輸入農林水産物の税率・枠・手続を一通り把握するため、農林水産省の整理資料に沿って、関税三法から関税の形態、主要品目の税率、一般の関税割当、EPA関税割当までを順にまとめます。適用税率の最終確認は関税率表・各協定の公表をご覧ください。

概要

項目 内容
誰に関係するか 輸入業者、食品・農資材の調達担当、関税割当・EPA枠の適用を検討する事業者、通関・貿易実務に携わる方です。
何を 関税三法関税の形態主要品目の実行関税率関税割当制度EPAに基づく関税割当の5論点です。
詳細はどこで 農林水産省「関税制度」、同省「我が国の農林水産物の関税制度について(PDF)」、関税割当公表・関税率表をご覧ください。

関税三法

関税関係法規は次の三法に大別されます。

  • 関税法——関税の確定・納付・徴収・還付と、通関・保税・犯則調査など税関手続の基本。
  • 関税定率法——関税率・課税価格、減免戻税、報復関税・相殺関税・不当廉売関税・緊急関税など。
  • 関税暫定措置法——関税割当、特恵関税、農産物の緊急関税など、関税定率法関税法暫定特例
関税三法の一覧。関税法、関税定率法、関税暫定措置法の主な規定内容。
関税関係法規(関税三法)の役割分担

関税の形態

従価税CIF価格に応じて課され、牛肉は38.5%が例です。従量税は重量・個数等に応じ、コメの枠外は341円/kgが代表例です。

そのほか、複合税(バター:29.8%+985円/kg)、選択税(とうもろこし:50%又は12円/kgの高い方)、季節関税(オレンジ生鮮:6/1~11/30は16%、12/1~翌5/31は32%)があります。CIF価格は輸入貨物価格に輸入港までの運賃・保険料を加えた価格です。

関税の形態。従価税・従量税の模式図と、複合税・選択税・季節関税の例。
関税の形態と課税のイメージ

主要農林水産物の関税率

実行関税率は品目ごとに無税・従価・従量・枠内・枠外CIF価格連動などが組み合わされます。※印は関税に加え納付金・調整金が別途あることを示します。以下は代表例です。全品目は下図と関税率表をご覧ください。

主要農林水産物の実行関税率一覧。穀物、砂糖、野菜、果物、乳製品、肉類、林産、水産の枠内・枠外税率と注記。
主要農林水産物の実行関税率

穀物・砂糖・豆類

品目枠内枠外備考
無税341円/kg(※)関税割当
小麦無税55円/kg(※)同上
大麦無税39円/kg(※)同上
粗糖無税/3%50%又は12円/kgの高い方選択税
精製糖10%354円/kg
大豆・コーヒー豆(生豆)・菜種無税

野菜・果物・畜産・水産など

生鮮野菜の多くは3%です。たまねぎ(生鮮)CIF価格に応じて8.5%、(73.70円-CIF価格)/kg、又は無税と段階的に変わります。牛肉38.5%バターは枠外で29.8%+985円/kg、水産のえびは3.5%、かつお・まぐろ・さけ・ますは19.1%~34%又は23円/kgのいずれか高い税率の幅があります。

関税割当制度

関税割当制度は、関税割当数量まで無税又は低税率(枠内)とし、超過分に高税率(枠外)を適用します。枠内は需要者への安価な供給、枠外は国内生産者保護の側面があります。数量は政令で定め、原則国内需要見込から国内生産見込を控除した考え方が基本です。

農林水産省所管の17品目は、とうもろこし(スターチ用等)、麦芽、無糖ココア調製品、トマトピューレー・ペースト、パイナップル缶詰、ナチュラルチーズ、脱脂粉乳、無糖れん乳、ホエイ等、バター及びバターオイル、その他の乳製品、豆類、でん粉等、落花生、こんにゃく芋、調製食用脂、繭及び生糸です(経済産業省所管2品目は別途)。

関税割当制度の模式図と農林水産省所管17品目の一覧。
関税割当制度の仕組みと対象品目

EPAに基づく関税割当

経済連携協定に基づく関税割当は、締約国ごとに一定数量まで特恵税率(枠内)、超過分に一般税率(枠外)を適用します。数量・品目は各協定で規定され、一般の関税割当とは申請・公表が分かれます。

後半の締約国・地域の例:インドネシア(3品目)、フィリピン(7品目)、スイス(6品目)、ベトナム(1品目)、ペルー(5品目6枠)、オーストラリア(18品目19枠)、モンゴル(5品目)、米国(7品目8枠)、CPTPP(35品目38枠)日EU(19品目)。英国は関税割当ではなく、日EU枠の利用残の範囲で事後的に同税率を適用する整理例があります。

EPAに基づく関税割当の対象国・品目(インドネシア以降、CPTPP、日EU、英国参考)。
経済連携協定に基づく関税割当——対象国・品目(続き)

インドネシア~米国(抜粋)

  • インドネシア:生鮮バナナ、生鮮パイナップル(900g未満)、ソルビトール。
  • フィリピン:鶏肉、生鮮パイナップル、ソーセージ、豚肉調製品、マスコバド糖、甘しゃ糖みつ、アイスクリーム。
  • オーストラリア:牛肉調製品、豚肉、鶏肉、チーズ類、ジュース、麦芽、でん粉誘導体など18品目。
  • 米国:ケーキミックス、麦芽、プロセスチーズ、ホエイ、ぶどう糖・果糖、とうもろこしでん粉・ばれいしょでん粉、イノリン。

キーワード解説

本文で繰り返し登場する用語を、輸入実務の観点から補足します。

関税法

関税行政の基本法です。関税の確定・納付・徴収・還付の手続に加え、貨物の輸出・輸入に関する通関手続保税手続、犯則調査、罰則などを定めます。品目ごとの税率そのものは主に関税定率法関税暫定措置法側にあり、関税法は「いつ・どのように税関に申告し、税額を納めるか」という運用の骨格を担います。輸入申告のタイミングや保税蔵置の扱いを調べるときは、まず関税法の枠組みを押さえると整理しやすくなります。

関税定率法

我が国の関税制度の中身を定める法です。関税率の種類(基本税率など)と品目別の税率、課税価格の決め方、関税の減免・戻税、便益関税のほか、報復関税・相殺関税・不当廉売関税・緊急関税といった特殊関税もここに規定されます。「この品目の通常税率はいくらか」という問いの多くは、関税定率法と関税率表の組み合わせで答えます。ただし米・麦の枠内無税や関税割当など、農林水産物で頻出の特例は関税暫定措置法に置かれることが多い点に留意してください。

関税暫定措置法

関税定率法および関税法特別法で、経済情勢に応じた暫定措置をまとめたものです。関税割当制度特恵関税制度(開発途上国向け)、農産物の特別緊急関税緊急関税措置などが代表例です。農林水産物の輸入で「枠内・枠外」「割当数量」という語が出てきたときは、多くの場合この法と関税割当に関する政令・別表が根拠になります。単年度ごとに延長・見直しが行われる暫定税率(暫定税率)も、関税定率法上の基本税率を上書きする形で運用されます。

従価税

輸入品の価格(原則としてCIF価格)に対し、定められた百分率を乗じて関税額を算定する方式です。国際価格が下がると税額も下がり、値上がりすると税額が増えるため、価格変動と連動しやすいのが特徴です。農林水産物では牛肉38.5%、生鮮野菜の3%、乳製品の枠内35%などが従価税の例です。従価税だけでなく、従量部分と組み合わせた複合税や、従価・従量の高い方を採る選択税の一部にも従価の考え方が入ります。

従量税

輸入品の重量・個数・容積など、物理量に対して「○円/kg」「○円/個」のように定められた単価を乗じて税額を算定する方式です。価格が下がっても単位あたりの税額は変わらないため、安価な輸入が国内市場を大きく揺らすのを抑える設計に向きます。穀物の枠外税率(コメ341円/kg、小麦55円/kg、大麦39円/kgなど)や、バターの枠外(29.8%+985円/kg)の従量部分が代表例です。関税額の見積もりでは、申告数量(kg・トン・個)と税率表の単位が一致しているかを確認することが重要です。

CIF価格

Cost, Insurance and Freight(運賃・保険料込み価格)の略で、輸入貨物の取引価格に、輸入港までの運賃・保険料を加えた金額です。従価税の課税標準として広く用いられ、関税額はおおむね「CIF価格×従価税率」で計算されます。品目によっては、CIF価格の水準に応じて税率そのものが変わる段階税率が設けられます(たまねぎ生鮮など)。同一品目でも、船積条件(インコタームズ)や付随費用の扱いでCIFの算定が変わるため、申告価格の内訳は通関・税理の専門家と突き合わせることが望ましいです。

枠内税率・枠外税率

関税割当などで用いる、輸入数量の枠の内外で税率を分ける仕組みです。枠内税率は無税又は相対的に低い税率で、一定量までは安価な輸入を確保する(需要者保護)側面があります。枠外税率は高い従量税・複合税・選択税などが適用され、割当を超える輸入に対して国内生産者を守る(生産者保護)側面があります。表記上「枠内:無税、枠外:341円/kg」のように並ぶのはこの対比です。なお※印付きの枠外税率は、関税に加え政府又は代行機関の納付金・売買差額・調整金を含む場合があり、関税単体より実負担が大きくなる点に注意が必要です。

関税割当制度

一定の輸入数量(関税割当数量)まで枠内税率を適用し、それを超える輸入に枠外税率を適用する制度です。割当数量は原則、国内需要見込から国内生産見込を控除した考え方を基準に、政令で定められます。農林水産省所管ではとうもろこし、乳製品、豆類、でん粉等など17品目が対象で、米・小麦・大麦の枠はWTO譲許に基づくアクセス枠として別途管理されます。枠内輸入を行うには、関税割当の申請・割当が必要な場合があり、年度・回次ごとの公表とeMAFF等の手続に従います。枠が埋まると枠外税率のみが適用され、コストが大きく跳ね上がる品目もあるため、輸入計画では割当の残量・申請期限を早めに確認する価値があります。

EPAに基づく関税割当

二国間・地域間の経済連携協定(EPA)で合意された、締約国・品目ごとの輸入枠に対する制度です。一定数量まで特恵税率(枠内)を適用し、超過分には一般税率等(枠外)を適用する点は一般の関税割当と同型ですが、数量・品目・対象国は各協定文書で規定され、政令数量の一般枠とは別管理です。メキシコ・豪州・米国・CPTPP・日EUなど、協定ごとに品目数・枠数が大きく異なり(CPTPPは35品目38枠、日EUは19品目など)、申請様式・公表回次・原産地証明の要件も協定単位で異なります。原産国が協定の締約国であること、該当する税表細分・枠番号が一致していることが適用の前提です。英国向けは関税割当そのものではなく、日EU枠の利用残に基づく事後適用の整理例が示されています。