野菜は天候で価格が大きく動きやすく、野菜生産出荷安定法に基づく野菜価格安定制度が、指定産地での計画生産・出荷と価格低落時の補給で国産野菜の安定供給を支えます。指定・特定野菜と産地区分、卸売向け・契約向けの各事業、緊急需給調整の強化措置を整理します。
概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 誰が | 登録出荷団体を通じて出荷する生産者、または一定規模以上の登録生産者(直接出荷)が主な対象です。事業により面積要件は概ね2ha以上または1.5ha以上です。 |
| 何を | 価格変動の背景、指定・特定野菜と産地区分、卸売向け・契約向けの各事業、指定野菜価格安定対策の算定、緊急需給調整の強化措置を整理します。 |
| いつ・どこで | 需給ガイドラインは国が概ね5年ごと、供給計画は出荷団体・生産者が毎年策定します。手続・申込時期・交付の正本は年度ごとの要領と(独)農畜産業振興機構(ALIC)の案内に従います。 |
| 詳細はどこで | 農林水産省「野菜のページ」、同省「野菜価格安定制度について(PDF)」をご覧ください。 |
野菜の価格変動と制度のねらい
野菜は天候で作柄が変わりやすく保存性も乏しいため、供給量の変動に伴い価格が大きく動きます。品目転換が比較的容易なことから、価格に応じて作付面積も変わり、供給量と価格がさらに連動する特性があります。
価格が大幅に下がると次期作の面積減少と高騰のおそれ、所得の確保が難しく作付意欲が下がる一方、高騰時には消費者への安定供給が困難になります。この循環が続くと作付意欲の低下が広がり、国産野菜の供給基盤にも影響します。
対象品目と指定産地
野菜価格安定制度は、消費量の多い野菜を指定野菜(15品目)、それに準ずる野菜を特定野菜(34品目)として位置づけ、集団産地として形成が必要な指定産地・特定産地で計画的な生産・出荷を進めます。著しい価格低落時には生産者補給金を交付し、経営への影響を緩和します。
指定野菜は、キャベツ・きゅうり・さといも・だいこん・トマト・なす・にんじん・ねぎ・はくさい・ピーマン・ブロッコリー・レタス・たまねぎ・ばれいしょ・ほうれんそうです(※印は重要野菜・調整野菜)。特定野菜には、アスパラガス、いちご、えだまめ、かぼちゃ、スイートコーン、メロンなど34品目が含まれます。
指定産地の要件は、葉茎菜・根菜類で作付面積20ha以上、果菜類(夏秋)12ha以上、果菜類(冬春)8ha以上などが目安で、区域内の当該野菜出荷のうち共同出荷組織等による出荷が2/3以上であることが求められます。特定産地は概ね5ha以上・出荷割合概ね2/3以上が原則です。指定者は指定野菜が農林水産大臣、特定野菜が都道府県知事です。令和8年2月時点で指定産地は864、特定産地は841です。
計画の流れは、国が需給見通しに基づき需給ガイドライン(概ね5年ごと)と供給計画(毎年2回:冬春・夏秋野菜)を示し、出荷団体・生産者が毎年の供給計画を策定する形です。
事業の全体構成
野菜価格安定対策事業は、卸売市場出荷向けと契約取引向けに分かれ、品目(指定・特定)と産地(指定・特定)に応じた次の事業が置かれます。
- ①指定野菜価格安定対策事業
- ②特定野菜等供給産地育成価格差補給事業
- ③緊急需給調整事業
- ④契約指定野菜安定供給事業
- ⑤契約特定野菜等安定供給促進事業
- ⑥契約野菜収入確保モデル事業
対象者は、共同出荷組織を通じて出荷する生産者、または直接出荷する一定規模以上の生産者です。いずれも(独)農畜産業振興機構への登録(登録出荷団体・登録生産者)が必要です。
卸売市場出荷向けの仕組み
主要な生産地域において、市場価格の著しい低落時に生産者補給金を交付するほか、需給均衡が崩れて価格が大きく動いたときの出荷促進・出荷抑制を支援します。
価格低落時の補てん(指定・特定)
指定野菜価格安定対策事業は指定野菜を、特定野菜等供給産地育成価格差補給事業は特定野菜および指定野菜を対象に、指定産地・特定産地で卸売市場へ出荷された野菜の価格が著しく低下した場合に補給金を交付します。
平均価格は過去6年間の卸売市場価格を基礎に算出し、保証基準額は指定野菜で平均価格の90%、最低基準額は原則60%(標準)です。特定野菜は保証基準額80%・最低基準額55%が原則です。補てん率は指定野菜で原則90%(産地区分により70~90%)、特定野菜で80%です。拠出割合(国:都道府県:生産者)は、指定野菜で原則3:1:1、特定野菜で1:1:1です。重要野菜(キャベツ、たまねぎ、秋冬だいこん、秋冬はくさい)や特定品目(アスパラガス、かぼちゃ、スイートコーン)では割合が異なります。
緊急需給調整事業
緊急需給調整事業は、出荷量が多く露地栽培で天候の影響を受けやすいキャベツ、たまねぎ、だいこん、はくさい、レタス、にんじんを対象に、需給の早期回復を図ります。価格高騰時(平均価格の150%以上)は出荷促進、価格低落時(80%以下)は産地調整・加工用販売・市場隔離などの出荷抑制等を助成します。負担割合は国:生産者=4:1、補てん水準は高騰時対策で平均価格の30%、低落時対策で70%です。
指定野菜価格安定対策の算定
指定野菜価格安定対策事業では、指定産地内で登録出荷団体または登録生産者が出荷した指定野菜が対象です。15品目は品目・作期・地域ブロック(北海道~沖縄の11ブロック)ごとに業務区分と対象出荷期間が定められ、例として春キャベツは4月1日~6月30日、夏秋キャベツは7月1日~11月15日などが設けられます。
価額・補給金は業務区分ごとに旬別(上・中・下旬)で平均取引価額を算定し、保証基準額(平均価格の90%)を下回った価額について、原則その差額の9割を補てんします。一部品目は月単位で算定されます。
契約取引向けの仕組み
実需者との契約取引に取り組む生産者・中間事業者を対象に、不作による供給不足時の数量確保や、価格低落時の余裕作付分の出荷調整を支援します。契約指定野菜安定供給事業(指定野菜・指定産地、拠出2:1:1)、契約特定野菜等安定供給促進事業(特定野菜等・特定産地、1:1:1)、契約野菜収入確保モデル事業(指定野菜・産地要件なし、1:0:1)の三つに整理されます。
各類型は次の考え方で設計されています。
- 価格低落タイプ:市場平均取引価額が保証基準額(平均価格の90%)を下回ったとき、差額の90%を数量に応じて補給します。
- 出荷調整タイプ:平均価格の70%を下回ったとき、余裕作付分の出荷調整数量について、平均価格または契約価額のいずれか低い額の70%を交付します。
- 数量確保タイプ:平均価格の130%を上回ったとき、契約数量の不足分を市場等から調達した場合に、価格差の70%または90%を交付します(自己出荷を契約に回した場合と市場購入の場合で率が異なります)。
緊急需給調整の強化(令和3年度以降)
極端な気象変動などに対応し、需給調整の実効性を高めるため、令和3年度から次の拡充・強化が進められています。
- 交付金単価の引き上げ:価格低落時の取組について、平均販売価格の3~4割から7割へ引き上げられました。
- 生産者負担率の引き下げ:国:生産者の負担割合が1:1から4:1へ変更されました。
- 参加促進措置:前年度の価格低落時に緊急需給調整に取り組まなかった出荷団体等について、指定野菜価格安定対策事業の補てん率を引き下げ、参加を促しつつ、取り組んだ産地の不公平感やフリーライドを抑止します。
キーワード解説
野菜生産出荷安定法
野菜価格安定制度の法的根拠です。主要野菜について指定産地を定め計画的な生産・出荷を進め、著しい価格低落時の補給などにより、国産野菜の安定供給を図ります。
指定野菜
消費量の多い15品目の野菜です。キャベツ、だいこん、はくさい、レタス、たまねぎなどに※が付く品目は重要野菜・調整野菜として、緊急需給調整や拠出割合の特例の対象になります。
特定野菜
指定野菜に準ずる34品目です。産地要件・保証基準額・補てん率・拠出割合は指定野菜と異なる枠で設計されます。
指定産地・特定産地
集団産地として形成が必要な生産地域です。面積・出荷割合・指定者(国または都道府県)が品目区分ごとに定められ、対象となる事業が異なります。
指定野菜価格安定対策事業
指定産地の指定野菜について、卸売市場価格が著しく低下した場合に補給金を交付する中核的な事業です。旬別算定と地域ブロック別の出荷期間が特徴です。
緊急需給調整事業
出荷量の多い6品目について、価格の急騰・急落時に出荷促進や出荷抑制等を早めに行うよう助成する事業です。令和3年度以降、単価・負担割合・参加促進措置が強化されています。