食品リサイクル法が「廃棄物等の抑制とリサイクル」を規律するのに対し、食品ロスの削減の推進に関する法律(食品ロス削減推進法)は、国民運動・啓発・関係者連携・政府の基本方針といった横断的な推進枠組みを定めます。本記事は、農林水産省の情勢資料(p.25–27)に沿い、法律の条文構造から事業者に求められる行動、省庁体制までを解説します。
概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 誰に | 事業者、消費者、自治体、NPO・フードバンク関係者など、ロス削減に関わるすべての主体です。 |
| 何を | 目的・前文、条文の骨格、事業者責務、推進会議、食品リサイクル法との関係です。 |
| 施行 | 公布:令和元年5月31日、施行:令和元年10月1日。第1次基本方針:令和2年3月31日、第2次:令和7年3月25日閣議決定。 |
| 関連 | 数値目標・リサイクル制度は食品リサイクル法の解説、商慣習の具体策は商慣習の見直しの解説 |
法律の目的と前文の二つの視点
食品ロス削減推進法の前文では、次の二点が「基本的な視点」として明示されています。
- 国民各層が主体的に取り組む:それぞれの立場で課題に向き合い、社会全体で対応する。食べ物を無駄にしない意識の醸成と定着を図る。
- 仍可食食品の活用:まだ食べることができる食品については、廃棄せず、できるだけ食品として活用する。
あわせて、世界には栄養不足の人々が多数いるなか、大量の食料を輸入し、食料の多くを輸入に依存する我が国として、食品ロス削減は真摯に取り組むべき課題であることが述べられています。環境・家計・食料安全保障のいずれの観点からも、推進法は「国民運動」の法的根拠を与える位置づけです。
条文の骨格と基本施策
法律の主な構成(資料の整理)は次のとおりです。
食品ロス削減月間(第9条)
食品ロス削減に関する理解と関心を深めるため、10月を食品ロス削減月間と定めています。毎年10月30日は「食品ロス削減の日」「全国一斉商慣習見直しの日」として、省・業界・小売が連携したキャンペーンが実施されます。
基本方針・推進計画(第11~13条)
- 政府:食品ロス削減の推進に関する基本方針を策定(閣議決定)。
- 都道府県・市町村:基本方針を踏まえ、食品ロス削減推進計画を策定。
基本的施策(第14~19条)
国・地方が講じる施策の柱として、資料では次の6項目が挙げられています。
- 教育・学習・啓発:必要量に応じた販売・購入、買った食品を無駄にしない取組、事業者と消費者の連携の重要性の周知を含む。
- 事業者支援:食品関連事業者等の取組への支援。
- 表彰:顕著な功績がある者への表彰。
- 調査研究:実態調査、効果的な削減方法の研究。
- 情報提供:先進的取組の情報収集・提供。
- フードバンク:活動の支援、食品提供に伴う責任の在り方の調査・検討。
食品ロス削減推進会議(第20~25条)
内閣府に、関係大臣および有識者(業界団体、地方公共団体、学識経験者等)を構成員とする食品ロス削減推進会議を設置します。会長は内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)です。基本方針案の作成等を担います。
食品リサイクル法との関係(第8条)
第8条では、食品リサイクル法等に基づく食品廃棄物の発生抑制等に関する施策を実施するにあたり、本法律の趣旨・内容を踏まえ、食品ロスの削減を適切に推進する旨が定められています。
つまり二つの法律は競合するのではなく、推進法=意識・連携・基本方針の土台、食品リサイクル法=事業者の抑制・リサイクル義務と数値目標という役割分担です。事業者は両方の趣旨を満たす取組(抑制・寄附・リサイクル・情報開示)を一体的に設計する必要があります。
事業者の責務と第2次基本方針の行動例
法第5条・第7条
第5条(事業者の責務):事業者は、その事業活動に関し、国又は地方公共団体が実施する食品ロス削減施策に協力するよう努めるとともに、食品ロスの削減について積極的に取り組むよう努めるものとする。
第7条(連携・協力):国、地方公共団体、事業者、消費者、ロス削減活動を行う団体その他の関係者は、総合的かつ効果的な推進のため、相互に連携し協力するよう努めなければならない。
「努める」規定であり、直接的な罰則対象とは限りませんが、推進計画・業界自主基準・取引先要求・ESG開示のなかで、実質的な遵守が求められています。
令和7年3月第2次基本方針の行動例
第2次基本方針(令和7年3月25日閣議決定)では、農林漁業者・食品関連事業者に対し、次のような行動が例示されています。
- 自らの事業活動による食品ロスの把握と見直し
- 規格外・未利用農林水産物の新たな価値への転換、食品寄附の促進
- 納品期限(3分の1ルール)の緩和、賞味期限表示の大括り化・延長
- 季節商品の予約制など需要に応じた販売
- 値引き・ポイントによる売り切り
- 外食での小盛り・小分け、持ち帰りへの対応
- フードバンクの役割を認識し、未利用食品の提供
- 削減取組の積極的な開示
- 発生した食品ロスについて適切な再生利用
これらは食品リサイクル法の基本方針と内容を共有しており、推進法は「なぜやるか・誰とやるか」、リサイクル法は「何トン減らすか・どう報告するか」を補完します。
関係省庁体制と推進会議の歩み
食品ロス削減推進法の成立を踏まえ、政府は関連施策の一層の推進のため食品ロス削減推進会議を設置・開催しています。農林水産省・環境省・消費者庁など関係府省と業界・自治体・有識者が一堂に会し、基本方針や施策パッケージをとりまとめます。
資料に示される主な経過は次のとおりです。
- 令和元年10月1日:法律施行
- 令和2年3月31日:第1次基本方針・閣議決定
- 令和5年:食品ロス削減目標達成に向けた施策パッケージとりまとめ
- 令和7年3月25日:第2次基本方針・閣議決定(60%削減目標等)
縦割りの省庁施策を横断し、事業系・家庭系・フードバンク・啓発を一体で進める「司令塔」としての会議です。地方自治体も推進計画を策定し、国の基本方針と整合させます。
キーワード解説
食品ロス削減推進法
正式名称は食品ロスの削減の推進に関する法律(令和元年法律第19号)。啓発・連携・基本方針・推進会議を定め、食品リサイクル法と併用して政策が運用されます。