食育とは、食に関する知識と、食を選ぶ力を身につけ、健全な食生活を実践できるようにするための教育・啓発です。国はこの食育を国民運動として進めており、令和3~7年度は第4次食育推進基本計画が、令和8年度からは第5次食育推進基本計画(令和8〜12年度)が、その指針となっています。第4次計画は、生涯にわたる心身の健康と、環境に配慮した持続可能な食を二本柱に、16項目の数値目標を掲げて、家庭・学校・地域・生産現場の取り組みを後押ししてきました。この記事では、食育とは何か、計画の重点事項と数値目標、それぞれの場で何ができるのかを、わかりやすく整理します。

食育と第4次食育推進基本計画の概要

項目 内容
食育とは 食に関する知識と、食を選ぶ力を身につけ、健全な食生活を実践できるようにするための教育・啓発です。食育基本法では、知育・徳育・体育の基礎となるべきものと位置づけられています。
いま国が目指すこと 生涯を通じた心身の健康を支える食育と、持続可能な食(環境配慮・地産地消・食品ロス削減・食文化の継承)を支える食育を、「新たな日常」やデジタル化に対応しながら国民運動として進めます。
計画の期間 第4次計画の期間は令和3年度から令和7年度までのおおむね5年間です。基本計画はおおむね5年ごとに見直され、第4次計画は平成18年・23年・28年の計画に続くものです。
目標と進め方 食育への関心、共食、朝食欠食の削減、学校給食の地場産物・国産食材、栄養、食品ロス削減、食文化の継承などで16項目の数値目標を設定します。食育推進会議(会長:農林水産大臣)が計画を策定し、都道府県・市町村は食育推進計画を作る努力義務があります。
こんな人に 家庭で子どもの食を考える保護者、学校給食や栄養教諭、自治体の食育担当、農林漁業体験や地産地消で食育に関わる生産者・JAに役立つ内容です。

食育とは

食育は、食に関する知識と、食を選ぶ力を身につけ、健全な食生活を実践できる人を育てる取り組みです。食育基本法は、食は命の源であり、食育は生きる上での基本で、知育・徳育・体育の基礎となるべきものと位置づけています。健全な食生活を実践できる人間を育てる食育を推進することが、この法律の目的です。

食育を国全体で進める仕組みも法律で決まっています。食育推進会議(会長:農林水産大臣)が、平成18年・23年・28年に続いて第4次食育推進基本計画を策定しました。地方公共団体は、国の計画を基本として都道府県・市町村の食育推進計画を作成する努力義務があります。

第4次計画が前提とする「食をめぐる現状・課題」は多岐にわたります。生活習慣病の予防、高齢化と健康寿命、成人男性の肥満や若い女性のやせ・高齢者の低栄養、世帯構造の変化、農林漁業者・農山漁村の高齢化と減少、総合食料自給率(カロリーベース)38%(令和元年度)、気候変動、食品ロス推計612万トン(平成29年度)、食文化の継承への危惧、新型コロナによる「新たな日常」、社会のデジタル化、SDGsへのコミットメントなどです。食料自給率の現状は日本の食料自給率と国際的な供給の記事、食品ロスの全体像は食品ロスの現状の記事でも詳しく扱っています。

第4次食育推進基本計画の概要。食育基本法の趣旨、食をめぐる課題、3つの重点事項と横断的推進、7つの推進内容の一覧。
農林水産省「第4次食育推進基本計画の概要

食育推進基本計画は何年ごとに作られる?(第1次〜第5次の期間)

食育推進基本計画は、食育基本法に基づき食育推進会議(会長:農林水産大臣)が定める国の計画で、おおむね5年ごとに見直されます。平成18年度(2006年度)の第1次計画以降、5年単位で更新が続いています。第4次計画は令和3〜7年度(2021〜2025年度)を対象とし、令和7年度で期間を終えました。令和8年度(2026年度)からは、第5次計画(令和8〜12年度)が新たな指針となっています。

計画 対象期間(年度) 西暦
第1次食育推進基本計画平成18〜22年度2006〜2010
第2次食育推進基本計画平成23〜27年度2011〜2015
第3次食育推進基本計画平成28〜令和2年度2016〜2020
第4次食育推進基本計画令和3〜7年度2021〜2025
第5次食育推進基本計画令和8〜12年度2026〜2030

各計画では、その5年間に向けた重点事項と数値目標が設定され、最終年度に成果が検証されたうえで次期計画に引き継がれます。以下では、検索の多い第4次計画を中心に、重点事項と数値目標を整理します。

第4次食育推進基本計画のポイント

第4次計画の基本的な方針は、次の3つの重点事項と、それらを横断する「新たな日常」やデジタル化に対応した食育の推進です。国民の健康の視点、社会・環境・文化の視点、横断的な視点が連携して進みます。

生涯を通じた心身の健康を支える食育

  • 家庭:乳幼児期からの基本的な生活習慣の形成、在宅時間を活用した食育
  • 学校・保育所等:栄養教諭の一層の配置促進、学校給食の地場産物利用促進への連携・協働
  • 地域:健康寿命の延伸につながる食育、地域における共食の推進、日本型食生活の実践、貧困等の状況にある子供への食育
  • 食育推進運動:食育活動表彰、全国食育推進ネットワークの活用、デジタル化への対応

持続可能な食を支える食育

  • 農林漁業体験や地産地消の推進、持続可能な食につながる環境に配慮した消費の推進、食品ロス削減を目指した国民運動の展開
  • 中核的人材の育成、郷土料理のデータベース化や国内外への情報発信など、地域の多様な食文化の継承
  • 学校給食等で郷土料理の歴史・ゆかり・食材を学ぶ取組の推進

「新たな日常」とデジタル化に対応した横断的な推進

施策の推進に必要な事項として、多様な関係者の連携・協働の強化、地方公共団体による推進計画の作成等とこれに基づく施策の促進があります。食品の安全性・栄養その他の食生活に関する調査・研究・情報提供・国際交流の推進では、食品の安全性や栄養等の情報提供、食品表示の理解促進を進めます。

第4次計画の数値目標・KPI

第4次計画では、令和7年度に向けた16項目の目標を定めています。現状値は主に令和2年度の調査等に基づくものです(学校給食の一部指標は令和元年度)。以下は目標の骨子です。

第4次食育推進基本計画の16項目の目標一覧。食育への関心、共食、欠食、学校給食、栄養、ボランティア、体験、購買意識、食文化、食品安全、市町村計画などの現状値と令和7年度目標値。
農林水産省「第4次食育推進基本計画の概要

関心・共食・欠食

目標の趣旨 現状(令和2年度等) 令和7年度目標
①食育に関心を持つ国民の割合 83.2% 90%以上
②朝食又は夕食の家族との共食(週あたり回数) 週9.6回 週11回以上
③地域等で共食したい人が共食する割合 70.7% 75%以上
④朝食を欠食する子供の割合(※令和元年度) 4.6% 0%
⑤朝食を欠食する若い世代の割合 21.5% 15%以下

学校給食・栄養

目標の趣旨 現状 令和7年度目標
⑥栄養教諭による地場産物に係る食に関する指導(月平均回数、※令和元年度) 月9.1回 月12回以上
⑦学校給食の地場産物使用割合を令和元年度から維持・向上した都道府県の割合 90%以上
⑧学校給食の国産食材使用割合を令和元年度から維持・向上した都道府県の割合 90%以上
⑨主食・主菜・副菜を1日2回以上ほぼ毎日食べる国民の割合 36.4% 50%以上
⑩同上(若い世代) 27.4% 40%以上
⑪1日当たりの食塩摂取量の平均(※令和元年度) 10.1g 8g以下
⑫1日当たりの野菜摂取量の平均(※令和元年度) 280.5g 350g以上
⑬1日当たりの果物摂取量100g未満の者の割合(※令和元年度) 61.6% 30%以下

学校給食における使用食材の割合(金額ベース、令和元年度)の全国平均は、地場産物52.7%、国産食材87%です。

生活習慣・交流・食文化・自治体

目標の趣旨 現状(令和2年度等) 令和7年度目標
⑭適正体重の維持や減塩等に気をついた食生活を実践する国民 64.3% 75%以上
⑮ゆっくりよく噛んで食べる国民 47.3% 55%以上
⑯食育ボランティア等で活動する国民の数(※令和元年度) 36.2万人 37万人以上
⑰農林漁業体験を経験した国民(世帯)の割合 65.7% 70%以上
⑱産地や生産者を意識して選ぶ国民 73.5% 80%以上
⑲環境に配慮した農林水産物・食品を選ぶ国民 67.1% 75%以上
⑳食品ロス削減のために何らかの行動をしている国民(※令和元年度) 76.5% 80%以上
㉑伝統的な料理や作法を継承し伝えている国民 50.4% 55%以上
㉒郷土料理・伝統料理を月1回以上食べている国民 44.6% 50%以上
㉓食品の安全性について基礎的な知識を持ち自ら判断する国民 75.2% 80%以上
㉔推進計画を作成・実施している市町村の割合(※令和元年度) 87.5% 100%

家庭・学校・地域・生産現場での取り組み

第4次計画は、3つの重点事項ごとに具体的な取り組みを位置づけています。デジタル化対応では、ICT等を活用した情報発信、自宅での料理・食事を通じた食生活の見直し、全国食育推進ネットワークによる知見共有などを進めます。

家庭でできる食育

家庭では、乳幼児期からの基本的な生活習慣の形成と、家族での共食が出発点です。第4次計画は、朝食又は夕食を家族とともに食べる回数を週11回以上に増やすこと(②)や、朝食を欠食する子供の割合を0%にすること(④)を目標に掲げています。在宅時間を活用し、家庭で料理や食事を通じて食生活を見直すことも、食育の身近な実践です。

学校・地域での食育

健康の視点では、「早寝早起き朝ごはん」国民運動、栄養教諭・管理栄養士を中核とした学校食育、「健康日本21(第二次)」や「スマート・ライフ・プロジェクト」、毎日くだもの200グラム運動、栄養ケア・ステーション、食生活改善推進員・食育ボランティアなどが取り組まれています。子供の貧困対策に基づくフードバンク連携・子供食堂・子供宅食の支援も、地域で支える食育の一部です。

生産現場での取り組み(農林漁業体験・地産地消)

持続可能な食の視点では、みどりの食料システム戦略、有機農業等の普及啓発、食品ロス削減推進法に基づく国民運動、農林漁業体験・子ども農山漁村交流プロジェクト、地産地消と生産者・消費者の交流が関連づけられています。和食のユネスコ無形文化遺産登録を踏まえた食文化の保護・継承、郷土料理のデータベース化と学校給食での学習も進みます。生産者にとっては、農林漁業体験の受け入れや地場産物の供給が、消費者との接点を増やし、産地や生産者を意識して選ぶ消費(⑱)を後押しする取り組みになります。食品ロスの削減については食品ロスの現状の記事もあわせてご覧ください。

第4次食育推進基本計画の基本的な方針と関連する主な取組。デジタル化、健康寿命、学校給食、みどりの食料システム、食品ロス、農林漁業体験、和食文化の継承など。
農林水産省「第4次食育推進基本計画の概要

食育推進基本計画は、農政の上位計画とも歩調を合わせています。地産地消や国産食材の活用、農林漁業体験を通じた生産者と消費者の交流は、食料の安定供給や農村の振興とも結びつきます。農政全体の方向性は食料・農業・農村基本計画の記事で整理しているので、食育を生産現場の視点から考えるときの参考になります。

よくある質問

食育とは何ですか

食に関する知識と、食を選ぶ力を身につけ、健全な食生活を実践できるようにするための教育・啓発です。食育基本法では、知育・徳育・体育の基礎となるべきものと位置づけられています。家庭・学校・地域・生産現場のそれぞれで進められます。

食育推進基本計画は何年ごとに作られますか

おおむね5年ごとに作成・見直しされます。平成18年度に第1次計画(平成18〜22年度)が作られ、第2次(平成23〜27年度)、第3次(平成28〜令和2年度)、第4次(令和3〜7年度)と続き、令和8年度からは第5次計画(令和8〜12年度)が始まりました。各次の期間は第1〜5次の期間一覧にまとめています。

第4次計画の重点は何ですか

3つの重点事項があります。生涯を通じた心身の健康を支える食育、持続可能な食を支える食育、「新たな日常」やデジタル化に対応した食育です。これらを横断しながら、SDGsの観点も踏まえて総合的に進めます。

家庭でできる食育は何ですか

家族で一緒に食事をとる共食を増やすこと、朝食を欠かさないこと、乳幼児期から規則正しい食習慣を身につけることが基本です。地場産物や旬の食材を取り入れる、料理を一緒に作る、食品ロスを減らす工夫をするなど、毎日の食卓でできることが食育につながります。

食育は誰のための取り組みですか

子どもから高齢者まで、すべての世代が対象です。家庭の保護者、学校給食や栄養教諭、自治体の食育担当に加え、農林漁業体験の受け入れや地産地消に取り組む生産者・JAも、地域で食育を支える担い手です。

農林漁業体験は食育とどう関係しますか

農林漁業体験は、食べ物がどう作られるかを知り、生産者を身近に感じる機会になります。第4次計画は、農林漁業体験を経験した国民(世帯)の割合を70%以上に高めること(⑰)を目標に掲げています。生産者にとっては、体験の受け入れや地場産物の供給が、消費者との接点づくりにつながります。

まとめ

食育とは、食に関する知識と食を選ぶ力を身につけ、健全な食生活を実践できる人を育てる取り組みです。国はこの食育を国民運動として進めるため、令和3年度から令和7年度までを期間とする第4次食育推進基本計画を定め、生涯を通じた健康と持続可能な食を二本柱に、16項目の数値目標を掲げています。

食育は家庭・学校・地域・生産現場のそれぞれで広がる取り組みです。家庭では共食や規則正しい食習慣、学校では給食と栄養教諭、地域では子どもの食を支える連携、生産現場では農林漁業体験や地産地消が、互いに結びつきながら進みます。計画の全文や数値目標の詳細は、農林水産省の関連ページでご覧いただけます。

キーワード解説

食育

食に関する知識と、食を選択する力を身につけ、健全な食生活を実践できるようにするための教育・啓発の総称です。食育基本法では、知育・徳育・体育の基礎となるべきものとして位置づけられます。

食育基本法

食育の推進に関する基本的事項を定めた法律です。食育推進会議の設置、食育推進基本計画の策定、地方公共団体の食育推進計画の作成努力など、国と地方の役割が規定されています。

第4次食育推進基本計画

令和3年度から令和7年度までの期間を対象とする、国の食育推進の基本計画です。3つの重点事項と16項目の数値目標、7つの推進内容が示されています。本文の数値は計画概要に掲げられたものであり、全文・別紙は農林水産省の関連ページでご覧いただけます。

食育推進会議

食育基本法に基づき設置される会議で、会長は農林水産大臣です。食育推進基本計画の策定など、食育政策の総合調整を担います。

食育推進計画(地方)

都道府県・市町村が、国の基本計画を踏まえて作成する食育の推進計画です。第4次計画では、推進計画を作成・実施している市町村の割合を100%とする目標(㉔)が掲げられています。

共食

家族や地域の仲間と一緒に食事をとることです。第4次計画では、家族との朝食・夕食の共食回数の増加、地域等での共食の促進が目標に含まれます。

SDGs

持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)です。第4次食育推進基本計画は、健全な食生活と持続可能な社会の実現に向け、SDGsの考え方を踏まえて食育を推進するとしています。