令和7年4月閣議決定の新たな食料・農業・農村基本計画について、食料安全保障と食料自給力、食料システムと農村振興、2030年目標・KPIの要点を整理します。数値は説明会資料時点の例です。最新の公表は農林水産省の基本計画ページをご覧ください。
概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 誰に | 農業経営者、食品・農産物流通事業者、自治体・地域団体、食料・農村政策に関心のある方です。 |
| 何を | 改正基本法の位置づけ、食料安全保障と食料自給力、食料システムと農村振興、2030年目標・KPIの5論点です。 |
| いつ | 基本計画は令和7年4月11日閣議決定。数値目標の目標年は原則2030年です。以下の数値は説明会資料時点の整理であり、最新の公表は省ポータルをご覧ください。 |
| 詳細は | 農林水産省「食料・農業・農村基本計画」、同ページの「新たな食料・農業・農村基本計画のポイント(PDF)」をご覧ください。 |
策定の背景と初動5年
従来の基本法に基づく政策全般の検証・評価と、今後20年程度を見据えた課題整理を経て、食料・農業・農村基本法は令和6年6月5日に改正・施行されました。改正基本法の基本理念に沿って施策の方向性を具体化し、平時からの食料安全保障を実現する観点から、初動5年間で農業の構造転換を集中的に推し進めます。
水田政策は令和9年度から根本的に見直し、水田を対象とした支援を、作物ごとの生産性向上等への支援へ転換します。コメ輸出では、低コストで生産できる輸出向け産地の育成と海外需要拡大を進めます。
食料安全保障と供給の三本柱
食料の安定的な供給は、国内の農業生産の増大、安定的な輸入の確保、備蓄の確保に、輸出の促進を加えて実現します。食料需要が減少する局面でも供給能力を確保し、農業の持続的な発展とあわせて食料安全保障を確保します。
農業経営の収益力を高め農業者の所得を向上させるため、農地総量の確保、サスティナブルな農業構造の構築、生産性の抜本的向上による「食料自給力」の確保と、輸出拡大等による「海外から稼ぐ力」の強化を進めます。
食料自給力の確保(農地・人・技術・生産資材)
規模や個人・法人などの経営形態にかかわらず、農業で生計を立てる担い手を育成・確保し、農地・水を確保します。地域計画に基づき担い手への農地の集積・集約化を推進し、親元就農・雇用就農の促進により49歳以下の担い手を確保します。
生産コスト低減のため、農地の大区画化、情報通信環境の整備、スマート農業技術の導入・DX、農業支援サービス事業者の育成、品種育成、共同利用施設の再編集約・合理化を進めます。生産資材については、国内資源の肥料利用拡大、化学肥料原料の備蓄、主な穀物の国産種子自給、国産飼料への転換を進めます。
輸出では、マーケットイン・マーケットメイクの観点から新たな輸出先の開拓、輸出産地の育成、国内外一貫したサプライチェーンの構築を進め、食品産業の海外展開・インバウンドによる食関連消費拡大との相乗効果を発揮します。
食料システムと農村振興
国民一人ひとりが入手できる食料安全保障のため、食品産業の発展と、環境と調和のとれた食料システムの確立を進めます。物理的・経済的・不測時のアクセスを組み合わせ、関係者の連携による持続的な食料システムを確立します。
- 食品産業——原材料調達の安定化、環境・人権・栄養への配慮、コストの明確化と消費者理解の醸成による合理的な価格形成、ラストワンマイル物流・フードバンク等の取組。
- 環境——「みどりGX推進プラン(仮称)」、新たな環境直接支払交付金、クロスコンプライアンス、バイオマス・再生可能エネルギー利用等の循環経済。
- 農村——地方みらい共創戦略(2025年夏目途)、農泊・農福連携等の内発型新事業、生活インフラ、中山間地域の農村RMO・スマート農業・特色ある農業の支援、鳥獣被害対策、多面的機能の発揮。
主な目標・KPIの全体像
基本計画では、食料自給力の確保、食料の安定的な供給、環境と調和のとれた食料システム、農村の振興など、分野ごとに目標とKPIが設定されています。食料自給力では、作付面積、担い手への農地集積、スマート農業、品種育成、輸入の多様化、備蓄、輸出・インバウンドなど、農地・人・技術・生産資材の各軸に指標が並びます。
2030年に向けた数値目標(抜粋)
目標年は2030年です。以下は資料に掲げられた主要目標の抜粋です(括弧内は基準年・現状の例示)。
| 分野 | 指標 | 目標(2030年) |
|---|---|---|
| 食料自給 | 食料自給率(摂取ベース) | 45%→53% |
| 食料自給 | 食料自給率(国際基準準拠) | 38%→45% |
| 輸出 | 農林水産物・食品の輸出額 | 1.5兆円→5兆円(米輸出4.6万トン→35万トン) |
| 農地・人 | 農地面積 | 427万ha→412万ha |
| 農地・人 | 49歳以下の担い手数 | 現在水準を維持(2023年:4.8万) |
| 環境 | 温室効果ガス削減量(2013年度比) | 808万→1,176万t-CO2 |
| 農村 | 農村関係人口の拡大が見られた市町村数 | 356→630市町村 |
| 農村 | 農村地域で創出された付加価値額 | 22兆円 |
米・麦・大豆の生産性(KPI例)
担い手(認定農業者・認定新規就農者、法人等を除く)の生産性向上に向け、米では大区画化による労働費削減、サービス事業者経由のスマート農業活用、単収向上と多収化・高温耐性品種の育成により、低コスト産地を育成します。麦・大豆は生産性向上に取り組む者への支援へ見直しを検討し、単収向上で生産コストを低減します。
| 品目 | 指標 | 方向(例) |
|---|---|---|
| 米 | 15ha以上経営体の生産コスト | 11,350円/60kg→9,500円/60kg |
| 米 | 水稲作付15ha以上の面積シェア | 3割→5割 |
| 米 | スマート農業技術を活用した農地面積 | 20%→50% |
| 米 | 大規模輸出産地数(年間1,000トン以上) | 6産地→30産地 |
| 麦 | 単収(田) | 472kg/10a→537kg/10a(14%増) |
| 大豆 | 単収 | 169kg/10a→223kg/10a(32%増) |
米・麦・大豆以外の野菜・果樹・畜産物・甘味資源作物等についても、単収向上等のKPIが設定されます。目標と施策の有効性を示すKPIについては、毎年達成状況を調査・公表し、食料・農業・農村政策審議会に諮り、客観性・透明性をもって政策評価を行い、PDCAサイクルで施策を見直します。
キーワード解説
食料・農業・農村基本法
食料・農業・農村に関する施策の基本を定める法律です。令和6年に改正され、食料安全保障の確保などを基本理念とします。政府はこの法律に基づき、食料・農業・農村基本計画を策定します。
食料安全保障
国民が必要な食料を安定的に入手できる状態を指します。本計画では、国内生産・輸入・備蓄に輸出促進を加え、平時からの供給力確保と、物理的・経済的・不測時のアクセスの確保を一体的に進めます。
食料自給力
国内で食料を安定的に生産・供給する力です。農地、担い手(人)、技術、生産資材の四要素で支え、農地総量の確保、担い手の育成、生産性向上、資材の安定供給が柱となります。
担い手
本資料のKPIでは、認定農業者・認定新規就農者(法人等を除く)を指します。49歳以下の担い手数は2023年の4.8万人水準の維持が目標に掲げられています。
食料システム
生産から流通・消費・廃棄に至る食料の流れ全体を指します。関係者の連携により持続可能なシステムを構築し、環境負荷の低減と多面的機能の発揮を両立させます。
PDCA
Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Act(改善)のサイクルです。基本計画ではKPIの年次公表と政策審議会への諮問を通じ、施策の見直しを行います。