食品ロス削減推進法(正式名称は食品ロスの削減の推進に関する法律、令和元年法律第19号)とは、まだ食べられる食品が大量に捨てられている状況を社会全体で改めるため、事業者・消費者・行政がそれぞれの立場で食品ロス削減に取り組むことを定めた法律です。罰則で縛る規制ではなく、国民運動・啓発・関係者連携・政府の基本方針を土台に、企業や自治体の自主的な取り組みを後押しします。この記事では、まず企業・自治体に求められる取り組み(事業者・消費者・行政の役割)を確認し、事業者の責務と小売・外食・食品事業者の具体的な行動例、食品リサイクル法との違いまで解説します。
概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 誰に | 小売・外食・食品事業者、消費者、自治体、NPO・フードバンク関係者など、ロス削減に関わるすべての主体です。 |
| 何を | 企業・自治体に求められる取り組み(役割)、事業者の責務、企業の具体的な行動例、食品リサイクル法との違いです。 |
| 施行 | 公布:令和元年5月31日、施行:令和元年10月1日。第1次基本方針:令和2年3月31日、第2次:令和7年3月25日閣議決定。 |
| 関連 | 発生抑制・再生利用の仕組みは食品リサイクル法とは、商慣習の具体策は商慣習の見直しの解説です。 |
法律の目的と前文の二つの視点
食品ロス削減推進法の前文が定める二つの基本的な視点は、次のとおりです。
- 国民各層が主体的に取り組む:それぞれの立場で課題に向き合い、社会全体で対応する。食べ物を無駄にしない意識の醸成と定着を図る。
- 食べられる食品の活用:まだ食べることができる食品については、廃棄せず、できるだけ食品として活用する。
推進法は、賞味期限切れ直前の在庫や規格外品など、まだ食べられる食品をいきなり廃棄物にせず、フードバンクへの提供・値引き販売・加工転用などで食品として最後まで活用することを前文の柱のひとつに置いています。
あわせて、世界には栄養不足の人々が多数いるなか、大量の食料を輸入し、食料の多くを輸入に依存する我が国として、食品ロス削減は真摯に取り組むべき課題と位置づけられています。環境・家計・食料安全保障のいずれの観点からも、推進法は「国民運動」の法的根拠を与える位置づけです。食品ロスがどれだけ発生しているかの最新の数字は日本の食品ロスの現状で確認できます。
企業・自治体に求められる取り組み
食品ロス削減推進法は、誰か一者だけに削減を押し付けるのではなく、事業者・消費者・行政(国と地方)がそれぞれの立場で取り組むことを前提にしています。自社・自分の立場でまず何が求められるかを整理すると、次のとおりです。
- 事業者(小売・外食・食品関連事業者など):国・地方の施策に協力し、自らの事業活動でもロス削減に積極的に取り組むよう努めます(法第5条の責務)。納品期限の緩和や賞味期限表示の見直し、売り切り、食品寄附など、自社でできる具体策が基本方針に整理されています。
- 消費者:必要な量だけ買う・買った食品を無駄にしないなど、日々の購入・消費を見直します。事業者と消費者が連携してはじめてロスが減るため、消費者の行動変容も柱の一つです。
- 行政(国・地方公共団体):国は基本方針を、都道府県・市町村は食品ロス削減推進計画を策定し、教育・啓発、事業者支援、フードバンク支援などの基本的施策を講じます。
そして、これらの主体は相互に連携・協力するよう努めなければなりません(法第7条)。つまり推進法は、企業の自主的な取り組みと消費者の行動、行政の支援を一体で動かすための「共通の土台」です。以下では、事業者に求められる責務と具体的な行動例を詳しく見ていきます。
条文の骨格と基本施策
法律の主な構成は、次のとおりです。
食品ロス削減月間(第9条)
食品ロス削減に関する理解と関心を深めるため、10月を食品ロス削減月間と定めています。毎年10月30日は「食品ロス削減の日」「全国一斉商慣習見直しの日」として、省・業界・小売が連携したキャンペーンが実施されます。
基本方針・推進計画(第11~13条)
- 政府:食品ロス削減の推進に関する基本方針を策定(閣議決定)。
- 都道府県・市町村:基本方針を踏まえ、食品ロス削減推進計画を策定。
基本的施策(第14~19条)
国・地方が講じる施策の柱は、次の6項目です。
- 教育・学習・啓発:必要量に応じた販売・購入、買った食品を無駄にしない取組、事業者と消費者の連携の重要性の周知を含む。
- 事業者支援:食品関連事業者等の取組への支援。
- 表彰:顕著な功績がある者への表彰。
- 調査研究:実態調査、効果的な削減方法の研究。
- 情報提供:先進的取組の情報収集・提供。
- フードバンク:活動の支援、食品提供に伴う責任の在り方の調査・検討。
食品ロス削減推進会議(第20~25条)
内閣府に、関係大臣および有識者(業界団体、地方公共団体、学識経験者等)を構成員とする食品ロス削減推進会議を設置します。会長は内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)です。基本方針案の作成等を担います。
食品リサイクル法との違い(第8条)
第8条では、食品リサイクル法等に基づく食品廃棄物の発生抑制等に関する施策を実施するにあたり、本法律の趣旨・内容を踏まえ、食品ロスの削減を適切に推進する旨が定められています。
二つの法律は競合するのではなく、役割が異なります。食品ロス削減推進法=食品ロス全体の理念・国民運動・関係者の責務を定める土台であるのに対し、食品リサイクル法=食品廃棄物等の発生抑制と再生利用の仕組み(年間100トン以上の事業者への定期報告義務や再生利用の目標など)を定めます。自社が食品リサイクル法の報告義務の対象かどうかは食品リサイクル法とはで確認できます。事業者は両方の趣旨を満たす取組(抑制・寄附・リサイクル・情報開示)を一体的に設計する必要があります。
事業者の責務と第2次基本方針の行動例
法第5条・第7条
第5条(事業者の責務):事業者は、その事業活動に関し、国又は地方公共団体が実施する食品ロス削減施策に協力するよう努めるとともに、食品ロスの削減について積極的に取り組むよう努めるものとする。
第7条(連携・協力):国、地方公共団体、事業者、消費者、ロス削減活動を行う団体その他の関係者は、総合的かつ効果的な推進のため、相互に連携し協力するよう努めなければならない。
「努める」規定であり、直接的な罰則対象とは限りませんが、推進計画・業界自主基準・取引先要求・ESG開示のなかで、実質的な遵守が求められています。
企業が自社でできる取り組み例(第2次基本方針)
第2次基本方針(令和7年3月25日閣議決定)では、農林漁業者・食品関連事業者に対し、次のような取組が求められます。小売・外食・食品メーカーが「自社で何から始めればよいか」を考えるときの起点になります。
- 自らの事業活動による食品ロスの把握と見直し
- 規格外・未利用農林水産物の新たな価値への転換、食品寄附の促進
- 納品期限(3分の1ルール)の緩和、賞味期限表示の大括り化・延長
- 季節商品の予約制など需要に応じた販売
- 値引き・ポイントによる売り切り
- 外食での小盛り・小分け、持ち帰りへの対応
- フードバンクの役割を認識し、未利用食品の提供
- 削減取組の積極的な開示
- 発生した食品ロスについて適切な再生利用
これらは食品リサイクル法の基本方針と内容を共有しており、本法は「なぜやるか・誰とやるか」という理念と連携を、食品リサイクル法は「何トン減らすか・どう報告するか」という発生抑制・再生利用の仕組みを担います。業界全体での売り切りや商慣習の見直しまで含めた企業の取り組みは、食品産業のサステナビリティと食品ロス対策もあわせてご覧ください。
関係省庁体制と推進会議の歩み
食品ロス削減推進法の成立を踏まえ、政府は関連施策の一層の推進のため食品ロス削減推進会議を設置・開催しています。農林水産省・環境省・消費者庁など関係府省と業界・自治体・有識者が一堂に会し、基本方針や施策パッケージをとりまとめます。
成立以降の主な経過は、次のとおりです。
- 令和元年10月1日:法律施行
- 令和2年3月31日:第1次基本方針・閣議決定
- 令和5年:食品ロス削減目標達成に向けた施策パッケージとりまとめ
- 令和7年3月25日:第2次基本方針・閣議決定(60%削減目標等)
縦割りの省庁施策を横断し、事業系・家庭系・フードバンク・啓発を一体で進める「司令塔」としての会議です。地方自治体も推進計画を策定し、国の基本方針と整合させます。
よくある質問(企業の取り組みと義務)
Q. 食品ロス削減推進法には罰則がありますか。
事業者の責務は「努める」とする努力義務で、本法に直接の罰則はありません。ただし推進計画や業界の自主基準、取引先からの要求、ESG開示のなかで実質的な取り組みが求められます。なお、年間100トン以上の食品廃棄物を出す事業者には食品リサイクル法側で定期報告義務があり、取組が著しく不十分だと勧告・公表・命令・罰金の対象になります。
Q. 小売・外食の会社は、まず何から取り組めばよいですか。
第2次基本方針が示す行動例のうち、自社で着手しやすいものから始めます。小売であれば納品期限(3分の1ルール)の緩和や値引き・ポイントでの売り切り、賞味期限表示の大括り化、外食であれば小盛り・小分けや持ち帰りへの対応が代表例です。まず自らの事業活動での食品ロスの把握から始めると、効果の大きい打ち手が見えてきます。
Q. 余った食品を寄附したいときはどうすればよいですか。
基本方針は、未利用食品を廃棄せずフードバンクへ提供することを求めています。地域のフードバンクや、自治体が定める食品ロス削減推進計画の窓口を起点に連携先を探します。食品提供に伴う責任の在り方も国が調査・検討を進めています。
次の一歩
まずは自社が出している食品ロスの量と発生工程を把握し、基本方針の行動例から着手できる施策を一つ選んで始めましょう。あわせて、自社が食品リサイクル法の定期報告義務(年間100トン以上)の対象かを確認し、食品産業のサステナビリティと食品ロス対策で他社の取り組みの広がりも押さえておくと、自社の計画づくりに役立ちます。お住まいの都道府県・市町村の食品ロス削減推進計画もご覧ください。
キーワード解説
食品ロス削減推進法
正式名称は食品ロスの削減の推進に関する法律(令和元年法律第19号)。啓発・連携・基本方針・推進会議を定め、食品リサイクル法と併用して政策が運用されます。