大規模成長投資補助金(第5次)は、賃上げに向けて大規模な投資を行う中堅・中小・スタートアップ企業を後押しする補助金です。対象は常時使用する従業員数が2,000人以下の企業で、建物・機械・ソフトウェアなどへの大型投資が補助の対象になります。あわせて、補助事業に関わる従業員の1人当たり給与支給総額を年平均5.0%以上(100億宣言企業は4.5%以上)伸ばす賃上げ要件があります。農作物の生産そのものを主業とする1次産業は対象外ですが、加工・販売・検査・倉庫などの拠点投資やフードテックに該当すれば、農業に関わる事業者でも対象になりえます。この記事では、制度の概要、対象者と賃上げ要件、補助率・補助上限額の確認先、申請の流れ、農業関係者の活かし方までをわかりやすく整理します。

項目 内容
誰が対象か 常時使用する従業員数が2,000人以下の中堅・中小・スタートアップ企業(単体ベース)です。一定要件を満たす共同申請(コンソーシアム、最大10社)も対象になりえます。みなし大企業、または農作物の生産自体など1次産業を主たる事業とする場合は対象外です。
何に使えるか 建物・機械装置・ソフトウェア(いずれも単価100万円税抜以上)、外注費・専門家経費への大規模投資が対象です。建物には生産・加工・販売・検査施設や倉庫が含まれます。土地の取得や車両などは対象外です。
賃上げ要件 補助事業に関わる従業員の1人当たり給与支給総額を、基準年度から最終年度まで年平均5.0%以上(100億宣言企業は4.5%以上)伸ばす目標を掲げ、従業員等へ表明し、達成する必要があります。
補助上限額 補助率・補助上限額は経費区分や企業類型により定められます。最新の数値は公募要領でご確認ください(本文「補助率・補助上限額」で確認先を整理します)。
申請方法 電子申請が原則で、GビズIDプライムアカウントが必要です。書面の1次審査を通過すると、外部有識者によるプレゼンテーション審査に進みます。
詳細はどこで 中堅・中小・スタートアップ成長投資補助金事務局の公募・手続きの案内、公募要領・FAQ・採択者向け手引きでご確認ください。

大規模成長投資補助金とは

大規模成長投資補助金(正式名称は「中堅・中小・スタートアップ企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金」)は、賃上げと大規模投資をセットで進める企業を支援する補助金です。人手不足のなかで労働生産性を抜本的に高め、その成果を従業員の賃金に還元する好循環をつくることを狙いとしています。

ポイントは、単に設備を導入するための補助金ではなく、大規模な投資によって労働生産性を高め、賃上げに結びつけるという設計です。このため、後述の賃上げ要件が制度の中核に置かれ、補助を受けた後も賃上げの達成状況がフォローアップされます。

対象者・賃上げ要件

対象になるのは、常時使用する従業員数が2,000人以下(単体ベース)の中堅・中小・スタートアップ企業です。一定の要件を満たせば、最大10社によるコンソーシアムでの共同申請もできます。一方、みなし大企業や、農作物の生産自体など1次産業を主たる事業とする場合は対象外です。

賃上げ要件はどうなっているか

賃上げ要件の図。補助事業完了を含む基準年度から最終年度までの1人当たり給与支給総額の年平均上昇率が5.0%以上であること、申請時の目標掲げと従業員等への表明、未達成時の返還、コンソーシアムでは各社の目標公表が示されている。
中堅・中小・スタートアップ成長投資補助金事務局

賃上げ要件は、補助事業が完了した日を含む事業年度(基準年度)の1人当たり給与支給総額と、その3事業年度後(最終年度)の同額を比べ、年平均上昇率が5.0%以上(100億宣言企業は4.5%以上)であることです。スタートアップのうち産業競争力強化法上の中小企業者で、公募開始日から3年以内に100億宣言を実施する見込みがある場合は、基準率を4.5%とする特例があります。

手続きの面では、申請時に基準率以上の目標を掲げ、交付決定までにその目標を従業員等へ表明したうえで達成することが要件です。目標を表明しなかった場合、基準年度の1人当たり給与支給総額が申請時直近年度を下回った場合、掲げた目標を達成できなかった場合などには、未達成率に応じた補助金の返還が生じます(天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合を除きます。返還となった場合も事業者名は公表されません)。コンソーシアムでは、幹事企業に加えて参画各社がそれぞれ目標水準を公表します。

補助率・補助上限額

補助の対象になる経費は、次の区分です。これらに大規模に投資することが前提になります。

補助対象経費の一覧表。建物費、機械装置費、ソフトウェア費、外注費、専門家経費の区分と単価100万円以上の目安、対象外の例が整理されている。
中堅・中小・スタートアップ成長投資補助金事務局
  • 建物費:拠点の新設・増築などです。専ら補助事業のために用いる事務所、生産施設・加工施設・販売施設・検査施設・共同作業場・倉庫その他事業計画の実施に不可欠な建物の建設・増築・改修・中古取得などが対象で、単価100万円(税抜)以上のものに限ります。
  • 機械装置費:単価100万円(税抜)以上の機械・装置です。
  • ソフトウェア費:専用ソフト・情報システムの購入・構築・クラウド利用などで、単価100万円以上が対象です。
  • 外注費専門家経費:外注費には既存工場跡地を活用する際の土壌汚染対策を計上できます。

一方で、土地の取得、建物の単なる購入・賃貸、車両・運搬具や船舶・航空機などは原則として対象外です。また、外注費と専門家経費の合計は、建物費・機械装置費・ソフトウェア費の合計を下回る必要があります(投資の中心が建物・機械・ソフトに置かれる設計です)。税制上の他制度との併用不可など、経費ごとの制約があります。

補助率と補助上限額は、経費区分や企業類型に応じて公募要領で定められます。回によって金額や率が見直されるため、検討にあたっては中堅・中小・スタートアップ成長投資補助金事務局の公募・手続きの案内と最新の公募要領で、ご自身の投資規模に対する補助率・補助上限額を必ずご確認ください。

申請の流れ・スケジュール

事業スキーム図。基金設置法人・事務局、経済産業省の審査会、申請から採択・補助、確定検査、賃上げフォローアップまでの流れと、プレゼン審査・GビズIDの注意書きが示されている。
中堅・中小・スタートアップ成長投資補助金事務局

基金設置法人および事務局が、公募から書面審査、採択、確定検査、補助事業終了後の実施状況確認や賃上げ要件の達成状況のフォローアップまでを担います。申請は電子申請が原則で、GビズIDプライムアカウントが必要です。GビズIDの取得には時間がかかる場合があるため、早めに準備しましょう。

書面の1次審査を通過した申請者は、外部有識者によるプレゼンテーション審査(対話形式)に進みます。金融機関による確認書の提出や、担当者がプレゼン審査に同席した場合には加点がありえます。

審査の観点

採択は、次の観点から定量的・定性的に審査して決まります。

  • 先進性・成長性:市場・差別化、労働生産性の抜本的な向上と人手不足の改善
  • 地域への波及効果:賃上げ・雇用、取引先・パートナーへの波及、コンソーシアムの相乗効果
  • 大規模投資・費用対効果:リスクを伴う大規模投資、補助金額に対する付加価値、行動変容
  • 実現可能性:体制・財務・課題解決のスケジュール、金融機関等のコミットメント
  • 経営力:補助事業の経営戦略上の位置づけ、長期ビジョン・資金計画

スケジュールの目安

第5次公募の例では、2月27日開始3月27日締切予定、4月下旬のプレゼン審査、5月中下旬の採択発表が目安として示されています。実際の日程・様式は変更されることがあるため、事務局の公式ページで必ず最新版をご確認ください。

農業関係者の活かし方

農業・農産物と制度の関係:この制度は「農作物の生産自体を主業とする」形態を対象外と明記しています。一方で、対象経費の建物例には生産施設・加工施設・販売施設・検査施設・倉庫などが含まれます。このため、法人としての主たる事業が製造・加工・流通・食品開発(フードテックなど)に置かれ、大規模投資が賃上げ・労働生産性向上に直結する設計であれば、農産原料を扱う事業でも制度の趣旨に沿いえます。該当の可否は個別の事業計画と公募要領の解釈によります。

農食関連で実務上効くのは、建物区分に加工・販売・検査・倉庫が明示されていること、外注費に土壌汚染対策を計上できること、機械・ソフトに単価の下限があることです。加工・流通・検査・販売の拠点を大規模に整備し、それを賃上げと労働生産性にどう結びつけるかが、審査の観点と整合しやすくなります。

事業計画では、原料調達の安定化やトレーサビリティ、季節変動への対応を語るだけでなく、賃上げと労働生産性にどうつながるか、地域の雇用・取引への波及をどう測るかを示すことが重要です。大規模な施設投資を伴う取組には、産地パワーアップ事業のように産地単位で活用できる支援もあるため、自社の事業内容に合う制度を見極めて選びましょう。地域全体の農業構造の転換を後押しする地域農業構造転換支援とあわせて、投資の位置づけを整理すると検討が進めやすくなります。

加点措置とフードテック

加点の例には、産業競争力強化法上の中小企業が令和10年12月末までに中堅の定義を超えることを宣言するケース、J-Startup選定事業者、本社機能の地方移転を伴う大規模投資、既存工場跡地の活用に伴う土壌汚染対策、えるぼし・くるみん認定、健康経営優良法人、地域未来牽引企業、金融機関・ファンドの確認書、地域企業経営人材マッチングの活用などがあります。

とりわけ農食・六次産業化と接点が大きいのは、危機管理投資・成長投資の戦略分野のうち「⑧フードテック」に該当する事業への加点です。工場跡地の活用と土壌汚染対策の加点は、都市近郊の再開発や物流・加工拠点の集約と組み合わせた大型投資で評価されやすくなります。参考として、過去公募における各種指標の中央値が示されていますが、これは申請の厚みを把握するための参考であり、第5次公募の合否を保証するものではありません。

よくある質問

大規模成長投資補助金とは何ですか

賃上げに向けて大規模な投資を行う中堅・中小・スタートアップ企業を支援する補助金です。建物・機械・ソフトウェアなどへの大型投資が対象で、補助事業に関わる従業員の賃上げ(年平均5.0%以上、100億宣言企業は4.5%以上)を達成することが要件になります。正式名称は「中堅・中小・スタートアップ企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金」です。

補助の上限額はどのくらいですか

補助率・補助上限額は経費区分や企業類型に応じて公募要領で定められ、公募の回によって見直されます。最新の補助率・補助上限額は、中堅・中小・スタートアップ成長投資補助金事務局の公募・手続きの案内と公募要領でご確認ください。

農業者も対象になりますか

農作物の生産そのものを主たる事業とする場合は対象外です。ただし、主たる事業が加工・流通・検査・販売や食品開発(フードテックなど)にあり、大規模投資が賃上げ・労働生産性向上に直結する設計であれば、農産原料を扱う事業者でも対象になりえます。該当の可否は個別の事業計画と公募要領の解釈によります。

賃上げ要件はありますか

あります。補助事業に関わる従業員の1人当たり給与支給総額を、基準年度から最終年度(3事業年度後)まで年平均5.0%以上(100億宣言企業は4.5%以上)伸ばす目標を掲げ、交付決定までに従業員等へ表明し、達成する必要があります。達成できなかった場合は、未達成率に応じて補助金の返還が生じます。

次の一歩

まずは中堅・中小・スタートアップ成長投資補助金事務局の公募・手続きの案内で、最新の公募要領・FAQ・スケジュールを確認しましょう。自社の主たる事業と投資内容が制度の対象に合うか、賃上げ目標を達成できる見通しがあるかを、事業計画に沿って点検します。電子申請にはGビズIDプライムアカウントが必要なため、検討と並行して早めに取得を進めましょう。金融機関の確認書は加点にもつながるため、取引金融機関との相談も早い段階で始めると安心です。

キーワード解説

コンソーシアム(共同申請)

複数の企業が連携して1つの補助事業に共同で申請する仕組みです。この制度では一定の要件のもと最大10社まで参画でき、幹事企業に加えて参画各社がそれぞれ賃上げの目標水準を公表します。

公募要領

補助金の対象者・対象経費・補助率・補助上限額・申請手続き・審査基準などを定めた、応募の基準になる正式な文書です。補助率や補助上限額などの数値は公募の回ごとに見直されるため、検討時には最新版で確認します。

100億宣言

売上高100億円を目指すことを公表する取組です。この制度では、100億宣言企業の賃上げ要件が年平均4.5%以上に緩和されるほか、一定のスタートアップに基準率を4.5%とする特例があります。

出典:中堅・中小・スタートアップ企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金 第5次公募について(令和8年2月27日時点、中堅・中小・スタートアップ成長投資補助金事務局)/最新情報:https://www.nri.com/jp/news/public_offer/growth_subsidies_2026.html