農産物の輸出を県・産地単位で広げたい自治体・JA・産地の担当者に向けて、都道府県が使える国の輸出支援と連携体制を解説します。国との輸出促進連携ネットワークから、大規模輸出産地の育成、海外現地の輸出支援プラットフォームとの連携までを順に整理します。

概要

項目 内容
誰が (農林水産省・在外公館)、都道府県全国知事会輸出拡大PTJA・地域商社・物流・輸出商社、JETROJFOODO(オブザーバー・PF構成)が連携します。
何を 国と都道府県の連携体制、大規模輸出産地の育成、県横断プロモーション、8カ国・地域の現地支援の4本柱です。産地は県・JAを通じてこれらの枠組みに参加できます。
いつ WGは年1〜2回の意見交換。第1回ネットワーク会合は令和5年7月21日。連携フォーラムは2023年1月開設。
詳細はどこで 農林水産省「国と都道府県等との連携」、「農林水産物・食品の輸出拡大に向けた国と都道府県との連携について(PDF)」をご覧ください。

都道府県の農産物輸出支援とは

都道府県の農産物輸出支援とは、国(農林水産省)と都道府県が連携して、輸出に対応した産地づくり・海外プロモーション・輸出先の規制対応を進める一連の枠組みです。中核となるのが農林水産物・食品輸出促進連携ネットワークで、大臣・知事級の意思疎通から実務者級のWGまでが一体で動きます。

産地・自治体の担当者から見ると、使える枠組みは大きく4つです。①連携ネットワーク・WGを通じた国への意見反映、②都道府県・JA・地域商社が一体となった大規模輸出産地の育成、③連携フォーラムを通じた県横断プロモーションと商談、④海外8カ国・地域の輸出支援プラットフォームからの現地情報の入手です。輸出そのものの始め方や国の支援メニュー全体は、農産物・食品の輸出の始め方と国の支援の全体像で解説しています。

輸出促進連携ネットワークの体制

国と都道府県は、輸出促進に向けて意思疎通を図り、輸出に対応した産地づくりやプロモーション活動などに連携して取り組みます。個別の県施策を並べるのではなく、オールジャパンとして同じ論点で議論し、現地の輸出支援体制と接続するのが目的です。

農林水産物・食品輸出促進連携ネットワークは、農林水産大臣農林水産省輸出・国際局長全国知事会が推薦する知事(第1回会合の時点では岐阜県がPTリーダー、岩手県がPT副リーダー、鳥取県知事が全国知事会会長)で構成されます。主な議題には、①諸外国の規制に対応した産地づくり、②国と都道府県が連携したプロモーション、③諸外国における規制への対応などが含まれます。

実務は輸出促進連携ネットワークWG(省の審議官・課長級と都道府県部・局長級、年1〜2回)と全国知事会農林水産物輸出拡大PT(県の意見集約)が担い、オブザーバーにJETROJFOODO等が参加します。WGの庶務は農林水産省輸出・国際局輸出企画課です。

輸出促進連携ネットワーク、WG、全国知事会農林水産物輸出拡大PT、都道府県・輸出支援プラットフォーム連携フォーラムの関係図。主な議題と構成員。
国と都道府県の輸出促進連携体制(出典:農林水産省・農林水産物・食品の輸出拡大に向けた国と都道府県との連携について

大規模輸出産地の育成と推進体制

都道府県やJA、地域商社などが一体となり、地域全体として大規模輸出産地を支援する推進体制の整備が必要です。輸出支援プラットフォームとの連携では、訴求力のある都道府県横断プロモーションと、複数産地のリレー出荷・混載によるバリューチェーン改善が重視されます。

全国知事会農林水産物輸出拡大PTと農林水産省の間で、JETROJFOODOをオブザーバーとした意見交換の場を設け、連携フォーラムの効果を高め、優良事例の横展開を図ります。生産・集荷流通の転換例には、有機農業への転換・新品種導入、耕作放棄地の輸出用活用、諸外国規制情報の提供、混載前提の集荷・流通構築などがあります。

輸出先(米国、タイ、シンガポール、EU、中国、台湾、ベトナム、香港など)とPFが連携し、一気通貫したサプライチェーンを構築します。都道府県を中心に、経済連、農協、物流会社、輸出商社などが推進体制に含まれます。

大規模輸出産地、地域関係者の推進体制、輸出支援プラットフォームとの連携、規制情報・横断プロモーション・混載流通、輸出先とのサプライチェーン。
大規模輸出産地づくりとPF連携(出典:農林水産省・農林水産物・食品の輸出拡大に向けた国と都道府県との連携について

都道府県・輸出支援プラットフォーム連携フォーラム

現地PFと連携したプロモーションには、似た小規模イベントの散発や、供給量不足による商談不続といった課題があります。2023年1月、都道府県と輸出支援プラットフォームの連携を具体化する連携フォーラムが開設されました。

都道府県が現地PFと連携すると、大型展示会での県ブース集約、複数県によるフェア、JETROサンプルショールームを組み合わせた追加商談、現地のニーズ・規制・トラブル情報の提供などが可能になります。第2回会合(令和5年8月25日)の議題は、米国・シンガポール・香港・台湾の各PFによる連携案の提示と議論です。

2022年10〜12月には、酒・加工品でA市場10県・B市場6県、青果で12県・7県など、品目・市場ごとに複数の県が並行してイベントを開いていました。現在の回次・議題は省の連携ページをご覧ください。

現地PF連携プロモーションの課題と効果、連携フォーラム開設、品目別イベント実施都道府県数、第2回フォーラム予定。
連携フォーラムと現地PF連携プロモーション(出典:農林水産省・農林水産物・食品の輸出拡大に向けた国と都道府県との連携について

輸出支援プラットフォーム

輸出支援プラットフォームは、「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」に基づき、輸出先で事業者を包括的・専門的・継続的に支援するために設置されます。主な構成員は在外公館JETRO海外事務所JFOODO海外駐在員です。

2022年4月の米国をはじめ、EU・タイ等8カ国・地域で立ち上げ済みで、有望な重点都市への拡大も検討されます。事務局都市の例は、米国(ロサンゼルス・ニューヨーク)、EU(パリ・ブリュッセル)、中国(北京・上海・広州・成都)、タイ(バンコク)などです。

輸出支援プラットフォームの目的、8カ国・地域の設置、各国・地域の事務局設置都市一覧。
輸出支援プラットフォームの設置国・地域と事務局都市(出典:農林水産省・農林水産物・食品の輸出拡大に向けた国と都道府県との連携について
設置国・地域 事務局設置都市(候補)
米国ロサンゼルス、ニューヨーク
EUパリ(ブリュッセル)
ベトナムホーチミン
シンガポールシンガポール
タイバンコク
中国北京、上海、広州、成都
香港香港
台湾台北

よくある質問

都道府県の農産物輸出支援にはどのようなものがありますか

国と都道府県の連携ネットワークによる方針調整、大規模輸出産地の育成、連携フォーラムでの県横断プロモーション、海外8カ国・地域の輸出支援プラットフォームによる現地支援の4本柱です。産地は都道府県・JA・地域商社と役割分担しながら、これらの枠組みに参加します。

個別の農家や農業法人でも支援に関われますか

大規模輸出産地の推進体制には、都道府県やJAだけでなく、経済連・地域商社・物流会社・輸出商社が含まれます。まず県の農政担当課やJAに、産地としての参加を相談するのが近道です。輸出に挑戦する個別の事業者向けには、無料の輸出診断や専門家相談を受けられるGFP(農林水産物・食品輸出プロジェクト)もあります。

JAグループとの連携とは何が違いますか

本記事の枠組みは国と都道府県(行政)の連携で、全国知事会の輸出拡大PTやWGを通じて県の意見を国の施策に反映します。一方、国とJAグループの間にも別の連携体制があり、モデル輸出産地の形成や輸出人材の育成を進めます。JA側の体制は国とJAグループの輸出連携の解説をご覧ください。

連携フォーラムでは何ができますか

大型展示会での県ブースの集約、複数県によるフェア、JETROサンプルショールームを組み合わせた追加商談などを、海外現地の輸出支援プラットフォームと相談できます。現地のニーズ・規制・トラブル情報の提供も受けられます。

輸出支援プラットフォームはどの国にありますか

米国・EU・ベトナム・シンガポール・タイ・中国・香港・台湾の8カ国・地域に設置済みです。事務局はロサンゼルス・パリ・バンコク・上海など主要都市に置かれ、在外公館・JETRO海外事務所・JFOODO海外駐在員が構成員です。

次の一歩

県・産地で輸出イベントや大ロット供給を検討する場合は、まず都道府県の農政担当課(輸出担当)に、連携フォーラムでの県横断プロモーションや大規模輸出産地の支援が使えるかを相談してください。あわせて、産地内の役割分担(生産・集荷・商社)と、対象市場の輸出支援プラットフォームの事務局都市を確認すると、国・県・現地PFへの相談が具体化します。会合・フォーラムの最新日程は、農林水産省「国と都道府県等との連携」ページでご覧ください。

キーワード解説

農林水産物・食品輸出促進連携ネットワーク

国と都道府県が輸出促進についてトップレベルで連携する枠組みです。構成員は農林水産大臣農林水産省輸出・国際局長全国知事会が推薦する知事で、個別県の取組を並べるのではなく、産地づくり・プロモーション・海外規制など共通の論点で方針をすり合わせます。第1回会合は令和5年7月21日に開催され、オールジャパンでの輸出拡大の方向性を大臣・知事間で確認する場として位置づけられます。

輸出促進連携ネットワークWG(ワーキンググループ)

連携ネットワークの実務を担う会合です。農林水産省輸出・国際局の審議官・課長級と、都道府県の部・局長級が構成員となり、年1〜2回定期的に意見交換します。JETROJFOODO、全国知事会などがオブザーバーとして参加し、現地の商流やプロモーションの実情を議論に反映します。庶務は農林水産省輸出・国際局輸出企画課が担当します。

全国知事会農林水産物輸出拡大PT(プロジェクトチーム)

全国知事会内で、輸出促進施策について都道府県の意見を集約するチームです。ネットワーク・WGでの国の方針に対し、県の現場感(プロモーションの要望、産地整備の課題、規制対応の困りごと)を国へ伝える経路になります。第1回会合の時点では、岐阜県がPTリーダー、岩手県がPT副リーダーを務めます。県単位で輸出を進める担当課局は、PTを通じた意見反映のタイミングを押さえておくと、国・県の連携施策への提案がしやすくなります。

都道府県・輸出支援プラットフォーム連携フォーラム

都道府県と輸出支援プラットフォームが、現地でのプロモーションや流通改善を具体化するための意見・情報交換の場です。2023年1月に開設され、県ごとに散発しがちな小規模イベントや供給量不足による商談不続といった課題に対し、県横断のブース集約・複数県フェア・JETROサンプルショールーム活用などの連携案を議論します。農林水産省の「国と都道府県等との連携」ページに、各回の資料・概要が掲載されます。

輸出支援プラットフォーム

輸出先国・地域で、輸出事業者を包括的・専門的・継続的に支援する現地の連携体制です。主な構成員は在外公館JETRO海外事務所JFOODO海外駐在員で、「輸出拡大実行戦略」に基づき設置されます。米国・EU・タイ・シンガポール・ベトナム・香港・台湾・中国の8カ国・地域で立ち上げ済みで、市場ごとにロサンゼルス・バンコク・上海など事務局設置都市が定められています。都道府県は連携フォーラムを通じてPFと接続し、現地のニーズ・規制・トラブル情報を国内の産地づくりに活かします。

大規模輸出産地

輸出先の植物検疫・食品安全・大ロット需要などに対応できる生産・出荷・流通の規模と体制を備えた産地です。単独農家や小規模団体だけでは難しい、規格統一・安定供給・コスト低減を、都道府県・JA・地域商社・物流・輸出商社が役割分担して担います。有機農業への転換、新品種導入、耕作放棄地の活用、混載・リレー出荷による集荷・流通の効率化などが、産地形成の具体策です。旗艦産地の補助制度など、国の別施策と組み合わせて検討される場合があります。

農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略

輸出額の拡大に向けた国の実行戦略で、輸出先の多角化、都道府県・JA等との連携による地域ぐるみの輸出産地形成、輸出先における商流開拓や食品事業者の海外展開支援、知的財産の保護・活用などを柱に置きます。輸出支援プラットフォームの設置根拠ともなり、国・県・現地PF・産地が同じ目標に沿って動くための上位方針です。改訂内容・数値目標の最新版は、農林水産省の輸出関連ページで公表されます。

規制への対応

輸出先国・地域が定める植物検疫食品安全表示・認証などの要件に沿って、生産・加工・出荷・証明の手続を整えることです。国と都道府県の連携の主要論点のひとつで、県では輸出証明や区域指定などの行政手続、産地ではGAPや衛生管理、出荷団体ではトレーサビリティの整備が求められる場面があります。輸出支援プラットフォームや連携フォーラムを通じ、現地の規制動向やトラブル事例を国内にフィードバックする経路になります。