肥料の値上がりが続くなか、土壌の状態を知らないまま毎年同じ施肥を続けていると、肥料代のムダが生まれがちです。土壌診断で今の養分量を測れば、余分な肥料を減らして肥料代を下げられます。この記事では、土壌診断の費用の目安、採土から処方箋までの流れ、施肥を見直す考え方、土壌診断や局所施肥に使える支援を整理します。詳しい費用や最新の情報は一次情報でご確認ください。

誰が肥料代を下げたい農家、過剰施肥を見直したい農家、施肥設計を見直す産地・JA
何ができる土壌の養分量を測り、余分な肥料を減らす施肥設計
費用の目安1点あたり数千円〜1万数千円(JAの基本分析+処方箋で約8,900円の例)
減らせる量過剰なリン酸・カリを減らし、実証例で施肥量約5割・肥料コスト約4割削減
相談先JA・都道府県の土壌分析センター・普及指導センター

なぜ土壌診断で肥料代が下がるのか

高度化成肥料のコスト構造。原材料費が63.7%を占める円グラフ
化学肥料は製造コストの約6割を原材料費が占め、輸入価格の影響を受けます。

代表的な高度化成肥料は、製造コストの約6割を原材料費が占めます。原料の多くを輸入に頼るため、肥料価格は国際価格や為替の影響を受けやすく、値上がりが続いています。

一方で、畑や水田の土には前作で使った肥料成分、とくにリン酸やカリがたまっていることが多くあります。今の養分量を知らないまま毎年同じ施肥を続けると、すでに足りている成分にまでお金をかけることになります。土壌診断で土の中の養分を見える化すれば、過剰な成分を減らし、肥料代のムダをなくせます。過剰な施肥は、肥料代だけでなく、作物の生育不良や病害虫の発生、養分の流出にもつながります。

土壌診断でどれだけ肥料代が下がるか

土壌診断に基づく施肥の適正化。過剰施肥の影響と、施肥量約5割・肥料コスト約4割削減の実証例
可給態リン酸が過剰な土壌では、施肥量と肥料コストを大きく減らせた実証例があります。

可給態リン酸が過剰で、EC(塩類濃度の目安)が高い土壌の実証例では、土壌診断に基づいて施肥を見直すことで、施肥量を約5割、肥料コストを約4割減らせました。北海道のたまねぎ・にんじん・ほうれんそうの産地では、たまねぎ1ほ場あたりの肥料コストが10アール当たり14,000円から9,600円へと下がっています。

過剰にたまった成分を減らしても、作物の収量は安定して保たれます。土壌診断は、肥料代を下げながら健全な生育を保つための出発点になります。

土壌診断の費用の目安

土壌診断は、JAや都道府県の土壌分析センター、民間の分析機関に依頼できます。費用は分析する項目の数や機関によって変わります。目安は次のとおりです。

依頼先・メニュー費用の目安(1点あたり)
JAの基本分析+処方箋約8,900円
化学性の基本分析(民間)5,500円前後
全項目分析(畑・水田)16,000〜17,000円台
個別項目(pHなど)500円程度から

JAでは、分析結果とあわせて施肥量の目安となる処方箋をつくってもらえる場合があります。まずは地域のJAや都道府県の土壌分析センターに、費用と申し込み方法を確認しましょう。

土壌診断のやり方

土壌診断は、次の流れで進めます。採土のしかたが結果に大きく影響するため、ていねいに行いましょう。

  1. 1つのほ場の5か所ほどから、ほぼ等量ずつ深さ15センチまで採土し、よく混ぜて1つの試料にします。
  2. 約500グラムを紙の上に薄く広げ、直射日光を避けて1週間ほど風で乾かします(加熱乾燥は避けます)。
  3. 2ミリのふるいでふるい分け、分析用の試料にします。
  4. pH、EC、可給態リン酸、硝酸態窒素、石灰、苦土、カリなどを分析します。
  5. 分析結果を土壌診断基準と照らし、施肥設計(処方箋)をつくって施肥を見直します。

施肥を見直して肥料代を下げる

分析結果は、都道府県が公表する施肥基準・土壌診断基準・減肥基準と照らして読み解きます。すでに過剰にたまっている成分、とくにリン酸やカリは思い切って減らせます。堆肥を施用する場合は、その分の肥料成分を差し引いて施肥設計します。

施肥量そのものを減らす工夫もあります。うね内施用やセル内施肥などの局所施肥は、必要な場所にだけ肥料を効かせて使用量を減らせます。あわせて、肥料の銘柄を集約して共同購入する、国産の安価な原料でつくった肥料やリン酸・カリの少ない肥料に切り替えるといった方法も、肥料代の低減に役立ちます。

土壌診断・施肥見直しに使える支援

国は、みどりの食料システム戦略推進総合対策などを通じて、土壌診断や局所施肥による適切な施肥体系の普及を支援しています。地域ぐるみで施肥を見直す取組は、都道府県や普及指導センター、地域協議会が窓口になります。堆肥や緑肥を使った土づくりと組み合わせると、化学肥料への依存をさらに減らせます。

よくある質問

土壌診断はどこに頼めばよいですか

地域のJA、都道府県の土壌分析センター、民間の分析機関に依頼できます。JAでは施肥の処方箋までつくってもらえる場合があるため、まずは身近なJAや普及指導センターに相談するとよいでしょう。

土壌診断の費用はどれくらいですか

分析する項目の数によって変わります。JAの基本分析と処方箋で約8,900円、民間の化学性分析で5,500円前後、全項目の分析で16,000〜17,000円台が目安です。pHなど個別項目は500円程度から依頼できます。

どのくらいの頻度で土壌診断をすればよいですか

作付けの前に、数年に1度を目安に行うと、養分の過不足の変化をつかめます。施肥や堆肥の使い方を変えたときや、生育に不調が出たときにも診断すると、原因の見当をつけやすくなります。

土壌診断で本当に肥料代は下がりますか

すでに過剰にたまっている成分を減らせるため、肥料代の低減が期待できます。可給態リン酸が過剰な土壌の実証例では、施肥量を約5割、肥料コストを約4割減らせました。堆肥や緑肥による土づくりと組み合わせると、効果を高めやすくなります。

キーワード解説

土壌診断

土を採取して養分やpHなどを分析し、施肥の過不足を見える化することです。結果をもとに施肥を見直し、肥料代の低減や生育の安定につなげます。

施肥設計

土壌診断の結果と作物ごとの必要量から、どの肥料をどれだけ施すかを決めることです。過剰な成分を減らし、堆肥の施用分を差し引いて組み立てます。

減肥基準

土壌に養分が過剰にたまっている場合に、施肥をどれだけ減らせるかの目安です。都道府県が施肥基準・土壌診断基準とあわせて示しています。

可給態リン酸

土の中で作物が吸収できる状態のリン酸です。過剰にたまっている場合は、リン酸肥料を減らせる目安になります。

局所施肥

うね内やセル内、作物のすぐ近くなど、必要な場所にしぼって肥料を施す方法です。全面に施すより少ない量で効かせられます。