建設機械のレンタル事業者が農業用機械のシェアリングに参入する、低価格な直進・自動操舵装置を製造販売する——こうした農業資材まわりの新規事業を検討している事業者向けに、国が用意する農業競争力強化支援法の枠組みと、計画認定・金融支援の流れを整理します。

概要

項目 内容
誰が 農業生産関連事業を新たに行う事業者(農業用機械の製造・種苗・農業用ソフトウェア・機械の賃貸・作業請負など)。中小企業は債務保証とスタンドバイ・クレジットの両方が対象で、大企業は債務保証のみが対象です(スタンドバイは中小企業者に限る)。
何を ①参入内容と②良質かつ低廉な農業資材の供給に資する数値目標を記載した参入計画を作成し、国の実施指針に照らして認定を受けます。認定後、民間金融機関からの借入れへの債務保証や、海外事業再編・参入時の信用状発行などが利用できます。
いつまでに 参入計画の計画期間は5年以内です。認定審査は申請から原則1か月程度が目安です。事業開始予定の2か月前までに総合窓口へ相談する必要があり、認定前に既に農業生産関連事業へ参入している場合は支援措置は適用されません
いくら 債務保証は借入れの50%(上限25億円まで)、保証期間は5年または10年です。スタンドバイ・クレジットは保証限度額4億5千万円/法人事業者で、海外現地法人事業との共同実施が前提です。金利・手数料の詳細は支援機関・借入先の条件に従います。

法律の目的と農業資材事業者との関係

農業の持続的な発展には、農業者が生産コストと流通コストを下げ、所得を上げる取組が欠かせません。その一環として、農業競争力強化支援法は、農業者の努力だけでは届きにくい良質かつ低廉な農業資材の供給を実現するため、農業資材事業者の事業参入を促進する措置を定めています。

平成29年(2017年)5月に成立した本法律は、参入を検討する事業者にとっては「どの事業が対象か」「計画認定で何ができるか」「いつ動き始めるか」を押さえる入口になります。農業者側から見れば、資材の価格・機能・利便性の改善や、機械のシェアリングによる導入コストの抑制につながる供給側の動きです。

農業競争力強化支援法の目的、支援対象事業、直進・自動操舵装置や農機シェアリングの参入事例、債務保証の活用例。
農林水産省「農業競争力強化支援法」関連資料(PDF):法律の目的・対象事業・参入事例

対象となる事業と参入事例

支援の対象は農業生産関連事業で、次のような分野が挙げられます。

  • 農業用機械製造事業(部品製造を含む)
  • 種苗の生産卸売事業
  • 農業用ソフトウェア作成事業
  • 農業用機械の利用促進に資する事業(賃貸、農業用機械を用いた農作業請負など)

認定事例としては、トラクター向けの低価格な直進・自動操舵装置(GNSS・自動操舵機器)の製造・販売により作業負担や資材コストを下げる取組や、建設機械レンタル事業者が最新モデルの農業機械シェアリングに参入し、複数地域で利用時期をずらしてシェアする取組が紹介されています。後者では、立ち上げ資金・運転資金の民間金融機関からの借入れに債務保証が適用される例が示されています。

支援措置(債務保証・スタンドバイ・クレジット)

計画が認定されると、次の支援メニューが利用できます。条件の細目は農林水産省の専用サイトに掲載されています。

支援機関・制度 内容 中小企業 大企業
独立行政法人中小企業基盤整備機構
債務保証
民間金融機関からの借入れに対し債務保証。保証割合50%25億円まで)、保証期間5年または10年
株式会社日本政策金融公庫
スタンドバイ・クレジット
中小企業者とその海外現地法人事業が海外で事業再編または事業参入を共同実施する場合、海外金融機関向けに公庫が信用状を発行(債務保証)。保証限度額4億5千万円/法人事業者

債務保証は、信用保証協会の保証が受けにくい場合の借入れニーズに応えるイメージです。スタンドバイ・クレジットは、海外現地法人事業との共同で海外資金調達を行うケース向けで、国内の農機参入だけを想定する場合は主に債務保証が中心になります。

事業参入・参入計画と認定要件

事業参入とは、良質かつ低廉な農業資材の供給に資することを目的に、上記の農業生産関連事業を新たに行うことを指します。支援を受けるには、次の両方を記載した参入計画が必要です。

  • ①参入内容 … どの事業分野に、どのような形で参入するか
  • ②目標設定 … 農業資材の販売コスト低減や農業所得向上に効果があると見込まれる定量的な数値目標(新商品の売上高など)

目標の例には、価格・機能・利便性で一般的な商品より優れた商品の開発・生産・販売、他事業者が扱っていない新商品の開発・生産・販売などが挙げられます。認定要件としては、国の実施指針に照らして適切であること、計画の取組がコスト低減・所得向上に効果がある見込みがあること、技術的・資金的に実施可能であること(必要資金・調達方法の記載を含む)、同一分野の他事業者の活動を不当に阻害しないことなどが求められます。

認定された計画のうち、申請書本文の一部はホームページで公表されます。企業秘密に当たる部分は公表資料から除くことができます。

計画認定・支援までの流れ

おおむね次の3ステップで進めます。支援機関(中小企業基盤整備機構・公庫など)への事前相談は、Step2・Step3と並行し、2〜3か月程度が目安です。

  1. Step1 相談 … 農林水産省農産局技術普及課生産資材対策室が総合窓口です。参入内容の整理から支援措置の説明まで幅広く相談できます。
  2. Step2 事業参入計画の作成 … ①参入内容と②目標の両方を記載します。
  3. Step3 申請〜認定 … 支援機関の審査などを経て、原則1か月程度で認定が進みます。その後、計画に沿って事業参入を実施します。

事業開始予定の2か月前までに相談することが求められます。認定前に既に農業生産関連事業へ参入済みの場合、支援措置は受けられない点に注意が必要です。

計画認定から支援までの3ステップ、認定要件、債務保証とスタンドバイ・クレジットの比較表、農林水産省サイト案内。
農林水産省「農業競争力強化支援法」関連資料(PDF):認定の流れ・支援措置・申請の留意点

参入を検討する事業者が押さえること

参入計画は5年以内の期間で、必要資金と調達方法まで書く必要があります。金融支援を見込む場合は、認定前に事業を始めてしまわないよう、スケジュールを逆算します。認定事例・法令・申請様式・Q&Aは、農林水産省の農業競争力強化支援法ポータルにまとまっています。

キーワード解説

農業競争力強化支援法

平成29年5月成立の法律で、農業の競争力強化のため、農業資材事業者の事業参入促進や良質かつ低廉な農業資材の供給をめざす枠組みを定めています。

農業生産関連事業

農業用機械の製造、種苗の生産卸売、農業用ソフトウェア作成、機械の賃貸・作業請負など、本法律の支援対象となる事業分野の総称です。

事業参入

良質かつ低廉な農業資材の供給に資する目的で、農業生産関連事業を新たに行うこと。認定前の参入済みは支援対象外です。

参入計画

参入内容(①)と数値目標(②)を記載した計画書。国の実施指針に沿って認定を受け、支援措置の前提となります。

債務保証

中小企業基盤整備機構が、民間金融機関からの借入れについて一定割合・上限・期間で保証する制度。本法律の認定計画に基づく借入れが対象となります。