化学肥料の値上がりが続くなか、家畜ふんや食品残渣からつくる堆肥が、肥料代を下げる手段として見直されています。この記事では、堆肥を使うときにもらえる交付金、堆肥舎や堆肥生産施設を整備するときの補助、地域で堆肥をまわす耕畜連携の支援を、対象と補助率・上限額で整理します。詳しい要件や最新の単価は一次情報でご確認ください。

誰が堆肥を使う農家、堆肥をつくり売る畜産農家・事業者、地域で堆肥をまわすJA・協議会
何に使える堆肥の施用(土づくり)、堆肥舎・堆肥生産施設の整備、耕畜連携・広域流通
補助率・単価堆肥の施用=10アール3,600円(環境保全型直接支払)。施設整備=交付率2分の1以内・上限1.5億円(みどり交付金)
申込先都道府県・地域農業再生協議会・地方農政局(制度ごとに窓口が異なる)
使い分け「使う」は環境保全型、「作る・建てる」はみどり交付金・国内肥料資源・強い農業づくり等

なぜいま堆肥に注目が集まるのか

化学肥料原料の輸入相手国と輸入量の円グラフ
化学肥料の主な原料は、ほぼ全量を輸入に頼っています。

化学肥料の主な原料である尿素・りん安・塩化加里は、ほぼ全量を輸入しています。令和6肥料年度では、尿素はマレーシア、りん安は中国、塩化加里はカナダなど、特定の国に輸入先が偏っています。

さらに、代表的な高度化成肥料は製造コストの約6割を原材料費が占めます。原料の多くを輸入に頼るため、肥料価格は国際価格や為替、輸送費の影響を受けやすい構造です。令和3年秋以降は、原料輸出の検査厳格化やウクライナ情勢を受けて輸入が停滞し、価格が上昇しました。

こうしたなかで、堆肥のように国内でつくれる資材が、化学肥料の代わりとして地力を保ち、肥料代を下げる手段として見直されています。家畜ふんや食品残渣、下水汚泥など、地域にある資源を肥料にまわす動きが広がっています。

国が堆肥・国内資源の利用拡大を後押ししている

国内肥料資源の利用拡大の目標と、堆肥ペレット化・下水汚泥リン回収の事例
2030年までに堆肥・下水汚泥資源の肥料使用量を倍増する目標が掲げられています。

国内には、家畜排せつ物由来の堆肥や下水汚泥資源など、肥料成分を含む資源があります。食料安全保障強化政策大綱では、2030年までに家畜排せつ物由来堆肥・下水汚泥資源の肥料使用量を倍増し、肥料の使用量(リンベース)に占める国内資源の割合を40%まで拡大する目標を掲げています。

みどりの食料システム戦略でも、化学肥料の使用量を20%低減する方向が示されています。地域では、JAが家畜ふんを堆肥ペレットに加工して肥料工場で堆肥入り肥料をつくる例や、下水汚泥から回収したリンを配合肥料にする例が動いています。堆肥に公的なお金が用意されているのは、こうした政策の後押しがあるためです。

堆肥を使うともらえる交付金

堆肥を農地にすき込む土づくりそのものが、交付金の対象になります。環境保全型農業直接支払交付金の全国共通取組の一つに「堆肥の施用」があり、次の交付単価が設定されています。

対象の取組交付単価(10アール当たり)ねらい
堆肥の施用3,600円土づくりと土壌への炭素貯留
カバークロップ(緑肥)5,000円地力の維持・化学肥料の低減

堆肥の施用は、わらや家畜ふんなどからつくった堆肥を土壌にすき込む取組です。交付を受けるには、化学肥料・化学農薬を地域の慣行から原則5割以上低減する取組とあわせて堆肥を施用するなど、交付金の要件を満たす必要があります。交付単価は年度や地域、あわせて行う取組によって変わることがあるため、最新の要件と金額は都道府県・地域協議会でご確認ください。緑肥(カバークロップ)を軸にした土づくりは、別の記事でくわしく整理します。

堆肥舎・堆肥生産施設を整備するときの補助

堆肥やバイオ炭の生産施設の整備支援。交付率2分の1以内・上限1.5億円
堆肥やバイオ炭の生産に必要な機械・施設の整備を支援する制度があります。

堆肥をつくって売る畜産農家や事業者が、ペレタイザーや炭化装置などの機械・施設を整えるときは、みどりの食料システム戦略推進交付金の「みどりハード」を活用できます。交付率は2分の1以内、整備事業の交付上限額は1.5億円です。調査や検査・分析などのソフトの取組は定額(上限650万円)で支援されます。利用には、みどりの食料システム法に基づく基盤確立事業実施計画の認定が必要です。

堆肥舎や堆肥の生産施設の整備には、次の交付金も使える場合があります。取組の内容や地域によって使える制度が異なるため、補助率や要件は各交付金の要領と都道府県で確認します。

  • 国内肥料資源利用拡大対策事業(堆肥センター、ペレット工場、広域流通・保管施設の整備、耕畜連携)
  • 強い農業づくり総合支援交付金(産地基幹施設等支援タイプ)(堆肥・バイオ炭の生産施設)
  • 産地生産基盤パワーアップ事業(収益性向上対策)(堆肥・バイオ炭の生産施設)

地域で堆肥をまわす耕畜連携

畜産が盛んな地域では、市町村やJAが堆肥センターを運営し、堆肥の散布まで受託する例があります。耕種農家と畜産農家をつなぎ、家畜ふん堆肥を農地に還元する耕畜連携は、化学肥料の使用量を減らしながら地力を保つ取組です。こうしたマッチングや国内資源の利用技術の普及は、国内肥料資源利用拡大対策事業などで支援されます。堆肥を自分でつくらない農家でも、地域の堆肥センターを通じて堆肥を使いやすい体制が整いつつあります。

申請の流れ

堆肥に関する支援は、堆肥を「使う」のか「作る・建てる」のかで窓口と制度が分かれます。次の順で確認しましょう。

  1. 自分の取組を整理します。堆肥を使う土づくりなら環境保全型農業直接支払、堆肥舎や生産施設の整備ならみどりハード・国内肥料資源利用拡大対策事業などが候補になります。
  2. 都道府県・地域農業再生協議会・地方農政局に相談し、公募の時期と対象要件、補助率を確認します。
  3. 制度に応じて必要な計画認定を受けます。みどりハードでは基盤確立事業実施計画の認定が必要です。
  4. 公募に申請し、採択後に取組や施設整備を実施します。

よくある質問

個人の農家でも堆肥の補助金は使えますか

使える制度があります。堆肥の施用による土づくりは、要件を満たせば個人でも環境保全型農業直接支払の対象になります。堆肥舎や生産施設の整備は、みどりハードのように計画認定が前提になる制度もあるため、まずは都道府県や地域協議会に相談しましょう。

家畜ふん堆肥でも食品残渣の堆肥でも対象になりますか

どちらも国内の肥料資源として位置づけられています。家畜排せつ物由来の堆肥のほか、食品残渣や下水汚泥資源も、肥料としての利用拡大が国の目標に掲げられています。ただし制度ごとに対象となる資材や取組が定められているため、詳細は要領で確認してください。

堆肥を使うだけでもお金を受けられますか

環境保全型農業直接支払の「堆肥の施用」に取り組めば、10アール当たり3,600円の交付単価を受けられます。化学肥料・化学農薬を地域の慣行から原則5割以上低減する取組とあわせて行うことなど、交付金の要件を満たすことが前提です。

堆肥舎を建てる補助はどこに相談すればよいですか

事業実施場所を管轄する都道府県が相談・申請の窓口です。みどりハードのほか、国内肥料資源利用拡大対策事業、強い農業づくり総合支援交付金、産地生産基盤パワーアップ事業などが使える場合があるため、整備の内容を伝えて使える制度を確認しましょう。

キーワード解説

堆肥

家畜ふんやわら、食品残渣などの有機物を発酵させてつくる資材です。土壌に施すことで地力を保ち、化学肥料の使用量を減らす効果が期待できます。土壌に炭素を貯める働きもあります。

みどり交付金(みどりの食料システム戦略推進交付金)

みどりの食料システム戦略を進めるための交付金です。このうち「みどりハード」は、堆肥やバイオ炭の生産に必要な機械・施設の整備などを支援します。

環境保全型農業直接支払交付金

化学肥料・化学農薬の使用を抑えるなど、環境保全に効果の高い営農活動に交付金を支払う制度です。堆肥の施用やカバークロップ、有機農業などが対象取組です。

耕畜連携

耕種農家と畜産農家が連携し、家畜ふんからつくった堆肥を農地に還元するなど、地域の資源を循環させる取組です。

基盤確立事業実施計画

みどりの食料システム法に基づき、環境負荷低減の取組の基盤を確立する事業の計画です。認定を受けると、みどりハードなどの支援を活用できます。