食品ロス・食品リサイクル政策の法的な柱が食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(食品リサイクル法)です。本記事は、農林水産省「食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢」の第2章前半(法の概要・基本方針・削減目標・業種別内訳)に沿い、制度の全体像から令和7年3月の新目標までを解説します。

概要

項目 内容
誰に 食品製造・流通・小売・外食の事業者、リサイクル業者、行政・団体の担当者です。
何を 法の制度優先順位令和7年基本方針60%削減目標業種別内訳です。
関連記事 現状の数字は食品ロスの現状の解説、商慣習の具体策は商慣習の見直しの解説をご覧ください。
詳細はどこで 農林水産省「食品ロス・食品リサイクル」、令和7年3月・新たな基本方針

食品リサイクル法の制度概要

食品リサイクル法(平成12年法律第116号、平成19年12月改正)は、食品の売れ残りや食べ残し、製造・加工・調理過程の残さなどの食品廃棄物等について、①発生抑制と減量化による最終処分量の削減、②飼料・肥料等への再生利用・熱回収などの再生利用等の促進を定め、食品関連事業者の取組を促す法律です。循環型社会形成推進基本法の下で、食品分野の3R(Reduce・Reuse・Recycle)を具体化しています。

基本方針と主務大臣の役割

主務大臣(農林水産大臣・環境大臣等)は、基本方針を策定します。令和7(2025)年3月に新たな基本方針が公表され、食品循環資源の再生利用等の促進の基本的方向、実施すべき量に関する目標などが示されています。すべての食品関連事業者に対し指導・助言が行われ、判断の基準となる事項は省令(判断基準省令・定期報告省令など)で定められます。

定期報告と措置

前年度の食品廃棄物等の発生量が年間100トン以上の事業者(食品廃棄物多量発生事業者)は、主務大臣に対し定期報告を行う義務があります。報告内容は発生量・再生利用等の実施状況などで、国・都道府県の政策評価や公表の基礎データとなります。

取組が著しく不十分な場合には、勧告・公表・命令に至り、命令に違反した場合は罰金の対象となり得ます。日常のコンプライアンスとして、発生抑制とリサイクルの両面で計画・実績を管理することが求められます。

リサイクル体制の二つの制度

発生してしまった食品廃棄物等の処理を支える制度として、次の二つが重要です。

  • 登録再生利用事業者制度:申請に基づき主務大臣がリサイクル業者を登録し、廃棄物処理法・肥料法・飼料安全法上の特例などにより、食品廃棄物等の再生利用を円滑化する。
  • 再生利用事業計画認定制度:食品関連事業者・リサイクル業者・農業者等が連携して策定した食品リサイクルループの事業計画を認定し、優良事例を形成する。
食品リサイクル法の制度概要。基本方針、定期報告、指導勧告、登録再生利用事業者、再生利用事業計画認定、発生抑制措置の例。
食品リサイクル法の主な制度と発生抑制・再生利用の枠組み

発生抑制で講ずべき措置(資料の整理)

基本方針・判断基準の趣旨として、工程ごとに次のような取組が示されています。

  • 製造・加工:原材料使用の合理化、賞味期限の年月表示化・延長
  • 流通:品質管理の高度化、配送・保管方法の改善
  • 販売:売れ残り削減の工夫、納品期限の緩和、発注の適正化
  • 調理・提供(外食等):調理方法の改善、食べ残し削減
  • 事業者全体:未利用食品等(仍可食)の提供、フードバンク等への寄附
  • 情報開示:未利用食品の提供量等を有価証券報告書・統合報告書・Web等で提供

再生利用等を行う際の個別目標設定や、判断基準省令に基づく基準も、主務大臣が提示します。

発生抑制の最優先とリサイクルの優先順位

食品リサイクル法の運用で最も重要な原則は、「出たものをどう処理するか」より「そもそも出さないか」です。

基本方針・判断基準省令

令和7年3月の基本方針では、食品廃棄物等の発生抑制(フードバンクへの寄附等を含む)を最優先事項と明記しています。

「食品循環資源の再生利用等の促進に関する食品関連事業者の判断の基準となるべき事項を定める省令」(判断基準省令)第一条では、食品関連事業者は原則として「食品廃棄物等の発生を可能な限り抑制する」ことを求められます。環境負荷低減に有効と認められる例外はありますが、例外を前提にしない設計が原則です。

食品廃棄物多量発生事業者には、発生抑制の取組の遵守状況の報告も課されています。定期報告は「リサイクル率」だけでなく「抑制の実績」も見られる仕組みです。

再生利用等の優先順位

抑制のうえで残った食品循環資源について、再生利用等の優先順位は次のとおりです(資料のピラミッド整理)。

  1. 発生抑制(最優先)
  2. 飼料化
  3. 肥料化
  4. きのこ菌床への活用
  5. その他(メタン化等)
  6. 熱回収等
  7. 焼却・埋立(優先度は低い)

飼料化が最優先とされるのは、食品循環資源の栄養価を最も有効に活用できることなどが理由として挙げられます。一方、小売・外食由来の廃棄物は衛生上の理由から飼料・肥料に回しにくいものも多く、抑制分別の質がより重要になります。

発生抑制の具体策として、商慣習の見直し、消費者の行動変容、フードバンク等への寄附が並記されています(商慣習の詳細は別記事)。

判断基準省令第一条の抜粋と再生利用等の優先順位ピラミッド。
発生抑制の最優先と再生利用等の優先順位

令和7年3月基本方針の削減目標と具体策

令和7年3月に策定された基本方針では、事業系食品ロスについて2000年度比で2030年度までに60%削減する目標が設定されました。あわせて、食品関連事業者は食品廃棄物等の発生原単位基準発生原単位以下になるよう努力することが求められます(基準発生原単位は定期報告対象の75業種のうち35業種等で設定)。

国・地方公共団体・事業者・消費者が連携し、サプライチェーン全体で食品ロス削減国民運動(NO-FOODLOSS PROJECT)を展開する方針です。食品ロスの「押し付け合い」になりかねない点も考慮し、目標はサプライチェーン全体の目標として位置づけられています。

具体的な取組(資料の列挙)

  • 納品期限の緩和など商慣習の見直し
  • 賞味期限の延長年月表示化
  • 食品廃棄物等の継続的な計量
  • 食べきり運動の推進
  • 小盛りメニュー、持ち帰り容器(mottECO/モッテコ運動)
  • フードバンク等への未利用食品等の寄附
  • 消費者とのコミュニケーション・普及啓発

基本方針の位置づけとして、食品ロス削減は食品廃棄物等の発生抑制の一部であり、抑制を優先したうえで、発生した分のリサイクル等を推進する、という二段構えが明確にされています。

令和7年基本方針の60%削減目標と7項目の具体取組。
令和7年基本方針における削減目標と具体策

60%削減目標の設定経緯と数値

事業系食品ロス削減の数値目標は、次のように段階的に更新されています。

時期目標備考
2019年7月基本方針 2000年度比2030年度までに半減 起点2000年度547万トン→273万トン
2022年度実績 半減目標を前倒し達成 令和4年度236万トンなど
2025年3月基本方針 2000年度比2030年度までに60%削減 目標値219万トン

2000年度を起点とするのは、食品リサイクル法成立の年度であるためです。半減達成後、食料・農業・農村政策審議会食料産業部会「食品リサイクル小委員会」等の議論を経て、より高い削減水準が設定されました。

グラフ上では、2000年度547万トンから徐々に低下し、令和5年度231万トン、2030年度目標219万トンへ向かう軌道が示されています。なお、半減達成時点ですでに236万トンまで低下しており、60%削減は「さらなる底上げ」としての性格もあります。

家庭系については、第四次循環型社会形成推進基本計画(2018年6月)で、2000年度比2030年度までに半減する目標が設定されています(事業系とは別枠です)。

2000年度547万トンから2030年度219万トンへの推移と60%削減目標線。
事業系食品ロス削減目標(60%削減・219万トン)と推移

業種別の発生量と対策の焦点

削減目標を達成するには、業種ごとの発生構造を理解することが不可欠です。令和5年度の推計は次のとおりです。

食品廃棄物等(1,426万トン)

有価物・不可食部分を含む食品廃棄物等の総量は1,426万トンで、食品製造業が85%(1,210万トン)を占めます。製造業ではふすま・おからなど有価物としての発生が大きく、リサイクル・有効利用の議論が中心になりやすい領域です。

食品ロス・可食部(231万トン)

仍可食部としての食品ロス231万トンでは、食品製造業108万トン(47%)外食産業66万トン(28%)食品卸売業48万トン(21%)食品小売業9万トン(4%)です。外食・卸売・小売でのロス削減(商慣習、需要予測、食べきり等)と、製造業での規格外・返品対策の両方が必要です。

「製造業の廃棄物が多い」ことと「外食・卸売の可食部ロス比率が高い」ことは矛盾しません。政策・事業計画では、指標(廃棄物等か食品ロスか)と業種を意識して目標を設定してください。

事業系食品廃棄物等1426万トンと食品ロス231万トンの業種別円グラフ2枚。
事業系食品廃棄物等と食品ロス(可食部)の業種別内訳(令和5年度)

キーワード解説

食品リサイクル法

正式名称は食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(平成12年法律第116号)です。発生抑制を最優先とし、定期報告・基本方針・リサイクル業者制度で食品産業の循環を促進します。

基準発生原単位

定期報告対象業種について、発生抑制の実施が著しく低い事業者を底上げするための目安となる原単位です。2024~2028年度の設定が資料に言及されています。