夏の猛暑が当たり前になり、出穂後の高温で米の白未熟粒や胴割れが増え、品質が下がる年が続いています。この記事では、その年の高温に備える水管理・追肥・適期収穫、数年がかりの高温耐性品種への転換、そして国の高温対策栽培体系への転換支援を整理します。栽培の判断や支援の要件は、最新の一次情報と都道府県・JAの案内でご確認ください。

概要

項目 内容
誰が 米をつくる農家・農業法人です。あわせて、指導するJAの営農指導員や自治体の農政担当も対象になります。
何を 出穂期からの水管理・追肥・適期収穫などの栽培管理、高温耐性品種への転換、国の転換支援の活用です。
いつまでに 対策の中心は出穂期から登熟期・収穫期(夏から初秋)です。品種や作期の見直しは作付け前から準備します。
確認先 都道府県の農業改良普及センター・JA、農林水産省「高温対策栽培体系への転換支援」、地方農政局の案内で確認してください。

高温で米に何が起きるか

夏の高温は、出穂後の白未熟粒胴割れを増やし、一等米比率の低下など品質の低下を招きます。出穂後おおむね20日間の平均気温が高いほど、デンプンの蓄積が不十分な未熟粒が出やすくなります。

影響は局地的なものではありません。農林水産省の令和6年地球温暖化影響調査では、白未熟粒の発生が西日本で5〜6割、東日本で3〜4割の地域に及びました。猛暑が当たり前になるなかで、その年ごとの栽培管理と、数年がかりの品種・作期の見直しの両方が必要になっています。

その年の高温に備える栽培管理

水稲の栽培暦と気象別の被害防止対策
水稲の栽培暦と、気象現象ごとの被害防止対策の整理。高温期は穂肥・水管理の徹底・適期収穫が要点になります。

その年の高温による被害は、出穂期から収穫期にかけての管理で大きく変わります。なかでも水管理・追肥・収穫時期の見直しがよく効きます。

出穂期からの水管理

出穂期の前後から登熟期は、飽水管理やかけ流しで田面と株元の温度を下げ、根の活力を保ちます。日中の高温時に水を入れる、夜間にかけ流すといった工夫で、地温の上がり過ぎを抑えます。早い落水は根の衰えと品質低下を招くため避け、土壌の水分を切らさないようにします。

葉色を保つ追肥と土づくり

登熟期に葉色(葉の窒素)が落ちると、デンプンの蓄積が進まず白未熟粒が増えます。生育を見ながら穂肥を適切に施し、葉色を保つことが対策になります。あわせて、深耕や有機物・けい酸質資材による土づくりで根を深く張らせると、高温登熟に耐える稲になります。

適期収穫で胴割れを防ぐ

刈り遅れは胴割れや茶米、品質低下の大きな原因です。収穫の目安は、出穂後の日平均気温の積算でおおむね1,000〜1,100℃、または籾の黄化が9割前後に達したころです。積算気温が1,200℃を超えると胴割れが急に増えるため、高温の年は登熟が早く進むぶん、平年より早めに収穫します。収穫前の落水も、早すぎると白未熟粒や胴割れを招くため、出穂後35日(収穫の7〜10日前)を目安にします。いずれも品種・地域で差があるので、産地の指導と日々の気温に合わせて調整しましょう。乾燥も高温で急がず、適切な水分まで丁寧に仕上げます。

高温耐性品種への転換

その年の管理に加えて、高温耐性品種への切り替えが各地で進んでいます。令和6年時点で高温耐性品種の作付けは20.6万ヘクタールに広がり、主食用米に占める割合は16.4%(前年から2.5万ヘクタール・1.8ポイントの増加)となりました。

高温登熟耐性が「強」「やや強」とされる品種には、「にこまる」「きぬむすめ」「つや姫」「なつほのか」「にじのきらめき」「新之助」「雪若丸」などがあります。ただし、耐性や食味は地域・栽培条件で変わり、品種ごとに適地も決まっています(例えば「にこまる」は東海以西のヒノヒカリ地域、「きぬむすめ」は同じく東海以西の日本晴地域が適地です)。実際の選択は、自分の産地の奨励品種や適地のなかから行うのが基本です。

また、一つの品種に集中せず、複数の品種を組み合わせて出穂期を分散させると、高温に当たる時期の重なりを避けられます。

高温対策栽培体系への転換支援

こうした取組は、農林水産省の高温対策栽培体系への転換支援で後押しされます。これは個々の農家への定額の単価助成ではなく、産地(協議会など)が地域の実情に合わせて行う、高温耐性品種の導入、土づくりや追肥、病害虫管理、作付け時期の変更、新品種・新技術の導入実証を支援する枠組みです。

活用の意向は都道府県を通じた要望調査で把握されるため、補助率・上限額・公募の時期といった条件は、事業の交付等要綱・実施要領と、都道府県・地方農政局の案内で決まります。導入を考える場合は、早めに都道府県・地方農政局やJAに相談し、年度ごとの要望調査の時期を逃さないようにしましょう。あわせて、令和9年度から始まる新たな水田政策でも、環境の変化への対応が論点になっています。

高温による収入の落ち込みに備える

高温で収量や品質、販売価格が下がると、収入そのものが落ち込みます。これに備える仕組みとして、収入保険ナラシ対策があります。栽培の備えと経営の備えは別物です。どちらが自分の経営に合うかは、収入保険とナラシ対策の比較もあわせて検討しましょう。

いま確認しておきたいこと

  • 都道府県の農業改良普及センター・JAが出す、その年の気象見通しと高温対策の指導内容を確認しましょう。
  • 気象庁の高温に関する早期天候情報や、病害虫の発生予察とあわせて、ほ場ごとの管理を組み立てましょう。
  • 品種・作期の見直しは作付け前からの準備が要ります。次作に向けて、産地での高温耐性品種の導入状況を確認しましょう。

露地野菜の高温対策は夏の高温と野菜価格・高温対策、温暖化全体への適応は気候変動・生物多様性への対応もあわせてご覧ください。米政策の全体像は米価と米政策で整理しています。

キーワード解説

白未熟粒

登熟期の高温などでデンプンの蓄積が不十分になり、粒の内部に空隙ができて光が乱反射し、白く濁って見える米です。背白・基白・乳白などがあり、一等米比率の低下の主因になります。

胴割れ

登熟後期から収穫期の急な乾湿変化で、玄米に亀裂が入る現象です。高温の年や刈り遅れで増え、食味や歩留まりの低下につながります。

飽水管理

田面に水がうっすら残る状態を保つ水管理です。根への酸素供給と地温の抑制を両立させ、高温期の根の活力維持に役立ちます。

高温耐性品種

登熟期の高温でも白未熟粒や胴割れが出にくいよう育成された品種です。産地の条件に合う品種を選び、複数品種で出穂期を分散させる使い方が広がっています。

高温対策栽培体系への転換支援

高温に強い栽培体系への切り替えを後押しする農林水産省の支援です。産地単位で行う高温耐性品種の導入、土づくり・追肥、作期の変更、新品種・新技術の実証などが対象で、都道府県を通じて要望が把握されます。補助率・上限額・公募時期は交付等要綱・実施要領と都道府県の案内で決まります。

ナラシ対策

米・畑作物の収入減少影響緩和交付金です。その年の収入が基準を下回ったとき、国と生産者の積立から減収分の一部が補てんされます。