和食のユネスコ無形文化遺産登録以降、海外から「本場の日本食」を体験したい旅行者が増えています。SAVOR JAPANは、そうした需要を農山漁村に呼び込むため、地域の郷土料理とそれを支える農林水産業・伝統文化を核にした取組を国が認定し、ブランドとして海外発信する制度です。本記事では制度の全体像、省庁連携と支援の仕組み、認定の流れを整理します。

概要

項目 内容
誰に 農泊・観光を推進する自治体・DMO・地域実行組織、農林漁業者、食文化を活かしたインバウンドに関心のある方です。
何を 制度の目的支援の仕組み認定の流れ認定後の支援情報発信の5論点です。
いつ 制度創設は平成28年度。認定は原則5年間で、中間評価も行われます。令和8年度の募集は6月6日〜7月31日(農林水産省案内)です。
詳細は 農林水産省「SAVOR JAPAN」、旅行者向けサイト「SAVOR JAPAN(savorjp.info)」をご覧ください。

SAVOR JAPANとは

SAVOR JAPANの正式名称は農泊 食文化海外発信地域です。SAVORは英語で「味わう、楽しむ」を意味します。農林水産省は、農泊を推進する地域のうち、特に食と食文化の魅力で訪日外国人の誘客に取り組む優れた地域を農林水産大臣が認定します。

認定地域は、地域ならではの郷土料理や食材、それを生み出す農林水産業、景観・歴史・伝統文化などを一体として海外へ発信します。都会のレストランでは得られない「産地で食を味わう」体験を訴求し、インバウンド需要を農山漁村に誘導することが目的です。

2013年の和食ユネスコ無形文化遺産登録や2015年のミラノ国際博覧会などを契機に、海外の日本食への関心は高まりました。こうした背景のもと、平成28年度に制度が創設され、以降、全国の農山漁村で食文化を軸にした観光づくりが広がっています。

省庁連携と支援の仕組み

SAVOR JAPANは、認定地域を中心に、国の複数機関が連携して支援と海外発信を行う仕組みです。農林水産省が情報発信のハブとなり、関係省庁の海外プロモーション事業とも連携します。

SAVOR JAPANの支援の仕組み。認定地域を中心に、農林水産省の情報発信、SAVOR JAPAN推進協議会、内閣官房・総務省・文化庁・経産省・観光庁・JNTOの省庁連携が示されている。
SAVOR JAPANの支援・省庁連携の全体像(出典:農林水産省「SAVOR JAPAN」

図のとおり、支援は大きく次の3方向に分かれます。

  • 農林水産省による情報発信——公式サイト、ガイドブック、紹介動画、Google Arts&Cultureなどを通じ、認定地域の魅力を国内外へ発信します。
  • 関係省庁の情報発信事業との連携——内閣官房、総務省、文化庁、経済産業省、観光庁・JNTOなどが担う、海外での和食普及イベント、政府系サイトでの情報発信、海外での映像・番組放映などと連携します。
  • SAVOR JAPAN推進協議会との連携——認定地域および認定を目指す地域のネットワークづくり、研修・交流会、ブランドの一体的な情報発信を担います。

認定地域に対しては、ブランドとしての一体的な海外発信に加え、地域の魅力づくりを後押しする各種サポートが用意されています。

認定後の主な支援内容

認定を受けた地域は、次のような支援例を活用できます(農林水産省の支援の仕組みに基づく)。

支援の種類 内容
専門家・アドバイザー 地域開発のための有識者・アドバイザーの派遣・紹介
コンテンツづくり 食・農業を中心としたストーリー・体験コンテンツの造成
旅行商品 インバウンド来訪に資する旅行商品づくりの支援
海外プロモーション 海外旅行博覧会・商談会等への出展支援
情報発信 ホームページ、各種SNSとの連携による情報発信
地域間連携 認定地域間のネットワーク構築、推進協議会による研修・交流

上記に加え、農林水産省は「上質な食体験コンテンツ造成のための調査、専門家派遣事業」などを通じ、食資源の調査やモデル地域への専門家派遣も行っています。認定期間中には中間評価も実施され、取組の改善につなげます。

認定の流れと応募

認定は毎年度、取組計画の募集を経て行われます。応募は実施要綱で定める実行組織が単体で行い、法人格を有することが基本です。飲食店、農林漁業者、観光協会などで構成される実行組織を通じて申し込み、地方自治体の参画が望まれます。

応募された取組計画は、SAVOR JAPAN有識者会議での助言を経て、国土交通大臣への意見照会のうえ、特に優れた取組として認定されます。認定後は認定証が授与され、農林水産省の公式サイトや旅行者向けブランドサイトで広く紹介されます。

令和7年度(2025年度)には、山梨県笛吹市、兵庫県宝塚市、奈良県明日香村の3地域が新たに認定され、全国で46地域となりました。令和8年度の募集期間は6月6日(金)〜7月31日(金)です。応募資格・必要書類・様式は実施要綱・応募要領に定められています。

情報発信とPRツール

認定地域の魅力発信には、次のようなツールが整備されています。

  • 公式ポータル——農林水産省「SAVOR JAPAN」に認定地域一覧、制度説明、応募案内があります。
  • 旅行者向けサイト——「savorjp.info」で各地域の食体験・農山漁村の暮らしを多言語で紹介します(名称は同じですが、株式会社USENが運営するグルメサイトとは別物です)。
  • ガイドブック——日本語・英語・フランス語・中国語(繁体字)などの版が公開されています。
  • ガストロノミーツーリズム紹介動画——和牛、寿司、麺、鍋もの、海の幸などテーマ別に、認定地域の郷土料理を紹介する動画シリーズがあります。
  • Google Arts&Culture——写真・動画で認定団体を紹介するコンテンツが掲載されています。

認定ロゴマークは、山・海・田・畑・川と箸をモチーフに、各地の食文化と日本の自然を体感してほしいという意図が込められています。

SAVOR JAPAN推進協議会

SAVOR JAPAN推進協議会は、認定地域および認定を目指す地域のネットワーキングを行う民間団体です。研修会や交流会を通じて地域の磨き上げを促進し、SAVOR JAPANブランドの戦略的かつ一体的な情報発信で、訪日外国人旅行者に認定地域を訪れてもらうことを目指します。Facebook(英語版)などでも情報発信を行っています。

キーワード解説

SAVOR JAPAN

農林水産大臣が認定する「農泊 食文化海外発信地域」のブランド名称です。地域の食・食文化と農山漁村の魅力を海外へ一体的に発信し、インバウンド需要を地域に呼び込むことを目的とします。

農泊

農山漁村に滞在し、農業・漁業・林業体験や地域の食文化、住民との交流を楽しむ滞在型観光です。SAVOR JAPANは、農泊を推進する地域のうち、食文化を軸にインバウンド誘致に特に力を入れる取組を認定します。

インバウンド

外国人旅行者の来日・国内消費を指します。SAVOR JAPANは、増加する訪日需要のうち「本場の日本食・郷土料理を体験したい」ニーズを、農山漁村の観光資源として取り込む制度です。

SAVOR JAPAN推進協議会

認定地域と認定を目指す地域が連携する民間団体です。研修・交流を通じた地域の能力向上と、ブランドを活用した海外向け情報発信の強化を担います。