収穫した青果の品温を出荷前に下げ、品質低下を抑える予冷庫は、国の補助金を使って整備できます。中心となるのは産地生産基盤パワーアップ事業(収益性向上対策)強い農業づくり総合支援交付金で、どちらも集出荷貯蔵施設の整備として補助率2分の1以内等の支援を受けられます。この記事では、予冷庫を導入したい農家・農業法人・JA部会向けに、対象になる施設の範囲、要件、個人での使い方、申請の流れを整理します。最新の要件や公募条件は農林水産省・都道府県の一次情報をご覧ください。

概要

項目内容
誰が 産地パワーアップ計画に参加する農業者・農業者団体(農業協同組合、農事組合法人、農地所有適格法人など)等が使えます。個別経営体も参加できます
何を 予冷庫(予冷施設)を含む集出荷貯蔵施設の整備です。定温貯蔵・低温貯蔵・CA貯蔵など鮮度保持効果のある施設も対象です。
補助率 産地パワーアップ事業(整備事業)は2分の1以内等、強い農業づくり総合支援交付金(産地基幹施設等支援タイプ)も2分の1以内等(上限20億円等)です。
主な要件 産地全体の成果目標(販売額10%以上増加など)と品目ごとの面積要件を満たす計画に位置付けます。施設整備では費用対効果分析で投資効率1.0以上が必要です。
詳しくは 市町村・地域農業再生協議会・JA・都道府県の担当窓口に相談します。通知・パンフレットは農林水産省のWebサイトでご覧いただけます。

予冷庫の整備に使える補助金

予冷庫は、補助事業の中では単独の施設名ではなく、集出荷貯蔵施設を構成する予冷施設として位置付けられています。この集出荷貯蔵施設の整備を支援する国の事業が、産地生産基盤パワーアップ事業(収益性向上対策)強い農業づくり総合支援交付金(産地基幹施設等支援タイプ)です。二つの事業の違いは次のとおりです。

項目 産地パワーアップ事業(収益性向上対策) 強い農業づくり総合支援交付金(産地基幹施設等支援タイプ)
予冷庫の扱い 集出荷貯蔵施設の整備を通じた集出荷機能の改善として支援します。 産地の基幹施設(集出荷貯蔵施設等)の整備として支援します。
補助率 整備事業は2分の1以内等です。 2分の1以内等(上限20億円等)です。
主な要件 産地パワーアップ計画への参加、産地全体の成果目標と面積要件です。個別経営体も参加できます。 受益農業従事者5名以上、総事業費が原則5,000万円以上、投資効率1.0以上などです。
申請の入口 市町村・地域農業再生協議会から都道府県へ進みます。 市町村・都道府県を経由するのが基本です。

大づかみに言うと、産地の計画に位置付けて個別の経営体でも使いやすいのが産地パワーアップ事業、受益者5名以上の共同利用施設として大きく整備するのが強い農業づくり総合支援交付金です。交付金全体の3つの支援タイプや公募スケジュールは強い農業づくり総合支援交付金の解説で、産地パワーアップ事業全体の支援メニューは産地生産基盤パワーアップ事業の解説で詳しく整理しています。本記事では予冷庫の観点に絞って掘り下げます。

補助対象になる予冷庫の範囲

強い農業づくり総合支援交付金の交付等要綱では、集出荷貯蔵施設は「農作物の集出荷及び貯蔵に必要な施設」と定められ、建物の規模は原則として1棟おおむね100平方メートル以上です。予冷施設・貯蔵施設・選別調製包装施設などは、原則として集出荷施設と一体的に整備することとされています。ただし、既存の集出荷施設に整備する場合などは例外で、稼働中の集出荷場に予冷施設を加える形でも対象になり得ます。

対象になる貯蔵方式は幅広く、品質低下を抑制しつつ計画的かつ安定的に出荷する観点から、予措保管施設・定温貯蔵施設・低温貯蔵施設・CA貯蔵施設のほか、これらと同等以上の鮮度保持効果があると認められる施設を整備できます。なお、集出荷貯蔵施設の対象作物に米・麦は含まれません。野菜・果樹・花きなど園芸品目の産地向けの枠組みです。

注意したいのは、施設の単純更新は補助対象にならない点です。古くなった予冷庫を同じ機能のまま建て替えるだけの計画は採択されません。一方、既存施設を新しい用途に仕向けるために内部設備の導入と一体的に行う改修等は、新設より経済的に優位であること、施設の法定耐用年数が10年以上であることなどを満たせば対象になります。

産地パワーアップ事業で予冷庫を整備する

産地生産基盤パワーアップ事業のイメージ。都道府県の方針の下で地域農業再生協議会等が産地パワーアップ計画を作成し、都道府県知事の承認後、計画に参加する取組主体が取組主体事業計画を作成して助成を受ける流れ。
農林水産省「産地生産基盤パワーアップ事業」、同「収益性向上対策及び生産基盤強化対策パンフレット」(PDF):事業の仕組み

産地パワーアップ事業は、産地単位の計画に基づいて施設整備や機械導入を支援する仕組みです。都道府県が示す方針の下、地域農業再生協議会等の関係者(農業者、地方公共団体、JA、農業関連業者等)が連携して産地パワーアップ計画を作成し、都道府県知事が承認します。計画に参加する農業者や農業者団体等の取組主体が「取組主体事業計画」を作成し、地域農業再生協議会長等の承認を受けると、予冷庫を含む集出荷貯蔵施設の整備費に対して2分の1以内等の助成を受けられます。計画の実施期間は原則3年で、その中に実施期間最長2年の取組主体事業計画を柔軟に位置付けられます。

個人でも使えるか

使えます。支援対象者は産地パワーアップ計画(収益性向上タイプ)に参加する農業者、農業者団体(農業協同組合、農事組合法人、農地所有適格法人、その他農業者が組織する団体)等で、個別経営体も参加できます。JA部会や出荷組合の共同利用施設だけでなく、農業法人や個人の農家が自ら予冷庫を整備する形も取れます。

ただし個人の農業者が施設整備を行う場合は、青色申告等により農業経営の経理が家計と分離されていること後継者が確保されているなど事業の継続性が担保されていることが要件です。また、経営規模や経営形態の制限はないものの、地域の関係者の合意の下で地域農業の担い手として認められ、産地パワーアップ計画に位置付けられることが前提になります。

産地に求められる成果目標

採択には、産地パワーアップ計画で基準を満たした成果目標を定めることが必要です。収益性向上タイプでは、販売額又は所得額の10%以上の増加生産コスト又は集出荷・加工コストの10%以上の削減、契約栽培の割合の10%以上の増加、輸出向け出荷量・出荷額の10%以上の増加、労働生産性の10%以上の向上などから産地全体で目標を設定します。整備事業では成果目標を最大2つ選択し、目標をポイント化して高い順に配分対象が選ばれます。

野菜の集出荷貯蔵施設を整備する場合の成果目標には、「秀品」等の上位規格品の割合増加、契約取引の割合増加、ブランド野菜の割合増加、加工向け・外食・中食向け割合の増加、生産コスト又は流通コストの縮減、海外向け割合の増加、労働時間の縮減、販売額の増加が並びます。予冷庫の導入で鮮度保持力を高め、上位規格品の割合や契約取引を伸ばす計画は、この型に乗せやすい取組です。いちご・たまねぎ・ねぎ・ブロッコリーなどの重点品目や、りんご・ぶどう・かんきつ類・もも・かき・日本なしなどの果樹の重点品目では、採択時にポイントが加算されます。

なお、成果目標や面積要件は産地全体で満たすものであり、施設整備を行う農業者や農業者団体が単独で負うものではありません。施設の整備では費用対効果分析を実施し、投資効率が1.0以上であることが必要です。

面積要件の目安

品目ごとに産地の面積要件があります。露地野菜は10ヘクタール(中山間地域等の施設整備は5ヘクタール)、施設野菜は5ヘクタール(同3ヘクタール)、りんご・かんきつ類など露地栽培の果樹は10ヘクタールです。都市近郊地域は2ヘクタールに緩和されるほか、中山間地域所得向上計画等と連携する地域では面積要件が課されません。面積は産地パワーアップ計画の対象とする産地全体で判断されるため、取組主体は面積要件に含まれる農地の一部だけを対象に予冷庫を整備することもできます。共同で集出荷しているつながりのある農業者の集まりを「産地」として計画を作ることも可能です。

強い農業づくり総合支援交付金で予冷庫を整備する

産地で中心的な役割を果たす農業法人や農業者団体等が、より大きな共同利用施設として予冷庫を整備するなら、強い農業づくり総合支援交付金の産地基幹施設等支援タイプが候補です。集出荷貯蔵施設や冷凍野菜の加工・貯蔵施設など産地の基幹施設の整備を、補助率2分の1以内等(上限20億円等)で支援します。受益農業従事者(原則年間150日以上の常時従事者)が5名以上であること、産地基幹施設は原則として総事業費5,000万円以上であること、投資効率1.0以上であることなどが主な採択要件です。

また、同交付金の食料システム構築支援タイプでは、出荷量の平準化と実需者(加工・外食・中食などの買い手)への安定供給を図るための予冷・貯蔵庫の導入が、供給調整機能を強化する取組として支援対象に含まれます。拠点事業者と産地が連携して生産から流通までの課題をまとめて解決する枠組みで、集出荷貯蔵施設のようなハード整備とソフトの取組を一体で進められます。

物流対策と組み合わせると採択に近づく

予冷庫は鮮度保持だけでなく、物流の効率化とも直結します。集出荷場で荷を集約・予冷し、トラック輸送から鉄道・船舶へのモーダルシフトにつなげる産地の事例があります。混載のためにリードタイムが延びる場合も、倉庫の予冷設備の強化で品質の維持・向上を図ったケースがあります。強い農業づくり総合支援交付金には、集出荷施設におけるパレットの規格統一化など物流標準化・効率化の取組への優先枠があり、成果目標の一つを「流通コスト(単位数量当たりの集出荷・販売経費)を2%以上縮減」として申請できます。青果物流の効率化を支援する事業の全体像は物流革新に向けた取組の解説で整理しています。

申請の流れ

産地パワーアップ事業の取組主体の手続の流れ。取組主体が事業計画案を作成し、地域農業再生協議会等・都道府県・国と基金管理団体の順に相談・提出と承認が進み、承認後に交付申請を経て助成金が交付される。
農林水産省「産地生産基盤パワーアップ事業」、同「収益性向上対策及び生産基盤強化対策パンフレット」(PDF):取組主体の手続の流れ

産地パワーアップ事業で予冷庫を整備する場合、手続きは次の順で進みます。

  1. 市町村・地域農業再生協議会・JAに相談し、産地に産地パワーアップ計画(収益性向上タイプ)があるか、予冷庫の整備を位置付けられるかを確認します。計画がなければ、協議会等による計画づくりから始まります。
  2. 産地パワーアップ計画に基づき、取組主体事業計画の案を作成します。成果目標への貢献、整備する施設の内容、費用対効果を整理します。
  3. 事業計画を地域農業再生協議会等に相談・提出します。協議会から都道府県、国・基金管理団体へ順に協議が進み、承認が下ります。
  4. 承認後に交付申請を行います。
  5. 助成金が交付されます。市町村や地域農業再生協議会から交付される場合もあります。

強い農業づくり総合支援交付金の産地基幹施設等支援タイプも、市町村・都道府県を経由して要望を上げるのが基本です。いずれの事業も、事業内容や申請に関する相談窓口は都道府県の担当窓口で、不明な場合は地方農政局の生産振興課が総合窓口になります。

よくある質問

個人の農家でも予冷庫に補助金を使えますか

使えます。産地パワーアップ事業は、産地パワーアップ計画に参加する個別経営体も取組主体になれます。個人の農業者が施設整備を行う場合は、青色申告等により農業経営の経理が家計と分離されていること、後継者の確保など事業の継続性が担保されていることが要件です。受益者5名以上が前提の強い農業づくり総合支援交付金(産地基幹施設等支援タイプ)より、個人では産地パワーアップ事業の方が使いやすい建て付けです。

予冷庫だけを単独で整備できますか

予冷施設は原則として集出荷施設と一体的に整備することとされています。ただし、既存の集出荷施設に整備する場合はこの限りではないため、稼働中の集出荷場・選果場に予冷庫を追加する計画は対象になり得ます。詳細な線引きは都道府県の担当窓口で確認してください。

古くなった予冷庫の建て替えにも使えますか

同じ機能のままの単純更新は補助対象になりません。既存施設を新しい用途に仕向けるために内部設備の導入と一体的に行う改修等であれば、新設より経済的に優位であること、法定耐用年数10年以上などの条件を満たせば対象になります。産地の集出荷体制の再編合理化と併せて計画すると、制度趣旨に沿った説明がしやすくなります。

どこに相談すればよいですか

まず市町村・地域農業再生協議会・JAに相談し、産地の計画の有無を確認します。事業全体の相談窓口は都道府県の担当窓口です。都道府県の窓口が不明な場合は、地方農政局(生産振興課)が総合窓口になっています。

キーワード解説

予冷施設

収穫後の農作物の品質低下を抑制しつつ、計画的かつ安定的に出荷するために整備する冷却・保管の施設です。補助事業では集出荷貯蔵施設を構成する施設の一つで、予措保管施設・定温貯蔵施設・低温貯蔵施設・CA貯蔵施設や、これらと同等以上の鮮度保持効果が認められる施設を整備できます。

集出荷貯蔵施設

農作物の集出荷と貯蔵に必要な施設です。建物の規模は原則1棟おおむね100平方メートル以上で、予冷施設・貯蔵施設・選別調製包装施設などを含みます。対象作物に米・麦は含まれず、野菜・果樹・花きなど園芸品目が中心です。

産地パワーアップ計画

地域農業再生協議会等が関係者と連携して作成する、産地の収益性向上や生産基盤強化の目標と取組をまとめた計画です。都道府県知事が承認します。産地パワーアップ事業を使うには、この計画に参加し、自らの取組主体事業計画を位置付けることが必要です。

CA貯蔵

庫内の酸素や二酸化炭素の濃度など空気の組成を調整して、青果物の鮮度を長期間保つ貯蔵方法です。CA貯蔵施設は、定温貯蔵施設・低温貯蔵施設とともに補助対象の貯蔵方式に位置付けられています。

まとめ

予冷庫は、産地パワーアップ事業と強い農業づくり総合支援交付金のどちらでも、集出荷貯蔵施設として補助率2分の1以内等で整備できます。産地の計画に位置付けて個別経営体でも進めやすいのが産地パワーアップ事業、受益者5名以上の共同利用施設として大きく構えるのが交付金です。どちらも産地単位の計画が土台になるため、まず市町村・地域農業再生協議会・JAに相談し、産地パワーアップ計画の有無と予冷庫の位置付けを確認することから始めましょう。