食料システム法とは、食料の生産から消費までを一つのつながり(食料システム)としてとらえ、その持続性を守るための法律です。資材費や原材料費が上がるなかでコストを下回る取引を見直し、関わる事業者を支援することをねらいます。この記事では、食料システム法とは何か、そして生産者・食品の製造・卸・小売・外食の事業者が自社や自分は何をすればよいのかを、2つの柱に沿ってわかりやすく整理します。
食料システム法の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| どんな法律か | 食料の生産から消費までの持続性を守るための法律です。合理的な費用を考慮した価格形成と食品産業の持続的な発展の2つの柱で構成されます。 |
| 誰が対象か | 農林水産物・食品の生産・製造・流通・小売・外食に携わる事業者です。価格形成の取引ルールは取引全般が対象で、計画認定制度は食品製造業者・食品卸売業者・食品小売業者・外食業者が対象です。 |
| 何をすればよいか | 取引では、コスト上昇を踏まえた協議の申出に誠実に応じること、商慣習の見直し提案を検討・協力することが努力義務です。食品産業の事業者は、4類型の計画認定を受けると融資・税制などの支援を活用できます。 |
| いつから | コスト指標の運用は令和7年10月1日から始まっています。努力義務に対応する判断基準を定める省令は令和8年1月30日に公布されています。 |
食料システム法とは
食料システム法は、食料の生産から消費までを一体の食料システムとしてとらえ、その持続性を確保するための法律です。正式名称は「食品等の持続的な供給を実現するための食品等事業者による事業活動の促進及び食品等の取引の適正化に関する法律」です。長い名称のため、本記事では通称の食料システム法と呼びます。
近年、農業の資材費や食品の原材料費などが高止まりし、食料を安定して供給し続けることが難しくなっています。食料安全保障を確保するには、持続的な供給に要する費用を考慮した価格形成を進め、コストを下回る価格での取引を抑える必要があります。あわせて、国産原材料の活用や環境負荷の抑制に取り組む食品産業の事業者を支え、食品の付加価値を高めることも欠かせません。消費者の理解を得ながら食料システム全体で持続的な供給を実現するため、食料システム法が制定されました。
2つの柱の全体像
食料システム法は、性格の異なる2つの柱で組み立てられています。第1の柱は取引のルール、第2の柱は事業者への支援です。自社や自分がどちらに関わるかをまず押さえると、やることが見えてきます。
- 第1の柱:合理的な費用を考慮した価格形成。食料全般の取引を対象に、コストを踏まえた協議への誠実な対応などの努力義務を課します。米穀などの指定品目ではコスト指標を作成・活用します。
- 第2の柱:食品産業の持続的な発展。食品産業の事業者が4類型の取組計画を作り、農林水産大臣の計画認定を受けると、融資・債務保証・税制優遇・研究開発設備の利用などの支援を活用できます。
第1の柱:合理的な費用を考慮した価格形成
第1の柱は、食料全般の取引が対象です。価格や取引条件を決めるすべての場面で関わるため、生産者・製造・卸・小売・外食のいずれの事業者も無関係ではありません。取引当事者間で実質的かつ誠実な協議を促すため、次の2つの努力義務が課されます。
- 持続的な供給に要するコストなどの考慮を求める事由を示して協議の申出があった場合、誠実に協議すること。
- 商慣習の見直しなど、持続的な供給に資する取組の提案があった場合、検討・協力すること。
努力義務に対応した行動規範として、農林水産大臣が判断基準を定め、これに基づいて指導・助言などを行います。判断基準は省令で規定され、令和8年1月30日に省令が公布されています。取組が不十分と認められる場合には、必要に応じて指導・助言、または勧告・公表が行われます。不公正な取引方法に該当する場合は、公正取引委員会への通知の対象になります。農林水産大臣は「食品等取引実態調査」も実施します。
取引適正化の文脈は、欠品ペナルティや1/3ルールなどの商慣行とも関わります。価格・取引の見直しを考えるときは、食品流通の商慣行の見直しもあわせてご覧ください。
コスト指標の作成・活用
農林水産大臣が指定した品目について、大臣が認定したコスト指標作成団体が、関係者とともにコスト指標を作成・公表し、これを活用した制度運用を進めます。団体の役職員などには秘密保持義務が課されます。コスト指標の運用は令和7年10月1日から始まっています。
指定品目は、米穀、野菜、豆腐、納豆、飲用牛乳(成分調整牛乳を除く)です。これらの品目を扱う事業者は、コスト指標を取引の協議材料として活用できます。
取組が不十分とされる取引の例
次のような取引の扱いは、取組が不十分であるとして指導・助言などの対象になり得ます。自社の取引慣行に当てはまるものがないか確認しましょう。
- コストの上昇を説明した協議の申出があったにもかかわらず、繁忙期を理由に取り合わない。
- 補助金などの支援措置を理由に、一方的に納品価格の値引きを決定する。
- 商慣習の改善に関する提案があったにもかかわらず、検討することなく取り合わない。
- 協議の申出のみを理由として、取引数量の削減など不利益な取扱いを行う。
第2の柱:食品産業の持続的な発展
第2の柱は、食品産業の事業者への支援です。食品製造業者、食品卸売業者、食品小売業者、外食業者が、生産者との安定的な取引関係の確立などの取組を盛り込んだ計画を作り、農林水産大臣の計画認定を受けると、各種の支援・特例措置を活用できます。これらの取組のための技術の研究開発や事業再編も、認定の対象です。
認定の対象となる4類型の取組
- 01 生産者との安定的な取引関係の確立(例:新たな産地との原材料調達に関する契約の締結、農林漁業者への出資)
- 02 流通の合理化(例:労働生産性向上のための設備の導入、新規需要先開拓のための新たな事業所の整備)
- 03 環境負荷の低減(例:食品の製造過程における食品ロスの削減、食品廃棄物の利活用)
- 04 消費者に選ばれるための情報提供(例:製品のサスティナビリティ情報の発信、食品のコスト構造の見える化、資源循環に対応した食品容器包装の開発)
取組例として、地元農家から主に原材料を調達する豆腐製造業者の株式取得(事業再編)なども挙げられています。
計画認定で活用できる主な支援
- 資金調達支援:中小企業者に対する長期・低利の融資、融資を受ける際の債務保証
- 税制優遇:中小企業の設備投資に対する税制優遇、脱炭素化に向けた投資に対する税制優遇
- 研究開発:農研機構が所有する研究開発設備の利用
計画認定の申請・相談は、一部の場合を除き、お近くの地方農政局などが窓口です。手続の詳細は、農林水産省が掲載する申請の手引きをご覧ください。農業の競争力強化に関わる支援制度としては、農業競争力強化支援法もあわせて検討できます。
自社・自分は何をすべきか
食料システム法で求められることは、立場によって異なります。生産者か、製造・卸・小売・外食の事業者かで、やることを整理します。なお、この法律は上位の食料・農業・農村基本計画が掲げる食料安全保障の方向に沿うものです。
生産者がやること
生産者は、取引相手にコストの上昇を説明し、合理的な費用を踏まえた価格形成の協議を申し出ることができます。米穀・野菜・豆腐・納豆・飲用牛乳といった指定品目を出荷する場合は、公表されるコスト指標を協議の根拠として活用しましょう。協議の申出を理由に取引数量を減らされるなど不利益な扱いを受けたときは、後述の相談窓口を利用できます。
製造・卸・小売・外食の事業者がやること
これらの事業者は、第1・第2の両方の柱に関わります。まず取引面では、仕入先からのコスト上昇に基づく協議の申出に誠実に応じ、商慣習の見直し提案を検討・協力します。前掲の「取組が不十分とされる取引の例」に当てはまる慣行があれば、見直しを進めましょう。あわせて、生産者との安定的な取引関係の確立や環境負荷の低減などに取り組むなら、4類型の計画を作って計画認定を受け、融資・債務保証・税制優遇・研究開発設備の利用といった支援を活用できます。
よくある質問
食料システム法とは何ですか
食料の生産から消費までを一つの食料システムとしてとらえ、その持続性を守るための法律です。正式名称は「食品等の持続的な供給を実現するための食品等事業者による事業活動の促進及び食品等の取引の適正化に関する法律」です。合理的な費用を考慮した価格形成と、食品産業の持続的な発展という2つの柱で構成されます。
いつから対象になりますか
取引に関わるコスト指標の運用は令和7年10月1日から始まっています。努力義務に対応する判断基準を定める省令は令和8年1月30日に公布されています。施行日や個別の適用時期の詳細は、農林水産省の食料システム法関連ページでご確認ください。
努力義務に罰則はありますか
努力義務には、違反に対する直接の罰則は設けられていません。農林水産大臣が定める判断基準に基づき、取組が不十分な場合は指導・助言、または勧告・公表が行われます。不公正な取引方法に該当する場合は、公正取引委員会への通知の対象になります。
コスト指標とは何ですか
農林水産大臣が指定した品目について、認定されたコスト指標作成団体が関係者とともに作成・公表する指標です。取引で費用を考慮しやすくし、コストを下回る取引を抑えるための制度運用に活用されます。
指定品目は何ですか
米穀、野菜、豆腐、納豆、飲用牛乳(成分調整牛乳を除く)です。これらの品目では、コスト指標を作成・活用した取引の協議が進められます。
計画認定はどこに申請しますか
一部の場合を除き、お近くの地方農政局などが窓口です。食品製造業者・食品卸売業者・食品小売業者・外食業者が、4類型のいずれかの取組を盛り込んだ計画を申請します。申請の手引きは農林水産省の関連ページから参照できます。
次の一歩
自社・自分が食料システム法とどう関わるかを確認したら、農林水産省の食料システム法のページで制度の全体像と最新の案内を確かめましょう。取引面では食品等の取引適正化を、計画認定を検討するなら計画認定制度を確認します。努力義務違反に関する相談や報告は、農林水産省の食品等の適正取引に関する情報受付窓口で受け付けています。計画認定の申請相談は、原則として地方農政局などにお問い合わせください。
キーワード解説
食料システム法
食品等の持続的な供給を実現するための食品等事業者による事業活動の促進及び食品等の取引の適正化に関する法律の通称です。食料の生産から消費までを一体的にとらえる食料システムの持続性確保を目的とし、価格形成の適正化と食品産業の持続的な発展の2つの柱で構成されます。
努力義務
法令上、事業者に対して一定の行為を努めるよう求める規定です。本法では、持続的な供給に要する費用の考慮を踏まえた協議への誠実な対応と、商慣習の見直しなどの提案への検討・協力が、食品等の取引全般を対象に課されます。違反への直接の制裁ではなく、判断基準に基づく指導・助言などが中心です。
コスト指標
農林水産大臣が指定した品目について、認定されたコスト指標作成団体が関係者とともに作成・公表する指標です。取引における費用の考慮を促し、コストを下回る取引の抑止に資する制度運用に活用されます。
計画認定
食品産業の事業者が、4類型のいずれかの取組を盛り込んだ計画を農林水産大臣に申請し、認定を受ける制度です。認定を受けた計画に基づく取組には、融資・債務保証・税制優遇・農研機構の研究開発設備の利用などの支援・特例措置を活用できます。