野菜の供給・価格・輸出入・担い手は、生産者の出荷判断から外食・加工向けの調達まで、経営と市場の両方に直結します。本記事では、農林水産省の「野菜をめぐる情勢」(令和8年1月)の前半(農業における位置づけ、需給、輸出入、生産・機械化)に沿い、主要な数値と構造を整理します。

概要

項目 内容
誰が 野菜の生産・出荷を担う農家・農業法人、卸売・小売・外食・食品加工事業者、JA・自治体の農政担当、青果物流・輸出入に関わる事業者などです。
何を 野菜の産出・需給・供給体制(産地リレー、輸入品目の内訳、輸出動向、作付・農家数・経営収益、労働時間と機械化一貫体系の位置づけです。
いつまでに 本資料は令和8年1月時点の整理です。数値の年度は項目ごとに異なり(例:産出額は令和5年、輸入量は令和6年)、最新の統計は食料需給表や各統計の公表に合わせて読み替えます。
いくら 補助金の申請案内ではなく、市場・統計の数値整理です。例として、令和5年野菜産出額2兆3,243億円、令和5年需要13,665千トン(国内生産約80%)、令和6年野菜輸出155億円、施設野菜作10a当たり農業所得810千円などです。

農業生産における野菜の位置づけ

令和5年の農業総産出額9兆5,543億円の内訳と野菜産出額2兆3,243億円の品目別シェア。食料自給率への寄与はカロリー6%、生産額21%。
農林水産省「野菜をめぐる情勢」(令和8年1月)(農業生産における野菜の位置づけ)

令和5年の野菜産出額は2兆3,243億円で、農業総産出額(9兆5,543億円)の約24%を占めます。畜産(39%)に次ぐ規模です。品目別では、トマト(2,311億円)、いちご(2,055億円)、きゅうり、ねぎ、たまねぎなど10品目で産出額の約5割を占めます。

食料自給率への寄与は、カロリーベースで6%生産額ベースで21%です。カロリー寄与は小さい一方、国民の健康維持・増進や農業振興の面で野菜は重要な部門です。

野菜の需給と需要のシフト

平成15年から令和5年までの野菜需要量・国内生産量・輸入量の推移。令和5年需要13,665千トン。加工・業務用の割合が51%から56%へ増加。
農林水産省「野菜をめぐる情勢」(令和8年1月)(需給状況・需要)

食料需給表に基づくと、野菜の需要量は約20年で1割減少しています。輸入量はほぼ横ばいで、需要に占める国内生産量の割合はわずかに低下傾向です。

家庭の食の外部化やインバウンドを含む中食・外食の拡大を背景に、需要は家計消費用から加工・業務用へシフトしています。平成2年は加工・業務用51%・家計49%でしたが、令和2年は56%対44%です。令和5年の需要量は13,665千トン、国内生産は10,888千トン(需要の約80%)、輸入は2,777千トンです。

国内供給と輸入品目の内訳

令和5年の国内生産10,888千トンと輸入2,777千トン。キャベツ・たまねぎ・だいこんで国内生産の約3割。輸入は生鮮22%・加工78%、たまねぎ・トマト加工が中心。
農林水産省「野菜をめぐる情勢」(令和8年1月)(国内への供給状況)

国内供給は国内生産が約8割、輸入が約2割です。国内生産では、キャベツ(1,434千トン)、たまねぎ、だいこんの3品目で約3割を占めます。

輸入のうち生鮮品は603千トン(輸入の22%)で、たまねぎが生鮮の約40%(うち約9割が中国産)です。加工品は2,174千トン(78%)で、トマトのピューレ・ジュース等が約41%、冷凍野菜が約30%を占めます。生鮮の輸入先は中国が中心で、加工品では冷凍野菜・トマト加工品の比率が高い構造です。

産地リレーと国産割合

関東向けキャベツ・ピーマンの産地リレー。春は神奈川・千葉、夏秋は群馬・茨城、冬は愛知・宮崎など。露地・トンネル・施設栽培の切替。
農林水産省「野菜をめぐる情勢」(令和8年1月)(供給の特性・産地リレー)

日本列島の南北差を活かし、季節ごとに産地を切り替える産地リレーで周年供給を行います。産地・時期により露地栽培、トンネル栽培、施設栽培が組み合わされます。

関東消費地向けの例では、キャベツは春が神奈川・千葉、夏秋が群馬、冬が愛知中心です。ピーマンは夏秋が東日本(茨城・岩手等)、冬春が西日本(宮崎・鹿児島・高知等)です。市場入荷実績は令和6年東京中央卸売市場のデータに基づきます。

加工・業務用と家計消費用の国産割合推移。加工・業務用の約3割が輸入。冷凍野菜の国内流通量は増加し輸入比率が高い。
農林水産省「野菜をめぐる情勢」(令和8年1月)(国産割合・冷凍野菜)

家計消費用はほぼ全量が国産です。加工・業務用は、大ロットで定時・定量・定価格の供給に対応できる輸入が増え、近年の国産割合はおおむね7割で推移しています。

冷凍野菜は調理の利便性と品質が評価され国内市場は増加傾向ですが、輸入の割合が極めて高い部門です。冷凍野菜の国内流通量(輸入+国内生産)は令和6年で金額ベース約3,400億円規模まで拡大しています。

輸入の品目構成と推移

令和6年の生鮮輸入70万トン・加工197万トン。生鮮はたまねぎ38%等5品目で8割弱。加工は冷凍60%・トマト14%。輸入額は生鮮1,091億円・加工6,188億円。
農林水産省「野菜をめぐる情勢」(令和8年1月)(輸入状況)

近年の野菜輸入量は、生鮮・加工とも横ばいです。令和6年は生鮮70万トン、加工197万トン(加工品は生鮮換算前)です。

  • 生鮮は、たまねぎ・にんじん・ねぎ・かぼちゃ・ごぼうの5品目で量の約8割弱。額ではたまねぎ・ジャンボピーマン・ねぎ・にんにく・かぼちゃ等で約5割強
  • 加工は、冷凍野菜とトマト加工品で量の約7割強。額でも冷凍野菜が約55%を占めます。冷凍ではばれいしょが最大で、次いでブロッコリー・えだまめ等です。

輸出の動向

青果物輸出額の増加。令和6年野菜155億円・果実333億円。野菜はいちご・ながいも・メロンが堅調。
農林水産省「野菜をめぐる情勢」(令和8年1月)(輸出状況)

輸出額目標(2025年2兆円・2030年5兆円)の達成に向け、輸出重点品目に青果物(野菜・果実)が位置づけられています。

野菜の輸出額は増加を続け、令和6年は155億円と過去最高です。品目別ではいちご・ながいも・メロンが堅調です。青果物全体では、令和6年に野菜155億円・果実333億円となっています。

作付面積・生産量と地域分布

作付面積37万ha・生産量1,087万トン。指定野菜の作付は北海道・関東東山・九州で約7割。面積は微減・生産量は横ばい。
農林水産省「野菜をめぐる情勢」(令和8年1月)(作付面積・生産量)

令和5年の作付面積は約37万ha、生産量は約1,087万トンです。少子高齢化と担い手減少の影響で作付面積は微減、生産量は横ばいです。

指定野菜の作付面積を地域別にみると、北海道・関東・東山・九州で全体の約7割を占めます(令和4年産・全国調査ベース)。東山地域は甲信地域を指します。

平成25年から令和5年までの品目別作付面積増減。増加はブロッコリー・こまつな等。減少はだいこん・スイートコーン・さといも等。
農林水産省「野菜をめぐる情勢」(令和8年1月)(品目別作付面積の増減)

品目別では、ブロッコリー(+3,600ha)・こまつな(+990ha)などが増加する一方、だいこん(▲6,400ha)・スイートコーン(▲3,500ha)・さといも(▲3,420ha)など多くの品目で面積が減少しています。

農家数・年齢・新規参入

野菜販売農家数の減少(令和2年27万戸)。施設野菜の世帯員平均年齢は低い。野菜部門の主業経営体は46%。新規参入の約半数が露地・施設野菜。
農林水産省「野菜をめぐる情勢」(令和8年1月)(農家の状況)

全国の野菜販売農家数は減少し、令和2年は27万戸(5年前比約3割減)です。野菜経営体(個人)の世帯員平均年齢は、稲作など他作物より低く、とくに施設野菜はさらに低い水準です。

野菜部門で主業経営体は46%(48,297戸)で、水稲部門の10%より高い比率です。令和5年の新規就農者のうち、新規参入者の約半数が露地野菜・施設野菜に参入しています。

経営収益と労働時間

露地・施設野菜作経営体数の減少。10a当たり農業所得は施設810千円・露地128千円。所得率はいずれも約2割弱。
農林水産省「野菜をめぐる情勢」(令和8年1月)(経営状況)

野菜作経営体数は露地・施設とも減少傾向です(令和6年時点で露地約38.9千経営体・施設約41.1千経営体)。

令和5年・全国・10a当たりの農業所得は、施設野菜作810千円露地野菜作128千円です。農業所得率は露地18.2%・施設19.2%で、いずれも約2割弱です。施設は労働時間も1,365時間/10aと露地(233時間)より長い一方、粗収益・所得の規模が大きい構造です。

米と野菜の10a当たり作業別労働時間。収穫・調製・出荷に時間が集中。機械化一貫体系でキャベツ59%減・たまねぎ70%減・ほうれんそう90%減の例。
農林水産省「野菜をめぐる情勢」(令和8年1月)(生産性・労働時間)

米に比べ野菜は労働時間が長く、とくに収穫・調製・包装・出荷に時間が集中します。たまねぎで10a当たり221時間、キャベツ127時間など、品目差が大きいです。

機械化一貫体系を導入した場合、慣行栽培比で労働時間はキャベツ約4割、たまねぎ約3割、ほうれんそう約1割に短縮できる例が示されています(各マニュアル・統計に基づく試算)。

機械化の進捗

主要野菜の作業別機械化状況一覧。収穫・調製・出荷は×や▲が多い。キャベツの機械化一貫体系の機械写真。
農林水産省「野菜をめぐる情勢」(令和8年1月)(機械化の状況)

主要野菜では、すべての作業が機械化された品目は少なく、とくに収穫・調製・出荷の機械化が遅れています。葉茎菜・根菜・果菜で、耕転・定植・防除は多くの地域で機械化(●)が進む一方、トマト・きゅうり・ピーマンなどでは収穫が人力(×)の例が多いです。

キャベツの機械化一貫体系では、全自動播種プラント、畝立同時施肥機、全自動移植機、乗用管理機、収穫機などが組み合わされ、加工・業務用向けの大ロット供給とセットで設計されています。

キーワード解説

指定野菜

野菜生産出荷安定法第2条に基づき、消費量が相対的に多く、今後も多くなる見込みの野菜として位置づけられる品目群です。本資料ではキャベツ、ほうれんそう、レタス、ねぎ、たまねぎ、はくさい、きゅうり、なす、トマト、ピーマン、だいこん、にんじん、さといも(ばれいしょ除く)の13品目で国産割合の試算などに用いられます。

食料需給表

農林水産省が公表する、食料の需要・供給・自給率などを示す統計です。本記事で触れる野菜の需要量・国内生産量・輸入量の長期推移は、主に食料需給表と貿易統計に基づきます。

加工・業務用

家計向けの生鮮消費(家計消費用)に対し、食品加工・外食・給食など事業者向け需要を指します。需要全体の約6割を占め、輸入野菜の受け皿でもあり、国産割合はおおむね7割で推移しています。

産地リレー

季節・地域ごとに主産地を切り替え、全国の消費地へ周年供給する仕組みです。露地・トンネル・施設栽培を組み合わせ、同一品目でも月ごとに入荷産地が移り変わります。

機械化一貫体系

播種から収穫・出荷までを機械でつなぐ生産・流通の体系です。加工・業務用キャベツなどでマニュアル化が進み、労働時間の大幅削減と定時・定量供給の両立を目指します。