米が余って主食用米だけでは経営が立ちゆかないなか、田んぼをそのまま生かして転作できる先が、家畜のエサになる飼料用米とWCS用稲(稲発酵粗飼料)です。どちらも水田活用の直接支払交付金の対象で、まとまった交付金を受けられます。この記事では、飼料用米・WCS用稲・飼料作物を作る農家・農業法人・集落営農に向けて、作物ごとの交付単価、収量で金額が変わる数量払いの仕組み、交付対象になる水田の条件、そして申請の窓口までを整理します。水田活用の交付金の全体像は水田活用の直接支払交付金の解説で、令和9年度からの見直しは新たな水田政策の解説でまとめています。

概要

項目内容
誰が 販売目的で飼料用米・WCS用稲・飼料作物を交付対象水田に作付ける販売農家・集落営農です。
何を 戦略作物助成の交付金を受けられます。飼料用米は収量に応じた数量払いWCS用稲・飼料作物は定額です。
補助額 WCS用稲は10アールあたり8万円、飼料作物は3.5万円です。飼料用米は5.5万〜10.5万円(多収品種の標準8万円、一般品種は令和8年産で標準6.5万円)です。
主な要件 畜産農家・飼料メーカーなど実需者との出荷・利用契約と、たん水設備・用水路がある交付対象水田であること(5年水張りルール)が必要です。
詳しくは 最寄りの市町村・地域農業再生協議会、地方農政局に相談します。営農計画書・交付申請書の提出期限は令和8年産で6月30日です。

飼料用米・WCS用稲づくりで受けられる交付金の全体像

主食用米に代えて水田で戦略作物を作ると、水田活用の直接支払交付金戦略作物助成を受けられます。戦略作物には麦・大豆のほか、家畜のエサになる飼料用米・WCS用稲・飼料作物が含まれます。飼料用米は家畜に与える米、WCS用稲は実がつく前後の稲を茎葉ごと収穫して発酵させた粗飼料、飼料作物は牧草やソルガムなどです。いずれも田んぼの水田機能を保ったまま取り組めるため、畑に変えずに主食用米からの転換先を探す農家に向いています。

飼料用米とWCS用稲では、交付金の決まり方が違います。WCS用稲・飼料作物は面積に応じた定額飼料用米は収量に応じて金額が変わる数量払いです。国は輸入に頼る飼料の国産化を進めるため、これらの生産を後押ししています。畜産側でエサを確保する取り組みは国産飼料の生産・利用拡大の補助の解説で扱っています。麦・大豆で受けられる交付金は大豆・麦づくりの補助金の解説にまとめています。

作物別の交付単価

水田活用の直接支払交付金の戦略作物助成の交付単価。麦・大豆・飼料作物は10アールあたり3.5万円、加工用米2万円、WCS用稲8万円、飼料用米・米粉用米は収量に応じ5.5万〜10.5万円。交付対象水田はたん水設備や用水路を有しない農地は対象外で、令和7年・8年は連作障害を回避する取組を行えば水張りしなくても交付対象になることを示す。
農林水産省「令和8年度予算」:水田活用の直接支払交付金と戦略作物助成の交付単価

飼料になる作物の交付単価は次のとおりです。WCS用稲は10アールあたり8万円と高めに設定されています。飼料作物は3.5万円で、多年生牧草については収穫だけを行う年(は種しない年)は1万円になります。飼料用米は収量に応じた数量払いで、5.5万円から10.5万円の幅があります。

対象作物 交付単価(10アールあたり)
WCS用稲8万円(定額)
飼料作物(牧草・ソルガム等)3.5万円(収穫のみの年は1万円)
飼料用米(数量払い)5.5万〜10.5万円(多収品種の標準8万円)
飼料用米・一般品種(令和8年産)5.5万〜7.5万円(標準6.5万円)
加工用米(参考)2万円(定額)

この戦略作物助成のほかに、地域が設定する産地交付金が上乗せされることもあります。産地交付金の単価や対象作物は都道府県・地域農業再生協議会ごとに違うため、実際に受けられる合計額は地域で確認します。水田活用の交付金の全体像や、麦・大豆・加工用米も含めた単価一覧は水田活用の直接支払交付金の解説で整理しています。

飼料用米は収量が上がるほど交付額が増える

飼料用米・米粉用米の収量と交付単価の関係のイメージ図。標準単収値のとき標準単価が交付され、標準単収値より150キログラム多いと上限の10.5万円、150キログラム少ないと下限の5.5万円になる。数量払いの単価の傾きは約167円/kg。
農林水産省「水田活用の直接支払交付金」:飼料用米の収量と交付単価の関係のイメージ

飼料用米の交付額は、作った量で変わる数量払いです。地域ごとに定めた標準単収値のときに標準単価が交付され、それより多く収穫すれば単価が上がり、少なければ下がります。単価の傾きは10アールあたり約167円/キログラムで、標準単収値より150キログラム多い収量で上限、150キログラム少ない収量で下限に届きます。多収品種の場合、下限5.5万円・標準8万円・上限10.5万円です。収量を伸ばすほど交付額が増えるため、多くとれる品種を選び、単収を高めることが収入に直結します。

交付の対象になる数量は、ふるい目1.70ミリメートル以上の収量で計算します。これまで飼料用米をふるいにかけていない農家が、新たにふるいにかける必要はありません。ふるいにかけない場合は、地域ごとのふるい下の発生率を使って、ふるい上に相当する収量を計算して申請できます。

一般品種は単価が下がり、多収品種が基本に

飼料用米には、主食用にも使える一般品種と、収量の多い多収品種(専用品種)があります。国は、限られた面積で多くとれる多収品種を基本とする支援へ移しており、一般品種の標準単価を年々引き下げてきました。一般品種は米の需給しだいで主食用米に戻りやすく、実需者への供給が安定しないためです。多収品種は従来どおり5.5万〜10.5万円(標準8万円)が維持されます。一般品種の標準単価の推移は次のとおりです。

産年 一般品種の標準単価 数量払いの幅
令和5年産8.0万円5.5万〜10.5万円
令和6年産7.5万円5.5万〜9.5万円
令和7年産7.0万円5.5万〜8.5万円
令和8年産6.5万円5.5万〜7.5万円

一般品種でも、地域全体で一括して出荷する地域農業再生協議会では、生産年の6月30日までに地方農政局へ報告することで、一律6.5万円の面積払いを選べます。事務の負担を軽くし、交付金を早く受け取りたい地域向けの選び方です。多収品種の種子を確保する取り組みには、産地づくり体制構築等支援を使えます。これから飼料用米を増やすなら、単価が高く維持される多収品種への切り替えが有利です。

交付の対象になる水田と5年水張りルール

交付を受けられるのは、水田機能を備えた交付対象水田です。たん水設備(畦畔など)や用水路を持たない農地は対象になりません。加えて、5年水張りルールがあり、5年間に一度も水張り(湛水)が行われない農地は、令和9年以降は交付の対象外になります。麦・大豆などの畑作物を続ける田について、水稲とのブロックローテーションを促すための扱いです。

ただし令和7年・8年は特例があります。水稲を作付けできる田で、堆肥やもみ殻などの有機物・土壌改良資材の施用、土壌の薬剤散布、後作の緑肥、病害虫抵抗性品種の作付けといった連作障害を回避する取組を行えば、水張りをしなくても交付対象になります。水張りをする場合は、湛水管理を1か月以上行い、連作障害による収量低下が起きていないことを、いずれも満たすと水張りとみなされます。令和9年度以降は水張りルール自体が求められなくなり、作物ごとの生産性向上への支援に切り替わります。この見直しの詳細は新たな水田政策の解説をご覧ください。

WCS用稲・飼料作物の収量の確認

WCS用稲や飼料作物は定額ですが、適切に生産したことを示すため収量の確認が必要です。飼料用米のように主食用の検査を通さないので、次のような方法で数量を確認します。

  • 1ロールの重量 × ロールの個数
  • トラック1台分の重量 × トラックの台数
  • バンカーサイロに詰めた容積 × 容積密度 ÷ 作付総面積 × 申請面積
  • 水田放牧の場合は、放牧頭数 × 放牧日数

都道府県や地域農業再生協議会は、地域ごとに基準単収や平均単収を定めています。収量が基準を大きく下回ると、理由書の提出が必要になり、2年続けて理由書を出すと地方農政局長などの改善指導の対象になります。指導の内容が実行されないと交付対象から外れることがあるため、単収を保つ栽培管理が欠かせません。

実需者との連携と収入の備え

飼料用米・WCS用稲は、作った先に使い手が要ります。畜産農家や配合飼料メーカーなどの実需者との出荷・利用契約を結んだうえで生産するのが基本です。地域の耕種農家と畜産農家が結びつく耕畜連携は、田んぼの活用と国産飼料の確保を同時に進めます。畜産側での飼料確保やエサの国産化を後押しする支援は国産飼料の生産・利用拡大の補助の解説にまとめています。

戦略作物助成は、税を将来に繰り延べできる農業経営基盤強化準備金の対象にもなり、受け取った交付金を機械・施設の取得にあてやすくなります。あわせて、価格や収量が下がったときの備えとして、収入保険や農業共済も検討できます。転換の交付金と収入の備えをセットで考えると、経営が安定します。

申請の流れ

飼料用米・WCS用稲づくりの交付金は、次の順で手続きします。

  1. 最寄りの市町村・地域農業再生協議会、または地方農政局に相談し、作る作物(飼料用米・WCS用稲・飼料作物)の交付単価と要件を確認します。
  2. 畜産農家・飼料メーカーなどの実需者と、出荷・利用の契約を結びます。
  3. 交付対象水田の要件(たん水設備・用水路があること、令和7年・8年は連作障害を回避する取組など)を満たします。
  4. 営農計画書・交付申請書を提出します(令和8年産の提出期限は6月30日)。
  5. 作付け・収穫し、収量を報告します(飼料用米はふるい上の数量、WCS用稲・飼料作物はロールの重量などで確認)。
  6. 実績にもとづいて交付金を受け取ります。

よくある質問

飼料用米では10アールあたりどれだけ受けられますか

収量に応じた数量払いで、多収品種なら5.5万〜10.5万円(標準単収値のときに標準8万円)です。一般品種は令和8年産で標準6.5万円(5.5万〜7.5万円)に下がっています。同じ田んぼでも、収量を伸ばすほど交付額が増えます。

WCS用稲と飼料用米はどちらが有利ですか

どちらも水田で取り組めますが、決まり方が違います。WCS用稲は10アールあたり8万円の定額で、収量に左右されず金額が読みやすいのが利点です。飼料用米は数量払いで、多収品種で単収を高めれば8万円を超えて最大10.5万円まで届きます。実需者がWCS用稲と飼料用米のどちらを求めているか、また自分の田で単収を伸ばせるかで選びます。

飼料用米は必ずふるいにかける必要がありますか

いいえ。これまでふるいにかけていない場合、新たにかける必要はありません。ふるいにかけないときは、地域ごとのふるい下の発生率を使って、ふるい目1.70ミリメートル以上に相当する収量を計算して申請できます。

個人の農家でも受けられますか

受けられます。戦略作物助成は、販売目的で交付対象水田に作付ける販売農家・集落営農が対象です。ただし飼料用米・WCS用稲は、畜産農家や飼料メーカーなどの実需者との出荷・利用契約が前提になります。まずは市町村・地域農業再生協議会にご相談ください。

キーワード解説

戦略作物助成

水田活用の直接支払交付金の中心となる助成で、主食用米に代えて麦・大豆・飼料作物・WCS用稲・加工用米・飼料用米・米粉用米などを水田で作る農業者を支援します。飼料作物は10アールあたり3.5万円、WCS用稲は8万円、飼料用米・米粉用米は収量に応じて5.5万〜10.5万円などの交付単価が設定されています。

数量払い

飼料用米・米粉用米で使われる、収穫した量に応じて交付単価が変わる仕組みです。地域の標準単収値のときに標準単価が交付され、それより多く収穫すれば単価が上がり(上限10.5万円)、少なければ下がります(下限5.5万円)。交付対象の数量は、ふるい目1.70ミリメートル以上の収量で計算します。

WCS用稲

ホールクロップサイレージ(Whole Crop Silage)用の稲で、実をつけた稲を茎葉ごと収穫し、発酵させて牛などの粗飼料にします。子実だけを使う飼料用米とは異なり、稲全体を利用します。水田活用の直接支払交付金では10アールあたり8万円の定額で支援されます。

5年水張りルール

5年間に一度も水張り(湛水)が行われない農地を、令和9年以降は交付の対象外とする扱いです。水稲とのブロックローテーションを促すために設けられました。令和7年・8年は、水稲を作付けできる田で連作障害を回避する取組を行えば、水張りをしなくても交付対象になります。令和9年度以降はこのルール自体が求められなくなります。

まとめ

飼料用米・WCS用稲は、田んぼをそのまま生かして主食用米から転換できる先で、水田活用の直接支払交付金の戦略作物助成を受けられます。WCS用稲は10アールあたり8万円の定額、飼料作物は3.5万円、飼料用米は収量に応じた数量払いで5.5万〜10.5万円(一般品種は令和8年産で標準6.5万円)です。金額を伸ばす鍵は、多収品種を選んで単収を高めること、そして畜産農家など実需者との契約と交付対象水田の要件を満たすことです。まずは市町村・地域農業再生協議会に相談し、地域の産地交付金の上乗せや実需者との結びつきを確認して取り組みましょう。

出典:農林水産省「水田活用の直接支払交付金」、「令和8年度予算」、および「令和8年産 水田活用の直接支払交付金予算に係るQ&A」(令和8年4月)。交付単価は令和8年産の内容です。産地交付金の単価や提出期限、収量確認の方法は地域・年度で変わることがあるため、最新の要件は市町村・地域農業再生協議会や農林水産省の一次情報をご覧ください。