農山漁村の経済と生活を、行政だけでなく民間企業・地域金融機関・関係人口とともに支えていく官民共創の場が、「農山漁村」経済・生活環境創生プラットフォームです。後継者不足や生活環境の維持といった農山漁村の課題に、企業の資金・人材・技術と、地域づくりに関わる人びとをつなぎます。この記事では、このプラットフォームとは何か、何ができる場か、誰がどう参加・連携できるか、そして関係人口や地域づくりとどうつながるかを、わかりやすく整理します。

農山漁村の振興プラットフォームの概要

項目 内容
どんな場か 農林水産省が地方創生2.0の一環として設けた、農山漁村の課題を行政と民間がともに解決する官民共創のハブです。情報交換・マッチング・事業化を後押しします。
何ができるか 情報発信・情報交換、企業と現場のマッチング・事業化支援、シンポジウム等による好事例の共有、インパクトを社内外に説明する共通言語づくりができます。
誰が参加できるか 都道府県・市区町村、民間企業、地域金融機関、関係府省庁・教育機関・郵便局等です。農山漁村の課題解決に関心がある主体が参画できます。
どれくらいの規模か 令和7年5月時点で企業約480・自治体約60の計540団体が参画しています。令和7年2月4日と7月16日にシンポジウムを開催しました。
詳しく知るには 農林水産省「「農山漁村」経済・生活環境創生プラットフォーム」、「官民共創による農業・農村の課題解決のための取組」をご覧ください。
地方創生2.0、官民共創プラットフォーム参画540団体、企業4リターン、インパクト可視化ガイダンス、地域金融機関・JR東日本・企業版ふるさと納税の事例。
官民共創プラットフォームの全体像(出典:農林水産省「令和6年度 食料・農業・農村白書」

農山漁村の振興プラットフォームとは

「農山漁村」経済・生活環境創生プラットフォームは、農山漁村の課題を、行政だけでなく民間の資金・人材・技術とともに解決する官民共創のハブです。後継者不足や生活環境の維持といった現場の課題と、企業や地域金融機関、地域づくりに関わる人びとを結びつけ、継続的なビジネス・人材・地域との関係づくりを後押しします。

背景には地方創生2.0があります。令和7年6月、今後10年間の地方創生の方向性を示す地方創生2.0基本構想が閣議決定され、農林水産業はキー産業として位置づけられました。そこでは次が求められています。

  • 農地の大区画化やスマート技術導入による生産性向上
  • 輸出やフードテックを活用した付加価値向上
  • 農泊等の地域資源を活かした農山漁村づくり

これらを進めるには、CSV活動や研修による社員派遣、地方公務員・会社員等の副業促進に加え、地域金融機関や課題解決企業と農山漁村をつなぐ中間支援組織を広げ、地域との新結合を生み、関係人口の創出・拡大で基盤を強化する必要があります。プラットフォームは、この方針を現場の案件形成に接続する場です。単発のボランティアや寄付にとどまらず、継続的な関係づくりを想定して設計されています。

何をする場か

プラットフォームは、次の3方向で取組を進める場です。

  • 案件形成プロセスの体系化。好事例から学べる手順・手引きを整え、進め方を普遍化します。
  • 伴走支援による好事例の創出。地域と企業のマッチングと事業化を進め、新結合を生みます。
  • 関係者の呼込み・情報発信。参画者を増やし、機運を面的に広げます。

企業が円滑に参入できるよう情報発信・情報交換を行い、農林水産省が地域金融機関等と連携してマッチング・事業化を支援します。テーマごとの専門部会では、事例収集や手引き作成も進めています。令和7年5月時点で企業約480・自治体約60の計540団体が参画し、令和7年2月4日に第1回、7月16日に第2回のシンポジウムを開催して、先行事例の共有と関係者間のつながりづくりを図りました。

企業が得られる4つのリターン

農山漁村に関わる企業側のメリットは、次の4類型に整理されています。社内稟議やサステナビリティ報告の材料として、どのリターンを主目的にするかを先に決めると、参入の設計が進めやすくなります。

リターン 主な内容 想定する読者
事業リターン サプライチェーン安定化、顧客減少リスク低減、他業種・他地域への新規開拓 調達・事業開発担当
人的リターン 採用力・育成・エンゲージメント、課題発見力の研修、退職者のセカンドキャリア 人事・人材開発担当
ブランドリターン 企業イメージ向上、地域住民・自治体との信頼関係 広報・CSR担当
資本市場リターン サステナブルファイナンスによる金利優遇、投資家・株主評価 財務・IR担当

インパクト可視化ガイダンス

令和7年3月に公表された「農山漁村」インパクト可視化ガイダンスでは、事業や活動の結果として生じる社会的・環境的な変化や効果(インパクト)の例が整理されています。

  • 地域経済の活性化、農山漁村の持続可能な生活環境の維持
  • ネイチャーポジティブ、気候変動の緩和・適応
  • ウェルビーイング向上、災害レジリエンスの向上

ここでいう「インパクト」とは、事業や活動の結果として生じた社会的・環境的な変化や効果を指し、短期・長期を問いません。参入の効果を社内外へ説明する際の共通言語として活用できます。

参加・連携の仕方

都道府県・市区町村、民間事業者、金融機関等は、プラットフォーム規約に沿って加入を申し込めます。実務では次の順で進めると整理しやすくなります。

  1. 自社(または自治体)が解決したい農山漁村の課題と、提供できる資源(資金・人・技術・販路)を1枚に整理します。
  2. 4つのリターンのうち、社内(または首長・議会)で最も重視する目的を決めます。
  3. 農林水産省の官民共創ポータルで規約・専門部会・シンポジウムの案内を確認します。
  4. 地域金融機関や既存の参画企業を通じて、類似事例の進め方を参照します。

参画要件・専門部会のテーマ・イベント日程の最新情報は、農林水産省のポータルで案内されています。

新結合の事例で見る参加の具体像

実際にどう連携できるかは、先行する新結合の事例が参考になります。

地域金融機関と農村の連携

地域金融機関が現場に入り、農村の課題と民間企業をマッチングする取組があります。熊本県でのマッチングイベント(肥後銀行のサポート)などが紹介されています。金融機関は資金提供にとどまらず、課題の翻訳と伴走を担う中間支援組織として機能します。

大都市の企業・オフィスワーカーと農村の連携

JR東日本社員の副業による農業参入(さくらんぼ農家での作業、りんご収穫ツアー等)が事例として示されています。本業のスキルとは別に、農村体験を通じた人材育成・エンゲージメント向上と、地域側の担い手確保が両立するモデルです。

企業版ふるさと納税と援農の連携

企業版ふるさと納税を活用した援農ボランティアツアー(アサヒビール、ニッカウヰスキー、JTB等)では、従業員参加型で農村への関与を設計しています。寄付とボランティアを組み合わせ、人的リターンとブランドリターンを同時に狙う形です。

関係人口・地域づくりとのつながり

このプラットフォームの土台にあるのが関係人口です。関係人口とは、移住・定住に加えて、通い・滞在・副業・ボランティア等で地域と継続的につながる人びとを指します。企業の副業人材や援農ツアーの参加者、地域に通う社員は、いずれも関係人口として農山漁村の地域づくりを支える存在になります。

プラットフォームは、こうした関係人口を一過性で終わらせず、企業と地域の継続的な関係へと育てる役割を担います。地域金融機関や課題解決企業が中間支援組織として現場と民間をつなぎ、副業・援農・事業化といった多様な関わり方を、地域経済の活性化や生活環境の維持という成果に結びつけていきます。

地域づくりの入口を広げる仕組みは、ほかにもあります。農泊は農山漁村に滞在して地域と交流する関わり方を、中山間地域への支援は条件不利な地域で営農と暮らしを支える取組を、SAVOR JAPANは食と農の地域資源で国内外の関心を呼び込む取組を、それぞれ後押しします。プラットフォームは、こうした取組とあわせて、企業や関係人口を農山漁村につなぐハブとして働きます。

よくある質問

農山漁村の振興プラットフォームとは何ですか

正式には「農山漁村」経済・生活環境創生プラットフォームといい、農林水産省が地方創生2.0の一環として設けた官民共創の場です。自治体・企業・地域金融機関・関係府省庁等が参画し、農山漁村の課題と民間の資金・人材・技術をつなぎ、マッチングと事業化を支援します。

何ができる場ですか

情報発信・情報交換、企業と現場のマッチング・事業化支援、シンポジウム等による好事例の共有ができます。あわせて、参入の効果を社内外へ説明するための共通言語として、インパクト可視化ガイダンスを活用できます。

誰が参加できますか

都道府県・市区町村、民間企業、地域金融機関、関係府省庁・教育機関・郵便局等です。農山漁村の課題解決に関心があり、情報交換・マッチング・事業化に関わる主体が、規約に沿って加入を申し込めます。令和7年5月時点で企業約480・自治体約60の計540団体が参画しています。

関係人口とは何ですか

移住・定住に加えて、通い・滞在・副業・ボランティア等で地域と継続的につながる人びとを指します。企業の副業人材や援農ツアーの参加者も関係人口にあたり、農山漁村の地域づくりを支える担い手として期待されています。

次の一歩

農山漁村との連携を考える企業・自治体の担当者は、まず自社や地域が解決したい課題と提供できる資源(資金・人材・技術・販路)を整理し、4つのリターンのうち最も重視する目的を決めましょう。そのうえで、農林水産省の官民共創ポータルで規約・専門部会・シンポジウムの案内を確認し、地域金融機関や既存の参画企業を通じて類似事例の進め方を参照すると、参加・連携の道筋が見えてきます。参画要件やイベント日程の最新情報は、下記の農林水産省ポータルでご覧ください。

キーワード解説

「農山漁村」経済・生活環境創生プラットフォーム

地方創生2.0の官民共創の場です。自治体・企業・金融機関等が参画し、農山漁村の課題と民間資源をつなぐマッチングと事業化を支援します。

官民共創

地域課題を行政と民間が協力して解決する枠組みです。

中間支援組織

地域金融機関や課題解決企業など、現場と民間をつなぎマッチング・伴走支援を担う主体です。

関係人口

移住・定住に加え、通い・滞在・副業・ボランティア等で地域と継続的につながる人びとです。

インパクト可視化ガイダンス

農山漁村での取組の社会・環境効果を整理するガイダンスです。令和7年3月に公表されました。

企業版ふるさと納税

企業が自治体に寄付し地域課題の解決を支援する制度です。援農ツアー等と組み合わせる事例があります。