都市部の農地は面積こそ全国の1%台でも、消費地直結の新鮮な供給と防災・緑地の機能を担います。担い手確保の鍵は「借りやすい仕組み」——貸借円滑化法が整えたルールと、市街化区域内農地の推移を、借地して始めたい・貸したい双方の視点で整理します。
概要
都市農業の役割
都市農業は、次のような多面的な役割を果たしています。
- 新鮮な農産物の供給(都市住民との近接性)
- 防災空間の確保、良好な景観の形成
- 国土・環境の保全
- 農業体験の場の提供
面積は小さくても、消費地に近いという立地を活かし、全国の農業産出に占める割合以上の社会的機能を担う——というのが都市農業の位置づけです。
規模と推移
| 指標 | 全国 | 都市農業 |
|---|---|---|
| 農地面積 | 427.2万ha | 5.7万ha(1.3%) |
| うち生産緑地 | — | 1.2万ha(0.3%) |
| 農業産出額 | 9兆5,543億円 | 1,736億円(1.8%、推計) |
市街化区域内農地は、平成6年の137,643haから令和5年の56,807haへ減少しています(生産緑地地区面積・市街化区域内農地面積の推移)。生産緑地地区内の農地を、意欲ある都市農業者等が活用することが重要です。
課題——貸借の円滑化
農業従事者の減少・高齢化が進む中、都市農地(生産緑地地区内の農地)については、意欲ある都市農業者等によって有効に活用されることが重要です。そのための貸借が円滑に行われる仕組みが必要です。
所有者は開発将来性を見据えて借地期間や更新に慎重になり、借り手は長期投資(施設・土づくり)がしにくい——都市農地特有のミスマッチを、この法律は制度面で調整します。
都市農地の貸借の円滑化に関する法律
都市農地の貸借の円滑化に関する法律(平成30年法律第68号)の目的は、貸借の円滑化により都市農地の有効活用を図り、都市農業の機能発揮を通じて都市住民の生活の向上に資することです。
農地法の特例
- 法定更新(農地法第17条)が適用されない——借地期間の終了が明確になり、所有者の計画と整合しやすくなります
- 返還——事業計画に基づく都市農地の活用終了後(賃貸借期間終了後)には、都市農地が所有者に返還される
借り手として始める場合、事業計画の内容・期間・終了後の返還条件を契約前に確認してください。貸す側(所有者)は、返還後の土地利用と開発計画との関係を整理したうえで、円滑化制度の利用可否を市町村に相談できます。
借地して始めるとき
- 対象農地が市街化区域内・生産緑地地区内かを確認する
- 市町村の都市農業・借地窓口で、円滑化法の適用と事業計画様式を確認する
- 賃貸借期間・返還・改善投資の回収見込みを事業計画に書く
- 所有者と返還条件まで合意してから契約する
キーワード解説
都市農業
市街化区域等における農業。近接する消費地への供給と多面的機能を担います。
都市農地の貸借の円滑化に関する法律
都市農地の貸借を円滑化し、担い手確保と都市農業機能の発揮を目的とする法律(平成30年法律第68号)です。
生産緑地地区
都市計画上、農地等を保全するため定められた地区。都市農地の重要な部分を占めます。