請・実施の窓口は市町村等です。資金は国→都道府県→市町村の流れで交付され、地域の農業者・担い手が整備の恩恵を受けます。
補助率 国・都道府県・市町村の負担は1/2・定額の組み合わせが基本です。転換割合などの条件に応じて上乗せできる費目もあります。
農地耕作条件改善事業の概要。対策のポイント、6つの支援メニュー、事業目標、国・都道府県・市町村の資金の流れ、実施要件、令和8年度予算額。
農地耕作条件改善事業の全体像(出典:農林水産省・令和8年度農林水産関係予算概算決定の概要

農地耕作条件改善事業とは

農地耕作条件改善事業は、畦畔の除去による区画拡大や暗渠排水の整備など、担い手が使いやすいように農地の耕作条件を整える事業です。大区画化や排水改良といったハードの整備だけでなく、輪作体系の検討や栽培技術研修といったソフトの取組まで、セットで組み合わせられるのが特徴です。

この事業は、農地中間管理機構(農地バンク)による担い手への農地集積と連動して使うことを想定しています。機構が農地を集めてまとまった形に整理し、その農地の耕作条件を本事業で改善する、という流れです。基盤整備が完了した地区では、農地集積率9割以上(令和11年度まで)を目標に据えています。

国は、機構による担い手への農地集積に合わせて、きめ細かな耕作条件改善高収益作物への転換麦・大豆の増産スマート農業水田の貯留機能の向上を、ハードとソフトで一体的に支援する方針です。麦・大豆を軸にする地域なら転換メニューと輪作検討を、機械化を進めたい地域ならスマート農業と基盤整備を同時に組む、といった形で6つのメニューを当てはめられます。

農地耕作条件改善事業では、次の6つの支援メニューから、地域のニーズに応じて必要なものを選べます。1つだけでも、複数を組み合わせても使えます。検討のたびに、ハードの整備だけにするか、研修や輪作検討などのソフトも含めるかをセットで決めましょう。

畦畔除去で区画を広げ、暗渠排水で水はけを改善し、担い手が使いやすい耕作条件に整えます。農地の集積を前提とした、きめ細かな整備に向いたメニューです。

基盤整備に加えて、輪作体系の検討栽培技術研修高付加価値農業施設の設置まで含められます。野菜や果樹などの高収益作物への転換割合に応じて、後述の高収益作物導入促進費を上乗せできるかも、設計段階で見込みましょう。

基盤整備と一体でGNSS基地局を設置し、トラクターの自動操舵などへつなぐメニューです。農地を整えるタイミングでスマート農業の土台を作れます。

土層改良排水客土・反転耕など、病害虫の発生予防やまん延防止につながる基盤整備に充てられます。

水田が雨水を一時的にためて流出を抑える田んぼダムに向けて、落水口・堰板の整備など、貯留機能を高める工事を組み込めます。

持続的に農地を利用していくためのゾーニングに必要な交換分合や基盤整備を入れられます。地域で農地の配置を整理し直す取組に使えます。

対象農地と補助率

事業を使えるのは、農振農用地区域のうち地域計画の策定区域に入る農地です。あわせて、次のような事業規模の要件を満たす必要があります。

  • 総事業費200万円以上であること。
  • 農業者2者以上が関わる事業であること。
  • 機構による集積とセットで進める場合は、基盤整備完了地区で農地集積率9割以上(令和11年度まで)を目標とすること。

補助率は、国・都道府県・市町村の負担で1/2・定額の組み合わせが基本です。交付の筋道は国→都道府県→市町村等で、市町村が窓口となって事業を実施します。

さらに、条件に応じて次の特例費目を上乗せできます。事業設計の段階で、自地域が当てはまるかを見込んでおきましょう。

  • 地域計画の区域内で、整備済み農地の周辺にある未整備農地をまとめて整備する場合は、機構集積推進費を検討できます。
  • 高収益作物への転換割合に応じて、高収益作物導入促進費を上乗せできます。
  • 実施後に水田活用の直接支払交付金の対象外になる農地が出る見込みの場合は、高収益作物導入推進費の対象になり得ます。

具体的な補助率や交付の上限、申請様式の最新版は、地域や事業のタイプによって異なります。管轄の都道府県・市町村、および農林水産省の予算・農地整備に関する案内をご覧ください。

申請の流れ

市町村担当でも農業者・担い手でも、予算枠を使う段階では次の順で整理すると手戻りが少なくなります。

  1. 対象区域を確認します。対象農地が農振農用地区域のうち、地域計画の策定区域に入るかを押さえます。
  2. 支援メニューを選びます。農地集積促進・高収益作物転換・スマート農業導入・病害虫対策・水田貯留機能向上・土地利用調整のどれを、いくつ組み合わせるかを決めます。
  3. 事業規模を設計します。総事業費200万円以上・農業者2者以上などの要件を満たすように、総事業費・参加農業者数を組み立てます。
  4. 市町村・都道府県へ相談し、事業化します。設計図と参加農業者の確保ができたら、市町村・都道府県の設計要領・公募の案内に沿って、事業名・費目・補助率を具体化します。

採択条件や手続きの細部は、都道府県・農政局の公募・要領に定められています。畦畔除去や暗渠排水、研修・施設整備までを一つの流れとして設計しましょう。

予算の規模

農地耕作条件改善事業の予算規模は、近年次のとおりです。

  • 令和8年度予算概算決定額 20,275百万円(前年度19,843百万円)
  • 令和7年度補正予算額 10,000百万円

よくある質問

農地耕作条件改善事業とは何ですか

畦畔の除去による区画拡大や暗渠排水の整備など、担い手が使いやすいように農地の耕作条件を整える事業です。農地中間管理機構(農地バンク)による担い手への農地集積とあわせて使うことを想定しており、6つの支援メニューを組み合わせて整備できます。

どんな工事が対象ですか

畦畔除去による区画拡大、暗渠排水、土層改良、客土・反転耕などの基盤整備のほか、GNSS基地局の設置、田んぼダム向けの落水口・堰板の整備などが対象です。あわせて輪作体系の検討や栽培技術研修といったソフトの取組も組み合わせられます。

補助率はどのくらいですか

国・都道府県・市町村の負担で1/2・定額の組み合わせが基本です。高収益作物への転換割合や、未整備農地のまとめ整備などの条件に応じて、機構集積推進費や高収益作物導入促進費などを上乗せできる場合があります。最新の補助率は管轄の都道府県・市町村の案内でご確認ください。

誰が申請しますか

申請・実施の窓口は市町村等です。資金は国→都道府県→市町村の流れで交付されます。農業者・担い手は、地域の話し合いや市町村への相談を通じて、整備の対象となる農地や取組を組み立てていきます。

次の一歩

区画拡大や排水改良、高収益作物への転換を考えているなら、まず自地域が地域計画の策定区域に入るかを市町村に確認しましょう。そのうえで、6つの支援メニューのどれを組み合わせるか、総事業費・参加農業者数をどう設計するかを、市町村・都道府県の設計要領や公募の案内に沿って具体化していきます。

農地の集積そのものから始めたい場合は農地バンクの仕組みを、農家負担ゼロで基盤整備を進めたい場合は機構関連農地整備事業もあわせてご覧ください。

キーワード解説

農地中間管理機構(農地バンク)

農地の集積・集約を進め、担い手が耕す面積を確保する公的な組織です。本事業は、機構の集積と同じ地域で耕作条件を揃えるために使う枠組みです。

田んぼダム

水田が雨水を一時的にためて、流出を抑える仕組みです。落水口・堰板の整備が支援の典型例になります。

GNSS基地局

自動操舵など、位置情報を使うスマート農業の精度を支える設備です。基盤整備と同時に設置することが支援の柱の一つです。