イノシシやシカ、サルなどによる農作物被害に、地域として組織的に立ち向かう仕組みが鳥獣被害対策実施隊です。法律に裏づけのある市町村の実行部隊で、捕獲から侵入防止柵の設置、追払いまでを計画的に担います。この記事では、実施隊の仕組み、隊員の構成となり方、活動内容、隊員と市町村が受けられる優遇措置、そして農家・JA・自治体それぞれの関わり方を解説します。

概要

項目内容
誰が市町村が設置します。隊員は市町村職員と、市町村長が任命する民間隊員(猟友会員・農業者など)です。
何を有害鳥獣の捕獲、侵入防止柵の設置・指導、追払いなど、被害防止計画に基づく被害防止施策を実施します。
優遇措置隊員には狩猟税の軽減などの優遇措置があります。市町村には特別交付税による財政措置があります。
なり方市町村の鳥獣被害担当課に相談し、市町村長の任命を受けます。捕獲を担う場合は狩猟免許が前提です。
次の一歩まず自分の市町村に実施隊があるか、隊員の募集があるかを担当課に聞きましょう。

鳥獣被害対策実施隊とは

鳥獣被害対策実施隊は、鳥獣被害防止特措法(正式名称は「鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律」)に基づき、市町村が被害防止計画に沿って設置する実行部隊です。鳥獣被害への対応は、現場に最も近い市町村が中心になって進める仕組みになっており、実施隊はその計画を「絵に描いた餅」で終わらせず、実際に手を動かして実行する組織として位置づけられています。

鳥獣被害対策には、加害する個体を減らす捕獲、農地を守る侵入防止、そして鳥獣を寄せつけない集落環境づくりという複数の取組を組み合わせる考え方があります。実施隊はこのうち捕獲や柵の設置といった実働部分の担い手です。対策の全体像は鳥獣被害対策の3つの柱の記事で解説しています。

実施隊の設置状況は農林水産省が調査して公表しており、直近では令和7年4月末時点の調査結果が公表されています。自分の市町村に実施隊があるかどうかは、農林水産省の公表資料か、市町村の鳥獣被害担当課で把握できます。

隊員の構成となり方

実施隊の隊員は、大きく分けて2種類です。1つは市町村職員で、もう1つは市町村長が任命する民間隊員です。民間隊員には、捕獲の技術を持つ猟友会員や、被害の現場を最もよく知る農業者などが任命されます。行政と現場の担い手が同じ組織に入ることで、被害の発生から対応までの動きが速くなります。

隊員になりたい場合の道筋は、次のとおりです。

  • 市町村に相談する。実施隊は被害防止計画を作成した市町村が設置するため、まず自分の市町村に計画と実施隊があるか、隊員の募集や推薦の仕組みがあるかを鳥獣被害担当課(農政・林政担当課など)に聞きましょう。
  • 必要な資格を整える。銃器やわなによる捕獲を担うなら、狩猟免許が前提になります。免許の種類や取得の流れは狩猟免許の取り方の記事で解説しています。柵の設置や追払いなど、免許がなくても参加できる活動もあります。
  • 市町村長の任命を受ける。民間隊員は市町村長の任命によって実施隊の一員になります。任命の手続や活動条件は市町村ごとに決まっているため、募集案内をご覧ください。

地域の猟友会を通じて任命される例もあれば、農業者が自衛のためにわな猟免許を取得して加わる例もあります。どの入口でも、起点は市町村への相談です。

活動内容

実施隊が担うのは、被害防止計画に基づく被害防止施策の実施です。具体的には次のような活動があります。

  • 捕獲:銃器やわなを使った有害鳥獣の捕獲です。加害する個体を減らし、被害の発生源を断つ、実施隊の中心的な活動です。
  • 侵入防止柵の設置・指導:農地を囲う柵の設置作業や、農家が自分で設置・管理する際の技術指導を行います。柵は張り方や管理しだいで効果が大きく変わるため、指導の役割も重要です。
  • 追払い:集落や農地に出没した鳥獣を追い払い、人里を「餌場ではない」と学習させる活動です。

捕獲した個体を地域の資源として活かす動きも広がっています。捕獲後の食肉利用に関心がある方はジビエ活用の記事をご覧ください。

隊員と市町村への優遇措置

実施隊には、隊員個人と設置する市町村の両方に支援があります。

隊員個人への優遇措置として、狩猟税の軽減などの措置があります。軽減の内容や手続は地域によって異なるため、詳細は市町村・都道府県の案内をご覧ください。また、一定の要件を満たす隊員には、猟銃の所持許可の更新時などに受ける技能講習の免除があります。捕獲の担い手として継続的に活動しやすくする仕組みです。

市町村への支援として、実施隊の活動経費などに対する特別交付税による財政措置があります。市町村にとって、実施隊の設置は財政面の裏づけを得ながら対策を進められる選択肢です。

国の支援としては、鳥獣被害防止総合対策交付金があります。被害防止計画の作成が採択要件で、交付対象は都道府県や地域協議会、交付率は定額または2分の1以内などと定められています。地域ぐるみの捕獲活動や柵の整備を金銭面で支える制度で、実施隊の活動とも密接に関わります。

農家・JA・自治体の関わり方

農家・農業法人は、被害の現場を最もよく知る当事者です。わな猟免許を取得して民間隊員として捕獲に加わる道のほか、出没や被害の情報を実施隊・市町村に速やかに伝える、自分の農地の柵を適切に管理するといった関わり方があります。被害情報が早く正確に集まるほど、実施隊は効果的に動けます。

JAは、組合員からの被害情報を集約して市町村につなぐ役割や、実施隊の活動・隊員募集を組合員に周知する役割を担えます。柵の資材調達や共同設置の調整など、地域ぐるみの対策の事務局的な動きも期待されます。

自治体(市町村)は、被害防止計画を作成し、実施隊を設置・任命する主体です。特別交付税による財政措置や鳥獣被害防止総合対策交付金を活用しながら、猟友会・農家・JAと連携して地域の対策体制をつくります。都道府県は市町村の取組を支え、狩猟税などの制度面の案内を担います。

よくある質問

狩猟免許がなくても実施隊員になれますか?

活動内容によります。銃器やわなによる捕獲を担うには狩猟免許が前提ですが、侵入防止柵の設置や追払いなど、免許がなくても参加できる活動もあります。どの活動をどんな隊員が担うかは市町村が決めるため、まず担当課に相談しましょう。捕獲まで担いたい方は狩猟免許の取り方をご覧ください。

実施隊はどの市町村にもありますか?

すべての市町村にあるわけではありません。実施隊は被害防止計画を作成した市町村が設置するため、計画や実施隊がない市町村もあります。設置状況は農林水産省が調査して公表しており、直近では令和7年4月末時点の調査結果が公表されています。自分の市町村の状況は担当課に聞くのが確実です。

隊員になるとどんな優遇措置がありますか?

狩猟税の軽減などの優遇措置があります。軽減の内容は市町村・都道府県の案内をご覧ください。また、一定の要件を満たす隊員には技能講習の免除があります。

実施隊と猟友会は何が違いますか?

猟友会は狩猟者の団体で、実施隊は法律に基づき市町村が設置する公的な実行部隊です。実際には猟友会員が民間隊員として任命される例が多く、両者は対立するものではなく重なり合う関係です。実施隊に入ることで、狩猟税の軽減などの優遇措置や市町村の組織としての位置づけが加わります。

次の一歩

隊員になりたい農家・猟友会員の方は、まず市町村の鳥獣被害担当課に「被害防止計画と実施隊があるか」「隊員の募集や推薦の仕組みがあるか」を聞きましょう。捕獲まで担いたい方は、並行して狩猟免許の取得を進めると任命後すぐに動けます。

被害に悩む農家の方は、隊員にならなくても、出没・被害の情報を市町村や実施隊に伝えることが対策の第一歩です。地域全体の対策の組み立て方は鳥獣被害対策の3つの柱で、捕獲後の活かし方はジビエ活用で解説しています。

市町村・JAの担当者の方は、被害防止計画の作成状況と実施隊の設置可否を整理し、特別交付税による財政措置や鳥獣被害防止総合対策交付金の活用を含めて体制づくりを検討しましょう。

キーワード解説

鳥獣被害防止特措法

正式名称は「鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律」です。鳥獣被害対策を現場に近い市町村が中心となって進める仕組みを定めた法律で、被害防止計画や鳥獣被害対策実施隊の根拠になっています。

被害防止計画

鳥獣被害防止特措法に基づいて市町村が作成する、地域の鳥獣被害対策の計画です。実施隊はこの計画に沿って設置され、計画の作成は鳥獣被害防止総合対策交付金の採択要件にもなっています。

鳥獣被害防止総合対策交付金

鳥獣被害対策を金銭面で支える国の交付金です。被害防止計画の作成が採択要件で、交付対象は都道府県や地域協議会、交付率は定額または2分の1以内などと定められています。

狩猟税

狩猟者の登録を受ける際に都道府県に納める税です。鳥獣被害対策実施隊の隊員には狩猟税の軽減などの優遇措置があります。軽減の内容は市町村・都道府県の案内をご覧ください。