肥料代を下げたい農家にとって、緑肥(りょくひ)は土づくりと減肥を同時にねらえる手段です。この記事では、ヘアリーベッチやレンゲ、ライ麦などの緑肥が地力を上げるしくみ、化学肥料をどれだけ減らせるか、そして緑肥の作付けに使える環境保全型農業直接支払交付金の対象と要件を整理します。詳しい要件や最新の単価は一次情報でご確認ください。

誰が肥料代を下げたい農家、土づくり・減肥に取り組む農家、環境保全型農業に取り組む地域・協議会
何に使える緑肥(カバークロップ)の作付け(主作物の栽培期間の前後)
交付単価10アール当たり5,000円(環境保全型農業直接支払・全国共通取組)
減肥の目安マメ科緑肥で10アール当たり窒素15〜30キロを供給、化学肥料の窒素を低減
申込先・要件都道府県・地域農業再生協議会。化学肥料・化学農薬の5割低減とセットが前提

緑肥とは・肥料代が下がるしくみ

カバークロップ(緑肥)を土壌にすき込むしくみと、栃木県の実施面積の推移
緑肥を土にすき込むことで地力を保ち、化学肥料を減らせます。

緑肥は、主作物の前後の空いた時期に育て、収穫せずにそのまま土にすき込む作物です。カバークロップとも呼ばれます。育てた作物を土に還すことで、地力を保ちながら化学肥料を減らせます。

ヘアリーベッチやレンゲ、クロタラリアなどのマメ科の緑肥は、根粒菌の働きで空気中の窒素を土に取り込みます(窒素固定)。これにより、化学肥料でおぎなう窒素を減らせます。ライ麦やエンバク、大麦などのイネ科の緑肥は、有機物を土に補い、雑草を抑え、風や雨による土壌の流出を防ぐ働きが期待できます。

緑肥でどれだけ肥料を減らせるか

マメ科の緑肥は、土にすき込むことでまとまった量の窒素を供給します。代表的な緑肥の窒素供給量は次のとおりです。

緑肥(マメ科)窒素の供給量(10アール当たり)特徴
ヘアリーベッチ窒素15〜30キロ分解が早く、後作の窒素肥料を減らしやすい
クロタラリア窒素9〜16キロセンチュウ対策にも使われる夏の緑肥

ヘアリーベッチを取り入れたほ場で、窒素・リン酸・カリを5割減らしても、スイートコーンの収量が慣行の施肥と同等だった事例もあります。緑肥は肥料代の低減だけでなく、地力の維持や病害虫の密度低下、土壌の流出防止にもつながります。

緑肥の作付けに使える交付金

緑肥の作付けそのものが交付金の対象になります。環境保全型農業直接支払交付金の全国共通取組「カバークロップ(緑肥)」では、10アール当たり5,000円の交付単価を受けられます。

交付を受けるには、化学肥料・化学農薬の使用を地域の慣行から原則5割以上低減する取組とあわせて、主作物の栽培期間の前後に緑肥を作付けます。栽培期間の目安は、春夏播きで概ね2か月以上、秋冬播きで概ね4か月以上です。交付単価や要件は年度・地域で変わることがあるため、最新の内容は都道府県・地域協議会でご確認ください。堆肥の施用(10アール当たり3,600円)とあわせれば、地力を高める土づくりを進められます。

緑肥に取り組む産地の実例

長野県川上村のライ麦カバークロップを作付けたほ場の様子
水稲やレタスの前後にライ麦・大麦・レンゲなどの緑肥を育てる取組が広がっています。

栃木県では、水稲の収穫後に大麦を播き、3月に土へすき込む体系が広がっています。二毛作が難しい県中北部を中心に取り組まれ、風による土壌浸食の防止にもつながっています。県内の環境保全型農業直接支払の実施面積のうち、カバークロップが約87%を占めています。

福岡県では、水稲の収穫後の10月にレンゲを10アール当たり3〜4キロ作付けし、4〜5月に土へ還す取組があります。地力の維持と病害虫の密度低下につながり、「元気つくし」などの特別栽培米の付加価値向上に生かされています。長野県川上村では、レタスの特別栽培で堆肥の施用にライ麦のカバークロップを組み合わせています。

申請の流れ

緑肥の交付金は、環境保全型農業に取り組む計画への参加が前提です。次の順で確認しましょう。

  1. ほ場に合う緑肥を選びます。窒素を減らすならマメ科、有機物を補い雑草を抑えるならイネ科が向きます。
  2. 化学肥料・化学農薬を5割低減する取組とあわせて、主作物の前後に緑肥を作付ける計画を立てます。
  3. 都道府県・地域農業再生協議会に相談し、環境保全型農業に取り組む計画に参加して、公募時期・要件・交付単価を確認します。
  4. 申請し、栽培期間の目安を守って緑肥を育て、土にすき込みます。

よくある質問

緑肥を作付ければ交付金をもらえますか

緑肥の作付けだけでは対象になりません。化学肥料・化学農薬を地域の慣行から原則5割以上低減する取組とあわせて緑肥を作付けることが、環境保全型農業直接支払の要件です。国際水準GAPの実施や地域の計画への参加も必要になるため、都道府県・地域協議会に確認しましょう。

どんな緑肥が肥料代の削減に向きますか

窒素を減らしたい場合は、ヘアリーベッチやクロタラリアなどのマメ科が向きます。空気中の窒素を土に取り込むため、後作の窒素肥料を減らしやすくなります。土の有機物を増やし、雑草を抑えたい場合は、ライ麦や大麦などのイネ科が使われます。

緑肥はいつ作付けてすき込みますか

主作物の栽培期間の前後に作付け、土にすき込みます。交付金では、栽培期間の目安として春夏播きで概ね2か月以上、秋冬播きで概ね4か月以上を確保します。水稲の収穫後に大麦やレンゲを育て、春にすき込む体系が広く行われています。

堆肥と緑肥は両方使えますか

両方に取り組めます。堆肥の施用には10アール当たり3,600円、緑肥(カバークロップ)には5,000円の交付単価がそれぞれ設定されています。堆肥と緑肥を組み合わせると、地力を高める土づくりを進めやすくなります。

キーワード解説

緑肥

収穫を目的とせず、土にすき込んで地力を高めるために育てる作物です。マメ科は窒素を供給し、イネ科は有機物の補給や雑草の抑制に役立ちます。

カバークロップ

主作物の前後の空いた時期に土を覆うように育てる作物です。緑肥として土にすき込むほか、土壌の流出防止や雑草の抑制にも効果があります。

環境保全型農業直接支払交付金

化学肥料・化学農薬の使用を抑えるなど、環境保全に効果の高い営農活動に交付金を支払う制度です。カバークロップや堆肥の施用、有機農業などが対象取組です。

窒素固定

マメ科の植物が根粒菌の働きで、空気中の窒素を植物が使える形に変えて土に取り込むしくみです。これにより化学肥料でおぎなう窒素を減らせます。

C/N比(炭素率)

有機物に含まれる炭素と窒素の割合です。この値が低い緑肥ほど土の中で早く分解され、窒素が作物に効きやすくなります。