米が余る一方で、麦と大豆は国内の需要に生産が追いつかず、国が増産を強く後押ししています。そのため、麦・大豆を作る農家には二種類の支援が用意されています。一つは、作付けや生産量に応じて交付され収入を下支えする交付金です。水田で作れば戦略作物助成(10アールあたり3.5万円)、畑でも水田でも生産費と販売価格の差を補うゲタ対策が受けられます。もう一つは、排水対策や機械の導入で増産・生産性向上を後押しする補助です。この記事では、麦・大豆に取り組む農家・農業法人・集落営農と産地の担当者に向けて、それぞれの交付単価・補助率と、申請の窓口までを整理します。

概要

項目内容
誰が 麦・大豆を作る販売農家・集落営農・認定農業者です。生産性向上の補助は、産地の農業者団体や地域農業再生協議会が実施主体になります。
何を 収入を下支えする戦略作物助成ゲタ対策の交付金と、増産・生産性向上を後押しする麦・大豆生産技術向上事業の補助を受けられます。
補助額 水田の戦略作物助成は10アールあたり3.5万円、ゲタ対策は面積払10アールあたり2万円に数量払が加わります。生産技術向上事業は営農技術に10アールあたり1万円以内、機械・施設は2分の1以内です。
主な要件 交付金は適切な生産と、水田では販売目的の作付けが前提です。生産技術向上事業は産地と実需が連携した麦・大豆国産化プランの策定と成果目標が必要です。
詳しくは 最寄りの市町村・地域農業再生協議会、地方農政局に相談します。交付金の提出期限は令和8年産で6月30日です。

麦・大豆づくりで使える補助金の全体像

麦・大豆の支援は、性格の違う二つに分けて考えると整理しやすくなります。一つは、作付面積や生産量に応じて交付され、経営の収入を下支えする交付金です。水田で作ることへの戦略作物助成と、生産費と販売価格の差を補うゲタ対策がこれにあたります。もう一つは、排水対策や機械の導入で単収と品質を高め、増産につなげる麦・大豆生産技術向上事業です。前者が「作れば入る」下支え、後者が「増やすための投資」を助ける後押しという役割分担です。

この後押しの背景には、国が掲げる増産目標があります。国産小麦・大豆供給力強化総合対策では、令和12年度までに小麦の生産量を76万トンから108万トンへ、大豆を21万トンから34万トンへ引き上げることを目指しています。輸入頼みだった麦・大豆を国内で増やすため、生産・流通・消費を通した支援がそろえられています。

作れば入る交付金(戦略作物助成とゲタ対策)

まず押さえたいのが、収入を下支えする二つの交付金です。水田で麦・大豆を作る場合は、水田活用の直接支払交付金の戦略作物助成として10アールあたり3.5万円を受けられます。これは、主食用米に代えて麦・大豆・飼料作物などの戦略作物を水田で作ることへの助成です。販売目的で対象水田に作付ける販売農家・集落営農が対象になります。

これとは別に、麦・大豆そのものに交付されるのがゲタ対策(畑作物の直接支払交付金)です。諸外国との生産条件の格差で不利になりやすい麦・大豆・そば・なたねなどについて、標準的な生産費と販売価格の差額を交付します。畑でも水田でも対象で、当年産の作付面積に応じた面積払(10アールあたり2万円、そばは1万3千円)と、生産量と品質に応じた数量払を受けられます。令和8年産の平均交付単価は次のとおりです。

対象作物 課税事業者向けの平均交付単価 免税事業者向けの平均交付単価
大豆10,340円/60kg10,910円/60kg
小麦5,590円/60kg6,000円/60kg
二条大麦4,900円/50kg5,220円/50kg
六条大麦5,710円/50kg6,110円/50kg
はだか麦8,330円/60kg8,850円/60kg
なたね6,410円/60kg6,820円/60kg

数量払は等級やたんぱく質のランクが上がるほど単価も高くなり、令和8年産から改定されました。水田で麦・大豆を作る場合は、戦略作物助成とゲタ対策の両方が関わります。ゲタ・ナラシの仕組みや対象者の要件、等級別の単価はゲタ・ナラシの解説で、水田活用の交付金の全体像は水田活用の直接支払交付金の解説で詳しく整理しています。水田を畑に転換して本作にする場合は、畑作物への転換支援の解説もあわせてご覧ください。

増産・生産性向上を後押しする麦・大豆生産技術向上事業

単収や品質を上げて増産につなげる取り組みには、麦・大豆生産技術向上事業が使えます。対象になるほ場は水田・畑地の両方、対象作物は小麦・二条大麦・六条大麦・はだか麦・大豆です。支援の柱は三つあります。

麦・大豆生産技術向上事業の支援メニュー。生産性向上の推進(団地化の話合いやほ場改修に作付面積50ヘクタール未満で100万円以内など)、営農技術等の導入(10アールあたり1万円以内、大豆極多収品種の種子は2万円以内)、機械・施設の導入(補助率2分の1以内、5,000万円未満)の三つの柱を示す。
農林水産省「小麦・大豆の国産化の推進」:麦・大豆生産技術向上事業の支援メニュー

一つ目は生産性向上の推進です。団地化の話合いやほ場の簡易な改修・点検、ほ場地図のデジタル化などにかかる費用を実費で支援します。上限額は地域の作付面積で変わり、50ヘクタール未満は100万円以内、50〜150ヘクタールは200万円以内、150ヘクタール以上は300万円以内です(北海道は基準面積が2倍)。

二つ目は営農技術等の導入です。生産性を高める技術や品種を導入すると、内容に応じて10アールあたり1万円以内の定額支援を受けられます(大豆極多収品種の種子に係る取組は2万円以内)。複数のメニューを組み合わせられます。主な取組と助成単価は次のとおりです。

取組の例 10アールあたりの助成単価
排水対策技術(弾丸暗渠・心土破砕・深耕)2,000円
高度な排水対策技術(無材穿孔暗渠など)3,000円
効率的な播種技術(耕うん同時畦立て播種など)5,000円
土壌診断に基づく土づくり3,000円
需要に応じた品種への転換7,500円
大豆極多収品種の導入(種子生産は2万円)10,000円
麦・大豆の新規作付け7,500円
スマート農業技術の活用(ドローン散布など)5,000円
農地の均平化(レーザーレベラーなど)5,000円

三つ目は機械・施設の導入です。生産拡大に必要な機械・施設(50万円以上5,000万円未満)を、補助率2分の1以内で導入・リース・改良できます。ほ場で使う機械に限っては事業費の上限がなく、機械ごとに5,000万円未満まで補助を受けられます。播種機やコンバイン、乾燥調製施設、それらを牽引するトラクターなどが対象です。ドローンによる散布などのスマート農業機械を検討する場合は、スマート農機の導入支援の解説も参考になります。

この事業を使うには、産地と実需が連携して麦・大豆国産化プランを策定し、生産拡大・生産性向上の成果目標を定めることが前提です。申請は事業実施計画のポイントが高い産地から順に採択されます。

収入が下がったときの備え

麦・大豆は、収入が減ったときのセーフティネットの対象にもなります。価格が下がって収入が落ち込んだときに差額の9割を補てんするナラシ対策や、自然災害から価格低下まで幅広く備える収入保険のどちらかに加入できます(両方への同時加入はできません)。増産の投資と収入の備えをあわせて考えると、経営が安定します。

申請の流れ

交付金と生産技術向上事業では窓口と手続きが分かれます。まとめると次の順で進みます。

  1. 最寄りの市町村・地域農業再生協議会または地方農政局に相談し、水田の戦略作物助成・ゲタ対策の対象と単価、生産技術向上事業の使い方を確認します。
  2. 戦略作物助成とゲタ対策は、交付申請書と営農計画書を提出します(令和8年産の提出期限は6月30日)。
  3. 生産技術向上事業を使う場合は、産地と実需が連携して麦・大豆国産化プランを策定し、事業実施計画を都道府県に提出します。
  4. 事業実施計画の内容にポイントが付けられ、予算の範囲内で上位から採択されます。
  5. 採択・交付決定を受けて作付け・生産に取り組み、実績を報告して交付金・補助金を受け取ります。

よくある質問

大豆を作れば必ず補助金はもらえますか

認定農業者・集落営農・認定新規就農者であれば、ゲタ対策の数量払と面積払(10アールあたり2万円)を受けられます。水田で作る場合は、これに戦略作物助成の10アールあたり3.5万円が加わります。ただし、地域の指導に沿って適切に生産することが前提で、極端に単収が低い場合などは交付されないことがあります。

水田で大豆を作ると戦略作物助成とゲタ対策の両方をもらえますか

両方が関わります。戦略作物助成は水田で戦略作物を作ることへの助成、ゲタ対策は麦・大豆などの生産費と販売価格の差を補う交付金で、別の仕組みです。水田で大豆を作る場合は、この二つに加えて収入減少に備えるナラシ対策や収入保険も検討できます。

排水対策や機械の費用は補助されますか

麦・大豆生産技術向上事業で支援を受けられます。排水対策などの営農技術は10アールあたり1万円以内の定額、機械・施設は補助率2分の1以内です。ただし、産地と実需が連携した麦・大豆国産化プランの策定が前提になります。まずは市町村・地域農業再生協議会にご相談ください。

個人の農家でも生産技術向上事業を使えますか

麦・大豆生産技術向上事業は、農業者の組織する団体(受益農業従事者が原則年150日以上で5名以上)や地域農業再生協議会などが実施主体になる、産地単位の取り組みです。個人が単独で受けるのではなく、産地の枠組みに参加する形になります。一方、戦略作物助成・ゲタ対策・ナラシ対策は、個々の販売農家・認定農業者などが対象です。

キーワード解説

戦略作物助成

水田活用の直接支払交付金の中心となる助成で、主食用米に代えて麦・大豆・飼料作物などの戦略作物を水田で作る農業者を支援します。麦・大豆・飼料作物は10アールあたり3.5万円、WCS用稲は8万円、飼料用米・米粉用米は収量に応じて5.5万〜10.5万円などの交付単価が設定されています。

ゲタ対策(畑作物の直接支払交付金)

諸外国との生産条件の格差で不利になりやすい麦・大豆・そば・なたね・てん菜・でん粉原料用ばれいしょについて、標準的な生産費と販売価格の差額を交付する制度です。畑でも水田でも対象で、生産量と品質に応じた数量払と、その先払いの面積払(10アールあたり2万円)で構成されます。

麦・大豆国産化プラン

国産の麦・大豆の生産と利用を拡大するため、産地と実需(加工・外食などの買い手)が連携して策定する計画です。麦・大豆生産技術向上事業で支援を受けるための前提になり、産地と実需のミスマッチの解消や、生産拡大・生産性向上の成果目標を盛り込みます。

まとめ

麦・大豆づくりの補助は、作れば入る下支え(水田の戦略作物助成10アールあたり3.5万円と、生産費との差を補うゲタ対策)と、増産・生産性向上の後押し(麦・大豆生産技術向上事業)の二層で考えると整理できます。水田で作れば二つの交付金が重なり、排水対策や機械の導入には営農技術1万円・機械2分の1の補助が使えます。生産技術向上事業には麦・大豆国産化プランの策定が必要なので、まずは市町村・地域農業再生協議会に相談し、産地の計画づくりから始めましょう。