古くなった茶園を優良品種や省力的な栽培に植え替えたい、有機やてん茶・輸出向けに切り替えたい、産地の生産体制を維持したいという茶農家は、改植・新植と、その後の未収益期間の費用について国の支援を受けられます。茶園の改植は10アールあたり15.2万円、新植は12万円が定額で、収穫できるようになるまでの未収益期間にも10アールあたり14.1万円(他品種への改植は18.1万円)が交付されます。この記事では、農林水産省「茶・薬用作物等地域特産作物体制強化促進」による支援単価と対象・要件・申請の進め方を整理し、薬用作物など地域特産作物の産地支援もあわせて紹介します。単価や要件の詳細は一次情報をご覧ください。

茶の改植・転換に使える補助の要点

誰が、何に、どれだけの支援を受けられるかを先にまとめます。

項目内容
誰が茶や薬用作物などの地域特産作物を作る農業者団体・産地の協議会。生産者は団体を通じて参加し、国へ直接申請する仕組みではありません
何を茶園の改植・移動改植・新植、有機栽培・てん茶・輸出向け栽培への転換、簡易な園地整備、生産・加工機械のリース導入、需要創出の取組
補助額改植・移動改植は10アールあたり15.2万円、新植12万円などの定額。未収益期間は10アールあたり14.1万円(他品種への改植は18.1万円)。機械リース等は2分の1以内
要件産地の品質向上戦略の策定、改植等の実施面積20アール以上。改植・新植など一部は地域計画の目標地図への位置付けが必要
詳しくは農林水産省のお茶のページと、都道府県・JA・産地の協議会、地方農政局の園芸特産課をご覧ください

対象となる方と要件

支援を受けられるのは、茶や薬用作物などの地域特産作物を生産する農業者団体や産地の協議会です。個々の生産者は、この団体・協議会の取組に参加する形で支援を受けます。国へ一戸ずつ申請する仕組みではないため、まずは自分の産地に協議会や取組があるかを確かめましょう。

地域での改植・転換の取組には、主に次の要件があります。

  • 計画の策定:産地の品質向上戦略(体制強化促進事業の場合)または茶産地展開計画(産地生産基盤パワーアップ事業の場合)を産地で策定していること。
  • 実施規模:改植等の実施面積が20アール以上であること。産地生産基盤パワーアップ事業では受益農業者5名以上も求められます。
  • 園地の位置付け:改植・移動改植・新植と、それに伴う未収益期間・棚栽培転換・台切りの支援を受けるには、地域計画の目標地図に位置付けられた方(見込みを含む)が将来にわたって営農を続けることが確実な園地であることが必要です。

植え替える品種や栽培方法は、産地の戦略や計画で振興すると定めたものが対象になります。古い品種を需要のある品種に替える改植のほか、果樹でも同じ考え方で改植・新植への支援があります。仕組みを比べたい方は果樹の改植・新植に使える補助金もあわせてご覧ください。

どれだけ受けられるか

茶の新植・改植等の支援内容の一覧。支援対象者は農業者団体等、事業の流れは国(農政局)から農業者団体等へ。事業要件は産地の品質向上戦略または茶産地展開計画の策定、改植等の実施面積20アール以上、受益農業者5名以上など。新植12万円、改植・移動改植15.2万円、改植・新植に伴う未収益期間14.1万円(他品種18.1万円)、棚栽培転換未収益4万円、台切り未収益7万円などの支援単価を、体制強化促進事業と産地生産基盤パワーアップ事業で比較した表。
農林水産省「茶関連対策の支援内容について」(PDF):茶園の改植・転換への支援単価と要件。

改植・新植や各種の転換への支援は、多くが10アールあたりの定額です。同じ取組は「茶・薬用作物等地域特産作物体制強化促進事業」と「産地生産基盤パワーアップ事業」のどちらでも支援を受けられ、体制強化促進事業は定額、産地生産基盤パワーアップ事業は2分の1以内が中心です。次の金額はいずれも10アールあたりの支援単価です。

取組体制強化促進事業産地生産基盤パワーアップ事業
新植12万円(定額)2分の1以内
改植・移動改植15.2万円(定額)2分の1以内
改植・新植に伴う未収益期間の支援14.1万円(他品種への改植は18.1万円)14.1万円(他品種への改植は18.1万円)
棚栽培への転換(未収益支援)4万円4万円
棚栽培転換に必要な資材費10万円2分の1以内
台切りに伴う未収益支援7万円7万円
有機栽培への転換に伴う資材費10万円2分の1以内
てん茶向け直接被覆栽培への転換に必要な資材費10万円2分の1以内
輸出向け栽培体系への転換5万円2分の1以内
茶園整理(抜根)5万円(酸度矯正等を実施する場合は8万円)2分の1以内
中山間地域等での有機・てん茶転換に伴う簡易な園地整備2分の1以内(市町村ごとに上限100万円)2分の1以内

新植・改植・移動改植と、未収益期間・棚栽培転換・台切りの各支援は、地域計画の目標地図に位置付けられた方(見込みを含む)の園地であることが要件です。改植をしてから幼木が育って収穫できるようになるまでは収入が途絶えるため、この未収益期間の管理経費を10アールあたり14.1万円(他品種への改植は18.1万円)受けられる点が、経営を続けるうえで大きな支えになります。

改植以外に受けられる支援

体制強化促進事業では、改植・転換とあわせて産地の生産体制を強くする取組も支援されます。関連する対策も含めると、次のような支援があります。

  • 有機栽培への転換:転換に必要な資材費を10アールあたり10万円受けられます。あわせて、みどりの食料システム戦略推進交付金の有機転換推進事業で、土づくりや有機種苗の購入などに10アールあたり2万円以内の支援を併用できます。詳しくは有機栽培への転換に使える補助金をご覧ください。
  • 生産・加工機械のリース導入:エネルギーコスト削減に資する加工機械や、乗用型摘採機などの生産性向上に資する農業機械のリース導入を2分の1以内で受けられます。
  • 新形態の大規模茶産地モデル形成(優先枠):茶生産の担い手・茶工場・実需者が一体となり、スマート農業による生産性向上・労働力確保・茶工場の省エネ化に取り組む産地を優先的に支援します。受益面積20ヘクタール以上などが要件で、補助率は2分の1以内(改植等の未収益支援は定額)です。
  • 凍霜害への備え:産地生産基盤パワーアップ事業で、防霜ファンなどの災害対応設備の導入を2分の1以内で受けられます。受益面積20アール以上・受益農業者5名以上が要件です。
  • 燃料価格高騰への備え:荒茶加工の燃料代に備える茶セーフティネット構築事業では、生産者と国が1対1で積み立て、燃料価格が基準を超えた場合に補填金を受けられます。
  • 需要創出:国内外のニーズ調査、新商品開発、試飲会の開催などを定額(機械のリースは2分の1以内)で支援します。輸出向けの栽培転換は、輸出額の拡大をめざす農林水産物の輸出支援ともつながります。

茶・薬用作物等地域特産作物体制強化促進とは

茶・薬用作物等地域特産作物体制強化促進(茶支援関連)の令和8年度予算概算決定額1,150百万円の内数。対策のポイント、事業目標(茶の生産量を7.5万トンで維持、茶の輸出額を364億円から810億円へ)、全国的な支援体制の整備と地域における取組の支援の2本柱、改植15.2万円・新植12万円・未収益支援14.1万円などの支援単価、新形態の大規模茶産地モデル形成を示す事業イメージ図。
農林水産省「令和8年度予算概算決定の概要(茶支援関連)」(PDF):支援単価と事業の全体。

茶園の改植や転換への支援は、持続的生産強化対策事業のうち「茶・薬用作物等地域特産作物体制強化促進」に位置付けられています。事業全体の予算は11億5,000万円(前年度と同額)で、茶への支援はこの内数です。支援は次の2つの柱で組み立てられています。

  • 全国的な支援体制の整備:全国組織などが、消費者を起点としたサプライチェーン構築の実証、日本茶の魅力発信による需要拡大、民間企業とのマッチング、機械・技術の改良、技術・経営の指導を行います。
  • 地域における取組の支援:産地が、改植・新植や各種の栽培転換、簡易な園地整備、実証ほの設置、機械のリース導入、商品開発などに取り組みます。この記事で示した支援単価は、この柱によるものです。

事業の目標には、茶の生産量を7.5万トンで維持すること、茶の輸出額を364億円から令和12年までに810億円へ増やすことが掲げられています。背景には、茶の生産者の減少と高齢化、茶価の低迷や需要の変化があります。古い茶園を需要のある品種や省力的な栽培へ計画的に植え替え、産地全体の体制を立て直すことが、この事業のねらいです。

薬用作物など地域特産作物の産地支援

この事業は茶だけでなく、薬用作物やその他の地域特産作物も対象にしています。薬用作物では、新植や農業機械のリース導入への支援に加えて、全国組織による民間企業とのマッチング、栽培技術の指導、需要拡大の取組が支援されます。事業目標として、薬用作物の栽培面積を573ヘクタールから令和12年までに700ヘクタールへ拡大することが掲げられています。

薬用作物の産地化を進めたい地域は、薬用作物産地支援協議会に相談できます。協議会は、産地化の相談窓口、栽培技術アドバイザーの派遣、生産者と製薬会社などの買い手をつなぐ売買マッチングを行っています。栽培の手引きや産地化の事例集も公開されているため、これから取り組む地域の参考になります。

申請の流れ

支援は国(地方農政局)から農業者団体・協議会へ交付されます。生産者は、産地の団体・協議会を通じて次の流れで参加します。

  1. 産地の協議会やJA、農業者団体で、産地の品質向上戦略または茶産地展開計画を策定します。まだ協議会がなければ、市町村や都道府県の農政担当に相談して立ち上げから検討します。
  2. 改植等の実施面積20アール以上、対象園地の地域計画への位置付けなど、支援ごとの要件を満たすかを確認します。
  3. 都道府県やJA、地方農政局の園芸特産課に相談し、どの支援メニューをどの事業(体制強化促進事業か産地生産基盤パワーアップ事業か)で受けるかを決めます。
  4. 公募期間内に、農業者団体・協議会が国(農政局)へ応募申請します。
  5. 採択後、計画に沿って改植・転換や機械リースなどを実施し、実績に応じて交付を受けます。

公募は年度ごとに行われ、例年、年明けから年度当初にかけて実施されます。令和8年度分の応募申請は令和8年3月に締め切られました。改植は準備から実施まで時間がかかるため、次の公募に向けて、実施する年の前年から産地で計画づくりを始めると確実です。最新の公募時期や要領は、地方農政局や農林水産省のお茶のページで確認しましょう。

申請前に確かめたいこと

  • 支援単価は上限を示したもので、審査や予算の範囲内で交付額が決まります。単価や要件は年度によって見直されることがあります。
  • 改植・新植など一部の支援は、地域計画の目標地図に園地が位置付けられていることが要件です。位置付けがまだの場合は、市町村の農政担当に相談しましょう。
  • 植え替える品種や栽培方法は、産地の戦略・計画で振興すると定めたものに限られます。植えたい品種が対象かを事前に確かめましょう。
  • 同じ取組でも体制強化促進事業と産地生産基盤パワーアップ事業で補助の形(定額か2分の1以内か)や要件が異なります。どちらで申請するかは産地の計画と受益規模に合わせて選びます。
  • 未収益期間や棚栽培転換などの支援は、改植・新植・転換とセットの支援です。管理経費だけを単独で受けることはできません。

よくある質問

茶園の改植にはどれだけの補助が受けられますか

改植・移動改植は10アールあたり15.2万円、新植は12万円が定額で受けられます。これに加えて、収穫できるようになるまでの未収益期間に10アールあたり14.1万円(他品種への改植は18.1万円)が交付されます。棚栽培・有機栽培・てん茶・輸出向け栽培への転換の資材費や、生産・加工機械のリース導入(2分の1以内)も対象です。

誰が申請するのですか。個人でも使えますか

申請するのは農業者団体や産地の協議会です。生産者は、その取組に参加する形で支援を受けます。産地の品質向上戦略の策定や、改植等の実施面積20アール以上などが要件で、個人が単独で国へ直接申請する仕組みではありません。まずは産地の協議会・JA・市町村・地方農政局に相談しましょう。

いつ申し込むのですか

公募は年度ごとに行われ、例年、年明けから年度当初にかけて実施されます。令和8年度分の応募申請は令和8年3月に締め切られました。次の公募に向けて、改植を予定する年の前年から産地で計画づくりを始めると確実です。最新の公募時期は地方農政局や農林水産省のお茶のページで確認できます。

薬用作物や他の地域特産作物も対象ですか

対象です。同じ事業で、全国組織による民間企業とのマッチング・技術指導・需要拡大と、地域での新植や機械リース導入などが支援されます。薬用作物については、薬用作物産地支援協議会が産地化の相談、技術アドバイザーの派遣、買い手との売買マッチングを行っています。

キーワード解説

改植・移動改植

改植は、老木や需要の合わない品種の茶樹を抜いて、優良な品種や省力的な栽培に植え替えることです。移動改植は、あわせて植える位置を移し、作業性のよい配置に改めて植え直すことを指します。どちらもこの事業の中心的な支援対象です。

未収益期間

改植・新植をしてから、幼木が育って収穫・出荷できるようになるまでの数年間です。この間は収入が途絶えるため、農薬代・肥料代などの管理経費が10アールあたり14.1万円(他品種への改植は18.1万円)支援されます。

てん茶

抹茶の原料になる茶です。摘採前に茶園へ覆いをかける直接被覆栽培で育てます。抹茶の国内外の需要が伸びているため、てん茶生産向けの栽培転換に必要な資材費が支援されます。

台切り

老朽化した茶樹の主枝を地際近くで切り、新しい枝を伸ばして樹勢を回復・若返らせる更新方法です。改植より短い期間で樹を作り直せますが、更新の間は収量が落ちるため、未収益支援を10アールあたり7万円受けられます。

産地の品質向上戦略

産地が策定する、品質向上や需要への対応、改植・転換の進め方をまとめた計画です。体制強化促進事業で地域の取組支援を受けるための前提になります。産地生産基盤パワーアップ事業では茶産地展開計画がこれにあたります。

地域計画の目標地図

地域計画は、農業経営基盤強化促進法に基づき市町村が策定する、地域農業の将来の設計図です。そのうち目標地図は、10年後にどの農地を誰が耕作するかを示した地図で、改植・新植など一部の支援は目標地図に位置付けられた方(見込みを含む)の園地が対象になります。